GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その3

リポート2 竜の魔女リターンズ その3

 

英霊とは英雄や歴史的な発明や発見を行った者がその死後、信仰によって人間霊から精霊へと昇華され、英霊の座にその存在が刻まれた存在である。その性質上人に知られていればいるほどにその力を増す。横島の家に居候している信長や牛若丸は日本の英霊という事もあり、日本で抜群の知名度を誇り、ただでさえ高い能力が更に増加されている状態だ。たとえ普段馬鹿な事をしていても、上から数えた方が早い大英霊――その能力は下手な神魔を遥かに越え、比叡山を焼き払った信長は神殺しの適正を持ち、神魔に対してのジョーカーと言ってもいいほどの能力を持つし、牛若丸は現代に至るまでの平家物語の影響を受け、様々な能力を付与されている。

 

良いも悪いも英霊という存在は「人間」によって大きな影響を受ける。それが正しい存在であったとしても「悪」とされ、間違った存在であっても「善」とされるように……長い月日の中で人間の影響を受けてその存在は大きく変わることもあるし、変わらない事もある。元が人間霊であるが故にその影響は極めて大きい。神魔との関係性に近いと言っても良いが神魔よりも遥かに受ける影響が大きい。

 

人間の信仰によって英霊は存在しているが、人の信仰によってその存在を変えるのもまた英霊だ。だがそれに共通しているのは人に知られている事……それが英霊の絶対条件と言える。その条件で言えばガープによって存在を歪められた「ジャンヌダルク・オルタ」は本来の段階では英霊として存在するだけの条件が全く足りていなかった。しかしだ、マリア姫によって代々その旗を敬い、そして祀り続けた事で、ジャンヌダルクとは別にジャンヌダルク・オルタへの信仰が集まった。そしてその信仰によって、座が生まれ、英霊としての格を得た。だがそれだけではジャンヌダルク・オルタが英霊として召喚される事はない、あくまで地方で信仰されている弱い英霊だからだ。

 

しかし「竜の魔女の旗」と言う世界的に知られる触媒を得て、それが知られれば知られるほどにジャンヌダルク・オルタの知名度は広がり、英霊としての格を徐々にだが上げた。そして最後に何よりも、誰よりもジャンヌダルク・オルタを信仰している者……横島が竜の魔女の旗の前に現れた事で英霊召喚の条件が全て揃った。

 

【サーヴァント、アヴェンジャー。ジャンヌダルク・オルタ……なんです、その間抜け面は?もっとちゃんとした顔をしなさいよ、横島】

 

黒炎が魔法陣を描き、そこから現れた漆黒の鎧を身に纏った女性――ジャンヌダルク・オルタの姿に横島は目を大きく見開き、硬直していた。こうなることを判っていた蛍でさえも、こうして目の前で英霊召喚がなされたと言う事実に驚きを隠せなかった。

 

【ちょっと、待って……あんた私を知らないとか言わないわよね!?】

 

横島の反応が余りにもない事にジャンヌ・オルタは慌て、さっきまでの冷静な態度は消え去り、慌てふためく姿を見せる。その姿に硬直していた横島はやっと目の前の光景を現実として受け入れた。

 

「ジャンヌ……さん?え、嘘?夢?」

 

【夢だけど夢じゃないわよ、夢の続きを見に来たって所かしらね。って言うか好い加減にその間抜け面……「ジャンヌざあああんッ!!!」鼻水ぅぅぅううううッ!?!?】

 

号泣しながら抱きつこうとする横島をジャンヌ・オルタは絶叫しながら片手で受け止める。滝のような涙と鼻水を流し、えぐえぐ言ってる横島を片手で捕まえて、吊り上げているジャンヌ・オルタに蛍が何とも言えない表情を向ける。

 

「あー、なんか久しぶりって言えば良いのかしらね?」

 

【とりあえずハンカチ!ハンカチ貸して!挨拶は後でいいから!】

 

「えうえう……」

 

なんか新種のゆるきゃらみたいになっている横島を見ながら蛍はポシェットからハンカチを取り出す。

 

「はいはい、泣かないの。ほら」

 

蛍が声を掛けながら横島の涙と鼻水を拭う。それでも横島の目から滝のような涙は流れ続けている。

 

