GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート14 鬼神降臨 その3
~牛若丸視点~
点としか認識出来ない矢を刀を振るい弾き飛ばし、放電を繰り返す斧を後方へ飛んで避け、着地と同時に首を傾ける。
【良く反応出来ましたね?】
【そのおぞましい霊力が溢れている攻撃を避けれないと思っているのか?】
【ふふふ、減らず口を】
神速で振るわれる氷結丸による刺突はどれもが霊力の通り道を狙っての一撃必殺の攻撃の嵐だった。
【シッ!!】
刀を振るい氷結丸を弾き、受け流す。確かに頼光殿は強い……それは認めてしかるべき事実ではあるが……。
【くうっ!?】
動きが僅かに鈍った隙に刀を振るい頼光殿を弾き飛ばし、即座に反転する。
【はぁッ!!!】
【!?】
黄金喰いを持っていた分身を頭から両断するが、それでもまだ動いているので横薙ぎを続け様に放ち4分割になった事で分身はやっと消え去ったが、まだ卜部の分身体が残っている。
【まだ消えてくれるなよッ!!!】
消滅しかけている黄金喰いの柄をつかんで力任せに投げ付ける。
【!?】
予想外の攻撃に反応出来ず黄金喰いに両断され分身が消え去るのを確認し、地面を蹴って跳躍する。私の足元で紫電を纏った霊波刃が炸裂するのを見ながら空中で反転し頼光殿と正面から向き合う。
【ちっ、ちょろちょろと……鬱陶しい羽虫ですねッ!】
【主殿に憑依しているだけの亡霊に羽虫と言われる筋合いはないですね】
私の言葉に頼光殿は怒りを僅かに見せるがすぐに冷静さを取り戻さんとするので、そうはさせんと挑発を重ねる。
【それに私が羽虫ならば貴女は完全に現界も出来てない英霊もどきとお呼びしましょうか?】
【貴様ぁッ!!】
【振りは良いですよ、それに主殿の身体でそんな猿芝居は止めて欲しいですね】
怒りに満ちている、怨んでいる、狂っているように見えるが……頼光殿は正気だ、いや、牛頭天王なども混ざっているので完全に正気とはいえないが……彼女はまず間違い無い。
【狂神石克服しているのでしょう?】
私の言葉に美神殿達の驚いた声がするが、最初からそれは予想していた。1度は狂神石に呑まれた者だから分かるのだ……狂神石の力はあの程度ではない、頼光殿のような英霊が狂神石に呑まれればその被害はこの程度では収まる訳が無いのだ。
【ふ、ふふふふふふふ……この子が愛おしいのですよ、私はこの子を守る為に修羅にもなりましょう。ああ、愛おしい我が子】
自分の身体を自分で抱き締めるような動きをする主殿を見てまだ意識は戻っていないかと少しだけ落胆する。
(僅かに動きが鈍っているのは本能的なものか……)
主殿は自分の懐に入れた相手には限りなく甘い、義経の姿になっていても私だと認識し無意識に攻撃の手を緩めさせてくれているのだろう。完全に頼光殿が主殿の身体を支配しているのならば当の昔に決着はついている筈だ。
【狂神石に呑まれてはいないが狂ってはいるか……】
【愛は狂うもの、狂ってくるって溺れる物ですよ】
【生憎私にはそういう物は分かりませんねッ!!】
主殿がいつまでも頼光殿の霊力に耐えれるとは思えない。僅かでも抗ってくれているうちに、そして私が正気で居られるうちに突破口を見出さなければならない。
(まだだ、まだ暴れださないでくれ)
私の中にも源氏への恨みはある――今は私の存在が増幅されているから良いが、文珠の効果が切れれば再び景清が顔を見せる。義経と牛若丸、そして景清では義経の肉体は余りにも景清と相性が良すぎる。
【九郎判官義経……いや……牛若丸……推して参るッ!!!】
【あはははははッ!! 我が子と私を引き裂く者は何者であっても許しはしませんッ!】
私と頼光殿の刃が交される度に海が割れ、砂浜が抉られていく……この戦いに割って入れる者は誰一人として存在していないのだった……。
