GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート9 悪意 その9
~美神視点~
媚毒の原材料を見つけ、そして即席だが作り出した解毒薬と、国際GS協会、オカルトGメン、日本、海外含めてのこの屋敷から女性のGSや神魔を買っていた政治家の名簿も手にし、横島君と合流する為に只管に人造悪魔やガーゴイル、ゴーレムを倒し、やっと横島君を見つけた私達の目の前に広がったのは想像を絶する光景だった。
「ぴーぴーッ♪」
桁違いの神通力を放っている雛鳥を手の上に乗せ、困惑した表情を浮かべている横島君。それ自体はまだ良い、横島君が人外に懐かれるのはいつもの事だし、しょうがない事だと思う事にしている。本当は駄目なんだけど、もうどうしようもないので受け入れるしかないと思っているのだが……。
(誰?)
青い髪に真紅の瞳、そして目の下に涙マークのタトゥーの入った横島君のGジャンを着ている幼女はとんでもない神通力と魔力を有していた。そしてその隣にはアラビアンナイトにでてくるような服装をした褐色の肌の女性の姿をした精霊――恐らくグーラーの姿がある。
「みーむー♪」
「ぷーぎゅー♪」
【ノーブーノー♪】
「うっきゅっきゅー♪」
「みむー」
「みー」
「みぐー」
「みぎ?」
そして横島君の周りで輪になって踊るチビ達とその外周を踊っているグレムリンの幼生の群れと、火達磨になって転がりまわっている蘆屋――状況がまるで理解出来ない。
「あ、美神さんッ!蛍におキヌちゃん!くえすさんも皆無事だったんですねッ!」
私達に気付いて安堵した表情を浮かべ近づいてくる横島君とその後を分身したうりぼーを抱き抱えたまま少女が着いて来る。
「……初めましてミィと申しますの」
にぱっと笑みを浮かべて頭を下げてくる少女に私も頭を軽く下げる。
「横島。一体何があったのよ……なんで蘆屋が一緒にいるの?それにその女の子は?」
「あーうん、説明したら多分凄く長くなると思うんだけど……グーラーさんと、えっと人造神魔のミィちゃん。それと蘆屋はなんか捕まってる仲間を助けに来たとかでさっき無理矢理付いてきて「ぴーぴーッ!!!」この雛はさっきチビノブが持ってきてゆで卵にしようとしてたのが孵化して、グレムリンの群れは俺も良く判らない……チビについてきたと思うんだけど……」
「みむ?」
何?と言わんばかりに首を傾げているチビだけど、その反応は私達がするべきものだと思う。
「また拾って来たというわけですか」
「……駄目ですか?」
「駄目じゃないですわよ。もう、しょうがないですわね」
しょうがないのはお前だ、くえす。なんで厳しい事を言おうとしていて、横島君に言われるだけで掌を返すのよ……惚れた弱みとは言うかもしれないけど、余りにも弱すぎるでしょうに……。
「えっとミィちゃん?なんで横島さんの服を着てるんですか?」
「……私の生き様が駄目だと言うのですの」
ミィちゃんがGジャンの前を空けると、脇が丸出しのノースリーブ、しかも極端に短い、その上スカートは半透明で黒いアダルトな下着が丸見えだ。幼い少女らしからぬその服装は一部の性癖の人間の欲求は掻き立てるだろう……だけど私が眉を細めたのは彼女の全身から放たれている魔力と血液の名残の方だった。
(美神さん……この子も)
(間違いないわね)
人造神魔と言っていたから多分紫ちゃんの同類、紫ちゃんは自分の能力で逃走したけど、ミィちゃんは逃走できず、ここの研究者の言う通りに育ち、多分横島君を殺しに来て、横島君は言わなかったけど、この広場にいる魔物の屍骸の中には鋭利な霊刀で切り裂かされた死体が多く転がっており、それをやったのは間違いなくミィちゃんなのだろう。幼い少女とは思えない戦闘能力、そして情欲を掻き立てるであろう服装――人造神魔として出荷し、霊的兵器、そして性処理の道具として作り出されたであろう少女の姿に思わず拳を強く握り締めた。
「風邪引くからちゃんと前を閉じて……ほら」
「……はいですの」