「多分ショックと嬉しさで訳が判らなくなっているんだと思うわ」

 

【それは見れば判りますけど、え?なんですか?落ち着くまでずっとこのまま?】

 

「多分」

 

【はぁッ!?何それ!?なんでこんなにぐだぐだなのッ!?もっと、こうあるんじゃないの!?】

 

「あったとしても私がそれをさせないわ」

 

蛍とすれば横島とデートのつもりだったのにそれを攫われたようで面白くないのは当然だ。一瞬きょとんとした様子だがジャンヌオルタはすぐににいっという感じの音がする笑みを浮かべた。

 

【なに、何にも進展してない訳?なにやってるのよ】

 

「いや、それはその……」

 

【へたれー】

 

「うるさーいッ!!」

 

「えうえう……」

 

ゆるキャラのように泣いている横島とそんな横島を挟んで口論をしている蛍とジャンヌオルタ……形容しがたい地獄絵図がそこにはあるのだった……。

 

 

 

 

 

~美神視点~

 

あれほど大量に出現していた悪霊や怨霊の出現がぱたりと止まった。しかもそれだけではなく、霊力の流れも凄まじい勢いで博物館へと向かい始めた。

 

【やっぱりねッ! 英霊召喚の流れよッ!】

 

三蔵が声を上げた。今まで私達は英霊が召喚された後しか見た事がなかった……しかしこうして初めて英霊が召喚される場に立ち会って判る。その存在が善であれ、悪であれ、英霊という存在の力の凄まじさを肌で感じていた。

 

「ぐっく……な、なんですか……これは」

 

「あ、頭が痛いんですジャー……」

 

ピートやタイガーと言った霊的防御がまだ甘い面子が頭を押さえて蹲っている。

 

「唐巣先生ピート達をお願いしますッ!琉璃!ブラドー伯爵、行くわよッ!」

 

「判ってます!」

 

「やれやれだ。想定していた事だが、まさか本当にその通りになるとはな」

 

神卸しのエキスパートの琉璃と、魔術の専門家のブラドー伯爵がいれば、小竜姫様達と協力して最悪の場合は避けれる筈。そう判断して私達も博物館に向かって走る。

 

「周囲の霊力の流れはこっちで整えておく!気をつけてなッ!」

 

「お気をつけて」

 

ドクターカオスとマリアの言葉に手を上げ、私達はそのまま厳かな雰囲気を持つ博物館に足を踏み入れた。パニックになるかもしれないから、博物館の中は早足で進んでいると、先に博物館に突入していたくえすや小竜姫様達を見つけた。

 

「どうして私達を通さないと言うのですか?」

 

「横島様達が中に居られるからですわ。お邪魔するのは私が許しません」

 

マリア7世に足止めされているようでくえすが明らかに苛立っている素振りを見せる。

 

「マリアさん、私達は最悪の場合に備えなければなりません。通してくれませんか?」

 

「危険ならば横島様達も出てくるでしょう?だから大丈夫ですわ」

 

「素人判断は危険だって判らないのかい?」

 

「大丈夫ですよ。私は生まれた時からあの旗を、いえ、あの旗に宿っている魂と触れ合ってきました。横島様に危害を加える事は無いでしょう」

 

うわ……小竜姫様とメドーサ、しかもくえす相手に一歩も引かないとかやっぱりマリア7世は冥華おば様の同類だわ。

 

「どうしても駄目ですか?」

 

「神代さん。はい、駄目です」

 

交渉の余地すらない……なんでこんなに押しが強いのだろうか。

 

「マリア7世、私が誰か判るかな?」

 

「ブラドー伯爵様でしょうか?」

 

「そうだ、何度かマリア姫には便宜を図った筈だ。危険だと判断しなければ我々は何もしない、通してはくれまいか?」

 

そっか、ブラドー伯爵とマリア姫は同じ年代の人物――ブラドー伯爵の事もマリア7世は知っている筈。

 

「う、ううん……判りました。ブラドー伯爵様がそう仰られるのならば」

 

「感謝する、行こう」

 

