GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その5

リポート14 鬼神降臨 その5

 

 

~横島視点~

 

昨日の事は俺の頭の中からすっぽりを抜け落ちていた。何かあったような気がするのだが……どうしても思い出せない。

 

「心眼、昨日の事覚えてないのか?」

 

【私も覚えていない。何故頼光眼魂があって、酒呑童子が具現化しているのか皆目見当もつかない】

 

俺が覚えていなくとも心眼ならと思ったのだが、心眼も覚えておらず本当に昨日何があったのかが気になってしょうがない。

 

(美神さん達も教えてくれないしなぁ)

 

事情を知っているであろう美神さん達は朝から会議室にこもりっぱなしだし、本当に何があったのだろうかと考えていると腕をてしてしと叩かれた。

 

「フカア!」

 

「きばッ!」

 

「ああ、ごめんごめん。はい、あーん」

 

ご飯ご飯と尻尾を振り口を開ける2匹の口にそれぞれソーセージとりんごを入れてやると小さい手で口を押さえて嬉しそうに笑っている。その愛らしい姿を見ていると自然に笑みが浮かんでくる。

 

【なあーお兄はん、お酒~】

 

「駄目です」

 

【けちんぼー】

 

「駄目な物は駄目です。朝からお酒なんて駄目、そもそも酒呑ちゃんは子供じゃないか」

 

うち鬼なんやけどなあ~とぶつぶつ言いながら酒を諦めてくれた酒呑ちゃんにふうっと溜め息を吐いた。

 

【横島、あいつは鬼だぜ?子供扱いすると後が怖いぞ?】

 

「んーでも俺から見れば子供だからさ、他の子がいないときなら良いけど今は駄目だって」

 

【……あいつにあんだけ強く出れるのお前くらいなもんだな】

 

別にそこまで強く言っているつもりはないんだが、アリスちゃん達が真似をしてお酒を飲んだら困るのでお酒を駄目と言っているだけのつもりなんだけどなあと首を傾げているとピー助達が机の上に飛び乗ってきた。

 

「ぴーぴー」

 

「くあー」

 

口を開けてご飯をくれと甘えてくる2匹に俺は魚の解し身の準備を始めるのだった。

 

「みむ、みみーむ」

 

「うきゅ!」

 

「みみむ」

 

なお普段ピー助達がこれほど甘える事はないのだが、美神達から横島が余計な事を考えないように甘えるようにと話を聞かされていたチビは横島の思考が切り替わる寸前で甘えに行くように指示を出していたりする……。

 

 

「横島、はい。くじ引いて」

 

「なにするの?」

 

朝食を終えて浜辺に出るとチルノちゃんがくじが入った箱を持って来て俺に引くように声を掛けてくる。

 

「水鉄砲で遊ぶの!チームわけ」

 

「あーはいはい」

 

そう言われてくじを引くと赤色のくじが出てきた。

 

「やったー♪アリスお兄ちゃんと一緒ー♪」

 

「私も頑張ります」

 

どうもアリスちゃんと天竜姫ちゃんと一緒のチームになったようだ。浜辺に準備されている水鉄砲とシールドを見ながらふと思った。

 

「これどうやって勝敗を分けるんだ?」

 

【これですよー】

 

俺の呟きに答えてくれたのはリリィちゃんだった。水着の上に白の無地のTシャツを着てVサインをしているのを見て、俺はああっと言って手を叩いた。

 

「水に色がついてるのか」

 

白のTシャツに色水が当れば誰が負けかすぐに分かる。単純で実に分かりやすいと納得する。

 

「その通りです。横島さん」

 

「シールドは1チームに1つまでな。皆持ってると勝負がつかないから」

 

私服姿のマリアとテレサがぱんぱんと手を叩きながらルールを説明してくれるから審判と言う事なのだろう。

 

「頑張る」

 

「あたいがサイキョーだって教えてやるぞー!」

 

皆気合満点で楽しそうだ。ご飯を食べたばかりだし、こういう遊びなら海に入らないから安全かなと思ったところでふと気付いた。

 

「なあ心眼、能力の事言ってた?」

 

【……言って無かったな】

 

……あれもしかしてこれ不味くない?と思ったときには既に遅かった。

 

「行けーッ!!」

 

「一斉射撃ですわ!!」

 

天魔ちゃんが烏を呼び出して水風船の爆撃を繰り出し、紫ちゃんは自分の後に沢山の障子を出して水鉄砲をマシンガンのように乱射してくる。

 

「なんのお!!!」

 

「水のあるところだとあたいはサイキョーだッ!!」

 

【えーいッ!!】

 

