GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その7

リポート13 臨海学校・急 その7

 

~美神視点~

 

机の上に置かれた結界によって動きを封じられた禍々しい紫の眼魂を前に私達は状況が更に悪い物になった事を悟った……景清が幽霊武者を媒介にして増えるという信じられない能力を発揮し、横島君から預かっていた文珠で命からがら転移で逃げてきた私達がホテルで見たのは真っ青でロビーの床へ倒れてる横島君と必死の表情で横島君の霊力を吸収している眼魂を手から取り外そうとしている蛍ちゃん達の姿だった……。

 

「小竜姫様、横島君の容態は?」

 

会議室に入ってきた小竜姫様に横島君の調子はどうだと尋ねたが、俯いているその姿を見れば返事を聞かなくても横島君の容態が分かってしまった。

 

「そんなに酷い状況なんですか……小竜姫様」

 

「霊力枯渇による死の心配はありませんが……頼光眼魂を具現化させた事で狂神石の活性化の可能性が極めて高い状態です。今は心眼に竜気を分け与える事と鬼一法眼さんに対応して貰っていますが……出来るだけ早く景清を討伐、あるいは封印してヒャクメに横島さんを診せないと不味い状況です」

 

狂神石の活性化の言葉に会議室にいた私達の顔が強張った……平安時代のシェイドによる月神族の大虐殺が脳裏を過ぎったからだ。

 

「元々横島は景清との戦いで主力にする予定はありませんでしたわ。横島の事は確かに心配ですが……ここで横島の事だけを考えて動かなければ共倒れ、まずは景清を倒す事……全てはそこからですわ」

 

冷酷とも言えるかもしれないが、優先順位を間違えてはいけないとくえすが不安と心配で揺れる瞳を強い意志の力で抑え込み、最も優先するべき事を間違えてはいけないと言う。

 

「景清を倒すにはまず景清の寄り代になる亡霊武者の出現を押さえ込まなければなりません。その手立てはもう準備しています、冥子さん……説明をお願いします」

 

「六道の結界を~何とかして復活させるわ~これはマルタと三蔵様と~私とお母様でなんとかするわ~」

 

「六道の結界を復活させるだけで何とかなるワケ?」

 

冥子の言葉にエミがそう尋ねる。それは私も思っていた……六道の結界は霊道を封じる物で、出現している悪霊を封印する物ではない筈だ。

 

「それはね~表向きの話なのよ~確かに霊道は封じてるけど、それだけじゃなくてあの結界は源氏と平家の悪霊だけを封印する物なのよ~でも1年で色んな雑霊が堪っちゃうから~海開きの時期に結界を解除してるのよ~大体おかしいと思わなかった~除霊実習って何時も1日で終わらせてるけど~普通それで終わると思う~?」

 

冥華おば様の言葉の意味が一瞬理解出来なかった……だがGSとして活動して来た私達はその言葉の真意をすぐに読み取った。

 

「意図的に生徒達が経験を積む為だけの悪霊を集めている……」

 

「大~正~解~まぁ~かなりグレーっと言うかあ~黒い部分なんだけど~悪霊を集めて源氏と平家武者と戦わせて~処理できない位集まったら、結界を解除して雑霊は生徒~源氏と平家武者は六道の霊能者が何年も倒してたのよ~?」

 

黒を通り越して霊能法で犯罪に当るレベルの事をしていた冥華おば様に目を見開いた。琉璃も初めて聞いたのか目を見開き硬直している。

 

「そうしないと~周囲が祟りで大変な事になっちゃうからねぇ~必要悪って事よ~ホテルのオーナーも知ってるわよ~?」

 

源平合戦の見做しがずっと行なわれていた土地だからこそ景清の出現に繋がってしまったのだろう、長い年月を掛けて蓄積した怨念が英霊召喚への道を作った。

 

「結界の復活は可能なんですか?」

 

「なんとかやってみるわ~多分半日くらいかしらねぇ~源平武者の亡霊は何とか封印できると思うわよ~」

 

