GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

57 / 157
その4

リポート9 悪意 その4

 

 

~横島視点~

 

屋敷と土地の除霊は思ったより長丁場になろうとしていた……今日で5日目だが、まだ俺達は屋敷の中に突入出来ないでいた。要石を壊し、結界による弱体化を軽減しまだ万全とは言わないが、それでも安定して霊力を使えるようになっていたがそれでも突入は無理だった。

 

「結界がかなり厄介ですわね、入ったら出れないタイプと見て間違いありませんが、それに加えて屋敷自体も特別な素材で作られているのは間違いありませんわね、華族の屋敷なんて大嘘にも程がありますわ」

 

なんでも古い感じに偽装されているが、作られて1年未満の新築である可能性が高く、この依頼自体が最初から罠だった事が分かりめちゃくちゃ驚いた。

 

「ネクロマンサーの笛とシズの笛でも効果がありませんでしたしね……」

 

屋敷全体が強力な結界で覆われている上に、屋敷自体が特別な素材で作られていておキヌちゃんのネクロマンサーの笛もシズの笛も効果なし、一応入り口からは入れるが、入ったら最後結界と屋敷の影響で更に弱体化が進むのは確実という調査結果が出ている。

 

「もうすこし要石を破壊して結界を弱体化させたいけど……横島、見つけれそう?」

 

「頑張っては見るけど難しいなぁ……複雑なパズル見たいになってるから……」

 

別の要石を壊すと別の場所を見つけれる、これの繰り返しだから……すぐにここッ!って言うのは無理だ。地道に歩いて少しずつ要石を破壊して、そしてまた別の要石を見つけるって事を繰り返すしかないだろう……と俺達がそれぞれの意見を話していると美神さんが眼鏡を外して深い溜め息と共に口を開いた。

 

「やっぱり心眼の言う通りっぽいわね」

 

地図に印をつけながら美神さんがそう話を切り出した。3日目の夜にどれだけ探しても要石が発見出来ず、そして今まで現れなかった悪魔や動く人形を見て心眼が俺達に告げた言葉がある。それは出来れば外れていて欲しかった言葉でもあるのだが……俺達の願いは叶わなかったと言っても良いだろう……その言葉とは……。

 

【まず間違いない、向こうはどう見ても研究者の集まりだ。私達の戦力を見極めるまでは恐らく向こうに動きはない。食事や休憩が満足に出来ず、成す術が無く屋敷に突入した場合にこちらを捕獲するつもりなのだろう】

 

改めて心眼が告げた言葉に美神さん達も表情が曇る。シズクの転移で物資は十分に確保出来ているが、シズク達はこの場所にはまだ来れていない。

 

「結界がなんとかなればシズク達もこれると思うんですけど、やっぱり無理そうですか?」

 

シズク達が来てくれればかなり有利になる筈だがと思いながら駄目元で尋ねると美神さん達は渋い表情を浮かべた。

 

「私達を弱体化させる結界と神魔の能力を制限する結界が入り混じってて、これは早々解除出来ないわよ」

 

「色々と調査をしましたが結界の基点は屋敷の中、此処からでは精々物資を届けてもらうくらいに結界を緩める事しか出来ませんわ」

 

専門家であるくえすさんの無理と言う言葉に俺は思わず溜め息を吐いた。5日、5日の時間を掛けてもいまだ弱体化する結界の解除には至っておらず、明らかに俺達の霊能に対応した個体までが出現し始めていることから心眼の言葉が真実味を帯びてきている。

 

「無理に屋敷に突入するのはリスクがありすぎるわね……」

 

「当たり前ですわ。外でこれなら中はもっと酷いに決まってますし……何よりも、この件は神魔も関わってますわ」

 

くえすさんが鋭い視線で神魔も関わっていると断言し、俺とおキヌちゃんは驚いたが美神さん達は驚いた素振りを見せず、むしろ納得したと言う表情だった。

 

「本当に神魔が関わっているんですか?」

 

「昨日と一昨日に出現した悪魔、あれは悪魔ですが、それと同時に使い魔でもあるのですわ。人間では召喚できない天界と魔界の狭間にすむ魔物」

 

昨日と一昨日と言われ、脳裏を過ぎったのは頭部が4つある不気味な姿をした獣だった。

 

「横島が思い出したのであってるわね……でもあれって正直なんなの? 正直天界と魔界の狭間に棲んでるって言われても全然分からないんだけど……」

 

蛍がそう尋ねるとくえすさんは小さく溜め息を吐いた。それは蛍に対しての物ではなく、それを作り出したものに対する呆れと言っても良いかも知れない。しかしあのくえすさんがこんな反応をするってどんな魔物なんだと思わず身構える。

