GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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リポート14 鬼神降臨
その1


リポート14 鬼神降臨 その1

 

 

~横島視点~

 

呼び声がする――幼い少女の声がずっと俺を呼んでいる。ぼんやりと意識の中……その声に導かれるように俺は歩みを進めていた。

 

こっちこっちだよ

 

楽しそうに遊んでくれと言わんばかりの弾む声だ。

 

(誰だ?)

 

ぼんやりとした意識の中――誰だと言う疑問が鎌首をもたげた。何者なんだと、いやそもそも俺は今どこにいるんだ?と言う疑問が次々に脳裏に浮かび足を止めかける。

 

駄目だよ、こっちこっち

 

だが止まりかけた俺の足は脳を揺さぶる少女の声によって俺の意思に反して再び歩みを進める。

 

「待ってたわ、ずーっとずーっと私良い子で待っていたのよ?」

 

熊のぬいぐるみを抱き抱えている少女が楽しそうに俺の周りを跳ねている。

 

(知らない、知らないぞ……俺はこの子を知らない)

 

……まれッ!それ……むなッ!!

 

意識がはっきりとしない中でもこの少女が俺の知らない少女なのは分かった。その時ノイズ混じりで酷く遠いが誰かの声が聞こえて……俺の中の疑問がしっかりとした形になり反射的に身構えかけると目の前の少女が足を止めた。

 

「駄目よ、お兄さん」

 

楽しそうな声が一瞬で身の毛がよだつような冷酷な響きに変り、俺の腹くらいの背丈しかない少女が酷く恐ろしい存在に感じた――それと同時にこれ以上目の前の少女のいう事を聞いてはいけないと思い後ずさろうとしたが俺の身体はその場から全く動く事が出来なくなっていた……。

 

「うっ」

 

影から伸びて来た太い紐のような触手が俺の首と両手足に巻きついて来た。痛みは無いが、少しでも目の前の少女の意に反する事をすれば一瞬で身体がバラバラにされるのを直感で理解した。

 

「だ……れだ……?」

 

「うふふふ、これで3回目よ?お兄さんは私を知ってる筈よ」

 

知っているはずと言われても思考がぼやけてどうしても目の前の少女の顔がはっきりと認識出来ない……だけどその声をその雰囲気を俺は間違いなく知っていた。ぼんやりとしていて酷く曖昧だが……好意を向けられたのを思い出した。

 

「……前に東京で……?いや、このホテルでも……」

 

そうだ、俺はこの子に会っている事を思い出した。幻のように消えてしまうこの少女を知っている……。

 

「嬉しいわ、私を思い出してくれたのね。でも今日は此処までなの、うふふ。これはちょっと預かるわね」

 

目の前の少女が俺の懐の酒呑童子眼魂を奪うのを見て、茨木ちゃんから預かっている物だから取り返そうとする。だが触手が絞まり伸ばしけた腕は無理矢理止められてしまった。

 

「妬けてしまうわ、私もお兄さん大好きなのに、お兄さんは私を覚えてないんですもの……だから私、悪い子になるの」

 

楽しそうなのに邪悪そうな声を響かせ、紫電を放つ頼光眼魂が胸に押し当てられた。

 

【大丈夫ですよ。母が貴方を守って上げますからね】

 

「あ、ああ……ああああああ――ッ!!」

 

ドロリとした黒い泥のような霊力が俺を包み込んでいく、その耐えがたい悪寒に俺の意識は悲鳴と共に闇の中へと沈んでいくのだった……。

 

 

 

~陰念視点~

 

アリス達が泣きながら横島がいないと聞いてホテル内を探し回っていた俺達は突如ホテルの通路に響いた横島の絶叫に足を止めた。

 

「ただ事じゃねえぞッ!」

 

「急ぎましょうッ!」

 

あの悲鳴はただ事ではない、まさかガープ達が侵入してきたのかと最悪の予想が脳裏を過ぎる中――横島の悲鳴が聞こえた場所に向かった俺達はその異様な光景に絶句した。

 

「あはッ!!あははははははははっ!!!」

 

狂ったように笑う幼い少女の影からは無数の触手が伸び横島を縛り上げ、胸に紫電を撒き散らしている頼光眼魂を押し付けていた。

 

「てめえッ!!」

 

雪之丞が反射的に霊波砲を放つが、触手を自身の影から伸ばしている少女は片腕を振ってそれをそのまま雪之丞に向かって弾き返した。

 

「がはッ!?」

 

「「雪之丞!?」」

 

身体をくの字に折って弾き飛ばされた雪之丞がホテルの壁に叩きつけられ、崩れ落ちる姿を見てホロウ眼魂に手を伸ばすが……。

 

「楽しかったのに興醒めだわ」

 

少女の足元から漆黒の闇が広がり、そこから伸びた無数の触手が俺達を縛り上げた。

 

「がはッ!?」

 