茨木ちゃんが燃える手で水を蒸発させ、チルノちゃんは海の水で盾を作り、リリィちゃんは水鉄砲を砂浜に突き立ててバリアを作っている。

 

「地獄かな?」

 

霊能者だけどこれだけの地獄には多分俺は対応できないと思う。見た目は可愛い幼女が戯れているだけだが、下手な戦争映画よりもよっぽど迫力がある。

 

「……さあ行くんですの」

 

【【【……】】】

 

「ならアリスもゾンビを出すもん!!」

 

……ミイちゃんの召喚した奇妙な生物の群れとアリスちゃんの召喚した子犬と子猫のゾンビがぶつかり合う。とても水鉄砲を使ったサバイバルゲームという状況ではなくなり、俺は生き残ることを最優先にする事に考えを切り替えた。

 

「天竜姫ちゃん」

 

「なんですか?」

 

「チビ達ってありかな?」

 

うりぼーに乗れば機動力は大丈夫だし、モグラちゃんとかチビがいれば囲まれても大丈夫だと思うが、ルール的にどうなのだろうかと思って天竜姫ちゃんに尋ねる。

 

「多分大丈夫では?」

 

「チビ来てくれ!」

 

天竜姫ちゃんの大丈夫と言う声を聞いて、俺は砂浜で山を作って遊んでいたチビ達の名前を呼ぶのだった。

 

 

 

 

 

~タマモ視点~

 

浜辺のサマーベッドの上に寝転がりながら私はうーんっと呻いていた。別にお腹が痛いとか、陽射しが眩しいとかではなく何かが引っかかっている感じがあるのにそれを思い出せない不快感がどうしても拭えないのだ。

 

(全然思い出せない、絶対昨日何かあったのに……それが思い出せない)

 

何かあったのは覚えている。シロも霊波刀を抜いて、私も狐火を出したし、チビ達も臨戦状態になっていたが……何が私達の前に現れたのかが思い出せないのだ。

 

「てやあッ!!」

 

「ふっふっふ!そう簡単には撃たれてあげんぞ!!」

 

【一斉攻撃ですよ!】

 

「当れーッ!!」

 

「やああああッ!!」

 

水鉄砲と盾を持って砂浜を走り回り遊んでいるアリス達と横島を見ながらうーんと唸る。思い出さないといけないことだと分かっている……だがそれと同時に思い出してはいけないことだとも分かっている。

 

【どしたん?狐はん】

 

「酒呑童子。悪いけど私あんたと馴れ合うつもりないのよ」

 

シッシと手を振るが酒呑童子はそんな私を見てにちゃあっと楽しそうに嗤った。

 

【そうやって邪険にされると余計に気になるなあ】

 

(本当こいつ性格悪いわね……)

 

茨木が持っていた眼魂から具現化したみたいだけど、この引っ掻き回すのが楽しいという態度と自分が生きても死んでも、面白ければ良い、楽しければ良いという享楽的な雰囲気が好きではない。

 

「あんまり酒を飲んでると横島に言うわよ」

 

【あーそれは困るなあ、あのお兄はん見た目よりもめちゃくちゃ押し強いからな……うち酒また取られてまうよ】

 

朝から酒を飲んでいた酒呑童子は横島に酒瓶を取り上げられていた。美神達が驚く中、横島の言葉には流石の私も笑ってしまった。

 

【子供がお酒を飲んじゃいけませんは驚いたわあ……】

 

「それが横島よ」

 

鬼だろうが、妖怪だろうが、神魔だろうが、見た目が子供ならば子供として扱う。それが横島である、鬼であるという事を説明し、どうしても酒が飲みたいと酒呑童子が強請って1日2本までに制限されてしまったのは驚きを通り越して横島に呆れてくるレベルだ。

 

「しゅーてーん!!酒呑も遊ぼうぞ!」

 

「……それは良いですの、私と茨木だけだと数が不利ですの、だから酒呑を仲間に加えますのよ」

 

「ほら、呼んでるわよ」

 

【んーまあええか、うちも遊んでこようかなあ】

 

茨木童子に呼ばれて離れていく酒呑童子を見てこれで鬱陶しいのがいなくなったと溜め息をはいて、ビーチチェアの上のジュースに手を伸ばしてストローを加える。

 

「ふう……」

 

フルーツジュースの甘みと酸味に一息ついたが、まだ胸の中の引っかかりは消えてはくれない。それは自分の種族的なものだ、九尾の狐である私は強さはおいておいても霊能に対する耐性は間違い無く神魔に匹敵する。シロ達はともかく私の記憶が操作されているというのがどうしても解せなかった。

 

(……考えられるのは別人格……かしら)

 

九尾の尾はそれぞれ人格があるのは知っているがそれは別の世界の事の筈……だが考えられるのはそれしかない。

 

(1回相談だけしておこうかしら、前のタマモキャットの事もあるし)

 

身体を乗っ取られる訳には行かないし、私を基点にして別の九尾の狐がこの世界にやって来ては不味い。

 

(……私知らないのよね……どんなのがいたのかしら……?)

