GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

9 / 157
その6

リポート2 竜の魔女リターンズ その6

 

~蛍視点~

 

西条さんがくえすへの届け物を横島に頼んだと美神さん聞き、更に西条さんに呼ばれている美神さんに頼んで、私も西条さんの所に行くのに同行させて貰っていた。既に横島は今頃くえすの元に行っているだろうけど、それでも何故横島に1人に行くように頼んだのかがどうしても解せなかった。

 

「いや、私も大分考えなおすように頼んだんだけどね。どうしても横島君じゃないと駄目だって言ってて」

 

「でも正直今のくえすってめちゃくちゃ危険だと思うんですけど……」

 

正直何故西条さんが横島に届け物を頼んだと言うのが気になっていた。こういったらなんだけど、今のくえすの精神状態ってかなりめちゃくちゃだと思う。

 

「横島君が危ないのは私も承知してるけど、ノッブと牛若丸もいるから大丈夫だと思う」

 

「……それでもめちゃくちゃ不安なんですけど……」

 

とりあえず西条さんには何故横島に届け物を頼んだのか、そこの所を問いただそうと意気込んでオカルトGメンの所長室に足を向けていると、そちらから琉璃さんの声が響いてきた。

 

『いやいや、正気!?今のくえすに横島君を会いに行かせるとか鴨ネギよ!?』

 

『それは僕も重々承知してるんだけど、正直神宮寺の手綱を握れるのって横島君だけだと思うんだよ』

 

琉璃さんの意見には私も100%同意出来る。横島が無防備で尋ねて来たら凄いチャンスだと思うと思う、特にくえすみたいな性格だと甘言で単純な横島を取り込もうとすると思う。

 

『それは生贄って言うのよ!?』

 

『……大丈夫だと思う』

 

『まぁまぁ、西条先輩は余計な事を言わないで、神代会長の言い分も判ります。ですが、同じ魔女として大丈夫ではあると私が断言します』

 

西条さんと琉璃さんの話し合いにもう1人の声が加わった。でもこの声は知らない人の声だ……。

 

「誰ですか?」

 

「魔鈴めぐみ。マリア7世と一緒に来日してるのよ」

 

美神さんに言われてやっと思いだした。だけど良く考えると私達と魔鈴めぐみってあんまり関係性がなかったから、記憶の中の人物と声が合致しなかったのだろう。

 

(それにあんまり重要視していなかったしなあ……)

 

白魔法の専門家で攻撃的な技能は余りにも貧弱、確かに一定レベルの攻撃は出来るが美神さん達よりも格段に劣っている相手でお父さんも興味を抱いていなかった。それにこの世界ではくえすという圧倒的な能力を持つ魔女がいるからこそ余計にめぐみさんに対する興味が低かったみたいだ。

 

「西条さん。入るわよ」

 

美神さんがそう声を掛けてから西条さんの部屋の中に入り、その後を追って私も西条さんの部屋の中に入ると琉璃さんを宥めている如何にも魔女という風貌の女性がいた。その姿を見てやっと私はめぐみさんの事を思い出せた。

 

「あら?美神さん、こんにちわ。そちらの子が美神さんのお弟子さんですか?」

 

「そうよ、芦蛍ちゃん。それよりも魔女だから大丈夫って言うのはどういう事?」

 

私の事を紹介し、すぐに魔女だから大丈夫と言う発言の真意を尋ねる美神さん。少し声に棘があったのだが、めぐみさんはにこりと微笑み、私達に椅子に座るように促した。

 

「魔法使いと魔女の違いって判りますか?」

 

「何それ?言葉遊び?」

 

私もそう思った。魔女と魔法使いの違いなんて私にはあるように思えなかった。魔法を使うって言う意味では同じに思えるし、魔法使いと魔女の違いなんて無いように思える。

 

「なるほど、では先輩と神代会長はわかりますか?」

 

「いや、僕も降参だ。魔女と魔法使いは同じではないのかな?」

 

「私もそう思うんだけど……何か明確な違いがあるの?」

 

やっぱり美神さん達も判らないと告げてめぐみさんに降参だと告げる。するとめぐみさんはふふっと小さく笑い、小首を傾げた。

 

「私も判りません」

 

「「「「おいッ!」」」」

 

あれだけ自信たっぷりな表情をしておいて判らないと言うめぐみさんに思わずおいっと言った私達は絶対に悪くない。

 

