GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その8

リポート9 悪意 その8

 

~蘆屋視点~

 

拙僧の予想した通り横島は人造神魔を仲間に加えていた。拙僧に関する記憶を失い、拙僧を敵と認識しているであろう追われてここまで逃げてきた科学者達の狼狽具合を想像すると思わず笑みが零れる。

 

(ふふふふ、横島相手に幼子、しかも少女を向ける段階で愚かなのですよ)

 

拙僧は元が人間なので余り効果はないですが、横島に対して好意的な感情を抱いている自分がおり、人外に好かれるという才能だけでもかなり脅威であると改めて実感しましたな。

 

「蘆屋。なんでお前がここに居るんだ」

 

「ンンン、我々の仲間も囚われておりまして、それを助けに来たのですよ。なんせ我々は敗残兵の集まり、仲間を大事にしているのですからね」

 

正確には拙僧達の情報を喋られては困るので回収に来たのですが、助けに来たとは十分に言えるはずだ。それに態々顔を見せたのも拙僧が負ける訳が無いと言う自負があったからでもある。怪訝そうな顔で拙僧を見つめている横島とその背中に浮かびながら抱きついている人造神魔とグーラーと数の上では拙僧が圧倒的に不利ではありますが……実力で言えば3人いたとしても拙僧の足元にも届かないという事は横島達も分かっている筈だ。だからこそ拙僧を警戒しつつも戦闘に入ろうとはせず、拙僧の言葉を信じて良いのか考えている素振りを見せている。

 

【良いだろう、蘆屋。ここはお前の申し入れを聞き入れるとしよう】

 

「分かっていただけで何より。では拙僧の持っている情報ですが、ここの研究者達は女のGS、精霊、神魔に薬を投与しその意志を奪って海外の政治家などに売り捌いておりました」

 

拙僧の言葉に横島の眉がピクリと動き、拳を強く握り締める。奥歯を噛み締める音が響くが横島は感情的にはならず、視線で話を続けろと促してくる。

 

「美神令子達に同行している神宮寺くえす。彼女は優秀な魔女ですから、ここの研究者達の安っぽい媚毒は全て無力化されており彼女達は無事でございます、良かったですな」

 

【お前は人の神経を逆撫でして楽しいのか?】

 

「ンンン、滅相もない。拙僧はただ貴方達を安心させたかっただけで他意はございませんとも」

 

不安を煽り、横島の中の狂神石を活性化させようとはしましたが……心眼という使い魔は思った以上に冷静ですな。まぁそうは言いつつも、この程度で怒りに呑まれて狂神石の力に取り込まれるのは拙僧としても興醒め、抗ってくれて良かったと言えますな。

 

「媚薬や毒が効かないようなので正攻法……つまりここの研究者達は自分達が開発した霊的兵器を持ち出して倒してから捕らえるつもりのようなので早く合流出来るように拙僧もご協力いたしましょう、さぁ参りましょう」

 

拙僧の今回の目的は横島に人間への不信感を植え付けること――惑わすのは程ほどにして先を急ぎましょうと声を掛ける。すると横島は拙僧に向けて手を差し出してくる。

 

「握手ですかな?」

 

「アホ、お前の札寄越せって言ってるんや、陰陽師に札を持たしておくアホがおるか」

 

気が立っているのだろう、大阪弁で捲くし立てるように言う横島に拙僧は苦笑しつつ、着物の内側から札を取り出して横島の手の上に乗せる。すると横島は剣指を振るい、札に内包されていた霊力を全て霧散させてから再び拙僧に差し出してくる。

 

(また腕を上げておりますな……)

 

陰陽師としてのレベルはあの病院で退治した時よりも格段に上がっておりますな……陰陽師と名前だけの陰陽寮の人間とは文字通り格が違うと言った所ですな。

 

「返したるわ」

 

「ええ。どうも、やれやれ、これでは大掛かりな術は使えませんなあ」

 