横島君がしゃがみこんでGジャンのボタンを閉じ、頭を撫でながら私達に視線を向ける。その視線は深く触れないで欲しいと物語っており、私達もすぐに頷いた。
「それでグーラー。貴女は?」
「霊力とかを全部封じられてね、慰み者にされる寸前で横島に助けられて付いて来たのさ。悪いけどあたしは戦力にはならないよ」
さばさばとした口調で言うグーラーを見てくえすと蛍ちゃんは納得したような表情を浮かべる。横島君には同行しているけどそれだけと言う事なのだろう。
「可愛いですね」
「みぎッ!!」
「……おキヌちゃん、野生動物には簡単に手を向けないほうがいいわ」
「……はい……ぐす……」
赤ちゃんのグレムリンならもしかして懐いてくれるのではないかと思ったのだろう、おキヌちゃんが手を出して手を弾かれている。結構痛かったのか目に涙が滲んでいるが……横島君が特別なのであって、普通の人間には魔物や魔獣が懐かないという事をおキヌちゃんはもっとしっかりと覚えておく必要があるだろう。
「それで、蘆屋。なんで貴方が横島に協力しているのですか?貴方はガープの手下の筈。助ける道理はないはずでしょう?」
「ンンンンーまぁそう言われれば違うとはいえませんな、ですが貴女達はこの屋敷を見てどう思いましたか?拙僧よりも悪党の人間を見て何を思いましたかな?」
にやにやと楽しそうに笑う蘆屋の姿に私達は言葉に詰まる。ガープ達よりも悪辣な事をしていたのは神魔でも、精霊でも無く私達と同じ人間――その事実に私達は反論する術を失ってしまうのだった……。
~蘆屋視点~
拙僧の言葉に咄嗟に反論出来なかった美神達を見て、拙僧は今回の仕込みは十分に成果を発揮したという事を確信した。
「拙僧はただ囚われた仲間を助けに着ただけであり、そこに他意はございませんし、同じ目的を持つ横島を助けたいと思ったのも嘘ではございませぬぞ?確かに拙僧と貴女達は敵、それは変えようのない事実ではありますが……それでも同じ目的がある以上は味方と思っていただきたいものですな」
「戯言を」
銃口を拙僧に向ける神宮寺を見て、拙僧は思わず失笑した。
「何がおかしい、私が撃てないとでも?」
「ンンンッ!そんな玩具で拙僧を殺せると本気でお思いですか?貴女の魔法ならば拙僧に手傷を与える事は可能でしょうが……銃を持ち出した段階で悩んでいると言うところでしょう?」
神宮寺くえすの魔法ともなれば拙僧もそれなりの備えが必要だ。だが銃を持ち出した段階で攻撃をする意図が無いと言うのは明白、なんせ銃を構える間に魔法を使えるのだから、態々銃を向ける必要なんて最初から無いのだ。
「チッ」
苛立った様子で舌打ちし、銃を懐に戻す神宮寺を見つめながら服に付いた埃を払って拙僧はゆっくりと立ち上がり、横島の手の中の雛に視線を向けてにんまりと笑った。
(クックク……これは面白い)
何度も復元を試みて失敗を続けていたガルーダの複製――翼を持たぬガルーダもどきがいつくも生まれていたが、横島の手の中のガルーダには鮮やかな金と紅の翼がある。それは紛れも無く本物である証――宗教によってグルルと言う魔鳥に貶められた存在ではなく、正真正銘の神鳥ガルーダの雛である。正直神魔の中でも最上級の存在ではあるガルーダが人間の手に渡るのは拙僧としても思う所はありますが刷り込みで横島を親と認識しているようなので無理に引き離すのは良くないというよりも出来ない。
(ンンン、流石ガルーダと言った所ですな)
着物の下の火傷のダメージはまったくと言って良いほどに回復していない、外法によって限りなく不死に近い肉体を持っている拙僧でも流石に神魔にダメージを与える炎を好き好んで浴びる趣味はないのであのガルーダの雛は横島に差し上げることにしますかね。
「横島、本当?協力してくれたの?」
「怪しいのは確かだし、信用は出来ないけど……一緒に戦ってくれたのは本当だ」
「ンンン、拙僧嘘は付きませぬぞ?」
協力すると口にした以上、それを違えるつもりはないと言うと美神が自分の後ろにゴーレムを控えさせ、拙僧に鋭い視線を向ける。