「だから私の私見になるんですけど……魔法使いは現実をまだ知らず、夢を見ていられる時。そして魔女は受け入れ難い現実を知り、心が

磨耗した時の事を示すと思うんですよ」

 

それは余りにも抽象的だった。現実を知っているか、知らないか?それが何故魔女と魔法使いという存在を分けると言う意味は全く意味が判らなかった。

 

「受け入れ難い現実って言うのは魔法使いの心を傷つけます。そうして心が砕けたら魔法使いは魔女となり、そして悪魔になります。判りますか?魔法は魔の術、使えばその心を蝕み、夢を願いを失えば……人間でありながら、魔法使いや魔女は魔神にも、悪魔にもなってしまうんです」

 

それは判らない話ではない、魔法や魔術は魔族の術だ。それを人間が使えばその魂が魔族に近寄るのは当然だ……そうならないように踏み止まる何かが魔女と魔法使いには必要だとめぐみさんは言った。

 

「人間性って事?」

 

「ええ、己を失わず、人間としての道徳と善性を残す事……それが魔法使いにも、魔女にも必要とされるんです」

 

「「「「道徳と善性?」」」」

 

「こほん、まぁ確かにくえすは善性とは皆無な性格ですけど……ヨーロッパにいた時はにこりともしなかったんですよ?それを考えれば、

横島君でしたね。彼の存在はくえすにとって人間側に踏み止まる楔石なんです。自分の気持ちだけを強引に押し付けて嫌われる事をくえすは何よりも恐れている、だから大丈夫なんです」

 

「だから大丈夫だって言いたいんですか?それは余りにも楽観的では?」

 

私がそう言うとめぐみさんは判ってますよと言わんばかりの笑みを浮かべ、なんか凄く居心地が悪く感じた。

 

「適度にガス抜き出来れば良いんですよ。くえすも少しガス抜き出来れば落ち着くでしょう、彼女は誰よりも自分を律するって事を徹底してますからね」

 

横島君と話をすれば落ち着くでしょうとしたり顔で言うめぐみさんだけど、やっぱり私達には信用出来なくて本当とかなあという気持ちの方が強かった。

 

「所で琉璃も西条さんに文句を言いに来たの?」

 

「あ、いえ、それはついでで、本題は冥華さんからの頼みで」

 

「「じゃ、そういうことで」」

 

「逃がしませんよッ!」

 

冥華さんの名前が出て逃げようとした私と美神さんの服を掴む琉璃さん。横島の事で文句を言いに来たのに、まさかそれが更なる地獄に私達を引きずり込むことになるとは夢にも思わないのだった……。

 

 

 

 

 

~くえす視点~

 

めぐみの語る魔女と魔法使いの関係性は当たらずとも遠からずだった。魔に属する術を使う以上己が魔に落ちないように、踏み止まれる何かの心の支えが必要だった。それがなければ心を蝕む魔力には勝てず、魔に染まることは当然の事だった。魔女、魔法使いに限らず闇側の術を使う者には最後の一線を踏み越えない為の何かが必要だ。人によってはそれが道徳であったり、人を信じる心であったりと様々だ。それが依存や執着と言った負の感情であったとしても、魔に完全に落ちる前に踏み止まれる要素であれば人には必要となる。それが神宮寺くえすと言う限りなく魔に近い魔女にとっての外付けの良心――横島忠夫と言う存在だった。

 

「わぁ。この紅茶美味しいですね」

 

「ミルクと砂糖をそれだけ入れておいて紅茶の味が判るんですか?」

 

良い茶葉を使っているのに砂糖をミルクをたっぷりと入れた横島にそう言うと、横島は肩を竦めて申し訳なさそうな顔をした。

 

「うっ、それを言われると辛いですね」

 

「別に怒っている訳ではないのですのよ?ただ飲んでから味を調整して欲しかったんですのよ」

 

別に横島を悲しませたい訳でもないので、すぐにそうフォローを入れる。正直に言えば100gで8000円を越える最高級のダージリンだ。その香りを楽しんで欲しかったという気持ちがないわけでは無いが……横島には少し早すぎたかもしれないと少し後悔した。

 

「今度はココアにしましょうかね?」

 

「いや、それは流石に……」

 

「それだけ砂糖とミルクを入れているんですから、そっちの方が飲みやすいのでは?」

 