「お前の大掛かりな術なんて呪殺やろが、んなもんつかわんでいい」

 

「まぁその通りですけどね、では改めてまいりましょうか、カードキーが無くて先に進めなくて困っていたのですよ」

 

横島達を拙僧が立ち往生していた通路の前まで案内する。魔界産の金属で拙僧の術でも打撃でも壊せなかった扉を横島に見せる。

 

「……お前実は頭悪いんじゃないか?」

 

「ンンンッ!否定は出来ませんなッ!!」

 

ベコベコに凹んでいる扉と拙僧の拳の跡がくっきりと刻まれながらも崩壊する予兆すらない通路と、八つ当たり染みた破壊の跡を見て、拙僧が馬鹿じゃないかという横島の言葉を否定出来ない拙僧は苦笑いを浮かべながら道を譲り、横島に扉を開ける用に促しながら着物の中で剣指を振る。

 

(今の横島の力量をしっかりと見極めるとしましょうか)

 

扉の向こうには拙僧が捕獲し、研究者に渡した魔界の獣がいる。それらを捕らえている折を遠隔で解き放ち、眼魂なしの横島の実力がいかほどな物かそれを目の当たりにする事が出来る事に内心ほくそ笑みながら、ゆっくりと開かれる電子ロックの扉の先に視線を向けるのだった……。

 

 

 

 

 

 

~蛍視点~

 

霊能犯罪の中で最も重罪である魔界の植物の日本での栽培――その証拠を掴む為、そして媚薬の解毒剤を入手する為にくえすの先導で暗い通路を進んでいた私達だが、出現する敵の余りのバリエーションの多さには呆れを通り越してむしろ感心までし始めていた。

 

「中に武器を仕込んだゴーレムですか……図体の割には随分と精巧に作られていますわね」

 

両腕のマシンガンに頭部のミサイルと武装の数が実に豊富だ。それに身体も恐らく魔界の金属や鉱物で構成されているだろうから……攻撃力と防御力も恐らく段違いだろう……通路の影に身を潜めながらくえすが私達の進路を塞いでいるゴーレムを見ながら、淡々とした様子で総評を口にする。

 

「あ、あのおッ!こんなにのんびりしていていいんですかあッ!?」

 

おキヌさんが頭を抱え悲鳴をあげながらのんびりしていて良いのかと半泣きで叫ぶ。

 

「別にのんびりしてるわけじゃないわよ、おキヌちゃん。蛍ちゃん、見つかった?」

 

「いえ……駄目ですね」

 

ゴーレムと言うのは元々ユダヤ教に伝わる生きている泥人形で交霊術と召喚術、そして人形操作などの複数の術によって作り出される非常に高性能な使い魔と言え、正直真っ向から戦えば疲弊は必須、そして銃火器を装備しているので冗談抜きで死んでしまう可能生がある。極めて厄介な敵ではあると言える。だがその反面弱点も明白で、身体のどこかにヘブライ語で「EMETH(真理)」と刻まれているので、Eの文字を消して「METH(死)」にしてしまえば簡単に退治する事が出来る……筈なんだけど文字がどこにも見えない。

 

「多分あれね、腰蓑の下」

 

「……ですよね~」

 

女である私達が抵抗を持つであろう場所に文字を刻んだという所だろうが……正直相手は石像で確かに抵抗が無いと言えば嘘にはなるけど……。

 

「そんなので躊躇う馬鹿はいませんわ」

 

銃声が響いてゴーレムが股間を両手で押さえて蹲る姿に思わずうわあと呟いた。とは言えこれは大きなチャンスである事に変わりはない。

 

「今の内に倒すんですか?」

 

「倒すなんて勿体無い事はしないわよ。ゴーレムの言葉の意味は胎児――つまりは赤ちゃんと同意儀なのよッ!ゴーレム!あんたの主人は私たちよッ!私達に従いなさいッ!!!」

 

