GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート10 来訪者 その2

 

~カーマ視点~

 

なんで私が人間の家に来なければならないのかと思いながらも、ルイ・サイファーの頼みと言う名の命令となれば断る事は出来ない。断った瞬間に物理的に首が飛び、霊体も砕かれかねない。ルイ・サイファーが現れたのならば、屈服するのが1番正解だ。

 

「カーマ……愛の神がなんで」

 

「え?カーマさん神様なの?」

 

なんで分からないの?こいつ一応霊能者じゃないの?というかそれ以前に普通にルイ・サイファーの名前を出したら2つ返事で家の中に招き入れるとか警戒心とかないのかと言いたくなる。

 

「ええ、一応愛の神とか呼ばれてはいますね、一応ね」

 

不思議そうにしている男……えっと確か横島忠夫と、一応を強調する私に芦蛍は私の背景を悟り酷く気まずそうな顔をする。なんて能天気な男なんだと思う……だがそれと同時に女の姿で行けばとても面白い物が見れると言われて態々女の姿に変化して来た私も私だけど……こいつの家は本当にどうなってるんだと自分の馬鹿さ加減よりも、横島の家の中に私は驚いていた。

 

「みーむーみー」

 

「みい?」

 

「みむう?」

 

「みーむうッ!」

 

グレムリンの幼生とは思えない力強さを持つグレムリンが小さなグレムリンに何かを指示を出しているし……。

 

(ガルーダがこんなにッ)

 

宗教によって魔獣に落とされたはずのガルーダの雛、それが何十匹も集まって団子のようになって眠っているのに気付いて思わず目を見開いた。

 

「ぷぎいー」

 

「痛い?ごめんね、お兄様みたいに上手にできないや」

 

「ぶー」

 

【もうちょっとだけ練習させてください】

 

「ぴぎー」

 

「すまないな、うりぼー」

 

神通力を持ってる猪と神通力と魔力を持っている幼女に英霊に鬼の小娘にだらしなく寝転がっている様子だが、私を警戒している狐……。

 

(九尾の狐……なんでこんなのが)

 

インドでも有名な悪鬼が何故人間の家にいるのかと疑問に思っていると横島が狐を抱き上げ、座布団の上に座り狐を膝の上に乗せて撫で回している。

 

「コン」

 

「ちょっと機嫌悪いな?どうした?」

 

いやなんで普通にペットみたいな扱いをしているのかと叫びそうになったのだが、背後からひやりとした冷気を感じて動きを止めた。

 

「お久しぶりですね、カーマさん。もう少しでルイ様もいらっしゃると思うので、座ってお待ちください」

 

「……茶くらいは出してやるさ、まあ、座れ」

 

なんでルイ・サイファーの配下のルキフグスがメイド服姿でいるのか、そして何故大蛇のシズクがいるのか……そして、

 

「うきゅー」

 

「……どうも」

 

なんで土龍が私にお茶を出してきているのか、良く感じ取るとこの家の中は神通力と魔力が渦巻いていて、とても人間の住んでいる場所には思えないほどだ。

 

「……お客さんですの?」

 

そして最後に私の目の前を通過した半裸と言うか殆ど全裸の幼女を見て、私は小さく頷いた。

 

「私は愛の神ですから、幼女性愛も許しますよ」

 

「違いますからねッ!?」

 

違うと横島は言うが、この有様を見れば誰がどう見ても横島は年端も行かない少女しか愛せない人間にしか見えない……ッ!

 

(この気配は……ッ!っとうに趣味が悪い)

 

ルイ・サイファーの気配と同格の神魔の気配が1つ、そしてその2人に囲まれていたからか感知出来なかったけど……この気配はッ。

 

「鍵があいていたから勝手に入ってきたぞ!横島元気そうだな」

 

「やれやれ一応はとめたんだけどね、我が侭お姫様は私の言う事なんて聞いてくれなくてね」

 

ルイ・サイファー、そしてもう1人……私の知らない神魔だが、桁違いに強力な神通力と魔力を内包した紅いドレスの女……。

 

「カーマ……何故お前がここに」

 

「シヴァぁッ!!」

 

憎い相手でもあるシヴァが人の姿で現れ、私は思わず身構える。すると部屋の中にいた英霊やルキフグス達も臨戦態勢に入る。

 