「じゃあ聞くわ、ここの研究者達に神魔を捕獲する術を与えて、魔界の植物の種を渡したのはお前じゃないの?」
「疑われるのは当然ですが、拙僧ではございませんよ、それに協力者だとしたら何故拙僧も襲われているのですかな?」
嘘では無いが、真実でもない。記憶を消す前は協力者であったが、今は美神達同様敵という認識だ。どの道用済みとなれば排除する予定だったので美神達に人間への不信感を植え付けつつ処理させる予定だったので、信憑性を持たせるという意味合いもかねて拙僧も敵と認識させた方が都合が良かったと言うのもありますがね。
「じゃあどうやってただの人間が神魔や精霊捕まえることが出来るって言うの?」
「それはごもっとも、なので拙僧もとっておきの情報をお教えしましょう」
これはガープ様が手にした情報であり、それであると同時に神魔混成軍の中でもトップシークレットと言える情報だ。
「神魔の中の4大天使はご存知ですかな?彼らが最高指導者が魔界と協力する事に反発し、天界から脱走したそうですよ」
拙僧の言葉に美神達が信じられないと言わんばかりに顔を歪めるが、最高指導者よりも上位の神によって作られた4大天使は悪を認めない、デタント等を認めない、神を信じる人類と神だけがいれば良いという過激思考で天使の癖に魔族のような考え方をしている。
「信じられないわね」
「信じる信じないは貴方達次第――神魔の知り合いにでも聞いてみては如何ですかね?それに魔界側の戦力はよく横島の元に来るようですが……貴女達は小竜姫達以外の神側の援軍を見たことがありますかね?」
拙僧の言葉に再び言葉に詰まる美神達を見て、拙僧は内心笑いながら表面上は悲痛そうな表情を浮かべる。
「神魔と言えどデタントを認めない者は多いのですよ。それらが自分達に従がわない者をそのままにしていると思いますか?神魔の中には月神族のように独善的なものも多いのですよ?」
月神族と聞いて横島の目が赤く輝きかけるが、額当てに目が浮かぶとその色は一瞬で消え去った。
【お前の話を全て鵜呑みにはしないが、確かに捕獲術の痕跡は神に属する者の物だった】
「でしょうねえ、貴方ほど聡明な使い魔ならばそれを見抜くことは容易い筈だ」
実際拙僧は神と天使が捕獲した者を横流ししていただけで自分が手にかけたわけではない、まぁすこーし、ほんの少しだけ手を出したのは認めますし、天使達が自分達に忠実に従がう人間を増やそうとして用意していた媚毒や、その原材料を強奪し渡したのは拙僧ですが、それを準備したのは天使、そして天界側と言える。
「心眼、そんな話聞いてないぞ!?」
【確証がなかったからな。だが可能性としては十分に考えられる……過激派の天使や神ならばやりかねない】
「お分かり頂けたようで何より、では参りましょうか?この悪逆を成した者の顔を見に行きましょう」
「その必要はない」
広場に響いた第3者の声に振り返るとそこには拙僧に関する記憶を失い、最早生贄としての役割しか残されていない人間達の姿があり、拙僧は最後の仕掛けを発動させる為に着物の内側で再び剣指を作るのだった……。
~蛍視点~
蘆屋から4大天使が離反していると言う信じられない話を聞いた直後に白衣を着た無数の男と女を引き連れた茂流田と須狩の2人が姿を見せた。
「よくも我々のビジネスの邪魔をしてくれたなッ!霊的兵器も、人造神魔も、性奴隷も何もかも台無しだよ、だが君達の快進撃もここで終わりだ」
口調は丁寧だが茂流田の額には青筋が浮かんでおり、口もぴくぴくと動いて苛立ちを隠そうともしていない。
「終わり?それは貴方達ではないのですかね?ただの研究者風情が私達を本気どうこう出来ると思っているのですか?」
「気の強いことだな、神宮寺くえす。お前のような女は酷く需要がある、大事に可愛がってくれる飼い主を紹介してやろう」
この期に及んでここまで強気に出れるって本当に凄いわね、もしかして本当に切り札が……。
(あの多分、切り札。横島さんが持ってます)
(あの雛?何か知ってるの?)