小竜姫様達でも駄目だったのにブラドー伯爵なら少し悩みながらも了承したマリア7世の前を通りながら、私はマリア7世の評価を改めていた。清楚で可憐に見えるけど、強かで自分が信用している以外の人間は基本的に信用しないタイプの人種だ。しかもなまじ口調が丁寧なので、勘違いしやすいというおまけ付き……この性格なら楽にコントロールできると思い痛い目にあったオカルトGメンや国際GS協会のお偉いさんの姿が容易に想像出来た。

 

【あーもう、泣かないの!ほら私ここにいるでしょう!】

 

「ね、もう泣かないで落ち着いて」

 

「むぅうりいいい……」

 

【横島はメンタル案外脆いからな。落ち着くまでは歩かせるのも無理だな】

 

竜の魔女の旗を飾っていたガラスケースが砕け、その前でへたり込んで泣いている横島君とそれを泣きやませようとしている蛍ちゃんとジャンヌ・オルタ……。

 

「なにこの地獄絵図……」

 

私が考えていた最悪の展開とはまるで違うが、それでも酷すぎる光景に私は思わず天を仰いでしまうのだった……。

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

後処理をドクターカオス、ブラドー伯爵、そして英霊召喚の気配を感じて合流してくれた聖奈さんに頼み、私達はなんとか泣き止んだ横島君を連れてGS協会に来たのはいいんだけど……空気がめちゃくちゃ重かった。

 

【なんでそんなに泣いてるんですか、ほら。もう、目が真っ赤じゃないですか……ほら、水を飲みなさい】

 

「はい、冷たいタオル」

 

「ありがひょ……」

 

泣きすぎて目が真っ赤の横島君に水を飲ませるジャンヌ・オルタと目が真っ赤の横島君の顔を拭う蛍ちゃん。

 

(想像していた光景と違うんだけど……)

 

ジャンヌ・オルタはガープによって存在が反転した英霊。口調は確かに刺々しいんだけど……その言葉の中にどうしても善性というものを感じてしまう。強いて言えば、悪ぶろうとしているお嬢様という感じが抜け切れない。

 

(元が良い人過ぎた?)

 

そもそもジャンヌダルクという人物は100年戦争時代に神の声を聞き、戦争を止める為に動いた女性だ。その結末は魔女としての処刑ではあったが、それでも最後まで恨み言を言う事は無かったと言う。そして死後25年後に復権裁判が行なわれ、正式に聖女として認められた経歴がある。それらを加味するともっとも悪人から程遠い人物を反転させたガープのミスなんじゃないかと思う。

 

【なんですか? 人をジロジロ見て、不躾な】

 

……ただなんだろうなあ、この口の悪さ……くえすにそっくりだわ。

 

「では改めて尋ねますが、貴女はもうガープに組することはない……と言う事でよろしいですね?」

 

【何度言わせればいいんですの?私とガープには何の関係も無い、神は悔い改めて、そして改心しようとする者にあらぬ罪と疑惑を向けるのですか?ああ、なんと恐ろしく傲慢なのでしょうか】

 

ぐっと小竜姫様が唇を噛み締める。この悪意100%の発言を聞いていると、彼女自身は神に対して強い敵意を持っているのは明らかだ。

 

「じゃああれだ。あんたが横島に害を成さないつて言うなら私達も何もしない、その代り横島が危険な時は助けてやって欲しい」

 

【ふん、言われるまでもありませんわね、態々こんな所にまでつれてきて、本当に時間の無駄ですわね】

 

ジャンヌ・オルタは横島君に呼ばれて……いや、横島君がいたからこそ強引に現界したと考えれば横島君に害なす事は無いだろう。本人の言う通り、横島君を守ってくれるのも確実だ。だけど……。

 

(納得行かないわねえ)

 

横島君が全幅の信頼を向けているのが正直イラっとする。そしてジャンヌ・オルタ自身もそれが判っているのは自慢げな表情をしているのが余計に腹立つ……。

 

「……ちっ」

 

【は、なんですか、随分と品の悪い女ですわね】

 

「あ?幽霊風情が何言ってるんですの?」

 

【はッ!その幽霊風情に何も出来ない人間が何を言ってるんですか?】

 

くえすとジャンヌ・オルタの額に青筋が浮かんだ。それを見て、私が胃が痛くなるのを感じたのは言うまでも無い。

 