~頼光視点~
狂っている者は狂わない……当然の話だ。狂っている者が更に狂う訳が無い、ただし狂気の度合いの変化はあるかもしれないですが……狂っている者にとって狂神石は只の自己強化に過ぎない。
【はぁッ!!】
【ふふふ、無駄ですよ】
義経の身体を得た牛若丸の一撃を素手で掴んで引き寄せて頭突きを叩き込む。
【うあっ!?】
仰け反った頭を鷲づかみにして砂浜に叩きつけると同時に足を振り上げて踏みつける。
【くっ!?】
【あらあら、虫の癖に……いえ。虫だからでしょうか?】
踏みつける前に転がって私の足を避けた牛若丸に視線も向けず足元に落ちている刀を拾い上げる。
【只の刀ですね、ふふ、貴方の刀ならば私に、いえ、この身体に傷をつけれたでしょうがこんな神秘も何も無い刀では……】
指先に力を込めて刀を中ほどから圧し折って背後へ投げ捨てる。
【掠り傷をつけるのがやっとでしょうね】
【く……ッ】
もう1振りの刀を抜き放とうする姿を見て、私は地面を蹴って一瞬で間合いを詰めて腕を押さえて抜刀させない。
【言ったでしょう?こんなガラクタ……何の意味もないって】
裏拳で殴り飛ばしながら刀を奪い取り、これもさっきの刀と同様に圧し折って投げ捨てる。
【まだッ!】
【徒手空拳で挑んでくる勇気は買いますが……それは無謀と言うんですよ】
連続で振るわれた拳を全て掌で受け止め、反撃の横殴りのフックが牛若丸を捉え、牛若丸の身体は鞠のように跳ねて海面へと沈みこんだ。
【次はワシ……ッ】
【あっぐう……】
他の英霊が私の前に立とうとしましたが呻き声と共に膝を着いて砂浜に転がった。
【恥じる事はありませんよ、私の分身を倒した……それは賞賛に値しますが……そこまでです】
英霊は召喚される際にいくらか弱体化するが狂神石を使っている私は全盛期と同等の力がある。弱体化している英霊では勝ち目など……。
【あるわけもない】
振り返る事無く海から飛び出してきた牛若丸の蹴り足を掴んでそのまま頭上で振り回して投げ飛ばす。
(……可哀想に、可哀想に……)
私は知っている。我が子がこれからどれだけ傷ついて、傷ついて苦しんで悲しんでいくのかを知っている。もう思い出せないどこかで私は我が子に会っている。苦しんで悲しんでそして悪と定義された我が子を知っている……。
(どうしてそれを見過ごせましょうか)
ちらりと顔を上げるとそこには2人の少女と1人の美女の姿がある。狂気を感じさせるその瞳を見ればその目的が私と同じであると言う事は明白だ。只1人いなければ滅んでしまうような世界ならば滅んでしまえばいいのだ。
(世界意志もそれを認めた)
只1人の人間が居なければ滅ぶ世界ならば滅ぶのも仕方ないと認めたからこそ、世界の支援を受けて反英霊である景清が召喚されたのだ。滅びることも1つの救いであるからだ……。
(憎い、憎い憎くてどうにかなってしまいそうです……)
我が子を悪へと落すのはあの女達だ。何も出来ていない、なにも為す事が出来ない、見ているだけの傍観者……身体を返すにしてもあの女達だけは殺すかと視線を向け私は僅かに評価を覆す事になった。
【……ッ!ふふ、うふふふふ……ッ!そうですか、そうですか……それが貴女達の答えですか】
【主殿は返してもらうぞ……頼光殿】
ふらつきながら立ち上がった牛若丸の手には龍神が持っていた神刀が握られている。だがそれはただの神刀ではない、我が子を見捨て、あるいは生贄にし、あるいは忘れた女達の血と霊力が宿っている。
【取り返せるものならば奪い返すが良いッ!私だけではない、世界からも奪え返せッ!それが出来ないのならばお前達はここで死ねッ!!】
このままでは私は我が子を憑き殺すだろう……だがそれは慈悲であるのだ。辛い現実を、悪と定義され世界に刻まれる前に死ぬのは救いであり救済の形なのだ……・