「ちょいちょい!待って!いきなり喧嘩しないでくださいよッ!なんで2人ともいきなり喧嘩腰でッ!ああっもう!事情、事情を聞かせてください」

 

戦いになろうかという寸前の所で横島が立ち上がり、事情を聞かせろと叫んだ事で即戦いとはならなかったが、一触即発の雰囲気のまま私は座布団の上に腰を降ろすのだった……。

 

 

 

~ルイ視点~

 

シヴァとカーマを会わせる。これはある意味神魔の中でもタブーとされていることだが、私にとって禁忌なんて事は何の意味もない。面白ければ私はそれで良いのだ。気不味い上に自分から頭を下げるのも嫌でカーマから逃げているシヴァと、謝罪もしくはそれなりの誠意を求めるカーマ。どちらが正しいかと言えばキッチリと段階を踏んでいるカーマの方が圧倒的に正しい、だがインドの神魔の中でも最上位に君臨するシヴァは頭を下げるなんて真似はしない。だからこそ私が1枚噛んだのだ、シヴァとカーマと横島の家で会わせる。多少問題はあるだろうが、最悪に備えて魔人姫を連れて来たのは護衛の4騎士が結界を張る能力に長けているので、シヴァが癇癪で第三の目を開いても大丈夫という打算があったからだ。

 

「それでなんで志波さんとカーマさんは顔を見合わせるなり喧嘩するんですか、一応ここ俺の家ですよ。人の家に来てすぐ喧嘩って絶対に何かあるでしょ」

 

横島が説明を求める、しかしこれは1つの命知らずとも言える行動だ。シヴァとカーマの因縁は神魔の中でも有名で、誰もが触れようとしない部分でもあるからだ。

 

「「……」」

 

互いに無言のシヴァとカーマ。当事者が目の前にいるので余計な事を言えない蛍の目が恨みがましいが、その程度でうろたえる私ではないのでスルーする。

 

「私はガルーダの雛を受け取りに来ただけだ。横島雛を渡してくれるか?」

 

「……私と話す事はないって事ですか?へーそうですかそうですか、本当に心の狭い男ですね」

 

「なんとでも言え、私は仕事に来ているのだ。お前と無駄話をするつもりはない」

 

カーマに同意するわけでは無いが、本当に心の狭い男だなと苦笑する。シヴァが睨んでくるのを受け流し、念話を行なう。

 

(なんだい?インドは私と戦争でもする気かな?)

 

(……そう言う訳ではない、何故カーマがここにいる?)

 

(そんなの決まってるだろ?面白いからだ)

 

私は面白ければそれでいい、自分含めてこの世すべては娯楽であるべきだ。愛し合うことも、憎み合うことも、それすら全てが面白くあるべきなのだ。

 

「志波さんが不倫したとかですか?俺の親父が昔それをやって相手が乗り込んできたことあるんですけど」

 

「「違うッ!!誰がこいつなんかとッ!!」」

 

カーマとシヴァが不倫と口にした横島に思わず噴出してしまう。互いに嫌悪感を露にして指を差し合っているからか余計に面白く感じてしまう。

 

「下品だぞ」

 

「あっははっ!いやいや、面白いじゃないか」

 

犬猿の仲の2人が、不倫ッ!言う事欠けてそれかと笑いを堪える事が出来ない。

 

「じゃあどういう関係なんですか、ちゃんと教えてくれないとガルーダは渡しませんよ。ちゃんと世話してくれる人じゃないと預けれませんからね、と言うか皆を部屋から追い出しているんでちゃんと事情を説明してください」

 

話し合いだからと部屋にいた人造神魔にグレムリンの幼生に九尾の狐たちを追い出したのだからちゃんと説明しろと横島が告げる。納得する話を聞かせなければガルーダは渡さないというのも間違いなく本気だろう。ガルーダの雛を抱き抱えて渡さないという素振りを見せる横島にシヴァが深い深い溜め息を吐いた。

 

「分かった説明する。俺は今人の姿をしているが神だ、シヴァと言う。名前くらいは知っているだろう……知らないのか?」

 

シヴァは有名だが横島はいまいちピンと来てないようだ。隣の蛍が目に見えておろおろしているのが憐れに思えてくるが、横島自身は霊能者としては駆け出しなのでシヴァがどれだけ偉いのかを理解出来ていないようだ。

 

(まぁ当然だよね)

 

横島は日本生まれなのだから日本系の神魔の理解を深めるのが最優先で、他国の神魔は後回しというのが普通だ。

 

