GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート11 臨海学校・序 その7
~おキヌ視点~
夏の魔力というのはやはり凄いのだと思う、皆弾けてしまっていてとんでもない大惨事が勃発していた。六道の貸切に加えて、先に雪之丞さん達が追い出されていたから良い物の、もしもこれが普通の海水浴場だったのならば写真やカメラの撮影で酷いことになっていたと思う……だから。
「恥じらいは捨てたらいけないと思うんです」
「「「……はい」」」
年頃の乙女として捨ててはいけない物を捨てようとしていた蛍ちゃん達へのお説教である。
「私結構歳なんですけど」
「ならもっと落ち着いてください」
「……はい」
【沖田さんは被害者ですけど】
「人を盾にして良いと思ってるんですか?」
【……すいません】
「私ではなく金時さんに謝ってください」
沖田さんの場合は人としてやってはいけない事ですのでお説教です。美神さん達ではなく、同年代でなければ駄目だと思うから。
「琉璃さんも止めてくださいよ」
「……夏の魔力って凄くない?」
「それを言い訳にしないでください」
確かに横島さんと距離を詰めたいという気持ちは分かる。私も痛いほど分かる、本当に横島さんは私の知る横島さんとは別人の様になっている……いや、別人と言うのは正しくないか、結婚した後で蛍ちゃんが生まれた後の横島さんの面が強く出て来ているのだ。
「美味しい?」
【【「「美味しい~♪」」】】
「そっかー、良かった良かった」
「ごめんねえ、手伝って貰っちゃって」
「全然大丈夫っすよ! 鉄板とか使わせてもらってありがとうございます」
ホテルのスタッフがバーベキューとかの準備をしてくれていましたけど、普通の人よりも遥かに多く食べる天竜姫ちゃんとかがいて、間に合わずお腹を空かさせる訳には行かないと横島さんが料理組に回っている。
「……あいつ思った以上に器用だな」
「普通に美味いしな……」
「……横島さんって普通に凄かったんですね……」
横島さんの作る料理は焼きそばとお好み焼きでTHE・大阪の味って感じで普通に美味しい。
「横島GSは超絶優良物件……?」
「でも割り込んだら死ぬわよ、一般ピーポーの私たちじゃ無理よ」
「霊能者で一般ピーポーいうんのおかしいけどな!あ、焼きそば大盛りでおかわりー」
横島さんの優良物件具合が判りひそひそ話をしている六女の生徒もいますけど、自分達は無理だと言って諦めてる。正直横島さんはめちゃくちゃ、攻略難易度が高い。
「ふかー♪」
「あ、おかわり?はいはい、仲良く分けて食べるんだぞ?」
「ふかッ!!」
「ぷぎゅー♪」
チビちゃん達には素材そのまま、ちょっと焼いただけの野菜と果物。それでもチビちゃん達には美味しいみたいで、お皿を砂浜において皆でワイワイと楽しそうに食べて……。
「くあー♪」
「……え、これ焼くの?」
「くあ!」
「あー、うん。分かった」
リヴァイヤサンという名のペンギンが魚を小脇に抱えて海から出て来て、横島さんに焼いてくれと強請り、横島さんは少し困惑したものの下拵えを始める。
「……日常ですかね?」
「「「そんな日常はない」」」
私も少し無理があると思ってるんですからそんな全員で突っ込みを入れなくても………まぁあれです。話を戻すと横島さんを攻略するにはまずチビちゃん達に懐いてもらう、次にリリィちゃん達と仲良くなるが最低条件なんですが……基本的にチビちゃん達って人に懐かないんですよね……。
「美味しいねー」
「みむ♪」
「うむ、美味い」
「……美味」
「美味しいわね~」
「うきゅー」
……舞ちゃんと冥子さんはきっと別の法則で生きているんですよね?だから懐いてもらえるんですよね……?でも本当にチビちゃん達はなんで私達には懐いてくれないんだろう?そしてなんで当然のようにチビちゃん達の中に混じってご飯を食べているんだろう……。
「おーい!蛍達の分もそろそろ焼けるぞー?」
「はーい、今行きまーす」
とりあえずまだ言いたい事はありましたけど、折角料理を作ってくれた横島さんに悪いのでここで一回話を切り上げる事にしましたが……最後にこれだけは言っておかないといけないと思います。
「本当にこれだけは言いますけど、本当に焦るのは分かるんですよ。全然関係すすまないからって、焦るのは分かるんですよ。私もそうですし……でも乙女として超えちゃいけないラインは超えちゃいけないと思うんですよ」
焦りも分かるし、横島さんとの関係を進めたいって言うのも分かるし、他の人とくっついてしまうんじゃって思う気持ちも分かる。だけどそれでもやっぱり一気に一線を飛び越えて関係を進めようとしようとするのは間違っていると私は熱弁を奮うのだった……。
~琉璃視点~
めちゃくちゃ説教されたわ……いやまぁ確かにおキヌちゃんの言い分も分かるし、そっちが正しいって言うのも分かってはいるんだけど……。
(なんか悟ってない?)