ロイヤルミルクティーでもそれだけミルクを入れないだろうという量を入れているので、最初から甘い方が横島には喜ばれるのかもしれない。

 

「でもケーキと一緒に食べると丁度良いですよ?いやむしろ甘すぎる?」

 

【横島よ、そのケーキを合わせる用の紅茶だ】

 

「そうですわよ?だからミルクと砂糖は殆ど入れないのが普通ですわ」

 

「マジか……」

 

心眼が横島と一緒なのは当然の事だからそれに目くじらを立てない。むしろ心眼は私も琉璃も蛍も観察して、誰が1番横島に相応しいと考えている素振りさえある。ならば心眼を味方につけてしまえばかなり有利になるのでは?とさえ思っている。

 

「……えっと、もう1杯貰えますか?」

 

「ええ、良いですわよ?」

 

空になったティーカップに紅茶を注いで横島に差し出す。すると今度は香りを嗅ぐ素振りを見せ、驚いた顔をする。

 

「凄く良い香りがします。えっと花って言うか、うーん。凄く熟した果物みたいな……?」

 

「そういう種類の茶葉ですからね。セカンドフラッシュと言うのですわ」

 

夏に摘んだ最高級のダージリンだ。その香りも味わいも紅茶の中では1・2を争うほどの物だ、それこそ紅茶の女王と言われるほどの品なのだと説明すると横島は感心したような表情を浮かべる。

 

「やっぱり神宮寺さんは凄いですね」

 

ぽやぽやとした警戒心も敵意もない、純粋な尊敬と好意がその表情から伝わってくる。その顔を見ているだけで荒んでいた自分の心が落ち着いてくるのが判り、思わず苦笑する。どれだけ自分が横島に惚れ込んでいるのか、それが自分で判ってしまったからだ。

 

(めぐみになにも見抜かれているようで面白くはないですけどね)

 

横島が西条からの届け物と言って持ってきた封筒には1枚の書類――と言うか手紙で、要約すると少しガス抜きしなさいと、そして早く2人じゃないと解読出来ない魔道書の解読を始めようと言う旨の手紙だった。私がイラついているのも、ジャンヌ・オルタを敵視しているのも、何もかもわかってますと言わんばかりのめぐみの反応が凄く腹が立つ。

 

「何か怒ってます?」

 

「いえ、別にそう言う訳ではないですわよ。ただ色々考える事があるって事ですわね」

 

私がそう言うと横島は申し訳なさそうな顔をして、私の反応を窺うような顔をした。

 

「ジャンヌさんの事ですか?」

 

横島の口から出たジャンヌ・オルタの名前に眉が寄った。それを見て、横島はすみませんと謝罪の言葉を口にする。

 

「その神宮寺さんが俺の事を心配してくれてるのは判るんです。でも、ジャンヌさんは悪い人じゃないんです」

 

上機嫌だったのが一瞬で最低の気持ちになるのが判る。これがまだ蛍の名前だったのならば、自制も利いただろう。だがジャンヌ・オルタは駄目だ。駄目な理由も判ってる、あいつと私は余りにも似ている。だからこそ私は腹が立つ……同属嫌悪と言うやつと言うのは判っている。

 

「それを私に言って横島は何を望んでいるのです?仲良くしろとでも?」

 

横島の頼みでもそれだけは聞き入れられない。むこうも同じだろう、余りにも似通っているからこそ私達は決して相容れない。

 

「あ、いや、別にそういうわけじゃなくて……そのえっと……」

 

「言いたい事があるなら、はっきりと言いなさい」

 

私が強い口調で言うと横島はそのしどろもどろになりながらも自分の考えを口にした。

 

「そのジャンヌさんはジャンヌさんで、神宮寺さんは神宮寺さんで、これからもまた神宮寺さんには色々助けて貰えたらなって思うんですよ」

 

ジャンヌ・オルタを特別視している訳ではない、しかし私を特別視している訳でもない。でもそれが横島らしさなのではと思った、そう思うと上手く説明出来ないのだが、何かこうストンと腑に落ちるものがあった。

 

(ああ、簡単なことだったのですね)

 

横島がジャンヌ・オルタだけを特別視し、自分への興味や、今までのように頼られることが無くなると言うのが嫌だったというのが判ると、自分でも馬鹿馬鹿しい事で悩んでいたと思わず笑ってしまった。