「自信過剰(ぷふー)」

 

「あ?」

 

カーマに笑われシヴァがドスの効いた声を出すが、横島がジッと見つめているのに気付くとすまないと形だけの謝罪を口にした。

 

「インドではそれなりに有名な神魔だ、勿論俺も、カーマもだ。インドには数多の神魔がいるが……依然ターラカという魔神が暴れた事があった。横島ならそうだな、アスラと同様の悪神だ、それを倒すには俺の子供で無ければ不可能だったのだが……その当時の俺は修行に明け暮れていて妻をほったらかしにしていた」

 

妻をほったらかしにしていたの言葉に横島の目がスッと細くなった。完全に横島君の地雷を踏んだね、これでシヴァがガルーダの雛を持ち帰る事は100%不可能になったと言っても過言ではない。

 

「それでなあ……インドの神魔が愛の神であるカーマに頼んで、俺を愛情を深める矢で射ようとし……俺はそれに激怒しカーマを殺した」

 

「……私悪くないのにねー、焼き尽くされて魂も軋んじゃったんですよー酷いと思いません?」

 

カーマの言葉を聞いた横島は無言で立ち上がり、キッチンで腕組して話を聞いていたシズクに声を掛ける。

 

「……ん」

 

「ありがと」

 

何か……あれは鍵だな。鍵をどうするんだ?と全員が見ていると横島はそのまま金庫を開けて1枚の書類を取り出して……。

 

「ま、待て!それは流石に困るぞッ!」

 

それは私がシヴァから取り上げたトリシューラを横島に譲渡し、横島がシヴァに貸し与えると言う約束をした魔道契約書だった。

 

「そいやッ!」

 

妙な掛け声と共に破かれた事でトリシューラの所有権がシヴァから横島へと戻った。慌てて腰を上げるシヴァだが、横島の放つ妙な迫力に気圧される。

 

(おお……面白いことになってきたな)

 

(確かに)

 

想像していたのと違うが、これは中々面白い展開になって来たのではないか?と魔人姫とどうなるのかとワクワクした様子で見つめる。

 

「出てけぇッ!お前みたいな奴にピー助達はやらんッ!!」

 

「横島ぁッ!?ちょっと何言ってるの!?」

 

蛍が慌てて横島に駆け寄るが、横島の意志は想像以上に固かった。

 

「自分が悪い事をして謝れんような奴に可愛い雛はやれんし、このへんてこな槍も渡さんッ!帰れぇッ!!!絶対やらんからなあッ!!!」

 

シヴァの行いが横島の怒髪天に触れたようだ。絶対にやらんと怒鳴る横島の迫力にシヴァもたじろいでいる。しかしトリシューラをへんてこな槍と言う横島には流石の私も魔人姫もカーマも笑いを堪えきれず、腹を押さえて笑う事になった。

 

「だ、だがな」

 

「シャラップッ!!カーマさんに謝ってカーマさんが良いよって言うまではあんたの話は聞かんッ!!とっとと帰れぇッ!!!」

 

背中をぐいぐいと押されて追い出されたシヴァを見て、腹が捩れるほど笑った。だが横島の次の行動で涙が出るまで笑う事になった。

 

「ルキさん、塩!!」

 

「はいはい、どうぞどうぞ」

 

ルキフグスに塩を求め、庭からリビングに回って来たシヴァに向かって横島は躊躇う事無く塩を投げた。

 

「待て、せめて話を……「帰れって言っただろッ!!!今日はもうあんたの話は聞かんッ!!」あーっ!!!」

 

横島の怒声とシヴァの悲鳴に私達はリビングの床に転がって息が出来ないほど笑ったのだが、蛍は顔を青褪めさせて震えていた。シヴァ相手にとうてい許される行為ではないからだ、インドの神魔に喧嘩を売ったと思われてもしょうがないが……正直シヴァの若い頃の暴れっぷりは相当な物でカーマに同情している神も少なくはない、それにシヴァのプライドを考えれば誰かに泣きつく事も出来るわけが無くのでこのことも問題になる事もない、想像以上の面白い光景を見る事が出来て私はとても満足するのだった……。

 

 

 

 

~ネロ視点~

 

人の悪意を見たと明星に聞いていたが、見たところ横島に変化はない……悪い方向への変化ではなく、人の悪意を見たからか、前よりも穏やかで人を思いやれるようになっているように感じる。