ただ無理に封印するからまた近い内に除霊に来ないといけないけど~と付け加えられるが、景清を倒す為ならばそれくらいのリスクは背負おう。

 

「雑霊と妖怪はかなり数を減らしているので、私のルーンで処理出来ると思います」

 

「となると後は景清本人をどうするかですね」

 

ブリュンヒルデのルーンで雑霊と妖怪を封じ、源平武者も封じ込めれば残るは景清のみだが……その景清が1番の問題だ。主軸はノッブや牛若丸、沖田の英霊組みを主軸に当る事は間違いないんだけど……。

 

(凄い嫌な予感がするのよね)

 

誰も口にしないが言いようのない悪寒はこの場にいる全員が感じているはずだ。自分と同じ能力の分身を複数体作り出す能力自体かなり強力だが……景清にはまだ隠している手札があるように思えてならないのだった……。

 

 

 

~おキヌ視点~

 

吹いていたネクロマンサーの笛を口から放して頭を下げると拍手喝采が私に降り注いだ。避難してきている民間人の人達は外に出ることも出来ず、美神さん達の戦いの音で恐怖を感じているだろうから笛を聞かせてあげて欲しいと美神さんに頼まれていたのだ。

 

(とりあえず、これで良さそうですね)

 

疑心暗鬼、恐怖による暴走――民間人を保護した場合の最悪の可能性は聞かされていて、実際起爆寸前の雰囲気だったが私の笛の音色で尖っていた避難していた人達の魂が丸くなったことに安堵し、ぺこりと頭を下げて私はホールを後にした。

 

「おキヌちゃん。良い音色だったよ」

 

「うんッ!すっごい綺麗な音だった!」

 

「私お姉ちゃんの笛の音好きだよー」

 

「凄く心が安らぎました」

 

ベッドに座っている横島さんの賞賛の声に続いてアリスちゃん達も私を褒めてくれて気恥ずかしい気持ちになる。

 

「ありがとうございます。それでどうですか?大分楽になりましたか?」

 

「うん、ネクロマンサーの笛は回復も出来るんだな。驚いたよ」

 

横島さんの顔色も大分よくなっている事に安堵しかけたが、安堵もしていられない。ネクロマンサーの笛自体に回復等の効果はない、シズが作ってくれた笛ならば話は別だけど、ネクロマンサーの笛は魂に安らぎを与える能力だ。

 

(それだけ横島さんの魂が傷ついていたって事かな)

 

頼光眼魂を作ったことで横島さんは今回の件では完全に戦力外になってしまったが、私は正直言うとそれに安堵していた。ネクロマンサーの笛を使えるから分かるのだが今の横島さんの魂は余りにも不安定なのだ。普通の魂は丸みを帯びているのだが、尖っていたり、四角くなったり、魂の形状が安定しない。今も僅かに丸みは取り戻しているが鋭角な面が多く不安を感じる状態のままだ。

 

「あら?その眼魂はどうしたんですか?」

 

横島さんのお腹の上に眼魂が1つ乗っているのを見てどうしたのか?と尋ねるとチビちゃん達と遊んでいた茨木ちゃんが顔を上げた。

 

「酒呑の眼魂だッ!酒呑ならあの牛女より強いからなッ!横島を守ってくれると思ったのだッ!」

 

「そっか、茨木ちゃんは優しいね」

 

酒呑童子――決して良い妖怪ではないという事は知っているが、茨木ちゃんがあれほど信頼しているのならばきっと信用出来る人だと思う。

 

「ふか……」

 

「よぎぃ」

 

横島さんがベッドで横になっていて遊んでくれないのが不満そうに鳴いている魔獣にアリスちゃんと紫ちゃんが近づいて、後ろから抱っこする。

 

「お兄ちゃんが元気になったら遊んでくれるから、今は我慢しようね」

 

「そうですわ。お兄様だって調子の悪い時もありますわよ?」

 

動物と話せるアリスちゃん達に注意され、不満そうではあるが頷いてミィちゃん達の輪に加わっていく姿を見て思わず笑ってしまう。

 

「何か面白かった?」

 