美神さんが霊力を込めた言葉でゴーレムに言葉を投げかける。するとゴーレムはその目を真紅から緑へ変え、私達の前に膝を付いて頭を下げる。

 

「え、え?なんでゴーレムが言う事を聞いて」

 

「文字を削られて存在が揺らいだからよ、それと霊能をかじった程度の研究者がプロを舐めるなって所よ。さ、ゴーレム。私達を守りながら進みなさい」

 

美神さんの命令に頷き地響きを立てながら歩き出すゴーレムの後を進む。予想通りと言うか、なんというか今まで戦ってきたGIジョーに軍人の魂を憑依させた物をゴーレムは踏み潰しながら進み、私達は死んでもなおこんな形で生かされている軍人の魂を成仏させた後にその人形を持ち上げ中身を確認すると予想通り人間の骨が埋め込まれていた……恐らく憑依させられていた軍人の骨だと思うが、まさかここまで邪悪な事が出来るのかと思わず言葉を失った。

 

「ここまでしますか……人間の方がよっぽど悪魔らしいとさえ思ってしまいますわね」

 

「確かにね……最悪は想定していたけど、それを上回る最悪具合よ」

 

女のGSや神魔を売り払い、人間の身体を切り刻み人形に埋め込んで魂を憑依させる……まともな人間なら到底出来ない悪魔の所業と言える。

 

「……こんな事をどうして平然と出来るんですか……」

 

「簡単ですわ。人間は悪魔よりも恐ろしいからです」

 

おキヌさんの言葉にくえすは平然とそう言う。悪魔より人間が恐ろしい……それを否定する事は今の私達には出来なかった。考えられる悪辣が全て行なわれているこの地下施設、そしてそれを楽しんでさえいるであろう研究者達……その魂は間違いなく人間ではなく悪魔の物であると言えるかもしれない……ゴーレムが破壊したことで進めるようになった通路の先を見て、ほんの僅かでも残っていた擁護の気持ちは完全に消し飛ぶ事になった。

 

「……これもしかして……」

 

「ええ。間違いないですわね、どうやって人形に魂を憑依させているのかと思いましたが……これを見れば分かりますわ、無理矢理肉体から魂を引き剥がしていたのですね……」

 

血液でかかれた魔法陣――その中には人型の器具がおかれており、その中は血と肉片で汚れている。なんらかの邪法で生きている人間の魂を引き剥がし、そしてその人間の骨を埋め込んだ人形に剥がした魂を憑依させる。

 

「おキヌちゃん、ゴーレムを残していくからネクロマンサーの笛を吹いてくれるかしら?ここで死んでしまった人たちを弔う為に」

 

「美神さん達は大丈夫なんですか?」

 

「私達は大丈夫よ、くえすもいるし、私もプロだから心配はないわ。ゴーレム、おキヌちゃんを守るのよ」

 

美神さんの命令に唸り声を上げて頷くゴーレムをその場に残し、背後から響いて来るネクロマンサーの笛の音色を聞きながら、魔法陣の先の部屋へ続く通路へと足を向ける。

 

「うっ……」

 

「かなりきついわねこれ」

 

通路の奥の部屋から漂って繰る腐った果実のような甘ったるい香り――それは幾度と無く嗅いで来た媚薬ガスの香りに間違いなかった。おキヌさんをあの部屋に残したのは魂を成仏させてもらうのもあったが、この先の光景を見せるのを躊躇ったからだろう。

 

「蛍ちゃんも引き返してくれてもいいわよ?」

 

「大丈夫です。覚悟はしていますから」

 

「まぁこんなので心を折るくらいならGSは諦めたほうがいいですわ、そうなったら横島は私が引き取って上げますわよ?」

 

「冗談きついわね、私は横島と一緒にGSになるの、だからこんな所でくじけるつもりはないわ」

 

くえすの冗談――冗談よね?それに反論しつつ、最後の扉を開ける。研究区画の最深部……それはこの屋敷の生命線であり、大事な資金源。

 