この事件の事を知っているおキヌさんがこそこそと喋りかけてくるので、横島の手の中の雛が何なのかと尋ねる。神通力を放ってるからフェニックスとか?
(ガルーダです)
(ハイ?)
(ガルーダです……でも私の知ってるガルーダと少し違うんです)
いやいや、待ってガルーダってインドの神鳥で、神鳥のランクで考えたら最上級の……。
「我々の切り札を見せてやろう、天使より授かった羽で作り上げたガルーダだッ!!」
「ガルーダですって!?上級神魔じゃないッ!そんなのをどうやって」
「いえ、そもそもガルーダはグルルに貶められている筈――ガルーダなんて今は存在しない筈ですわッ!」
茂流田が自信満々に笑い、美神さんとくえすが怒鳴りあう中、奇妙な機械がせり上がってくる。
「この中にガルーダの卵がある、お前達に見せてやろうッ!素晴らしき神鳥が蘇る様をな!……は?」
機械を開けた茂流田はその中が空っぽなのに気付き、間抜けな声を上げる。
「ピー?」
「ん?どうしたピー助?」
そして横島の頭の上で楽しそうに鳴いている雛を見て、唾を撒き散らしながら怒鳴り声を上げた。
「なんでガルーダがもう孵化しているッ!しかも何故雛なんだああッ!!!」
……なんか私達が悪くないのに、凄く悪い事をした気分になる。美神さん達も横島の頭の上の雛――というか、何時の間にか横島がピー助と名付けていた雛が羽をパタパタと動かし楽しそうな鳴声を上げる、美神さんが茂流田と須狩、そしてその後の研究者に視線を向ける。
「どうもそっちの切り札はこっちにあるみたいね」
「大人しく投降するならこちらもそれ相応の対応をしますわよ?ええ、それ相応のですが」
そのそれ相応は間違いなく死なない程度にフルボッコだと思うし、私もそうするつもりなので神通棍を握り締める。
「何故だ!何故!今まで上手く行っていたのにッ!人造神魔は寝返り、ガルーダまで奪われたッ!この厄病……」
頭を掻き毟り唾を飛ばしながら怒鳴っていた茂流田が急に糸が切れた人形のように沈黙し、異様な雰囲気が広がり始める。
「ンンンン、これは不味いですな……」
「何かしたんですか!?」
「拙僧は何も……ただ。そうですな……天使の悪辣さとでも言いましょうか」
蘆屋がそう口にした瞬間、俯いていた茂流田が顔を上げる。
「ハレルヤハレルヤ」
「「「ハレルヤハレルヤッ!!」」」
「な、何……どうしたのッ!?」
ハレルヤ――神を賞賛する言葉を突如繰り返し言い始めた同僚達に須狩が困惑した様子で振り返ると、全員の頭がぐるりと須狩へと向けられた。
「異端者」
「異端者だ」
「殺せ」
「神を讃えよ」
「ハレルヤ、ハレルヤッ!!!」
「や、やめッ!来ないで、助けてッ!やだッ!!やめてえええええッ!!!」
蜜蜂が雀蜂を殺すように全方位から取り囲まれた須狩の姿が人で出来た球体の中に消え、その中からくぐもった悲鳴が響き続ける。
「な、なんだ……何が起きているんだ」
「……分からないですの……でも凄く嫌な予感がしますの」
何が起きているのか判らないが、手足が震える――本能的に危険を察知していた。
「逃げるわよッ!ゴーレム!私達の盾に……【ゴガア……】……ゴーレムが一撃でッ!?」
ゴーレムに盾になれと命じようとした美神さんの目の前でゴーレムが光に飲み込まれて消し飛んだ。
「……とんでもなく強力な破邪の魔法……ッ」
「不味いよ、こんなの喰らったら……あたしも死んじまうよ」
「ンンンー拙僧も流石に不味いですなあ……」