 

「えっと?怒ってます?」

 

「良いでしょう。助けてくれと言うのならば何度でも助けてあげますわ。そうですわね、ジャンヌなんかよりも私の方が優れているという

事を教えてあげましょう」

 

「いや、そういうことじゃな「とにかくこの話は終わりですわ、今日はもうジャンヌの名前を聞きたくありません」……うい」

 

横島は争って欲しい訳ではないと言ったが、私とジャンヌの追突はまのがれない。その上で私の方がジャンヌよりも優れている――それを横島に教えてやればいい、そう思うと私は笑いを抑えれず、横島がどうしようと言う顔をしているのを見て、更に笑いがこみ上げてきた。

 

「別に喧嘩する訳ではないので安心してくれて良いですわよ?」

 

「ほ、本当ですか?喧嘩とかしないでくださいよ」

 

「ええ、約束しますわ」

 

屈服させて、悔しそうな顔をしているのを見下すの面白いと思い喧嘩しないと横島に約束した。だが私とジャンヌが出会った時に始まったのは喧嘩なんて言うものではなく、殺し合いへと発展する事になる事をこの時の私も、いえ、誰もが予想にもしないのだった……。

 

 

 

 

 

 

~小竜姫視点~

 

ジャンヌダルク・オルタに関しては最高指導者から様子見と言う指示が降りた。その理由は簡単だ、排除すれば横島さんの反発と反感を買う事が判っているからだ。

 

「横島はもう少し警戒心とか人を疑うことを覚えさせるべきだと思う」

 

「ですね。横島は警戒心とか皆無ですし」

 

メドーサとブリュンヒルデさんが溜め息と共に言うと、今回特別に話し合いに参加していたルキフグスさんがエプロンで手を拭きながら、私達の座っている机の一角に腰を下ろした。

 

「横島ですけど、警戒心はかなり強いですよ?私がルイ様のお願いでお手伝いをしているときも最初は凄い警戒してました」

 

「は?いやいや、嘘だろ?」

 

「私もそう思うんですけど、何か証拠でも?」

 

私達の知っている横島さんとルキフグスさんが見ていた横島さん――そこには大きな認識の差があるような気がしてならない。正直横島さんが誰かを警戒している所なんて見たことがない。

 

「簡単に言うと信用しているからでしょうね。貴方達が自分や自分の周りに害を与えない――そう認識しているから無警戒なんですよ。横

島本人はかなり人見知りですし、かなり慎重ですよ」

 

「「「嘘だぁ……」」」

 

魔界の宰相なんて言う役職にいるので人を見る目はあると思うんですが、横島さんが警戒心が強いとか正直信じられない。

 

「よく観察していれば判りますよ。警戒するべき人間とそうじゃない人間を一瞬で判別してるので、かなり判りにくいと思いますけどね」

 

私達とルキフグスさんの差と考えると日常的に横島さんの家にいるかどうかだと思う。もしかすると私達の見ていない所で……見ていない所で……。

 

「駄目ですね、警戒心の強い横島さんが想像出来ません」

 

「その前にシズク達が排除しそう」

 

「私も同意見です」

 

横島さんの警戒心よりも牛若丸さん達の方が警戒心が遥かに上だ。ルキフグスさんの言う通り横島さんの警戒心がかなり強いとしても、それ以上にシズクさん達の方が警戒心が上という風にしか思えない……そんな事を考えていると私達の部屋の電話が鳴った。

 

「……物凄く嫌な予感がするんだけど」

 

「私もです」

 

龍の直感と言っても良い、この電話は様々な切っ掛けとなると判っていた……それでも取らざるを得ない。この番号を知っているのは美神さん達だけ、紛れも無く何かが起きようとしている。

 

「もし『もしもし小竜姫様!?悪いんだけどすぐにこっちに来てッ!』ッつう」

 

もしもしと言い切る前に美神さんの悲鳴にも似た声が響き思わず受話器を耳から離した。その焦りようから間違いなく最悪の事態だと言うのは判った。私の反応を見てメドーサ達もただ事ではないと悟り、臨戦態勢に入る。

 

「落ち着いてください美神さん!何があったのか教えてください!」

 

『除霊の依頼があって横島君達と仕事に出ていたのッ!それにジャンヌ・オルタもついてきて』

 

「ちょっと待ってください!ジャンヌ・オルタを連れ出したんですかッ!?何故そんなことをッ!」

 

