GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート2 竜の魔女リターンズ その4
~タマモ視点~
蛍と帰ってきた横島は黒い女を連れていた。色素の薄い髪と白蝋のように青ざめた顔、そして口元に浮かんでいる嘲笑の色が混じった笑みと毛皮のマント姿……それを見た私の感想はこの一言に尽きた。
(駄目やん……)
中世でも見たけど、あの時より更に悪党って言うオーラが増している。ノッブ達が私を見て、聞いてた話と違うと言う顔をしているけど、それは私も同じだ。
「こちらがジャンヌさんです」
【ジャンヌ・ダルクよ。よろしく】
よろしくとは言っているけど、観察するような、見下すような視線をしているのがジャンヌのプライドの高さを現している。くえす見たいな人格破綻者はそうはいないと思ったけど、こいつは間違いなく同類だわ。
「邪ンヌか、邪と言うのが良いな!吾は茨木童子だ。よろしく」
【ええ、よろしく】
能天気馬鹿2号め……ッ!なんでジャンヌの邪の部分だけを聞いて友好的になれるのかが不思議でしょうがない。
「ぷぎー」
【ああ、あの時の猪ですか、元気にしてましたか?】
「ぴぎ!」
横島が友好的なのでうりぼーも警戒心0……この能天気な連中が多い中、私とかシズクがジャンヌを警戒しないといけないと思うと少し、いや、かなり頭が痛かった。
「シロでござるよ、せんせーをお助けいただき感謝するでござる」
【私からも感謝を、主殿をお助けいただき感謝します】
ジャンヌの視線が私やシズク、そしてノッブと警戒している組に向けられたが、その瞳はある一言を物語っていた。
『こんな能天気ばっかりで大丈夫?』
(それは私が言いたいわよ!)
基本的なポテンシャルは高い筈なのに、何故こうも警戒心が皆無なのか。もっとこうあるだろう?と言いたくなる……特に横島も含めてだ。
「とりあえず、あの荷物置き場を片付けるとして、倉庫の鍵ってどこだっけ?」
「あーえっと……【のぶうー】お、ありがと!チビノブ」
庭の倉庫の鍵の場所が判らなかった横島にチビノブが机の引き出しを探り、鍵を横島に差し出した。
【私は別に眼魂でもかまいませんよ?】
「駄目駄目、お客さんなんだから、まぁジャンヌさんは座っててくれて良いから」
上機嫌な横島と本来なら警戒するはずなのに、何故か横島と一緒にジャンヌの部屋の準備をする蛍……一体何故と私は疑問を抱かずに入られなかった。だが私のその疑惑の視線に気付く事は無く、横島と蛍はチビ達や茨木童子をつれて部屋を出て行ってしまい。リビングには私、能天気馬鹿1号と牛若丸とノッブ、そしてシズクの4人とジャンヌという図式になってしまった。しかもノッブは興味なしでメロンパンを齧っているし……なにこの地獄絵図……本当に何とかして欲しいんだけど……。
「……ん、お茶」
【お気遣いどうも】
言葉は丁寧なのに、その態度のせいで凄く刺々しい感じがする。なんでこんな性格の……っとここまで考えた所で気づいた。そうだ、こいつ神宮寺に似てるんだ。普通の人間なら警戒心を抱く神宮寺に非常に友好的な横島だから、似ているジャンヌにも友好的なんだと気付いた。
【……変な味ですね。これ】
【そうか?これは良い茶葉だぞ?お前が日本茶に慣れてないだけじゃね?】
【……そういうものですかね。あ、この薄っぺらいのは美味しいですね】
「……どら焼きだな。もう少し食うか?」
【貰いましょうかね】
……警戒しあっているんだけど、表立ってもめていると横島が心配する。だから互いに相手の出方を探りながらの状況での茶会をしながら、私は溜め息を吐いた。
「タマモ。美味しくないでござるか?」
「違うわよ、馬鹿」
馬鹿とはなんでござるかーと怒鳴るシロを横目に、私は本当にジャンヌが横島に危害を加えないのか……それが心配でしょうがなかった。
【……ねえ、それなに?】
【これですか?刀ですよ】
【へえ……なんかそれ、良いじゃない】
……日本刀に興味を示しているジャンヌの声を聞いて、警戒している自分が何か馬鹿の様に思えて、言いようのない悲しさと寂しさを感じながらどら焼きを齧るのだった……甘いはずのそれは少ししょっぱい味がした。
~美神視点~
横島君と蛍ちゃんがジャンヌ・オルタをつれて帰ってしまった後。私達はジャンヌ・オルタの今後の扱いに頭を悩ませていた。
「とりあえず、横島君に危害を加える気配はなさそうですけど……」
「味方とも言えない雰囲気ですよね」
とりあえず体裁的な部分では友好的に見えるけど、それは横島君がいるからだろう。自分がもめれば横島君が気に病むから、形だけでも友好的にしているだけで、その目には神魔への強い嫌悪感が見て取れた。