~アビー視点~
吼える英霊を見て私は驚き、そして笑った。封印されていた眼魂を解き放ってお兄さんに押し付けたが……その英霊の叫びは私達が抱いている者と同じだった。
「ああ、そっか、そうなんだ」
「こいつはあ、驚きだ」
「確かに驚きました」
どこの時代のどの結末を見たのかは分からない、だけどあの英霊もお兄さんが辿り着いてしまう1つの可能性を知っているのだろう。
「死はある意味救いですからね。その後魂は持って行きますが」
「ま、そのつもりで見てるわけだしな」
お兄さんが進む道に光は僅かしかない、お兄さんは他の人の為に死ねる人、悪名を背負う事が出来る人……そして。
「自分が居なくても大切な人が笑ってるならそれで良いって笑えてしまう人……そんなの悲しいわ」
救世主と呼ばれることもあるだろう――だが救う者になったあの人を救う人はいない。
「復讐者なんて似合わないものになっちまう結末もある」
誰よりも優しくて誰よりも人の痛みを理解してしまう、そしてその結末が復讐者なんて私達は認めない。
「ならそうなる前に止めてあげないと駄目ですよねぇ~」
私達はそれぞれ別々の結末を見ている、見た上でそんな結末を認められるかとお兄さんが英霊になる前の世界を探して、世界を放浪して来た。大体はもう手遅れになっている事が多いけど……今回は珍しい事に手遅れになる一歩手前の世界だなあと思いながら指を鳴らす。
「これはこれは、おてんばなお嬢様だ」
「こんばんわ、良い夜ね。レクス・ロー」
私の触手で縛られても飄々とした態度を崩さない怪人――レクス・ローが手にした本を開くと私の触手は何処かへと消え去った。
「相変わらず分けのわからねぇ事すんな」
「そうですね、この人……人?良く分からないですよ」
「あっはははは、まぁまぁ私の素性などどうでも良いでしょう?」
殺す事も傷つける事も出来ない相手に労力を向けるのは愚か以外の何者でもないので、何をしに来たのかと視線で問いかける。
「見届けに着ただけですよ。ここも1つの結末ですからね」
「悪趣味ね」
「悪趣味だな」
「最低の趣味ですね」
私達は色んなお兄さんの末路を見てきたが、その場所に必ずこの男がいる。何度も顔を見合わせているが趣味が悪いとしか言い様が無い。だってもう取り返しのつかない破滅・終焉の時にしか私達はこの男に出会うことが無いからだ。
「……そう、貴女は行きたいのね、じゃあしょうがないわ」
お兄さんが持っていた眼魂が熱を帯びているのに気付き、私は眼魂を手から落とした。霊力を放ちながら光を強めていく眼魂を見つめながらふと思う。
(どうすれば良いのかしら)
色々と頑張って来た、助けようと努力もした……だけど上手く行った事は只の1回も無い。お兄さんは死ぬか、反英霊か……何をしても救われない存在にしかならない……どうすれば、どうすればお兄さんを苦しめる運命の鎖からお兄さんを助ける事が出来るのだろうかと私は頭を悩ませるのだった……。
~蛍視点~
宝具は英霊の象徴だ。得に牛若丸や義経と言った武勲を持つ武将にとって様々な逸話に関係する武器と言うのは極めて重要なファクターを占めている。義経の身体を技量を牛若丸に与える事だけを考えていた私達は大前提を失敗していたと言うのを頼光の言葉で気付かされた。
「ノッブの刀は!?」
【今ギターになってるから無理ッ!!】
「なんでギターになってるのよッ!?」
【知らんッ!!】
「清姫の薙刀は!?」
「渡せなくはないですが、これずっと燃えてますけど……大丈夫ですかね?」
「駄目っぽいッ!!」
「小竜姫様の神刀はどうですか!?」
「それでも力が足りませんよッ!これは竜気で強化することが前提なんですからッ!」
