GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート11 臨海学校・序 その5
~横島視点~
夏の日差しがジリジリと照りつけて暑い筈なのに……なぜか俺は薄ら寒い物を感じていた。
(心眼せんせー、助けてください)
(頑張れ)
頼りになる心眼は頑張れと一言言うだけで沈黙してしまい、助けてくれるつもりは無さそうだ。
「横島、私は褒めてくれないのですか?」
「え、あ……いや……言葉が出ないんですよ、くえすさん」
「さんをいい加減に外さないと怒りますわよ?」
青を基調にしていて胸元にフリルと腰元にリボンのある蛍の水着もとても魅力的だったし、良く似合っていた。だけどくえすさんは余りにも美しすぎたと言っても良いだろう。後ろに蛍がいるのが分かっていても、思わず見惚れてしまうほどだった。くすさんは黒を好んでいるだけであり水着もやはり黒色のビキニで、白い透き通るような肌と共にどうしても目を魅かれる。そして腰元にはスカートみたいな……布を巻いていて隠す所は隠し蠱惑的な雰囲気もあり、俺の顔を覗き込み胸の谷間を見せ付けるような姿勢を取るくえすさんに俺は完全に魅了されていた。
「え……あ……くえす」
「大変結構、で褒めてはくれないのですか?」
今までさん付けだったのだがくえすと始めて呼び捨てで呼ぶとくえすは酷く満足そうに笑い、髪をかきあげながら褒めてくれないのか?と悪戯っぽい笑みを浮かべて問いかけてくるが言葉が出ない。前門のくえす、後門の蛍という状況に俺は酷く冷たい汗を流すのだった……。
「おい、見ろよ。横島が修羅場してるぞ」
「馬鹿野郎見るな。巻き込まれるぞ」
雪之丞がからかうように修羅場ってる横島を見て笑うが、その修羅場が飛び火すると判っている陰念は見るなと警告だけして泳ぎ出そうとして動きを止めた。
「くあー!」
「……お前横島のところのペンギンか」
「くあ!」
海でテンションがあがっているリヴァイヤサン(ペンギン)はトプンと音を立てて海中に潜り、海面から飛び出したりして遊び始める。
「巻き込まれそうな気がするな」
見た目はペンギンでも魔界の獣なのは間違いなく、巻き込まれることを危惧して陰念は逃走したのだが、修羅場を見て笑っていた雪之丞は海の中でぐるぐると泳ぐリヴァイヤサン(ペンギン)が作り出した渦潮に巻き込まれたのだが……。
「こ、こいつは良いぞ!鍛錬になる!!!」
凄まじい吸引力で吸い寄せてくる渦潮から逃れる為に全力で泳ぎ、鍛錬としている辺り――やはり頭があれな男なのは間違いない……。
「あんまり横島君を苛めたら駄目じゃない」
「琉璃……別に苛めているつもりはありませんわよ」
「いやいや苛めてるでしょうに……この状況で感想を言えるような子じゃないでしょうに」
前門のくえす、後門の蛍という地獄で俺が言葉を失っているところに助け舟を出してくれたのは琉璃さんだった。白いビキニ姿でやっぱりくえすと同じ様に腰に布を巻いて、サングラスと麦藁帽子を被り蛍と似たような水着を着ている舞ちゃんと一緒だ。
「大体皆感想を教えて欲しいって言うのに横島君にそこまでボキャブラリーはないから皆似たような事を言われるわよ、それなら……」
ぴょこんと琉璃さんの頭に猫の耳が見えた気がした。それにサングラスで見えないがその目が悪戯っぽく光っているような気が……。
「おねーさん、日焼けしたくないからオイル塗って欲しいなあ?」
「すいませんむりです!!!」
水着の感想を言うだけでも一杯一杯なのにオイルなんて絶対無理、その手があったかと顔をしている蛍とくえすとにまにまと笑って塗ってくれないの?という琉璃さんの姿に勘弁してくださいと俺が叫ぶのは至極当然の事であった。
「もうしょうがないわね、変な所で初心なんだから」
「……お姉ちゃん、あんまり苛めるのはどうかと思うけど……」
「ふふ、反応が可愛いからね」
弄られて遊ばれるのはちょっと嫌なんだが、猫っぽい琉璃さんだとしょうがないと思うのが不思議な所だ。
「まぁ良いですわ、横島の反応を見れば似合っているようですし……でも褒め言葉くらいはいえないと失格ですわよ」
くえすもそうなのか琉璃さんの反応を見て少し雰囲気が変わってくれたようだ。
「後で遊びに付き合うことでチャラにしてあげますわ。あとさん付けしたら殺します」
「……はい」