「あ……あああ……」

 

魔界の植物から伸びた触手に頭を貫かれ、脳を養分として吸われているのだろう。時折痙攣しつつ意味の無い呻き声を上げている無数のGS達――下腹部が植物の幹に取り込まれているが、成人女性としても明らかに小さい身体は恐らく手足を切り落とされ達磨上にされた上で魔界の植物の養分として埋め込まれているのだろう……。

 

「……眠らせてあげましょう」

 

「はい」

 

「出来るだけ苦しまないように、逝かせてあげますわ」

 

声こそ漏らしているがもうこの人達は死んでいる、それなのに生かされている。私達はそっと樹に近づき、手を合わせてから火を放つ……苦しみ悶える樹木の断末魔が響くが、樹に取り込まれた人達は驚くほど安らかな顔で白い炎の中へと呑まれていく……。

 

「くえす、こんなこと出来たんだ」

 

「別に普段やらないだけで出来ないわけではないですわよ……後は」

 

ごきりとくえすが拳を鳴らすと、電子ロックで封鎖されていた扉が開き、消化器を持った白衣姿の男達が雪崩れ込んでくる。私達は冷めた目で男達を睨みつけ、消化器を投げ捨て逃げようとした男達に向かって飛びかかる。こいつらを全員捕まえて霊防省との繋がりや背後関係を全て明らかにさせる。そうでなければここで死んで行った人達が報われない……絶対にこいつらを許さない。神通棍を手に逃げ惑う研究者達を追って走り出すのだった……。

 

 

 

 

 

~横島視点~

 

飛びかかって来た6つ足の巨大な蜘蛛のような身体に龍の頭部を持つ化け物を霊波刀で両断し、塵となって消えていく化け物の屍骸を前に俺は荒い息を整えていた。電子ロックの先は広場のようになっていて、通路の先から化け物や悪魔が凄まじい勢いで雪崩れ込んで来た。それからずっと戦いっぱなし、しかも初見の化け物だらけで気を休める時間も無い。

 

「はぁはぁ……くそッ!!」

 

【跳べ横島ッ!】

 

息を整える間もなく心眼の跳べという言葉に飛びあがると、凄まじい勢いで尾が通過する。着地し、栄光の手と霊波刀を構えながら強襲を仕掛けてきた化け物に視線を向ける。

 

「キシャアアア」

 

「……キメラって奴か」

 

複数の動物の身体を持つ異形の化け物を見てキメラの一種だと思うが、人の手足などが混ざっていて吐き気がする。

 

「ミィちゃんは大丈夫か!」

 

「……大丈夫ですのよ?」

 

「こいつ本当に強いよ、横島。あんたは目の前の敵に集中しなッ!」

 

ミィちゃんとグーラーさんも戦っている。出来れば助けに行きたいのだが、化け物の波状攻撃が止まる気配は無く大丈夫かと声を掛けると大丈夫という返事が返ってくるので、その言葉を信じ、俺は自分自身の戦いに集中するしかない。

 

「グルオオオオオッ!!」

 

「なろおッ!うおらぁッ!!」

 

キメラの爪を霊波刀で弾き、そのまま回し蹴りで顎をかち上げる。人間相手ならばこれで脳震盪でも起すだろうが……キメラは少しふらつくに留まる、だがその隙に札を取り出す事が出来たのでそれをキメラに向かって札を投げ付けてその巨体を弾き飛ばす。

 

「くそッ!まだ来るかッ!おいッ!本当にお前じゃないんだよな、蘆屋」

 

陰陽術で吹き飛んだキメラは痙攣すると悶えながら消滅したが、別のキメラが暗がりから飛び出してくる。人間の胴体と頭部をベースに手足は動物と昆虫の物に置き換わっており、その姿は夏子や銀ちゃんを襲っていた病院の化け物に酷似しており、キメラの爪を霊波刀で弾きながら蘆屋へと声を掛ける。

 