「うっくうッ!!」

 

「ううッ!?」

 

首を締め上げられた痛みに俺とピート、タイガーの苦悶の悲鳴が重なりその声を聞いた少女は邪悪な笑みを浮かべた。

 

「このまま首を圧し折りましょうか?それとも手と足を捻じ切りましょうか?ああ、どっちが楽しいかしら?」

 

突き出された左手の指が曲げられる度に全身に痛みが走り、俺達が苦悶の声を上げるのを見て楽しそうに笑っていた少女だったが、突如俺達を解放した。

 

「飽きちゃった。先に行っててね、お兄さん」

 

闇の中に横島の姿が消える――それはまるで水の中に飛び込むような自然な動きだったが、ホテルの床で行われたその現象に俺達は目を見開いたが、いつまでも呆然としている訳には行かない触手が出ていない今ならばと飛び掛ると少女は驚いたように一切抵抗しなかった。

 

「お前の目的はなんだッ!」

 

「横島さんをどこへ連れて行ったッ!!」

 

何が目的で横島をどこに連れて行ったと問いかけるが少女は楽しそうに笑うだけだ。

 

「何でもかんでも聞こうとしたら駄目よ?でもそうね、1個だけ答えてあげる。私が、ううん、私達が何者かは……多分貴方のお父さんが知ってるわよ」

 

「父さんが!?どういう意味だッ!」

 

「さぁ?なんでも彼んでも教えてもらおうとしたら駄目よ?それじゃあバイバイ」

 

その言葉と共に少女の姿は意識を失っている金髪の俺達と同年代の少女へとその姿を変えていた。

 

「シルフェニア!?なんで……ここに」

 

意識を失っている少女を抱きとめて困惑しているピートに誰だと問いかけるとピートは信じられないと言う表情を浮かべながら、倒れている少女の素性を話し始めた。

 

「シルフェニアは僕の妹です。東京に残ってた筈なんですが……」

 

「ピートの妹がなんであんなガキになってたんだッ!?」

 

「そんなの僕が聞きたいですよッ!!」

 

「今はもめてる場合じゃねえだろッ!タイガーッ!お師匠様達に連絡を入れるぞッ!横島が連れ去られたってなッ!」

 

「分かってますのジャーッ!」

 

俺達にここからお師匠様達に連絡を入れる術はない、タイガーのテレパシーが頼りになる。

 

「ピートはシルフェニアを寝かせたら俺達に合流してくれ、まだホテルに忍び込んでる奴がいるかも知れないからな。行くぞ、雪之丞」

 

「おうッ!」

 

横島は連れ去られ、頼光眼魂も封印が破られてしまい、その上あれだけ厳重に張っていた結界の内側に侵入者と考えられない事態が続いている。

 

「あーくそッ!どうなってやがるんだッ!」

 

「ぼやいてる場合じゃねえッ! 今は俺達の出来る事をするぞッ!」

 

まずはホテル内の安全の確保、それとホテルの現状を景清と戦っている美神達に伝える事……それに少女がまた別の誰かに憑依している可能性も捨て切れないのでタイガーが合流次第精神感応での調査……ほんの一瞬で状況は最悪の物へと変り、やるべき事は山ほどあると言う異常事態に陥ってしまった。

 

(本当にどうなってやがるッ)

 

様々な事態は想定していたがこんな事体なんて想像もしていなかった。何をどうすれば良いのかも定かではないこの最悪の状況の中俺と雪之丞は対して得意でもない霊視と見鬼君を片手にホテルの中を駆け回り、その異様な光景に言葉を失った。

 

「なんだこれは……」

 

「どうなってやがるッ!?」

 

ホテルにいた民間人に冥華さんが連れて来た地元の霊能者。いやそれだけではない、神代会長の妹の舞の使い魔のナナシとユミルが応戦しようとしたその姿のまま寝息を立てていた。

 

「あのガキの能力かッ!なんなんだ、あいつはッ!?」

 

「分からん、だが少なくとも人間じゃないのは確実だ。特に中身がな……」

 

見た目は横島を慕う少女達と大差無いが、中身は全くの別物だ。根源的な恐怖を抱かせるナニかとしか言い様が無い。

 

「そんなのは俺でも分かってるッ!俺が知りたいのはあいつが何者かって事だッ!」

 

雪之丞が苛立ちと恐怖を振り払うように叫ぶ――その気持ちは俺も分かるが、動揺しうろたえている時間は俺達にはない。

 

「ブラドー伯爵が知ってるって言うなら今あーだこーだと話してもしょうがない、今俺達に出来る事をするんだ」

 

「チッ!分かってるッ!」

 

今の俺達に出来る事はあの少女の正体を探ることでも、横島を取り戻しに行く事でもない……情けない話だが、俺達は景清との戦いに出る事が出来ないからこそこの場に残されている事に拳を握り締め、砕かれた結界から侵入して来ようとする悪霊を食い止める為にホテルのロビーへ向かって走り出すのだった……。