横島君が何かを悟っているように見える時があるのだ……自分で言うのもなんだが、私はそれなりに自分の体型には自信がある。それを見て頬を赤らめるという反応こそすれど、それが長続きしないのよね。
「横島!おかわり!」
「良いけど、口の回りソースまみれだぞー?チルノちゃん」
「むぐぐー」
チルノちゃんの口をハンカチで拭いているように、今の横島君の場合煩悩よりも子煩悩の方が強いのかすぐにそっちの方にシフトしてしまうのだ。
「……正攻法で攻略出来るならそうしてますわ」
【ですよねー】
「お前は幽霊なんだから分を弁えなさい」
【いひゃいいひゃい!!!】
分かる分かると言う沖田さんの頬をくえすが八つ当たりで抓りあげているのを見ながら、横島君が作ってくれたお好み焼きを小さく切って口に運んで驚いた。
「え、美味しい……」
意外な美味しさと言うか、店で食べるお好みよりずっと美味しかった。ふわふわだし、食感も良いし……売ってるお好み焼きよりずっと美味しかった。
「お兄様は魔界でも色々作ってくれましたが、どれも凄く美味しかったですわ」
「アリスはねー、オムライスが好きだったよ~」
「あたいは焼きそばが好きだ!」
「吾はあれだな、たこ焼きと丸いどーなっつとか言う菓子が好きだな」
「あげははよこちまの作ってくれるホットケーキがすきー♪」
出るわ出るわ……あれが好きだった、これが美味しかったというアリスちゃん達の感想。
「シズク。横島様って料理出来たんですか?」
「……知らないな、だってあれだろ?男子厨房に入らずじゃ無いのか?」
……シズクの価値観ならそうなるか……横島君が料理できた事に驚いている様子だ。
「私も食べてみたいです」
「私も」
「んーでも今は道具持ってきてないしなあ……あ、そうだ。今度小竜姫様に届けて貰おうか、小竜姫様。お願い出来ますか?」
「え?あ、はい!私は良いですよ」
神魔に物を運んでくれって頼めるのって横島君だからよね……普通は無理だけど、横島君は普通に頼んでる。
「そこのところどう思います。美神さん」
「横島君だからしょうがないわよ」
「もう諦めの境地ですよね、美神さん」
「うん、無理」
「普通そこを止めるのが2人の仕事なんですけど?」
一応師匠なんだから横島君のそういうところは止めて欲しいところなんだけどと言うと分かりやすく目を逸らされた。後で私に全部押し付けてくるんだから、本当にそういうの止めて欲しいと心の中で愚痴っていると横島君が私の隣に腰掛けた。
「あーちょっと休憩、琉璃さん。隣失礼しますね」
「え、良いわよ、お疲れ様」
あって顔をしてるけど、横島君が料理の手伝いを始めたことで事前の取り決めがなかったことになったし、これは私が誘ったわけではなく横島君が私の隣を自分で選んだので私の責任でもない。
(……こんなので機嫌を良くするなんて私も軽い女だわ……)
横島君に掛けられている苦労も多いが、そこは惚れた弱みだからと我慢も出来るししょうがないと思う。だけどやっぱり少しこう役得欲しいなあって思うのは当然の事だ。まあ隣に座ってくれたってだけで満足してしまう私も私だけど……。
「ジュース飲むでしょ?鉄板の前で喉渇いたでしょ」
「琉璃さん、貰います。ありがとうございます」
ちょっと肩の当るくらいの距離の感覚って甘酸っぱい感じがして悪くないのよね。
「これ取ってきて上げましたからちゃんと食べなさい」
「海鮮BBQ美味しかったわよ」
【主殿ー、焼肉が絶品でした!】
「せんせー!これも美味しかったでござるよー!!!」
横島君が私の隣に来ても結局皆横島君の所に集まってきてしまうので、特別な感じはすぐに無くなってしまうけれど……このわいわいと騒がしく楽しい感じは私も嫌いではない……だけど。
「横島君」
「はい?」
「はい、あーん」
「あー……んッ!?」
反射的に私の食べかけのお好み焼きを食べて、驚いた顔をする横島君を見て私は舌先を少しだけ出して笑った。
「間接キスしちゃったねえ♪」
「☆■▲○×■ッ!?」
全然色気のない食べ物だけど、横島君のこの反応を見れば私達には満足だ。当然時間が停止していた蛍ちゃん達が一気に爆発するが、その騒動でさえも私には楽しい物で浮かべた笑みを崩す事はないのだった……。
~魔界マスコット視点~