「ええ、拙僧ではございませんよ?こんな趣味の悪い継ぎ接ぎは作りませぬ、拙僧ならもっと良い姿で作りますとも」

 

生き物の手足を繋ぎ合わせ化け物を作っている段階でまともではないと思うが……緋立病院のはもっと姿に共通性が合った……様な気がするので、蘆屋は嘘は言ってないのかもしれない。

 

(格闘も人並み以上に出来るな、こいつ)

 

陰陽札は全て無力化したので、もしかしたらこの研究所の化け物が蘆屋にダメージを与えてくれないかと正直期待していたのだが、その期待は呆気なく崩れ去った。

 

「そらッ!!」

 

強烈な踏み込み音と共に拳が突き出され、化け物の胴体に風穴が開いた。蹴りを叩き込めば、爪先からカマイタチが発生し悪魔をバラバラに引き裂いた。術さえ無力化すれば勝機はあるかも知れないと思ったが……それは余りにも都合が良すぎたようだ。今は蘆屋は協力してくれているので倒す事よりもこの場を切り抜けることに集中しようと考えを切り替え化け物の胴体に蹴りを入れると同時に霊波刀を栄光の手へと変えて突き出す。

 

「伸びろぉーッ!!!」

 

突き出した手の形のまま巨大化しながら伸びた栄光の手は化け物を張り手の要領で吹き飛ばす。ほんの少しだけ波状攻撃が緩まったその瞬間にポケットに手を突っ込み、本当に危なくなったら使えと言われていた精霊石を前方に向かって投げる。

 

「急急如意令ッ!精霊石よッ!悪意を阻む壁となれッ!!」

 

精霊石だけでは防ぎきれないかもしれないと不安に思い、陰陽札も投げ付け印を結んで精霊石の力を増幅させる。乾いた音と共に現れた霊力の壁は通路を2つ塞ぎ、キメラ達の広場への侵入を俺が思ったとおりに防いでくれた。

 

「お見事、いやいや中々やりますなあ」

 

「お前に褒められても嬉しくもなんともないわ」

 

蘆屋が手を叩きながら俺を褒めるが、全く持って嬉しくない上に皮肉にしか聞こえない。

 

「ミィちゃん。だい……じょ?」

 

やっと振り返る余裕が出来てミィちゃんとグーラーさんの方を振り返り……俺の言葉は尻すぼみに小さくなっていった……。

 

「……ふふふ、優しく致しますのよ?」

 

「ぐ、グギャアアアア!?!?」

 

掌から生えてきた日本刀でキメラを壁に拘束し、短いヤクザ映画で出てくるドスのような物でぐりぐりと抉ってる姿を見て正直ひえってなった。頬に血が付いているのも下手なホラーより怖い光景だった。

 

「こいつめっちゃ強いけど、めちゃくちゃ残忍だわ」

 

「……敵は殺しますの」

 

「もう終わったから、落ち着いて。ほら顔に血がついてる」

 

「……ありがとうございますの」

 

それでも俺はミィちゃんに脅える事無く、ハンカチで頬に付いた血を拭ってあげると嬉しそうに微笑む。その姿を見てミィちゃん自身が決して悪い存在ではないのだと思った。ただちょっとあれだ、育っていた環境が悪かっただけっぽいので、ちゃんと面倒を見てあげれば素直な性格をしているのできっと優しい子になってくれると俺は信じている。

 

「微笑ましいので見ていて悪い気持ちにはならないのですが……あの通路から何か進入してきますが?」

 

蘆屋の言葉に振り返ると精霊石と陰陽術で作り上げた結界とは別方向の通路から凄まじい轟音が響いてきて、思わず身構えたのだが暗がりから出てきたのは見慣れた小柄で愛嬌たっぷりの姿姿。

 

「みむ?みむううううーーッ!!」

 

「ぷぎいッ!!」

 

「うきゅーんッ!!!」

 

【ノーブウーーーッ!!!】

 