「いえ、なんか保育園みたいに見えちゃって」

 

アリスちゃん達は10歳くらいなので保育園と言うのはおかしいかもしれないけど、不思議と保育園みたいに思えてしまったのだ。

 

「保育園か……タタリモッケさんにも言われたけど、俺保父さんに向いてるらしいぜ?ちょっと意外だけどさ」

 

「ふふ、私もそう思いますよ」

 

横島さんは意外だと言うけど、保父さんは横島さんの天職かもしれない。子供に好かれて優しい横島さんにはこれ以上ない職業だと思う。

 

「本免許取れなかったら保父さんの勉強をしてみようかなあ……」

 

「GSの免許をとっても保父さんの勉強をしてみたらどうですか?結構そういう人居るらしいですよ?」

 

子供でも強力な霊能に目覚める事は少なくない、そういう子供の面倒を見れる人は少なくてGS免許に加えて保父さんや保母さんの資格を取る人は少なくないらしいですよと言うと横島さんは勉強してみるかなあと腕を組んで呟いている。

 

(そっちの方が良いと私は思うんですよね)

 

戦い続けて有名になるよりも、横島さんはそっちの方が向いていると思う。アシュタロスの乱の英雄なんて呼ばれていた未来の横島さんはかなり無理をしていた……横島さんは優しくて戦うに向いていない性格だから別の道があっても良いとおもう。

 

【知識は無駄にならんし、私も勉強したほうが良いと思うぞ?お前は案外教師に向いているしな】

 

「教師……教師かあ……俺ぐうたらだぜ?」

 

【頭が良い事だけが教師の条件ではないと言う事だ。戦う事だけがGSではないのだぞ?おキヌ、悪いが林檎を剥いてやってくれるか?】

 

心眼さんも私と同じ考えなのだと思うと私の考えは間違いではないと思って安堵し、私はベッドサイドのお見舞いの果物の盛り合わせから林檎を手に取った。

 

「あ、お姉さん、私も食べたい」

 

「……私も欲しいです」

 

「みむー!」

 

「私も食べたいですが良いですか?」

 

「きーばー♪」

 

私が林檎の皮を剥こうとしているのを見てアリスちゃん達も食べたいと声をあげ、その周りでチビちゃん達が小さい前足をピコピコ振るのを見て私は小さく笑って良いですよと返事を返し、果物ナイフを手に林檎の皮を剥き始めるのだった……。

 

 

 

~蛍視点~

 

こう言っては悪いけど横島が頼光眼魂の影響を受けてダウンしてくれた事に私は安堵していた。横島は臆病で戦いに向かない性格なのに私達に危害が加わりそうになれば恐怖を飲み込んで戦いに出てくる。守ろうとしてくれている事は嬉しいのだが、戦うたびに狂神石の影響を受けるのならば横島は戦わないほうが良い――横島を戦わせない為に私達も昔の文献などを調べて英霊や神魔と戦う術を手に入れる為に努力して来たのだ。景清との戦いは厳しくなるが、実戦の中で分かる事もある。

 

【ぐうっ……冗談じゃろッ!?】

 

【馬鹿な、何故ここまでほどの差がある!?】

 

ノッブと牛若丸の悲鳴と動かない身体――私達は最初の段階で何もかも計算違い、思い違いをしていたのだ。

 

【ワシを敵と思っただろう、だがそれが全ての間違いよ。ワシは抑止力に呼ばれてこの場に来たのだ】

 

「反英霊が抑止力に召喚される事なんてありえませんッ!!」

 

景清の言葉に小竜姫様がありえないと声を上げる――景清の異常な強さ、それは抑止力によって召喚され、世界の後押しを受けていたからだった。

 

【ありえない事はないぞ?抑止力は世界を存続させる為の存在だ。抗わず、ガープ達が世界を支配する事で地球が存続するのならば……ガープ達と戦う相手を悪と見做すのではないか?】

 

足元が崩れ落ちる感覚と言うのはこの事を言うのだろう――世界はガープ達を是と認めたと景清が刀を振るいながら告げた言葉に私は身体から力が抜けたのを感じた。

 