呼び捨てを続ける事になってしまったが、あの目を見ると本気で凄く怒りそうなので今後は絶対さん付けしないようにしようと心に誓った。
「……横島の助平」
「……ごめんなさい」
でもさ、ほら。あれだし……うん……。
「……本当にゴメンナサイ」
胸に手を当てて目が死んでいる蛍を見て俺はそれしか言えなかった。下手に慰めても駄目だし、同情も出来ないし……非常にデリケートすぎる問題だからだ。
「……ちゃんと泳ぐの教えてね、それで許す」
それは別に問題はないのだが……蛍の方に少し問題があるかもしれない。
「アリスちゃん達と一緒だけど大丈夫?」
「……金槌を今年は克服したいのよ」
子供に混ざるのは蛍にとっても苦渋の決断だったのか少し躊躇いを見せたが、本気で泳げるようになりたいと思っているようなので分かったと返事を返そうとした次の瞬間、横殴りの衝撃に俺は吹っ飛ばされた。
「どうですか!どうですか!!似合いますか!!!」
「似合ってる!似合ってるからとりあえず降りよう!それは良くないッ!!!」
清姫ちゃんのタックルに吹っ飛ばされ馬乗りされ、座ってる位置とかビキニとか、妙に赤らんでいる頬とか全部何もかも良くない。
【ふっふっふ!どうですか沖田さんも水着を買ってみたんですよ!】
【日焼け酷くならんか?ワシは嫌じゃな】
白ビキニの沖田ちゃんに水着の上に「バスター」と書かれた紅いTシャツを着ているノッブちゃんとか、水着に着替えた人達がどんどんホテルから出て来てさっき以上の窮地に俺は追い込まれてしまうことになるのだった……。
~美神視点~
今回の臨海学校は本来の六女のカリキュラムである除霊訓練も兼ねているので1週間ほどのスケジュールを取っているので、私もたまには泳ぐかと思い水着に着替えて海辺に出たのだが……。
「……!!」
「!!!」
遠くに見えているだけだが横島君が蛍ちゃん達に囲まれておろおろしているのが見えた。
「オタクの弟子大変な事になってるワケ」
「まぁ自己責任だから」
横島君が引っ掛けたのだから責任は全部横島君にあるので、横島君が自分で何とかするべきだ。
「本音は?」
「巻き込まれたら死ぬ」
誰が好き好んで英霊や神魔の間に割って入れるというのか、止める=死と同意儀なのは見れば明らかだ。
「さ~横島君と遊びましょうね~」
「わふーん♪」
冥子とショウトラ達も行ったので確実にあそこは地獄だ。命に関わるので行くべきではないと霊感が囁くを越えて叫んでいる気がする。
「魔界の獣ってやっぱり化物なワケ」
「横島君には懐いてるけど基本的に攻撃性むき出しだしね」
砂浜の一角に巨大な砂山を作り、海から顔を出しているペンギンが濡らして、それを削り何かを作っているのが見えるが、全長30~50cmほどの小動物がそれを行なっているのを見ると本当に私達の常識を超えてるって思ってしまう。
「横島が名前をつけてなくてよかったわね」
「……でも引っ越したら面倒を見れるからって名前をつけそうで怖いのよ」
今はまだ良いが、横島君は引越しを真面目に検討しているので引越し先が大きければ懐いている魔獣に名前をつけかねない。だけど引越しは急務な訳で……。
「爆発寸前の爆弾を抱えてお疲れ様」
「……もう諦めたわ」
琉璃に押し付けているとも言えるが、私も私なりには頑張ってはいる……頑張っているのだが……。
「なんかね、年々横島君の人外と年下に好かれるのが凄くなってるのよ」
「……あれも一種の霊能みたいね」
霊能が強くなれば人外と年下ダイソンが強化される……長い霊能者の歴史の中でこんな事例はなかったわよねと思いながらも、もうどうしようもない段階に来ているので諦めるしかないと深い溜め息を吐いた。
「とりあえず軽く日焼けでもしながら様子を見るわよ」
「遊べる時は遊んでおくべきだしね」
マスコット軍団の事も心配だが、それよりも気になっている事がある……それは除霊実習の一環である筈の臨海学校でこれだけの面子を呼び寄せている冥華おば様の事だ――慰安旅行みたいな物と言っていたけど絶対裏があると見て間違いない。
(蛇が出るか、鬼が出るかって所ね)
とりあえずは休めるときは休んで英気を養って、何が起きるか備えておいた方が良い。そう考えて砂浜に置かれているサマーベッドに横になる、東京だと鬱陶しいだけの暑さだったが海の近くに来ると楽しくなってくるのは何故なのだろうかと思わず苦笑する。
(これが夏の魔力って奴なのかしらね)