どちらかと言えば闇よりの存在のくえす達が引き攣った声を上げる中、人間同士が折り重なった繭のなから半透明の腕が現れ、這い出るように異形が姿を見せた。
【ハレルヤ、ハレルヤ……我はシモベ、神たるシモベ……背信者に死の鉄槌を……】
幾重にも折り重なった人の声はガラス同士を擦り合わせたような聞くに堪えない異音で肥大化した頭部とそれと比べて小さい胴と左右アンバランスの腕……頭の上の輪と翼で天使のようなシルエットをしているが、それは到底天使には見えない異形の化け物だった。
「何これ……」
「交霊術で天使もどきを呼んだ……いや呼ばされたんだわッ!証拠を全て消し去る為に……ッ!皆集まって精霊石よッ!!」」
天使による最終防衛装置とも言えるその異形の天使は両手を頭上に掲げ、それを見た美神さんが集まれといって首から下げた10億円の精霊石のペンダントを引きちぎり結界を作り出すのと、凄まじい光が私達に向かって降り注いだのはほぼ同時の事で、光に視界を奪われたと思った瞬間、結界が砕け散る音と共に私は後方に向かって大きく弾き飛ばされた。
「いっつうう……」
「ちょっと冗談抜きでこれは不味いわね……完全霊体の天使モドキなんてどうすれば良いのよ」
おかしくなった茂流田達から召喚されているように見える天使は焦点の合っていない視線を虚空に向け、祈るように左右の手を合わせ祈っているように見えなくも無いが、その祈りが何に捧げられているのか、そして何を祈っているのかも分からない。
「とにかくあいつを倒さない事には脱出も出来ないですわね」
「そのようですなあ……ご安心めされよ、拙僧も協力しますゆえ」
ニヤニヤと笑う蘆屋に本当はこいつが何かしたんじゃ?と思いながらも証拠も何も無く、そして過激派神魔が証拠隠滅の為に何かしているかもしれないと言うのもありえない話ではなく信憑性があるとも言える。
【……背信者に死を】
ゆったりとした動作で動き出したと思った瞬間だった。短い腕が凄まじい勢いで伸びてきて、咄嗟に頭を抱えて横っ飛びする。
「うおっ!?」
「……わわっ危ないですの」
伸びた腕のまま振り回し、横島達が跳躍して回避した瞬間、その目を横島達に向けるのを見て、私は自分用の精霊石を横島に向かって投げ付けていた。凄まじい衝撃音が響き渡り、精霊石の結界が一瞬で砕け散った。
「蛍悪いッ!精霊石はまだあるのか!」
「気にしないでまだあるからッ!」
精霊石の予備はまだあるが、この調子で防いでいたらあっという間に枯渇するだろう。どうやって戦うかと観察していると白衣の男が1人崩れ落ち、目を見開いて痙攣し始める。その姿を見て私の脳裏を最悪の予想が過ぎった……証人を消そうとしているのならな目撃者である私達と、実験に参加していた者を処理しようとするのが道理だ。もしかして思い霊視をすると今倒れた男の身体に魂は無く、魂の緒すら消滅していた。
「美神さん!あれ!あれを見てくださいッ!」
「やっぱりッ!この屋敷に関わった全員を消すつもりだわッ!」
「ちっ、天使ならやりかねないですわねッ!証人を失うわけには行きませんわ」
「ど、どうすれば良いんですか!?」
霊体の天使は間違い無く、茂流田達の魂によって構築されている筈だ。今もその体が崩れ、また1人科学者が倒れて痙攣し生き絶える。
「心眼!核はどこですのッ!」
【今探しているッ!見つけたらすぐに言うッ!とにかく今は攻撃を避けるのを徹底しろッ!】