「チビ、モグラちゃん、うりぼー、チビノブッ!!」

 

この屋敷の中に入ってから逸れていたチビ達の姿を見て、駆け出しかけたのだが……足を止めてしまった。なぜならば……

 

「みー」

 

「みむうー」

 

「みいー」

 

「みぐー」

 

物凄く沢山のグレムリンの赤ちゃん達が分身うりぼーの上に座って現れて、流石の俺も困惑し足を止めてしまい。俺に会えて嬉しかったのか突撃して来たチビ達に反応しきれず、俺は押し潰されるように広場の床に倒されるのだった……。

 

 

 

~ミィ視点~

 

通路から現れて横島に突撃して来たグレムリン達を見て敵かと一瞬思いましたのですが……敵意は無く、横島を押し倒すと嬉しそうに頭をこすり付けて鳴声を上げている。

 

「良かった良かった、心配してたんだぞ」

 

「みむう!」

 

特にグレムリンとは思えないほどに強い力を秘めているグレムリンが横島の頬に身体をこすり付けている姿を見て、私は手をぽんと叩きましたの。

 

「……横島の使い魔ですの?」

 

【ノブ?】

 

「……いや、これ使い魔?」

 

横島に懐いていると言う事は使い魔だと思うのですが……良く判らない者が多い……得にこの子供の落書きみたいなのは良く判りませんの……。

 

「そうそう、俺の使い魔って言うか家族かな、この子がチビ」

 

「みむう!」

 

ぴこぴこと手を振るグレムリンに手を振り返すと、にぱっと牙を出して笑みを浮かべてくれるチビ。

 

「……まぁ、愛想がいいですの」

 

「確かにかなり人懐っこい感じだね」

 

グレムリンは弱い悪魔なので警戒心が強いはずですが……とても愛想が良くて可愛らしい。

 

「モグラちゃん。大きくなったり、龍になったりする」

 

「……まぁ、それは凄いですの」

 

「待って、モグラのモグラちゃんっていうのかい?」

 

「そうですけど?」

 

「うきゅー?」

 

それがどうしたのか?と首を傾げる横島とモグラちゃん。グーラーはえって顔をしてますけど……モグラちゃんって名前凄く可愛いと思います。

 

「……私は可愛いと思いますのよ?」

 

「だよな。モグラちゃん可愛いよな?」

 

後で蘆屋がそういうことではないのですがとぼやいている声が聞こえますが……可愛いって言うのは間違いないことだと思いますの……。

 

「んで、うりぼー。見たら分かるけど増えて大きくなる」

 

「ぷぎいー」

 

「……もふもふですの」

 

「そうそううりぼーはモフモフで抱き枕にすると気持ち良いんだよ。はい、ミィちゃん」

 

一匹増えたうりぼーを横島が差し出してくるのでそれを抱き締める。

 

「ぷぎー」

 

「……可愛いですの」

 

「グーラーさんも抱っこします?」

 

「いや、あたしは良いよ」

 

こんなに可愛いのに……抱き抱えたままうりぼーの頭をなでるとぷぎーと鳴きながら頭を摺り寄せてくるので私も頭を撫でて可愛い可愛いと頭を撫でる。

 

「英霊の分身のチビノブ。この子も増えるし、大きくなるよ」

 

「横島、あんたの使い魔は増えるのが基本なのかい?」

 

「どうなんでしょ?俺も良く判らないですね」

 

「……増えると一杯モフモフ出来るので私は良いと思いますの」

 

可愛いのは沢山いても何の問題もないので抱き抱えたままモフモフと撫で回す。

 

「所で横島」

 

「なんだよ、蘆屋」

 

「何か持ってますぞ?」

 

蘆屋がそう言いながらチビノブを指差すと赤色の鮮やかな卵を抱き抱えていた。

 

「何これ?」

 

【ノブウ!】

 

「俺に?」

 