悪い気分ではないのでのんびりと日焼けを楽しもうと思ったのだが……。
「もう無理だからぁ!!!俺のボキャブラリーはもうないからぁッ!!!」
と叫んで海に飛び込んでしまった横島君に思わず噴出した……限界が来てしまったようだ。そもそも横島君はかなり初心な部類なので水着姿の蛍ちゃん達に囲まれているのは結構辛かったようだ。
「美神さん、隣失礼しますね」
「小竜姫様?ええ、構わないけど……着替えなかったの?」
隣のサマーベッドに座る小竜姫様だけど水着に着替えておらず、どうしたの?と尋ねると小竜姫様は笑みを浮かべたがその目は死んでいた。
「……襦袢みたいのしかないんですよ。私」
羽の意匠のビキニにパレオ、そして白い帽子姿のブリュンヒルデが横島君達の間に入っていくのを見て恨めしそうにしている小竜姫様を見て、憐れさが勝った。
「……後で購買行く?」
「良いんですか?」
「うん。良いわよ、買ってあげるわ」
「美神さん、ありがとうッ!!!」
感極まったのか泣きながら私の手を握る小竜姫様を見れば私の判断は間違いじゃ……。
「ビキニなら横島さんも少しは意識してくれますかね」
「……どうかしら」
瞳に情欲の色を浮かべた小竜姫様を見て、選択を間違えたかもしれないと思ったけど……。
(まぁ横島君のせいだし、良いか)
私に被害がなくて、小竜姫様に貸を作れて、んで教授の言う通り今の関係性を壊したくないと逃げに回っている横島君も少し向き合うことをおぼえれば良い……横島君はどうにも自己評価が低すぎるし、かなり劣等感が強い性格なので愛される事で少しでもそれが改善されればと思うのだった……。
~タマモ視点~
1・2と準備体操の音頭を取っている横島の声が砂浜に響き、それから少し遅れてチビッ子軍団の声が続く。
「子供は元気ねぇ……」
タンキニタイプの色気のない水着を着ている私だが、今の体型ではこれが限界であり。自分に出来る最大限はやったつもりだが、余り人を褒めると言う事に慣れていない横島に気の利いた事を言えるわけも無く、無理っと叫んで海に飛び込んでしまったのは正直笑った。
「タマモは行かないでござるか?」
「私は良いわよ、ここで日焼けしてる」
「なんで海に来たのに泳がないでござるよ!?」
シロの突っ込みにはぁーと深い溜め息を吐いて掛けていたサングラスを外す。
「あんたみたいな体力馬鹿に付き合って泳いだら死ぬわよ、私は軽くで良いのよ」
シロみたいな体力お化けに付き合っていたら死んでしまうと言うとシロは不満そうにしながらもその通りだと思ったのか準備体操を終えて波打ち際へと走っていった。
「じゃあ泳げるか自信の無い人」
横島がそう声を掛けるとアリス達の殆どが手を上げる。その中に蛍とマリアとテレサが混ざっているのは正直笑ってしまう。
「少しずつ練習して行こうか、海は身体が浮きやすいから泳ぐコツを掴むのに良いと思うし」
「「「はーい」」」
元気良く返事を返すアリス達と海に入る横島だが、流石の横島もこれだけの泳げるかどうか分からない子供達を面倒を見るのは不安が勝ったのだろう。
「1人ずつしか見れないから、順番ね。どうしても海に入りたかったらライフジャケットと浮き輪をして貰うけど……もし良かったらチビ達と遊んでて欲しいかな」
砂浜の上で転がったり砂の城を作って遊んでいるチビ達が横島に呼ばれたと思い手を振る。
「チビ達と遊ぶのも楽しそうでちゅ!」
「確かにクマゴローもゴロゴロしてますし」
「……あの熊、クマゴローって言うんですの?」
海には興味津々のアリス達だが、砂浜の一角に陣取っているチビやアリスが連れて来た横島に懐いた魔獣と遊ぶのも魅力的に思えたのか、海に向かわず遊びに行き、横島の前にはアリスだけが残った。
「アリス泳ぎたい!」
「良し良し、じゃあ少しずつ練習しような」
「はーい!!」
横島と手を繋いで海に入り、足が着かなくなったアリスに脅えの色が混じるが横島が手を握っているのでその顔に安心の色が浮かんで、少しずつ泳ぎの練習を始めている。
「……こういう時水神は絶対泳げるからああいうのは無理だな」
「私も泳げるんですよね。はぁ~」
確かに手を繋いでもらって泳ぎの練習って言うのはかなり心踊るイベントではあるが……それを望むのはこの場合では得策ではない。
(アリスたちがいる以上横島はそっちを優先する。つまり割り込む隙はない)