 

「あっはははッ!良く人間なのに神魔に喧嘩を売りますね、頭おかしいんですか?」

 

愛の神が馬鹿にするような口調で言うが、その視線は柔らかく破壊神が追い出された事を楽しんでいるような節が感じられる。

 

「だってカーマさん悪くないじゃん、そもそも変な魔神が暴れてるのに修行優先って頭おかしいだろ?」

 

「ぶふーッ!!」

 

余りにも直球すぎる破壊神への悪口に思わず噴出してしまう。明星も腹を抱えてぷるぷると震えているし、噴出した余も余だが明星も明星であれすぎる。と言うかそもそも破壊神はインドの神魔の中でも有数な武闘派だ。その実力は業腹だが余の騎士よりも上と認めざるを得ないほどの実力者……それを追い出し、あまつさえ塩を投げ付けて目潰しを行なうとか怖い物がないのかと言いたくなる。

 

「やばいわよ、横島。相手インドのトップなのよ!」

 

「でもよ、ああいう奴は駄目だと思うぞ?絶対子育てとか向いてないって、こんなに可愛いガルーダが絶対魔物になるって」

 

ぴよぴよと鳴きながら横島に集まってくるガルーダの雛の群れ、その中でも一際美しい一羽を横島が抱き上げる。

 

「そりゃちゃんとした人なら俺だって渡すさ、正直今の家じゃ皆の面倒見切れないし、飼うなら最後まで面倒見ないといけないからさ。でも志波さんは駄目だ。向いてるとか向いてないとかそれ以前の問題だと思う」

 

破壊神と言えば自分の妻の入浴を覗こうとして、それを阻止しに来た自分の息子の首を切り落とした挙句、象の首を変わりに取り付けた男だ。確かに子育てには向いてるとか向いてない以前の男だろう。

 

「でも「大丈夫だよ、私が口引きしてあげよう。心配ないよ」……良いんですか?」

 

危険度で言えば明星も破壊神も同じ位なので蛍は警戒しているが、まぁ明星に任せておけば問題はなかろう。

 

「おお、良い服装をしているな。見所がある」

 

「……でしょう?」

 

この半裸に見える服装は実に余好みだ。自分の美しさを際立たせる最高の衣装と言えるだろう、余の言葉に横島が振り返り嘘だろって顔をしているが……。

 

「横島。あんた自分の状況をもっと考えたほうが良いと思うわよ?」

 

「せんせー、それ大丈夫でござるか?」

 

「え?何が?(幼生グレムリン・ガルーダの雛・増えたうりぼー、ちょっと巨大化したモグラちゃんを抱き抱え、頭でチビが踊っている)」

 

破壊神とは別に余りに面白すぎる光景にまた余と明星は揃って噴出す。

 

「普通の服着よ?ね?」

 

「……いやですの」

 

「お願いだから着てくださいお願いします」

 

「……いやですの」

 

半裸の幼女に服を着せようとして断固拒否されている横島が余りにも面白くて、淑女に相応しくない大声で笑ってしまうのだった……。

 

 

「とりあえずですね、私はインドに帰れないと思うんでどこか住める所ないですかね?」

 

「じゃあ俺の家「もうキャパオーバーしてるでしょうが」……確かに」

 

横島の家は人口過多なので愛の神を受け入れるのは無理だろう。しかしインドに戻れば圧力で無理に了承させられることになるのは目に見えている。

 

「ルキ、君の家で預かってくれないか?」

 

「……ルイ様、私の家は小竜姫とブリュンヒルデとメドーサとルームシェアしてるのですが……」

 

魔界の重鎮なのにルキフグスはルームシェアしていたのか……なんとも世知辛い世の中だな。

 

「なら余が預かろう。ホテルのワンフロアを貸しきっておるからな、1人くらい増えても構わんぞ」

 

それに愛の神ならば面白い事を引き起こすのに使えそうだし、本人は凄まじく嫌そうにしているが神魔が手を出せない所となれば余の場所しかあるまい。

 

「良いの、ネロちゃん」

 

「構わぬ、だがそうだな。横島よ、また余の為にアクセサリーを作れ、そうすれば引き受けようぞ」

 

横島の作るアクセサリーはとてもいい物だ。何よりも横島の心が込められているのが良い、それが手に入るのならば愛の神を受け入れるくらい何の問題もない。

 

「所で横島、トリシューラをどうするつもりだ?」

 