ボクは龍……名前はまだない。でもそれはボクだけではなく、魔界で暮らしていたほかの魔獣も同じだ。
「キーッ!バッ!!」
「良し、頑張れ頑張れ、もうちょっとだぞ」
斧龍の幼生がご主人(候補)の元へよちよちと歩いている。産まれたばかりで足腰も弱く、歩くだけでも一苦労という様子だが、ボクも生まれたばかりはああなので、どこか懐かしいような気持ちになる。
「うーきゅーう」
……と現実逃避はここまでにして目の前の巨大なモグラの魔獣を前にして、身体を震わせる。武者震いとかではなく、普通に恐怖である。
「モノォ(死んじゃう)」
「こ、ココォ……(うりぼーより強そう)」
「ヨーギシャア!(負けないぞーッ)」
ご主人(候補)の使い魔に勝てればもしかしたら使い魔になれるのでは?と思って挑戦したのだが、うりぼーよりもモグラちゃんの方が圧倒的に強そうだ。
「フッカアア(うおおおおお――ッ!!)」
だがボクは負けない、勝ってみせると突撃し、ほかの3匹もボクと一緒に突撃を仕掛ける。
「うーきゅ」
「ふぎいッ!?」
「ぴぎゃあ!?」
「ものおッ!」
「よぎいッ!?」
だが前足の一撃でボク達は全員吹っ飛ばされ、目を回しながら砂浜に転がる事になった……。
「モノーモノー(強すぎる)」
「……ココぉお……(無理)」
「……ヨギ(次は勝つ)
名前持ちとそうではない使い魔の戦力の差はそうそう埋められるものではない。だけどボク達はご主人(候補)の使い魔になりたいわけで……。
(どうすれば成れるのだろうか?)
強くなるだけなら進化すれば勝てる……多分。
「可愛い可愛い、良し良し」
「みむう」
「うきゅー」
「ぷぎゅう!」
だけど可愛い可愛いとチビ達を撫でている姿を見ていると、何かを間違えているような……気がしなくもないと考えているとふと魔界の父と母を思い出した。
「フカア!(大変だ!)」
「モノ?(どうしたのー?」
「ココォ?(負けた事?)」
「ヨーギィ(怪我でもした?)」
のんびりとした仲間達――なお同じ魔界出身でも、戦闘意欲がないリヴァイヤサンと太陽神の化身はと言うと……。
「ぴー?」
「くぁ」
ご主人(候補)が連れている雛と共にヨチヨチと歩き回り。
「あ、温かいねぇ……」
「う、うん……」
「ちょっとはしゃぎすぎたみたいだな、暫くこの子の側にいると良いよ」
「ぴいー」
アリス達を暖めながらごろりと砂浜に寝転がっているが……あの2匹は別においておいても良いだろう。
「フカフカーフカ!(進化したら可愛くないッ!!」
「「「「!?!?」」」」
ボク達は進化すればどっちかというといかつくなる、そうなるとご主人(候補)に可愛いと言ってもらえないわけだ。可愛くないと使い魔にしてもらえないかもしれない……。
「ヨギ……ヨギャア?(このまま?)」
「……モノモー?(嘘……?」」
「ココーオオ(無理じゃない?)」
確かに進化とは成長だ。それを抑えるのは難しいだろう、だけどチビはそれをやっている。それが出来なければ使い魔として受け入れてくれないかもしれない……。
「フカフカー!!(やれば出来る!)」
チビが出来たのならばボク達も出来る!どうすれば良いのか分からないけどきっと出来る!そしてご主人(候補)の使い魔になるのだと奮起するのだった。
「なんか楽しそうだなあ、海とかやっぱり好きなのかな」
なお横島は当然マスコットの言葉など判らず、成長しないまま強くなるしかないと奮起している魔獣達の気持ちなど分からない。
「横島はさ、もし引っ越したらあの子達引き取るつもり?」
「え?そりゃそうだよ?俺に懐いてくれたんだからちゃんと面倒見ないと、あ、後鬼一さんに預けたガルーダの様子も見に行きたいし……
魔界の保育園にもたまには顔を出さないと……蛍、どうかした?」
「あ、ううん、別に?でもちょっと美神さんと琉璃さんに相談してくるわ」
横島の今後の予定を聞いてふらふらと歩き去る蛍を横島は心配そうに見つめていたが、アリス達に遊ぼうと言われ再び波打ち際に向かって歩き出すのだった……。
~横島視点~
日が落ち茜色に染まる空を俺は海に浮かびながら見つめていた。チビ達は遊び疲れて寝てるし、流石にアリスちゃん達のお風呂までは面倒を見れないので、蛍達に頼んで僅かな自由時間を楽しんでいる所だ、別にアリスちゃん達の面倒を見る事は苦ではないし、俺も風呂に入るかとも思ったが……こうして海に漂いながらぼんやりと考え事をするのも悪くない気持ちだった。