ジャンヌ・オルタの扱いは慎重に慎重に対処してくれと言ったのに、何故除霊なんて言うイレギュラーの発生確率の高い場所に連れて行ったのかと思わず怒鳴ってしまった。

 

『勝手に着いて来たのよ!私のせいじゃないわッ!そ、それよりもジャンヌ・オルタが急に私達に怒り出したのよ!私達のせいで横島君がこちら側に来てしまった、お前達は何をしていたって!横島君を気絶させてどこかにいったのよ!』

 

こちら側?その言葉の意味は判らない、判らないが友好的だったジャンヌ・オルタが急に敵対するほどの何かがあったと見て間違いないだろう。

 

「判りました。すぐに私達も其方に向かいます、今どこにいますか?」

 

『ジャンヌ・オルタの魔力の痕跡を追いかけてる所!蛍ちゃんに変わるから詳しくは蛍ちゃんに聞いて、全員しっかり掴まっててよ!』

 

電話越しに聞こえる悲鳴とアスファルトを削る音を聞いて、追いかけながら電話をしていたのかと今悟った。

 

『もしもし小竜姫様ですか!?』

 

「はい、落ち着いて何か目印があれば、その近くまで行きますからある程度で良いんです、現在位置を教えてください」

 

空を飛べるので合流まではそう時間は掛からない、なにか目印があれば良いと伝えると蛍さんは場所が判りますときっぱりと告げ、私にその場所を告げた。

 

「すぐに合流します、メドーサとブリュンヒルデさんも一緒に行くので安心してください」

 

受話器を電話に戻し、険しい顔付きをしているメドーサとブリュンヒルデさんに視線を向ける。

 

「どこへ行けば良い?」

 

「遠い場所ですか?」

 

武具を展開している2人を見ながら私も2振りの神刀を装備し、龍神の武具を素早く身につける。

 

「場所は博物館です。龍の魔女の旗が飾られていたあの博物館だそうです。急ぎましょう、横島さんが危ない」

 

ジャンヌ・オルタが召喚された博物館。旗が飾られていた部屋の真ん中で眠る横島を大事な宝物に触れるように撫でるジャンヌ・オルタの瞳は酷く優しい。自分の着ていたマントを横島に着させ立ち上がるジャンヌ・オルタ。立ち上がった時、その瞳には何もかもを焼き尽くす激しい憎悪の炎が宿っていた。

 

【まだ間に合うぞ。ジャンヌ】

 

【はッ!余計なお世話よ、心眼。私はね、許せないのよ。判る?いや、判らないでしょうね。私はアヴェンジャー、復讐者。この怒り、この憎悪は誰にも理解などされぬ】

 

【判る。お前の怒りは判る】

 

殺気を帯びた視線を心眼に向けたジャンヌ・オルタは何かを悟ったような表情を浮かべた。

 

【そう、あんたもそうなの。じゃあなんで、そんなに冷静なの?】

 

【私は横島の信じた者を信じると決めているからだ。お前ももう少し様子を見ろ、今なら私が弁解を手伝ってやる】

 

【あんたも随分なお人よしね、でも私は違う。私は許さない……このまま戦えば横島は戻れない】

 

【そうとは限らない】

 

【いいえ、なるわ。私には判る、横島が堕ちてしまう、私達の側に来てしまう。私はそれを許さない、そして私は私自身を許さない、そして私は横島をここまで追い詰めたすべてを許さない】

 

【悲しむぞ。考え直せ】

 

【駄目よ、言葉で止まるほど私の憎悪は、怒りは安くない。大人しくここにいなさい、どうせ出れないだろうけどね】

 

そう告げて歩き出すジャンヌ・オルタの姿は漆黒の甲冑に包まれ、竜の魔女の旗と剣を腰に携えその場を後にする。

 

【止めなければッ!横島!おい横島起きろッ!】

 

眠り続ける横島を起そうと叫ぶ心眼、だが横島に起きる気配は無くまるで胎児のように丸くなり、横島は深い深い眠りに落ちていたのだった……。

 

リポート2 竜の魔女リターンズ その7へ続く

 

 




次回はボスバトル ジャンヌ・オルタになります。ジャンヌが何を感じ、そして何を悟り怒ったのか、心眼とジャンヌ・オルタの共通点とは?そこを次回は書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。