霊体の天使に攻撃を加える術が無いのは分かっているけど、あの攻撃力と瞬発力を相手にするには余りにも厳しいわね……今もハレルヤ、ハレルヤと繰り返し呟いている天使を見て、私達は顔を歪める。やっと見つけた証人であり、生きたまま捕らえようとしていたのが自ら死に向かっている。その上下手をすれば自分たちも死ぬかもしれないという余りにも最悪な状況に私達は顔を歪めるのだった……。
~横島視点~
茂流田達が組体操のように組み合わさり、その上空に現れた歪な天使――いや、あんな物を天使だとは信じたくはないけど、形式上天使と呼ぶ事になった。それを睨みつけ、一瞬の挙動すら見逃さないように意識を集中させる。
【……ハレルヤ】
「ぐうっ!!いってえええッ!!」
反射的にサイキックソーサーで防いだが、衝撃までは殺しきれず壁まで吹っ飛ばされる。
「……んしょおッ!!!だ、大丈夫ですの?」
「ごめんミィちゃん、大丈夫」
「……大丈夫ですのよ?」
壁に叩きつけられる前にミィちゃんが俺を空中で受け止めてくれたお蔭で叩きつけられるのは間逃れたけど、ミィちゃんに負担を掛けたかもしれないと謝ると大丈夫ですのとミィちゃんは笑うが、ふっと倒れこんでくる。
「ミィちゃんッ!」
「……だ、大丈夫ですのよ?つ、疲れただけですの」
「おんぶするから早くッ!」
疲れただけと言っているが、ミィちゃんは明らかに消耗しており俺はミィちゃんの前にしゃがみこんで、おぶさるように言う。
「……申し訳ありませんの」
「良いよ、気にしなくて」
ミィちゃんを背中に背負い、再び天使に視線を向ける。現れた時よりも一回り小さくなり、足元の茂流田達はもう大多数が倒れていて、このままでは本当に証人がいなくなるかもしれない。
「心眼、まだかッ!」
【邪魔が多すぎるんだッ!こっちも必死に探しているッ!】
心眼に怒鳴られ悪いと返事を返しながら、ちらりと横目でおキヌちゃんを確認する。
「♪~♪~」
笛を吹いて結界を展開しあまり戦えないグーラーさんと赤ちゃんのグレムリンを守ってくれているけど、その結界に向かって不可視の光が打ち込まれる。
「させるかよッ!!」
「シッ!!」
サイキックソーサーと蘆屋が投げ付けた札が不可視の光を防ぎ爆発する。
「……本当に助けてくれるんだな」
「ンンンン、拙僧は嘘を付きませぬぞ?」
そう笑う蘆屋だが、右腕は千切れ飛び血が流れ続け、左目も潰れている。何度か俺達を庇って直撃を受けたからだ……瀕死の有様なのに蘆屋は笑い拳を握り締める。
「気にしなくていいですぞ。拙僧は天使は嫌いですからねッ!!」
そう笑った蘆屋が拳を突き出し、伸びて来た天使の拳を明後日の方角に殴り飛ばす。
「みーむうッ!!!」
「Deathっちまえッ!!!」
チビの電撃とくえすさんの魔法が天使の身体に炸裂し、その体を構成している魂を吹き飛ばす。
「肉体を離れた魂よッ!あるべき所へ戻れッ!!」
その魂を美神さんが科学者の身体に戻るように命じるが、その大半は空中に霧散してしまう。
「魂を使った特攻兵器なんて洒落にならないわよッ!!!」
「こっ……のおおおおッ!!!」
美神さんと蛍の振るった神通棍が伸びて来た腕を弾き飛ばすが、2人――いや全員疲労困憊でその場に膝を着きかける。
「ぜえ……ぜえ……マジで洒落にならんぞ」
「……重いのですの?」
「全然平気ッ!しっかり掴まってるんだぞッ!!」
走り回り、飛んで、霊力を次ぎ込んで防いで流石に疲れてきたが、ミィちゃんは軽い物なのでしっかり掴まっているように言って、懐に手を伸ばす。
(文珠は……6つか)