チビノブがその卵を頭上に掲げ横島に差し出す。それを横島が受け取ろうとするとチビノブは卵を横島から遠ざける。

 

「チビノブ?」

 

「……何がしたいんでしょう?」

 

差し出したのにと思って見ているとうりぼーが水の入った鍋を引き摺ってきて、モグラちゃんが火を吐いて……。

 

【ノ、ノーブッ!!!】

 

「まてえいッ!!!」

 

湯だったお湯の中に卵を投げ入れようとするのを見て、横島が慌てて卵をチビノブから取り上げる。

 

【ノブ?】

 

「みむーう?」

 

「うきゅ?」

 

「ぷぎゅー?」

 

食べないの?と言わんばかりに首を傾げるチビ達に横島は慌てた様子で卵を抱き抱える。

 

「大丈夫大丈夫! 俺お腹空いてないからッ!」

 

お腹空いてないから卵を湯でなくて良いと横島が言うと腕の中の卵が小刻みに震え始めた……これはもしかして。

 

「孵化しそうじゃない?」

 

「……孵化ですの」

 

「孵化ですな」

 

「ええ!?孵化、何、何が孵化するんだ!?し、心眼!?」

 

【神通力を発しているからな、神獣の類だろう、大丈夫だ。問題ない】

 

「いや、俺琉璃さんと美神さんに怒られ「ぴーッ!!」……孵化しちゃったよ……って火ぃッ!?あ、あれ熱くない」

 

孵化したと同時に火柱が上がり、横島が悲鳴を上げるがその火が自分を焼かない事に気付き、呆然とした様子で呟いた。

 

「温かいねぇ……癒されるようだよ」

 

「……本当ですの」

 

その温かさは私とグーラーにも広がり、その心地よさに思わず目を細める。

 

「あっつうッ!拙僧めちゃくちゃ熱いのですがッ!?」

 

ただ蘆屋だけは炎に焼かれて、熱い熱いとわめいていますが……きっとあれですね、敵だと認定されているのでしょう。

 

「ぴー♪」

 

そして炎が消えると鮮やかな赤と金の身体をした雛が横島の手の中で楽しそうに鳴いている。

 

「みむー」

 

「みー」

 

「みぐー」

 

「ぷぎー♪」

 

「うきゅー」

 

【ノブノブー♪】

 

孵化したのを喜び、チビ達が横島の回りを踊り、その外を沢山のグレムリン達がややぎこちない動きで踊っている。

 

「……可愛いですの」

 

「え?いやまぁ……あんたも大概だね」

 

「何かの儀式のようにも見えますなあ」

 

横島が雛を顔の前に掲げ、その回りを無数の小動物が踊る。可愛らしくて見ていると穏やかな気持ちになりますが……確かに儀式に見えなくも無いですの。

 

「横島君、それに蘆屋ッ!?どういう状況なのッ!」

 

「横島無事……え、えっとそれはどういう状況なの」

 

「……とりあえず蘆屋は殺せばいいですね?」

 

「……あ、思い出した」

 

他に4人の女性が広場に駆け込んできて、横島を見て困惑し、横島も私もグーラーも困惑する。

 

「ンンン、地獄絵図とは正にこのことですなッ!【やかましい】ふぐおうッ!?」

 

ただ1人蘆屋が馬鹿笑いをし、心眼の額から発射された霊波砲で吹っ飛ばされるのを見て、私はうるさかったので天罰が下ったのだと内心笑いながら横島の名前を呼んだ女達に向き直り頭を下げる。

 

「……初めましてミィと申しますの」

 

微笑みながら頭を下げ横島がくれた私の名前を胸を張って告げる。何も無い私が誇れるただ1つの物――それが横島がくれたミィと言う名前なのだった……。

 

 

 

リポート9 悪意 その9へ続く

 

 




この屋敷で横島が手に入れたもの、ミィ(人造神魔)何かの雛となります。後は全体的に人類側にヘイトが集まる事になりましたね。
次回はボス登場から倒す所まで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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