 

「オファニムですわ。しかも堕ちて、天使にも悪魔にもなれない個体ですわね」

 

オファニム……?どっかで聞いたような……暫く考えでどこで聞いたのか思い出した。

 

「それって天使じゃ?」

 

ピートとシルフィーちゃんが教えてくれた天使が確かそんな名前だったような気がする。

 

「……そうよ。オファニムは物質の肉体を持つ天使の中では最上位……上から数えて3番目よ」

 

そんな凄い天使があんなのになるとかありえないし、何よりも10体近くいたのにと俺が思っているとくえすさんがより詳しく説明してくれた。

 

「オファニムは魔人大戦の折に死んでおり、今だ復活の目処が立ってないそうですわ。程度の低いレプリカを量産し、それを監視役として使っているのですわ、程度が低いので暴走するし、簡単に悪魔に堕ちるのですが……当然ながらそれでも強力な天使であることに変わりは無く、人間が作れるような固体ではない。それがこれだけの数出現すると言う事は間違いなく天使が絡んでますわね」

 

「それも多分、デタント反対の天使ってことね……デタントは覚えてる?」

 

「あーうん、大丈夫。それは覚えてる、要は天使と悪魔が本気で戦争すると世界が滅びるから仲良くしようって話だったよな?」

 

かなり大雑把だけど間違ってはないはずだ。

 

「その通りよ。だけど天使と悪魔が全員そう思ってるわけじゃないの、だから過激派神魔とかがいるのよね……でもそれまで絡んでくるとなると……正直私達だけじゃ厳しいわね」

 

美神さんが今まで見たことがないくらい険しい顔をしている……状況がそれだけ不味いって言うのは俺にも判る。

 

「どうします?文殊を使えば多分東京に戻れると思いますけど……」

 

「応援を連れて来たほうが良いんじゃないですかね?」

 

俺とおキヌちゃんがそう提案するが美神さん達は首を左右に振った。

 

「私達の気配が無くなれば何をしでかすか分からないわ。準備を整えて応援に来てもらうように頼んで、私達は屋敷の中に突入するしかないわ」

 

「この手の連中は何をしているか分からないし、それこそここら辺を吹き飛ばすことだって平気ですると思うわ。本当ならここで引き返して戦力と準備を整えたい所なんだけど……その間に姿を隠されたら被害がもっと大きくなるかもしれないのよ、結界を展開している間は向こうも思うように動けないのよね?くえす」

 

「向こうの結界を私が利用してますからね。こっちも思うように動けませんが、それは向こうも同じ。ですがこっちは東京と連絡を取る術もありますから条件的にはこちらが圧倒的に有利ですわね」

 

美神さん達も危険性もリスクも承知しているが、それでも撤退するわけには行かないと強い口調で言う。

 

【その通りだな、京都の事件の再発となりかねん。要石を破壊し、屋敷の中に突入し研究者達を捕らえるという方針は変わらないな、今日は身体を休めて、明日は1番瘴気の濃い森の中の要石を潰すか?】

 

「私達もそのつもりよ、霊力の澱みは蓄積していくからね、これ以上変なのが出る前に潰しておきましょう」

 

心眼と美神さん達の考えは同じらしく、とんとん拍子で話が進むのを聞いて、俺も自分のやるべき事を再確認する。

 

「とりあえず、こんな所ね。今日はもう休むけど、横島君はあとでくえすの所に行っておきなさい」

 

美神さんからくえすさんの所に行くように言われ、俺は片付けの手を1度止めた。

 

「えっとそれは良いんですけど……何かの手伝いですか?」

 

蛍とおキヌちゃんが心底嫌そうな顔をしてるけど……このタイミングで態々言う理由はなんだろうかと首を傾げる。

 

「横島君は魔力の調整が1人じゃ出来ないでしょ?くえすに整えて貰っておきなさい、明日はかなりきつくなるからね」

 

「わ、分かりました。じゃあ後でよろしくお願いします」

 

くえすさんに向かって頭を下げながらよろしくお願いしますと頼む。

 

「そんなことをしなくても見てあげますわよ。とって食うわけではないのですからそんなに脅えなくてもいいですわよ」

 

柔らかい口調だけどくえすさんの目力が凄くて、俺は曖昧な返事を返すのがやっとなのだった……。なおくえすさんの部屋に行く前に蛍とおキヌちゃんに色々と注意をされることになるのだが……。

 

適切な距離感を保てとか、あんまり近づかないように、逆に近づかれても警戒、くえすさんが薄着なら逃げる準備とか、脱がされにくい服を着ろとか……

 