武器を渡さないといけないのに渡せる武器が無いとみんながパニックになっている中、くえすが真っ先に行動に出た。
「別の神刀を用意することですわ」
「は?はぁッ!?ちょっ!?」
くえすが自分の手首を切って神刀に血を吸わせ、刀身に自分の血で魔法陣を描いた。
「足りないなら血ですわよ、神刀を妖刀に変えてやれば良いんですわ」
止めてくれませんか!?って叫んでいる小竜姫様をガン無視して私達も手首を切る。
「ちょっとおお!?」
「我慢しろ」
「嫌ですよ!!」
「はいはい、我慢しろ」
「だからいーやーでーすーッ!!」
妖刀にしないでくれと叫んでいる小竜姫様を無視し、神刀に血を塗りたくり、その属性を反転させる。元が神刀なので妖刀に反転させた事で霊力を容赦なく吸い取られる。
「やっば……」
「ひゅーひゅー……」
「くう……」
「今手当てをする!動くなよッ!」
「ショウトラちゃーんッ!!」
【ワンワンッ!!】
霊力だけではなく生命力も座れているのか立ち上がる気力もなく、当然止血も出来ずぐったりとしている私達を鬼一法眼と冥子さんが慌てて手当てをしてくれる中、薄れ行く視界を頼光と牛若丸の戦いへと向ける。
【はぁッ!!】
【くっ!流石にそれは厳しいですねッ!!】
神刀を妖刀に変えるというとんでもない暴挙に出ただけの価値はあった……そう思った瞬間、満月の中眩い光の中で私達の前に影が落ちた
【よう頑張ったほうやなあ……ほな、うちも助けたろうかなあ】
ねっとりとした色気を帯びた声と小柄な人影は紫の着崩した着物を羽織っていた。
「……酒呑童子ッ!」
【お久しぶりやねぇ~お姉はん、んふふふ、頑張ったみたいやし……助けてやろう思うてなあ】
にこにこと笑っているが邪気に満ちたその気配に嫌でも警戒心を抱いてしまう。
「鬼、何が目的だ?」
【助けに来ただけやって、天狗。これでも律儀な女なんやで?あ、助けたら棲家よろしゅう】
とんっと軽い音を立てて酒呑童子の姿が宙を舞った。
【蟲ッ!なんでお前がッ!!】
【はいはい、よそ見したらあかんええ?】
頼光と酒呑童子には強い因縁がある。そんな相手が突如現れた事で頼光は牛若丸から視線を逸らし、明確な隙を露にした。
【不意打ちごめんッ!!】
正々堂々とはほど遠い一撃が頼光が憑依しているシェイドの背中を切り裂いた。
【ばぁーかッ!!】
【む、蟲いいイイイイイイッ!!】
酒呑童子がベルトに手を伸ばし、紫電を撒き散らしながらベルトから強引に頼光眼魂を引き抜いて変身を解除させると横島の首に腕に手を回して、自分の元に引き寄せると共に鋭く伸びた爪を横島の喉元に突きつけた。
【はい、助けてやったで?後はゆっくり座って話でもしよか?あんたも助けてやったのにそれはあかんやろ?】
「……うっ」
【卑劣な……やはり化生か】
【失礼やなぁ、ちゃぁんと助けてやったやろ?でもその後殺されたり封印されたら叶わんからなあ……この坊が無事かどうかはあんたらしだいやで?】
横島を人質にし、話をしようと言う酒呑童子を牛若丸がとめようとするが、爪先で抉られて呻く横島に動きを止められる。
「分かったわよ、だから横島君を放しなさい」
【駄目や、口約束ほど信用できんもんはないやろ?ちゃんと魔法陣を使った契約をするまではこいつは帰えさんで?】
頼光と景清を退けることは出来たが、新しい脅威になり兼ねない酒呑童子の言葉に私達は顔を歪めながら、分かったと返事を返すのだった……。
リポート14 鬼神降臨 その4へ続く
酒呑童子の奇襲から横島が人質で今回は終わりとなります。ヒーローの役割ですが、ヒロインしてる横島です。後眼魂を抉り出すところはハートキャッチしてる臓器をぐりぐりしてきたやばいときの酒呑童子になるのであしからず、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。