 

 

~美神視点~

 

海が裂け、大地が割れる――景清と仮面ライダーシェイド 頼光魂のぶつかり合いは凄まじくそこに私達が割り込む余地は無かった。

 

【あはははっ!!あはははははははッ!!!】

 

【気狂いとは付き合っておれんなッ!!!】

 

狂ったように笑う仮面ライダーシェイド 頼光魂の赤黒い電撃が纏わりついたガンガンブレードに刀を砕かれた景清が地面を蹴り、離脱しようとした瞬間だった……ガンガンブレードが弓の形へと変化する。

 

【卜部の豪弓だッ!吹っ飛ばされるぞッ!!!】

 

金時の叫びに私達は咄嗟に砂浜に植えられている木にしがみ付いたが、風を待とう強弓の一撃は景清を貫くだけでは止まらず周辺に凄まじい破壊を引き起こした。

 

「くううッ!?化物ですかッ!?」

 

「やばい、やばーッ!?」

 

琉璃が悲鳴を上げながら吹っ飛ぶのを見て慌てて神通棍を伸ばして琉璃を捕まえる。

 

「た、助かりました」

 

「ごめん、助かってないわ」

 

「え?」

 

私のしがみ付いている木の根が盛り上がり、琉璃もろとも吹っ飛ばされる。

 

【せいッ!!】

 

【てえーいッ!!】

 

岩に叩きつけられる前に牛若丸と沖田ちゃんが受け止めてくれたお蔭で事なきを得たが、1歩間違えば確実に死んでいた。

 

「た、助かったわ……ありがとう」

 

「貴女が死ぬと横島様が悲しむから助けただけですわよ」

 

蛍ちゃんも清姫に助けられて無事な様で安堵しかけたが、すぐに顔を引き締める。

 

「小竜姫様!頼光眼魂は封印してましたよね!?」

 

「してましたよッ!なんで此処にあるのか分かりませんッ!!横島さんが持ち出したとも思えないですしッ!!」

 

そもそも横島君は戦える状態にないので紫ちゃん達と結界の内側にいる筈だから、外側の頼光眼魂に近づけるわけが無い。

 

「メドーサッ!結界の復活に回ってる面子を呼び戻してッ!」

 

「いわれなくてもやってるッ!!ああ、くそッ!!」

 

メドーサが舌打ちと共に槍を振り私達に直撃しそうになった業火を弾き飛ばす。しかしその熱が肌を焼き一瞬で汗が噴出した。

 

(これが平安時代最強の異形殺しの力……ッ)

 

分身だけではなく、頼光四天王の使った武器までも召喚し多角的に景清を攻め立てている仮面ライダーシェイド 頼光魂の圧倒的な力に驚くが驚いてばかりも入られない。

 

「なんとかベルトから眼魂を取り出さないとッ」

 

「……ああ、急がないと横島がやばいぞ」

 

横島君の霊力を無遠慮に吸い上げている頼光を見ればそう遠くないうちに横島君の霊力が枯渇して変身は解除されるだろうが、そうなれば横島君の命が危ない……あの戦いの中に飛び込むのは正直自殺行為だが覚悟を決めるしかない。

 

 

「ふふ、貴女達はお兄さんを助けようとしてくれるのね。でも思いだけじゃ、願いだけじゃ駄目なのよ」

 

無数の触手に上に腰掛けて狂気を宿した笑みを浮かべる金髪の少女の背後から着物を着崩した花魁のような格好をした少女が現れ、深い溜め息と共にその肩に手を置いた。

 

「おい、アビー。お前あの眼魂を渡したな?」

 

「ええ、そうよ、お兄さんが狂気に落ちてこっちに来てくれたら素敵じゃない」

 

「分からないでもないですけど、あんまり無茶はしないでね。壊れちゃったら困るわ」

 

「大丈夫よ、あの程度じゃお兄さんは壊れないわ」

 

「まぁ良いさ、最悪は乱入すれば良いだけだ」

 

「そうですねー今日は良い満月ですしね」

 

見た目は誰もが振り返るような美女、美少女達だが満月に照らされたその影は人の物とは程遠い異形の物ばかりだった。

 

「それどうするんだい?」

 

「これ?あの人達が頑張ってるようなら返してあげようかなって思ってるの」

 

アビーと呼ばれた少女は黒と紫の眼魂――酒呑童子眼魂を手の上でもてあそびながら楽しくてしょうがないと言う表情で美神達を見つめているのだった……。

 

 

リポート14 鬼神降臨 その2へ続く

 

 




今回は少し短めでしたが、横島が何故この場に現れたかの部分だったのでこのような形となりました。アビーちゃんはこんな性格じゃないと思う人もいるかもしれませんが、ちょっとダークに寄りすぎているという事でご理解していただけると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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