「言うほうおかしくない?普通逆じゃないか?俺男で、くえすさんは女だぞ?」

 

魔術的なものなので俺とくえすさんしか駄目だと言われているが……普通は逆だと思うというと心底呆れた顔をされた。

 

「間違ってないわよ、というかくえすなら普通に横島を組み敷けるわよ、やばいと思ったら悲鳴を上げなさい」

 

「もうちょっと警戒心を持ったほうがいいと思いますよ」

 

「くえすさんをライオンみたいに言うのはどうかと思うんだけど……」

 

普通言う方が逆だと思うので、それを指摘すると間違ってないと言われて、くえすさんをまるで肉食獣みたいに言うなよと言うと……。

 

「くえすは肉食獣に決まってるじゃない」

 

「横島さんみたいな無警戒の人なんかあっという間に食べられてしまいますよ」

 

「……えええ?」

 

蛍達が俺とくえすさんの事をどう思っているのかと思わず困惑気味の声を出してしまった俺だが、蛍達の目がガープ達を目の前にしたような真剣な物になっており、俺は喉元まで込み上げて来たそんなこと無いだろという言葉をぐっと飲み込むのだった……。

 

 

 

 

~くえす視点~

 

散々蛍、美神に釘を刺されてから私は霊薬や、魔法陣の準備を終えて横島が尋ねてくるのを待っていた。

 

(流石にそこまで私も馬鹿ではありませんわよ)

 

無警戒で横島がやってくるのはカモネギと同意儀ですが、流石にこの状況で盛るほど私も馬鹿ではないし、100%邪魔が入る上にこの依頼の後の3日間横島を借りる権利を失うと分かっているので大人しく横島の魂の調整を手伝うだけにする。

 

「入ってきなさいな」

 

ノックの音が聞こえたので入ってくるように言うと扉が開き、横島が部屋の中に入ってくる。

 

「失礼しまーす」

 

「くえす、分かってるわよね」

 

最後の最後まで釘を刺しに来るとか、ヘタレているくせにと思いながら、シッシっと蛍に向かって手を振る。

 

「デリケートな作業なんですから余計な事を言いに来ないで欲しいですわね。こんな空気が澱んでいる場所では細心の注意が必要なんですからね」

 

「……そうね、じゃあよろしく」

 

踵を返して引き返していく蛍だが、この様子では扉の外で待っていそうだと肩を竦める。

 

「なんかすいません」

 

【すまないな、私だけでは不安が残るから手間をかけさせる】

 

「大丈夫ですわよ。私は気にしていませんから」

 

横島といるようになってから丸くなった事は自覚しているが、かつての私を知る人間からは今も疑われているので、ああいう視線は慣れっこだし、そんなので傷つくほど柔ではない。

 

「とりあえず霊薬を飲んで、魔法陣の中の椅子に座りなさい」

 

「分かりました」

 

薬を飲んで座れと言ったのですが、薬の瓶を持ったまま立ち竦んでいる横島を見て、私は魔道書を閉じて横島に視線を向けた。

 

「どうしました?」

 

「この薬不味いですか?」

 

子供みたいな事を言う横島に思わずくすりと笑う。こういう所がどうも母性本能を刺激するんですのよねと思いながらも、和んでいる場合ではない、今は霊力の通りが良いが、これが狂うと失敗しかねない。

 

「当たり前ですわよ。薬なのですからね、それよりも早く薬を飲みなさい」

 

「……うい」

 

嫌そうに薬を飲み、顔を歪めながら椅子に腰掛ける横島の前に立ち、後頭部に腕を回す。

 

「心眼を借りますわよ」

 

「あ、はい。すいません、ぼんやりしてて」

 

謝罪の言葉を口にする横島に気にしなくていいですわよと言いながら、心眼を手首に軽く巻きつける。

 

「フォロー、よろしくお願いしますわよ?」

 

【ああ、分かっている。よろしく頼む】

 

心眼の言葉に頷き、薬の効果でうつらうつらと眠りに落ちかけている横島の額に触れて魔法を発動させる。

 

「んうッ」

 

意図してない嬌声が口から零れる。思わず赤面しかけるが、横島の意識がないのを見て全身を走る緩い快楽の波長を歯を噛み締めて耐える。

 

【大丈夫か?】

 

「大丈夫ですわよ。まぁ貴女も女みたいな物ですから気には……んう……し、しませんわ」

 

横島の魔力は純度が高い、竜気と神通力に消されないように……少量でも純度を高め続けたそれは魔の者にとっては最上級のご馳走と言ってもいい……思わず下腹部が熱くなるのを感じるが、それに気付き自分で自分の足を踏みつけて我に帰る。