「まぁ、経歴を考えれば当然だけどね。正直どうするよ? 爆弾ではないけれど、それでも味方と考えるには難しいぞ?」
メドーサの言う通りである。1番守らなければならない横島君のそばに不確定要素を置いて置くのは不安でしかない……だが、これで横島君から引き離すことを考えたとしても……。
【……とんでもなく大暴れすると思うんだけど、あたしはね?言っちゃあ悪いけど……長期戦に持ち込めれば勝機はあると思うけど……そうじゃないとあたしでも勝てないわよ?】
三蔵が不安そうに口にする。1級品の英霊でも勝てないと断言するほどにジャンヌ・オルタは強い英霊だ……眼魂でも判っていたが、防御リソースを全て捨てての圧倒的な攻撃力は1度勢いに乗れば止める事が不可能なほどに強烈で苛烈だ。
「ガープはそこを見出したって事ね」
国を救いたいという願いと強烈な信仰心――それらを反転させる事で生まれる憎悪と殺意……ジャンヌ・ダルクを反転させる事で切り込み隊長的な役割を果たす英霊を手にしたかったのだろう。ガープにとっての計算外は、横島君に絆されてしまった所だと思うけど、もしもガープの想定通りに運用されていたら神魔はその数を大きく減らしているか、それとも狂神石で洗脳されてしまっていたと思う。
「とりあえず当面は様子を見るしか無いでしょう。紫ちゃんを横島さんの所に連れていく時とかに様子を見て見ます」
「ま、それしかないだろうね。小竜姫、向こうが挑発してきてもそれに乗ったら駄目だよ。横島が神魔への不信感を抱く事になるだろうからね」
そこが最大のネックと言っても良いだろう、小竜姫様やメドーサはその立場的にジャンヌ・オルタを警戒しなければならない。だが横島君はジャンヌ・オルタを恩人と思っているので不快感や不信感を抱く事に繋がるだろう。
「ジャンヌ・オルタの事もありますけど……私達はそればかりに気をとられているわけには行きません」
目先の問題が大きいが、ほかにも広い範囲で様々な問題が起きている。
「……外交のほうは?」
「西条さんが「とても」頑張ってくれています。後教授も」
とてもを強調する琉璃に西条さんに差し入れを持って行こうと心に決めた。絶対大変な事になってるだろうから……でも考えてみればそれは当然で、国宝と言っても良い竜の魔女の旗をすり替えようとしたとしたなんて普通に考えて裁判沙汰だ。誰かに譲り渡すと聞いて盗みに動くとか、国際GS協会もオカルトGメンもずいぶんと品格が落ちたと内心呆れていた。日本政府はお得意の尻尾きりをするし……本当に今の世の中で禄でも無さ過ぎる。
「だけど、それは大した問題じゃないです。国交問題なので政治家が頑張ってくれれば良いですから」
下手をすれば国際裁判レベルの問題を大したことじゃないと言い切った琉璃は1枚の紙を机の上に乗せた。
「これは柩が予知をして、そしてどうしても覚える事が出来ず。それでも必死に書いてくれた物です」
そう前置きされた絵は走り書きで、絵の構図もぐちゃぐちゃで必死に形に残そうとしたのがこれでもかっと伝わってきた。
「……これ、横島君?」
【いやいや、横島君はこんな顔をしないわよ……でも……】
「どう見てもこれは……」
「横島だな」
いつもの柔和な横島君の顔ではない、冷酷な光を宿したオッドアイにはなにもかもを見下している冷酷な光が宿り……。
全身に巻きついている紅く禍々しい蛇、そしてその背後に浮かぶ時計の羅針盤……。
「眼魂ですね……でもなんですか、この禍々しい姿は」
「……この眼魂に操られているって事か?」
「それは判りません……ですが、横島君にとっても、私達にとっても良くないことであると言うことは間違いありません」
ガープの仕業なのかは判らない……だがまず間違いなくガープの仕業と考えて良いだろう。
「柩は何て?」
「もう殆ど何も覚えてないらしいのですが、凄まじい喪失感と恐怖を感じたと……」
柩が思い出せないという段階で相当な異常現象だ。柩の瞬間記憶能力は物を忘れられないと言う欠陥を持っている、それに加えて予知能力によって常に脳を圧迫されているから短命で、常に発狂している状態なのだ。そんな柩がその事を忘れていると言うことでどれだけの異常現象かが良く判る。
「これが何時の事かも判りません……でも決して楽観的に考えられる状況でもありません。これはありえる1つの結果として、覚えておいてください」
この予知の時が何時訪れるのか……それは私達には判らない。だが柩の予知と言う事でこれがいつか訪れる確定した未来というのは間違いない、横島君が敵に回るかもしれないと言う最悪の結果の1つは私達の胸の中に深く刻まれる事となるのだった……。
~くえす視点~