「……楽しかったなあ」
ワイワイと騒がしく、そして賑やかな時間だった。そう思ったところで昼間のバレーボールの光景が一瞬脳裏に浮かんで身体に力が入り、海の中に沈んでしまう。
「ぷはっ!あー……焦った」
とは言えそれは一瞬の事で、すぐに海面に顔を出して大きく息をする。海に沈んだからか火照っていた頬が程よく冷えたのが分かる……。
「……どうなんだろ」
琉璃さんとか、蛍とか、くえすとか俺の事を好きだと言ってくれる人はいる。だけどそれを信じて良いものなのだろうかと思う自分がいる……俺はなにもないし、決して褒められた容姿でもないし……それに対して皆美人だし、俺にない物を沢山持ってるし……。
「……わかんねえな」
1人で海に浮かびながらそう呟き、波にゆられながら俺はどうして好きって言ってくれるんだろうと本気で考えていた。
ここにもし心眼がいればそんな事はないと言ってフォローの1つもしているだろう。だが泳ぐとなれば濡れてしまうので心眼は部屋に置かれていて、この場に横島をフォローする者はいない。元来横島は暗めの性格をしており、自己肯定感が極めて低い。それは百合子達の叩いて伸ばす育て方によるものだが、横島は叩かれすぎて潰れてしまった。だから横島は褒めて伸ばし、感情的になる事はなく怒るとしても何がいけなかったのかと丁寧に説明し、頭ごなしに叱らないと、百合子達と真逆の教育方針を取り、その穏やかなさが子供に好かれる理由となっている。
(自分が嫌な事は人にしちゃいけないよなあ)
自分がやられて嫌な事は人にするものではないと心の中で考えながら海に浮かぶ横島。ここに横島の本質が現れている。表面上は明るいが、その内面は暗くネガティブな面があり、それ故に人に好かれるような人間ではないと言う考えが根底にこびり付いている。もしも一歩進もうとして今の関係が壊れたらと言う恐怖と、自分が好かれる人間ではないと言う考えが横島を臆病にさせていた。好かれる人間ではないと言う暗い部分が横島の対人関係の根底にあり、横島が自分を肯定出来るようにならなければ横島が恋愛をする事はない、教授が見抜いた脅えていると言うのは横島の明るい仮面の下に隠れたその本質を的確についていたのだ。
「ん?」
そろそろ帰ろうかと思い身体の向きを変えると遠くから絶叫のような物が聞こえた。
「……ぎゅうう……」
「おお……ふおおおお……」
「モグラちゃんと茨木ちゃんか?」
うりぼーと茨木ちゃんの声が聞こえ、目を凝らすとモグラちゃんが紐を咥えて泳いで茨木ちゃんを引っ張っていた。
「楽しい!!吾は楽しい!!!」
「うきゅうううう――ッ!!!」
水上ボートの比ではない速度で泳いでいるのを見て、あれ?このままだと追突される?と最悪の予想が脳裏を過ぎった。だがその最悪の予想が当る事はなかった……何故ならば。
「うきゅ?きゅうううッ!!!」
「のわああああ――!?」
「茨木ちゃーん!?」
俺に気付いたモグラちゃんがブレーキを掛け、茨木ちゃんが吹っ飛んで俺の上を飛び越えていく姿に思わず絶叫し、茨木ちゃんの方に泳いで近寄る。
「大丈夫!?」
結構な勢いと高さから海面に叩き付けられたので心配していたのだが、海面から顔を出した茨木ちゃんは満面の笑みを浮かべていた。
「楽しい!!!」
「……そっか」
見た目は子供でも流石に鬼か、あの高さから落ちても平気なんだなと少し驚いた。
「もう暗くなるから帰ろうか?」
「吾はまだ遊びたいぞ!!」
嫌だと駄々を捏ねる茨木ちゃんの気持ちも分かるが、暗くなると流石に危ないだろう。
「ホテルの中で遊べる物もあるんだよ」
「何!?そうなのか!?」
「そうそう、ゲームセンターとかあるし、卓球とかもあるんじゃないかな?」
無理に帰ろうというのではなく、ホテルでも遊べると言うと茨木ちゃんは素直に帰ると口にしてくれた。
「モグラちゃん、ゆっくりな?」
「うきゅ!」
「行けー!!」
紐に捕まるとモグラちゃんゆっくりと泳ぎ出す。レジャーボートとかバナナボートみたいな感じで適度な揺れとスピード感が合って中々楽しい。
(……何か借りてもっと安全に出来ないかな?)