トリシューラを担いで庭に出ようとしている横島に明星が何をしようとしている?と尋ねる。

 

「え?物干し竿にもでしようかなって、俺槍なんか使えないし、物干し竿足りないから丁度良いなって」

 

「「「ぶふうっ!!!」」」

 

あのトリシューラを物干し竿にしようとした横島に思いっきり噴出した。明星の言う通り余りにも面白い物を今日一日でこれでもかと見た余は愛の神を連れて大満足で愛の神を連れて横島の家を後にした。

 

「なんで私を引き取るって言ったんですか、貴方魔人姫ですよね?」

 

「なーに、余も明星と同じで面白いことが大好きなだけでな!横島の知り合いの中にな恋愛空間という結界世界を持つ妖怪がいるから、お前がいればもっと面白く出来ると思ったのだ!」

 

「……っとに趣味悪いですね」

 

「はっはっは!余も明星も退屈を持て余しているからな!だがちゃんとお主の面倒を見るから安心するが良い」

 

安心できないんですけどねと呟く愛の神をつれ、余は泊まっているホテルへと足を向けるのだった。

 

 

 

~????視点~

 

人間界でも、天界でも、魔界でもない場所で弾むように楽しそうな、しかしそれでいて邪悪な響きを伴った声が響き渡る。

 

「■■さん、見つけたわ。見つけたの、お兄さんを見つけたのよ」

 

「へぇ、それは良いねぇ、前に少しだけ開いたのに閉じられた扉は開けたのかい?」

 

「ええ、開いた扉からお兄さんの気配を感じたから頑張ったの、でもね、私達だけじゃいけないかも」

 

「俺達だけじゃ駄目ってことなのか、じゃあ向こうから開いてもらうのを待つしかないさね」

 

「もう■■さんはお兄さんに会いたくないの?」

 

「さぁねえ、俺はあんまりそういうきゃらじゃないだろ?まぁ会いたくねぇわけじゃないけどサ」

 

少女に返事を返す声は嬉しそうではあるが、どこか気恥ずかしさを感じさせる声だった。

 

「もっともーっと扉を開いてもらいましょう?そうすれば私達もあちらに行けるわ、ふふふ、楽しみだわ」

 

「はいはいっと、お前さんはあの人好きだなあ」

 

「ええ、大好きよ。だからね、私はお兄さんを助けてあげるの、絶対に……復讐者にも、凶戦士にもさせないんだから……絶対、絶対に……」

 

弾んでいた声が暗く澱み、強い執着と粘着質な声へと変わり、その雰囲気も様相も大きく変わる。だがもう1人の女性はそれを決して口にする事無く、慣れた手付きで筆を動かし絵を描き続ける。

 

「……」

 

「とと様……■■■の言い分は俺も分かるんだよ。あんな優しいやつが壊れて狂ちまうなら……閉じ込めちまったほうが良いんじゃないかってサ」

 

「私はそれで良いと思いますよ。壊れるなら、壊れてしまうなら……真綿で首を絞めるようなやさしい世界で眠らせてあげたほうが良いって思いますよ」

 

この場にいる者は皆狂っている、狂って狂って狂って、それでもなお誰かを想っている。

 

「あははははッ!あはッ!後少し、後少しだわ。後少しで向こうへ行けるわッ!そしたらお兄さんに会えるの、そしたらどうしよう、なにをしよう」

 

「そりゃあれだろ、まずは初めましてじゃないか?俺達はあっちを知っていても、あっちは俺達を知らないんだからサ」

 

「ですね、まずは初めまして、その後は……悲しませる人、苦しませる物を全て壊して連れてきましょうか」

 

ジャンヌ・オルタと同じ様に異なる世界、異なる結末を見た者はいる。そしてその結末を認めぬと、こんな終わりは受け入れぬと世界を超えようとしている者達は狂気に満ちた瞳で今は破れぬ世界の壁を恨めしそうに見つめているのだった……。

 

 

リポート10 来訪者 その3へ続く

 

 




シヴァへの扱いが悪いですが、今回限りだけですのでご容赦の程を頼みます。カーマの参戦は愛子の机世界をより面白くする為ですのであしからず、それと???はジャンヌ・オルタと同じで鯖の横島を知るトリオです、参戦はまだ先ですがふらっと出てくる感じですね。
次回は横島がドン引く個性の塊が出てくるので楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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