能天気に私とあの英霊が似ていると言っていた横島の事を思い出すとどうしても苛立ちを覚えずにはいられなかった。横島が悪い訳ではない……それでもだ。私と同様の信頼を横島から向けられているというのが心底、面白くなかった。
「……ええ、ええ……判ってます。判ってますわ」
横島が悪い訳ではない。自分の信用した人間を無条件で信頼するのが横島だ。誰かが危険だと、気を許すのは危ないと言っても自分が信じたいと思った相手を信じ続けるのが横島だ。その中にはきっと私に似ている相手もいる……それがジャンヌ・オルタだったというだけで……ッ
「ッ!ああ、忌々しい」
手にしていた魔道具を思わず握り潰してしまっていた。自分の向けられていた横島の視線が別の相手に向けられている……たったそれだけの事が心底腹ただしく、そして忌々しい。だが私が気に食わないからと言ってジャンヌ・オルタを紛糾したとしよう……そうなれば、横島は私を嫌う事になるだろう。もしそうなったら私はそれに耐えられない……。
「ああ、本当に忌々しいですわね!」
今までの私ならば自分が嫌う相手は排除すれば良いと考え、そしてその通りに行動してきただろう。だがその行動の結果が横島が私を憎み、嫌う事に繋がるかもしれないと思うと恐ろしくてしょうがない。
「……本当に人を愛するって言うのは難しいですわね」
想い人の行動1つで一喜一憂する。それは常に冷静であれという魔法使いの信条に反する物で本来ならば唾棄するべきものだ。だけど……。
「私は横島を好いてしまった……」
胸に手を……いや、首から下げている安物だが、横島が選び、私に似合うと言ってプレゼントしてくれたそれはどんな高級な物よりも、私を幸せをもたらしてくれる物だ。だが横島が私を嫌えば、これはその姿を見る度に私自身の心を傷つける物となるだろう……そうなってしまったら私はきっと耐えられない。
「……苦しいですわね」
人に憎まれる、疎まれると言う事には慣れているつもりだ。だけど、横島に憎まれるという事を想像するだけで胸が張り裂けそうなほどに痛む。辛くて苦しくて、悲しくて……私はきっとその痛みに耐えられない。
「……我慢するしかないのですかね」
憎いと思ってもそれを今は耐えて飲み込むしかない。私達が必要以上に警戒しているだけで……ジャンヌ・オルタがそう悪くない存在である可能性も十分にあるのだから……だけどそれと心情的に受け入れることが出来るかどうかは別問題ではあるが、横島は少なくとも私達が仲良く出来ると思っているのならば、内心どう思っていても表面上は仲良くしておいたほうが良いだろう。
「……でも横島の信頼を裏切ればその限りではないですわよね?」
1度裏切った相手は何度も裏切るに違いない、そうなれば裏切られた横島の心は深く傷つく事になるだろう……。
「そうなったら殺してしまっても大丈夫ですわよね」
横島も1度自分を裏切った相手を受け入れるなんてことはしない筈だ。そうなれば大手を振ってジャンヌ・オルタを排除出来る。
「……偽物の英霊なんて横島には必要ありませんわ」
元々英霊が横島のそばにいるのも私には不満だった。死者の分際で生者と共にあろうとする事自体がおこがましい……だけどそれでも横島が気を許しているからしょうがないと割り切っていたが……ガープによって作られた英霊なんて信用なんて出来る訳がない。
「絶対にその尻尾を捕まえて見せますわ」
絶対にあの英霊は横島を裏切り、そしてその心を傷つける……そうなったら私が排除するしかないではないか。
「ふふふ、そうですわよね。簡単な話でしたわ」
こんなにも悩む事も、苦しむことも無いのだ。物事はもっと簡単で、そして単純な話だった。どうしてこんな簡単な事に気付かず悩んでいたのか、自分の愚かさに思わず笑ってしまう。
「そうと決まれば準備は必要ですわね」
英霊を倒す事は簡単ではないが、ジャンヌ・オルタはジャンヌ・ダルクの反転存在なのだから明確な弱点が判っている。炎や神魔を憎むことが彼女の存在理由ならば、それが弱点となる。横島が好きだといった笑みではなく、暗く邪悪な笑みを浮かべていると判っていたが、それでも自分の存在を脅かす相手をそのままに出来るほど、私は寛大な人間ではない。私は誰にも知られずにジャンヌ・オルタを消滅させる為の準備を始めるのだった……。
リポート2 竜の魔女リターンズ その5へ続く
くえす暴走モードオン、この人基本的に病んでますからね。自分の存在を脅かす相手は許しません、特にキャラ被りしている相手なので余計に苛烈です。くえすの対策が火を噴くのか、その前に和解イベントがはいるのかが勝負の分け目ですね。次回はジャンヌさん視点で話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。