 

(駄目ですわ……落ち着きなさい)

 

ここで欲望に身を任せてしまえば、私と横島は完全に魔に落ちる。魔法使いとは鉄の自制心で己を御す者……一時の快楽に身を任せるなどあってはならない事だ。

 

「……」

 

声として認識出来ない音が私の口から零れ、横島の両手足に魔法陣が浮かび光と共に弾け、一瞬鎖を出現させて消滅する。

 

【流石だな】

 

「まぁ専門と言えば専門ですしね」

 

狂神石に呑まれれば横島は高確率で変身する。それは狂神石にとって変身した姿が最も効率よく力を使えるからだろう、そして変身すると言う事は白兵戦がメインになるので、手足に封印を掛けておくのが1番ベストだ。

 

「霊力、神通力、竜気には反応しませんので普通に戦う分には問題ありませんわ」

 

【すまない、助かる。私ではそこまでの細かい封印は無理だ】

 

「専門的な物ですからね、これで最後ですわ」

 

後は外の魔力に反応しないように防壁を掛けて終わりなのだが……その瞬間に底抜けの悪意を感じた。

 

「ッ!」

 

横島の目が紅く輝き、犬歯が伸びているのを見て慌てて封印を上書きするが、魔力を殆ど持っていかれ、その場にへたり込んだ。

 

【大丈夫か!?すまない、私の警戒が足りなかった】

 

「いえ、大丈夫ですわ……深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいていると言う事を忘れた私が悪いのですわ……」

 

本当に一瞬だった……封印が完了し、私の気が緩んだ隙にこっちの魂に手を伸ばして来た。即座に防御をしたが、油断していれば私まで狂神石の影響を受けたかもしれないと苦笑する。

 

「ん……んん、じ、神宮寺さん!?だ、大丈夫ですか!?」

 

「くえすですわよ、手を貸してくださいな。少し疲れましたの」

 

薬の効果が切れて目を覚ました横島に手を借りて立ち上がるが、足が少し震えている。

 

「大丈夫ですか?」

 

「疲れただけですわ、ベッドまで運んでくれますか?」

 

「わ、分かりました」

 

ベッドまでと言うと赤面する横島に肩を借りてベッドまで移動し、倒れこむようにして横たわる。

 

「本当に大丈夫ですか?美神さんか、蛍を呼んできましょうか?」

 

「少し休めば大丈夫ですわ……でも何かしてくれると言うのなら……」

 

そこで悪戯っぽく笑い、指で唇を撫でる。

 

「一緒に寝てくれますか?添い寝とかではなく」

 

「だ、誰か呼んできますねーッ!」

 

本気ではないしからかうつもりで言うと思った以上に効果覿面で横島は心眼を手にとり、鼻を押さえて逃げ出してしまった。

 

「……やはりこの方向は駄目みたいですわね……正攻法じゃないと駄目ですか」

 

これで横島が来るのならば押し返すつもりだったが、あの反応を見る限りでは先に肉体関係を持ちそこからと言うのは無理そうだと分かったので十分と言えるだろう。

 

「まぁ正攻法で攻略するのが難しい男でもあるんですけどね」

 

正攻法でクリアできるのならば蛍が勝利している筈だ。どうも蛍がヘタレているだけが原因ではないようだと分かっただけで十分な成果だろう。

 

「はぁーい、くえす……覚悟は出来ているかしら」

 

臭気を放つ薬の瓶を手にして部屋に入ってきた美神を見て私の笑みは凍りつくことになるのだった……なお薬の味は最悪だったのは言うまでもないだろう……。

 

 

 

~蛍視点~

 

くえすが冗談を言っただけと横島は言っていたけど……確実にあれは誘惑的な何かをされたのは間違いない、くえすが本気ではなかったのは分かるが……もし横島が本気にしたらどうするつもりだったのかと文句も言いたくなる……と現実逃避はここら辺にして、目の前を見上げる。

 

「モグラちゃん、いけー」

 

「ギャオオオンッ!!」

 

横島の命令に咆哮を上げて、地響きを上げて進んでいく巨大なドラゴン――勿論それはモグラちゃんだ。大きく口を開けてブレスを吐き出す姿を見て咄嗟にスカートを押さえ、時間差で私達を襲ってきた暴風にスカートを押さえてなければ下着が丸見えだったと冷や汗を流す。

 

「わきゃあああ――ッ!?」

 

「おキヌちゃーんッ!?」

 

巫女服で暴風の直撃を受けたおキヌさんが吹っ飛び、横島が栄光の手を伸ばして捕まえる。

 