「【やんのかコラァッ!!!】」

 

沸点低い2人組みだからすぐに臨戦態勢に……なにこの地獄絵図。今この場にいない西条さんに心の中で恨み言を叫びたくなった。

 

「あれ、おかしいなあ。ジャンヌさんとくえすさんって仲良くなれると思ったんだけど……」

 

一触即発の空気の中横島君がのんびりとそんな事を告げた。いやいや、ジャンヌ・オルタとくえすが仲良くなるとか絶対ありえないから、同属嫌悪って一目で判るのになんで仲良くなれると思ったのか不思議でしょうがない。

 

「何で仲良くなれると思ったの?」

 

「え?2人とも黒が好きだし、格好良いからですけど」

 

判断基準ッ!横島君の判断基準がどこか所か、根底からおかしいんだけどッ!!

 

(なんで横島さん、こんな不思議ちゃんになっているんですか?)

 

(ええ、わ、私のせいじゃないですよ。元々横島はド天然です)

 

いや、ド天然にも程がある。明らかに同属嫌悪し合ってる2人が仲良くなれると判断している段階で問題しかない。

 

「ちっ、横島に免じてここは引き下がってあげますわ」

 

【はいはいどーも、ありがとうございますぅッ!】

 

だけど横島君の発現に毒気が抜けたのか、一時は互いに身を引いてくれた。だけどこれから不安でしかないんだけど、絶対くえすとジャンヌ・オルタが揃うと揉め事になる結末しか見えない。

 

「えっと話が終わったなら帰っても良いですか?」

 

「え、あーそうね、横島君と蛍ちゃんは帰っても良いわよ」

 

本当はここにいて話を聞いていて欲しいんだけど、横島君の集中力とか限界そうだし、帰っても良いわよと返事を返す。

 

「良かった、じゃあジャンヌさんも行きましょうか」

 

「「「はい?」」」

 

普通にジャンヌ・オルタを連れて行こうとする横島君に一瞬何を言っているのか、私達には理解出来なかった。

 

「えーっとやっぱり?」

 

「ジャンヌさんだって慣れてる顔の方が過ごしやすいだろうし、空き部屋はあるから俺の家で良いと思うんだけど、それに眼魂もあるし」

 

……あ、引き取る気満々ってことね……本当はもう少し警戒態勢とかを強めて監視したかったんだけど、ここで駄目だって言うと横島君の反感をかいそうだし、ここは横島君の好きにさせるしかないみたいね。

 

【ま、私はどこでもいいですけど、横島の所にお世話になるとしましょうかね】

 

「……じゃ、その私、着いて行きますね」

 

勝ち誇った顔をくえすに向けて笑うジャンヌ・オルタと疲れた表情をしている蛍ちゃん。

 

「大丈夫? 疲れてるのか蛍」

 

「ううん、大丈夫。大丈夫よ」

 

そして良く判っていない様子の横島君の3人が部屋を出て行き、くえすも無言でそれこそ視線だけで人を殺せる顔をして部屋を出て行った。

 

「凄く地獄絵図なんですけど」

 

「……そうね、私も胃が痛いわ……」

 

「最悪の展開は避けれたんですよね?」

 

「いや、これ絶対最悪の展開だと思うよ私は、勿論別の意味で」

 

修羅場という意味で最悪の展開になっている事に私達は深い溜め息を吐くのだった。と言うか横島君が引っ掛ける女の子の癖が強すぎるんだけど……。

 

「琉璃、自分は違うって思ってると思うけど、貴女も大概だからね?」

 

「え。そんな訳……え?私くえすとかと同類?」

 

うんうんと頷いている小竜姫様とメドーサさんを見て、思わず泣きたくなってしまったのは……多分これからの不安しかない毎日の事を思ってからで、決してくえすの同類と思われているのが悲しかったからではない……と私はそう思いたいのだった……。

 

 

 

リポート2 竜の魔女リターンズ その4へ続く

 

 




今回はジャンヌ・オルタ召喚とそれに伴い、ジャンヌ・オルタにかまいたくてしょうがない横島という図式になりました。次回は横島家に迎え入れられたジャンヌ・オルタとか、不機嫌なくえすとかを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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