横島は基本的に女子供に優しいが、幼いほうをより優先する。そして海という溺れる可能性のある場所で目を離す可能性は限りなくゼロだ……海で横島と遊ぶにはまず前提条件が異なってくるのだ。海で一緒に泳ごうと思えばアリス達がいないことが条件にあるが子どもの体力は無尽蔵なのでこれはかなり難しい、では海の他の遊びで何が良いかとなれば最も最適解がある。
(タイミングを見てビーチバレーくらいかしらね)
アリス達も混ざってくるし、他の面子も来て胸囲の格差で心が折れる可能性はあるが……海で一緒に遊ぶのならばこれが一番確率が高い。だけど当然それで満足する私ではないし、どうせ遊ぶのならば横島を独占したいと考えるのは当然の事……むしろ私は独占できなかったら自分が1番出なければ納得なんてしない。多分これはくえす達も同じだろう、側室がいたとしても自分が1番ならば許せる筈だ。
(このホテルは高級ホテル、ちゃんと室内プールもある)
タンキニではないちゃんとした水着を出すのならば室内プール。それも夜で邪魔が入らない時しかない……だから今やるべき事は胸囲の戦力差の確認と、横島にアプローチを掛けてくる相手の出方……それらを全て分析して自分の勝ち目を探し出さなければならない。
(絶対に攻勢に出るわ)
くえすや琉璃は絶対にこの海という立地を利用するし、スタイルも抜群だ。身体の成長ばかりはどうしようもないし、幻術は心眼と横島自身の耐性が高いのでまず無理……つまり私がやるべきことは違和感のないように妨害しつつ、自分の有利な状況を作り出すと言う物であると言う事を改めて確認し、日焼けをしながら策を練るのだった……。
「ドヤア」
「いや、水の上に立てるのは凄いと思うけどそうじゃないよ、天ちゃん」
水の上に立ってドヤ顔していた天竜姫がおどおどと海に身体を沈めるが明らかに脅えの色が強く、竜神の天才児にも弱点はあるのかと思わず微笑ましく思ってしまうのだった……。
~金時視点~
海に入る為に水着に着替えていた金時だったが、海辺に足を向けている途中で何かの気配を感じ取って海とは別の方向に歩いていた。
【……こいつは……間違いねぇ、刀傷だ……だけど……人間のもんじゃねえな、それでこの跡を隠してるこの結界……人間のもんだな。隠そうしやがったのか……】
かなり強力な結界だったが、俺ッチには何の意味もない。そもそも英霊を足止めできる結界を今の霊能者には用意出来るわけもないが、この結界は人間にはかなり強力な代物だろう……。
【この傷……入りと終わりで深さが違うな……考えられるのは不安定な現界か……】
傷跡を調べ終わった俺ッチは立ち上がり、外していたサングラスを再び掛けなおす。
【こいつはちょいと不味い事になったかも知れねえな】
比較的簡単な除霊と聞いていたが少しばかりきな臭くなって来たようだ……遊んでいる所に水を挿すような真似はしたくないが……危険な英霊が出てくる可能性がある事は共有しておくべきだなと思い、結界を完全に破壊しないように気をつけて外に出る。
「ん?お主どうした?」
【折角遊びに来ているのに何気難しい顔をしてるのよ】
ただ海に向かう途中で露出の激しい水着姿の天狗様達にあって、俺ッチは気恥ずかしさからしどろもどろになってしまったのだが、辛うじて自分が見たものを伝える事は出来たと思う。
「なるほどの……あい分かった。僕の方でも調べておこう」
【とりあえず横島達には言わないようにして美神達にだけ話を通しておきましょうか】
【ああ、俺ッチもそれで良いと思う】
休めるときは休むべきだし、もしも英霊相手ならば俺ッチ達が相手にした方が確実だし、安全だ。とりあえず英霊が出現する可能性があると言うことだけは美神達に伝える事で話を纏めた。
「お、金時、鬼一さんにマルタさん!ビーチバレーをするからこっち来てくださいよー」
横島が海辺から俺ッチ達を呼ぶので分かったと返事を返し、横島達の元へ向かったのだが……俺ッチはどうしてもあの結界で隠された傷がどこかで見た事あるような気がしてならないのだった……。
リポート11 臨海学校・序 その6へ続く
不穏なフラグを準備しましたが、この傷痕に関しては序の間ではもう殆ど触れませんのであしからず。次回はもっとほのぼのとして、楽しい描写をメインに書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。