「そんな馬鹿な話がある物ですかッ!!」

 

【ありえるはずが無いッ!】

 

三蔵様とくえすの魔力と神通力の攻撃が同時に放たれた。狙った訳ではないだろうが……感情任せの攻撃は混ざり合い相反する力が1つになった一撃は英霊は愚か、神魔ですら消し飛ばすであろう一撃を景清は刀の一閃で弾いて見せた。

 

【ワシを代弁者に据えるは正気かと思う所であろうが……事実は事実。今の人間ではガープは愚か天使にすら勝てぬ……天使が勝てば世界は滅ぶ、かといってガープが勝利しても世界は滅ぶ、だがまだガープの方が目があると考えた抑止力もいるということだ。源氏ではないおぬしらに怨みはないが……これもまた英霊としての仕事だ。この場で死に絶えてもらおうか】

 

景清が歩く度に具足が音を立てる。それが近づいてくるという事を如実に示しており、逃げなければ、立向かわなければと思っているのに、真実か虚言かも定かではない抑止力がガープを認めたと言う景清の言葉とその圧倒的な力と景清の身体から立ち上る神通力と魔力が景清の言葉に真実味を増させていて私から戦うという意志を奪い取っていく……。

 

「そんな馬鹿げた話を信じる訳が無いでしょうッ!!」

 

「例えそれが正しいとしてもッ!私はそんな言葉を信じないッ!」

 

【信じる信じないはお前達次第――だがワシに勝てねばワシの言葉が真実となるぞッ!】

 

美神さん達はまだ戦う意志を見せているけど、お父さんから神魔、英霊、抑止力等の話を聞いている私は景清の言葉が真実だと分かり、心が折れてしまった……戦え何をしているというくえす達の檄が飛び、立ち上がらないと……景清に立ち向かわないといけないと分かっているのに……足に力が入らない、いなくて良かったとこの場にいなくて正解だと思っていた横島の姿を無意識に求めた。その無意識の訴えに横島は答えた……正確に言えば横島ではないのだが、その願いに助けを求める気配に横島は答え、そして力へと飲み込まれた。

 

【カイガンッ!丑御前!迅雷!一掃!牛力招来!】

 

漆黒の雷が私達の目の前に降り注ぎ、其処から仮面の戦士が姿を現した。黒と紫のパーカーに赤く脈打つ狂神石の鼓動、そして牛の角と雷を模した模様がマスクへと映し出されている。

 

【抑止力の助力を受けているから自分は正しい?思い上がりも甚だしい、その様な狂言を口にする頭蓋ごと打ち砕いて上げましょう】

 

ガンガンブレードの刀身を赤黒い雷電が包み込み、緩やかに振るわれた暗い海辺に赤い三日月を描き出す。

 

「何で……ッ!?」

 

「あれだけ封印したのに何故ッ!?」

 

頼光眼魂はこの場にいる全員がその全てを使って封印した。なのにゴーストドライバーに頼光眼魂がセットされていた。

 

【頼光か、源氏武者がこの場に何をしに来た?】

 

景清の言葉に頼光が憑依している横島は喉を鳴らして笑った。

 

【我が子が助けたいと思っているのならばそれを手伝うのは母として当然でしょう?】

 

【気狂いめ、まぁ良いワシの前に立ち塞がると言うのならば……殺すまでッ!!】

 

【はははッ……はははははははッ!!!やってみろッ!!この亡者如きがッ!!】

 

景清とシェイド頼光眼魂の振るった刃がぶつかり合い、紫電を周囲に撒き散らす。ぶつかり合いの余波の衝撃に私達は耐えられず吹っ飛ばされてしまうのだった……。

 

リポート14 鬼神降臨 その1へ続く

 

 




次回は横島が何故頼光魂を持っていたのかから始めて行こうと思います。後は新しいキャラを1人投入してみたいと思っているので次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS

ククルカンガチャ最終日前に20連でククルカンをお迎えできました。
でもQPがないので育成間に合いません……無念
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