紐に捕まるんじゃなくて、何かに乗って引っ張って貰えばあげはちゃん達も遊べるんじゃないかと考えていると茨木ちゃんが楽しそうに俺に笑いかけてくる。
「海に来て良かった!皆と一緒でとても楽しいぞ!横島は楽しいか?」
「うん、俺も楽しいよ」
「それはいい!じゃあ宿に帰ったら風呂に入ってまだ遊ぶぞ!!」
「それも良いけど先に晩御飯じゃないかな?お腹空いてない?」
俺がそう尋ね、茨木ちゃんが返事を返す前にお腹が大きく鳴った。
「むう、確かに腹が空いている!」
「だろ?だからまずは風呂に入って、そこからご飯を食べてから遊ぼうな」
「うむ!」
「うーきゅう!!」
元気良く返事を返す茨木ちゃんとモグラちゃんを見ていると俺も楽しくなってくる。さっきまでの暗い考えもどこかに吹っ飛んでしまったようだ。
「良し!じゃあ帰るか」
「うきゅう!」
小さくなったモグラちゃんを抱き抱えてホテルに帰ろうと歩き出すが、茨木ちゃんがまだ波打ち際に居る。
「どうしたの?」
帰るって言ってたのにどうした?と尋ねると茨木ちゃんは波打ち際で完全に停止していて、その視線の先には海から顔を出している魔界で茨木ちゃんに懐いたピンク色の魔獣がいた。
「どおん♪」
海面から顔を出して酷く上機嫌に鳴いている。海辺の魔物だから海が好きなんだなと微笑ましい気持ちになる。
「なんだ?お前も海でご機嫌だな、でももう帰る時間だから出ておいで」
俺がそう声を掛けるとピンク色の魔獣はざばざばと音を立てて海から出てきたのだが……。
「どぉん?」
海から出てきた魔獣は海に来た時と違っていて、2回りくらい巨大化していて4足歩行から2足歩行になり尻尾に巨大な貝殻が……。
「え?」
「なんかでかくなってるんだが、どうすれば良いと思う?」
茨木ちゃんがどうすれば良いと思う?と尋ねてくるがそれは俺も知りたい。というか人間界の海にこんなでかい貝殻はないと思うんだけど一体どこから持って来たのだろうか……?
「どぉん?」
何どうかした?という魔獣を見て、俺達が困ってるのはお前のせいだよと思いながらも、巨大化しても基本的な部分は何も変わってないのかぼんやりとしているのでとりあえず着いて来る様に言うとちゃんと着いて来てくれる。
「どうする?」
「こういう時は美神さんに相談してアリスちゃんに聞こう」
魔界の生物なのでアリスちゃんなら何か知っているかもしれないし、俺ではどうしようもないので美神さん達に相談しようと思いホテルへと引き返していくのだった……。
リポート12 臨海学校・破 その1へ続く
と言う訳で序はこれにて終了、横島の本質に少し近づいて、ヤドンっぽいのがヤドランに進化して終わりです。次回は少しシリアスな部分を入れて、ルイ様の悪戯のトリガーをひいていこうと思います。横島の煩悩のスイッチを少しだけONになるギャグイベントで書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。