「し、死ぬかと思いました……」

 

「モグラちゃん、張り切ってるから……美神さん達もごめん」

 

今も雄叫びを上げているモグラちゃんは尻尾を地面に打ち付けてやる気を見せ付けているが、吹っ飛ばされていたおキヌさんとそれを必死で助けた横島は何もしていないのにもう疲労の色が濃いのを見て、思わず苦笑してしまった。

 

「ちょっとやりすぎている感じはあるけど、これは良いデモンストレーションになるわ」

 

「そうですわね。これであの屋敷の馬鹿共も尻に火が付いたでしょう」

 

美神さんとくえすの言葉を聞いて私は何をしようとしているのか理解した。いや、理解してしまった。

 

「モグラちゃんに屋敷に攻撃してもらうつもりですか?」

 

「え!?」

 

横島は驚いているけど、私は本気でそれをするつもりだと理解していた。

 

「正解、それが1番早いわ。それに……うりぼーもがんばってくれてるしね」

 

美神さんの視線の先を見ると巨大化したうりぼーが足を踏み鳴らし、片っ端から浄化をしている。要石が砕けて結界が弱まったから本来の力を使い始めているのだ。

 

「でもそんなことをして大丈夫なんですか?モグラちゃん達が人を殺しちゃうと思うんですけど……」

 

横島の懸念も良く判る。だけどそれは取り越し苦労だ。

 

「横島。屋敷はフェイク、本命は地下ですわ。大体あんな目に見えたところで何かしていると思いますか?」

 

「あ……」

 

くえすの言葉に横島があっと呟いた。少し考えれば判ると思うけど……正直横島自身もかなり一杯一杯って所だったのかもしれない。

 

「屋敷が吹っ飛ぶかどうかで相手の出方も分かるし、モグラちゃんとうりぼーのおかげで土地の除霊も出来た。これ以上疲弊する前に屋敷に突入する目処が出来たのはありがたいわね、とりあえず今日はモグラちゃんとうりぼーに頑張って貰って、しっかりと準備をして屋敷へと突入するわよ」

 

美神さんの言葉に頷き、周囲の除霊、そして悪霊の噴出す霊地を浄化しながら遠くに見える屋敷に視線を向ける……結界に澱んだ霊地、ゾンビに危険な天使や悪魔……余りにも聞いていた話、そしておキヌさんの記憶とは違うが、ここで引いてより多くの被害が出る可能性があるのならばリスクを承知で突入するしかないのだ。

 

 

十分な休養、そして装備を身につけ私達は屋敷の前に立っていた。結界はかなり弱くなっているけど、まだ強固突破するのは無理だと分かるくらい澱んだ霊力が屋敷を包み込んでいるのが判る。

 

「籠城に切り替えたと言う所ですわね。まぁ無駄なのですがね」

 

屋敷を調べていたくえすが力技では無理と言いつつ、この結界は無意味だと笑う。人間では突破出来ないがフルパワーを使えるモグラちゃんとうりぼーが居ればこの結界は十分に破壊できるだろう。

 

「それじゃあ、横島君。お願いね」

 

「はい。モグラちゃん、頼んだ」

 

横島の言葉で抱き抱えられていたモグラちゃんが腕の中から飛び出し、空中で大きくなって行き巨大な龍となり地面に着地する。

 

「ゴガアアアアアアッ!!!!」

 

咆哮と共に放たれた火炎が屋敷を覆う結界を包み込み、ガラスが砕けるような音と共に結界を破壊した。

 

「うきゅー」

 

「モグラちゃん。お疲れ様」

 

横島に駆け寄って頑張ったよと言わんばかりに鳴声をあげ、横島がモグラちゃんを抱き抱えて立ち上がって屋敷を見上げる。

 

「やっぱり壊れませんでしたね」

 

「そうね。でもこれは予想通りよ、横島」

 

結界は砕けたが屋敷は煤1つない。あわよくばモグラちゃんが破壊してくれればと思ったが……やはりそんな簡単な話では無かったようだ。

 

「ここからが本番よ、まずは無理せず安全第一。危険なら即座に引き返すことを念頭に入れて、単独行動は避ける事。それじゃあ行くわよ」

 

美神さんの言葉に頷き、私達は7日目にて屋敷の中へと足を踏み入れるのだった……。

 

 

 

リポート9 悪意 その5

 





今回は色々とイベントを起して、屋敷へと突入までは書いてみました。次回からは屋敷の捜索編に入りますが、話のボリュームをかなり増やして行こうと思っています。普段の倍くらいで色々な視点で書こうと思っているので楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。