切り札の文珠は6つあるが、心眼のサポートが無ければ複数文字制御は出来ない、それに仮に出来たとしても何の文字を込めれば良いのかまるで判らない。
(広・治・癒で皆回復させれるのか……いや失敗したら駄目だ)
6つしかないのだ、無駄撃ちは出来ない。文珠に伸ばしかけた腕を戻し栄光の手を両手に展開し、腰を落として身構えた時だった。
【左目だッ!天使の左目が核だッ!!あれを封印しろッ!!!】
心眼の言葉に俺は再びGジャンのポケットに手を突っ込み、文珠を取り出して封の文字を込める。
「美神さん!蛍ッ!フォローを頼みますッ!!!」
栄光の手を展開したまま文珠を握りこんで大きく振りかぶる。その隙だらけの構えに天使が俺に視線を向ける。
「やらせないわよッ!!!」
「みぎいいッ!!!」
「ゴガアアアッ!!!」
美神さんが振るった神通棍とチビの電撃、そしてモグラちゃんの火炎放射が不可視の光を相殺する。
【もう少し上だ、腕だけを霊力で強化しろ、外すなよ】
心眼の助言に心の中で頷き、霊力で腕を強化し天使の左目をしっかりと見つめる。
【ハレルヤ、ハレルヤッ!!】
不可視の光が駄目ならばと両腕が凄まじい勢いで俺に向かって伸ばされる。
「横島に手出しはさせませんわよッ!!」
「ぷーぎゅーッ!!」
【ノッブウッ!!!】
くえすさんの魔法とうりぼーとチビノブのビームで左腕をやっとの思いで弾き飛ばすが、残された右腕は真っ直ぐに俺に向かって伸びる。
「ンンン、今の拙僧はそちらの味方ゆえ、援護をさせていただきますぞ」
そう笑った蘆屋の飛び蹴りが右腕を弾き飛ばすが、天使の頭はまだ上だ。だがこれ以上時間を掛ければ茂流田達達が死ぬかもしれない――一か八かで僅かに残っている霊力を振り絞り大きく振りかぶる。
「♪~ッ!!」
「……お手伝いしますの」
鋭い音色とミィちゃんの声が響き、地面から伸びた大木と空っぽの鎧が宙に現れ、そこから発射された霊波砲が天使の胴を貫いた。ここがチャンスだと思って動き出したが、まだ異形の天使にまだ余力は残されていた……。
【……死の裁……き……を】
不可視の光でもない、伸縮自在でもない、触れるだけで死に絶えるというのを直感で感じる黒い波動が打ち出され、それが俺に命中する寸前に赤い輝きが黒い光を弾き飛ばした。
「ピーッ!!!」
「「「「ぴいいいいッ!!」」」」
ピー助とピー助よりも小さなガルーダの雛達の放った神通力の波動が死の波動を打ち消した。
【……ハレ……ル……】
「いっけえええええッ!!!」
今の攻撃が最後の抵抗だったのか、天使の胴が曲がり頭が下がる。それを見た瞬間俺は封の文字が刻まれた文珠を左目に向かって投げる。文珠は真っ直ぐに天使の左目に飛び込み、そこから伸びた霊力の鎖が天使を雁字搦めにしたと思った瞬間、風船が破裂したかのような音を響かせて天使の姿は呆気なく消え去り、本当に天使が居たのかと思うほどの呆気なさで、天使のいた場所に倒れて動かなくなっている茂流田の姿だけが、この場に天使がいたと言う証拠なのだった……。
リポート9 悪意 その10へ続く
と言う訳で今回の戦闘はほぼイベントバトルで終わりました。それとGSでミカエルとか出てないので彼らにはメガテンテイストで進んでもらおうと思います。なのでガープ達の敵だけど人類の味方ではないルートで敵の敵はやっぱり敵で進んで行こうと思います。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。