 

ただ九尾の狐の転生態の中で最も歳若い私は他の個体を知らないのだ。逆に他の九尾の狐は間違いなく私の事を知ってるわけで……。

 

(まって不味くない?)

 

今も砂浜で遊んでいる横島に視線を向ける。もしも私の目を通じて横島を見ていたら……いや間違いなく断言できる。別の個体は私を通じて横島を見ていると……何故かは知らないが九尾の狐と横島はかなり縁が深い高島よりの前の前世とかが関係している可能性は十分にあるし……。

 

「やっぱり先に言っておこう」

 

あとで責任を追及されても困るから先に言っておこうと思いサマーベッドから立ち上がった。

 

「タマモも遊ぼうぜー?全然遊んでないだろ?」

 

「……そうね、折角だから混ぜて貰おうかしら」

 

しかし横島に誘われて足を止めてしまった。海に来たと言っても遊んでいる時間なんて殆ど無かったし、横島達は修行をしていたし、明後日には東京に帰るのだから遊び終えた後に言えば良いと思ったのだ。別の私が見ている可能性は十分にあったが、九尾に戻って大分時間が経っているが今までなんとも無かったのだから考えすぎかもしれないしと私は横島の元へ向かったのだが……後にそれが間違いだったと後悔する事になるのだが……それに気づいた時は時既に遅しなのだった……。

 

 

 

 

~マリア視点~

 

楽しそうに遊んでいる横島さん達の姿を見てほっと溜め息を吐いた。私は専門家では無いから自信はないのだが、とりあえず狂神石の影響が残っていない事が分かっただけで十分だった。

 

(これで美神さんの頼みは終わりましたね)

 

あれだけ動ければ横島さんの霊体の状態は万全だ。それに身体の状態も問題はないし、精神も問題が無い事が分かった。となればいざという時に拘束するように渡されていた霊具を使う必要は無くなったし、こうして審判役として様子を観察する必要も無い。

 

「姉さん。私も遊びたい」

 

「……実は私もなんですよ」

 

海に来たのは良いが横島さんと遊ぶ機会は全然無かった。精々初日の海水浴くらいで、それも遊べたと言うと満足するほどではない。着ていた上着を脱いで水着姿になり、その上から白のTシャツを着る。

 

「姉さんずるいよ!?私そんなのして無いッ!!」

 

「では待っているので着替えてきてください。私はテレサが着替えてくるまで待っていますよ」

 

先に遊んでたら怒るからと言って更衣室に走って行くテレサの後姿を見て小さく笑った。

 

(……確かに嫌なこと、辛い事は沢山あります。だけど前の世界より私はこっちが良い)

 

私の知る世界よりもこの世界は過酷な道を進んでいる。だけどそれでも私の知る未来よりもこの世界の方がずっと良い未来に繋がるんじゃないかと私は思ってる。

 

「姉さん、着替えてきたよ!」

 

「では行きましょうか」

 

「うん♪」

 

この水鉄砲を使ったゲームはサバイバル形式だ。ならば私達が飛び入り参加しても何の問題もない筈だ。

 

「横島さん、覚悟ッ!」

 

「ええ!?審判が乱入してくるのありかよ!?」

 

「ありだよッ!だって遊びだからねッ!!」

 

水鉄砲を手に私とテレサも砂浜へと駆け下りて水鉄砲の引き金を引いた。必中を確信していたのですが……。

 

「みぎゃあッ!?」

 

「ぴぎいッ!?」

 

うりぼーとチビが盾になって横島さんへの水鉄砲を防ぎ、魔界のマスコットが頭の上に水風船を掲げる。

 

「ヨーギッ!!」

 

「フカアッ!!!」

 

気合満点の鳴声と共に投擲された水風船が弾丸のような勢いで飛んでくるのでそれを横っ飛びで回避すると砂浜の一部が吹き飛んだ。

 

「ちょっとあぶな「きーばッ!」……まぁ皆強いわけじゃないか」

 

「そのようですね」

 

魔界のマスコットの中で1番幼い斧龍の幼生が投げた風船はワンバウンドして転がって来てぺちっと言う音を立てて私とテレサの足にぶつかって動きを止めた。

 

「きば? き、きばあああッ!?」

 

なんで?と不思議そうにしている斧龍にアリスちゃん達の水鉄砲の掃射が直撃し、半泣きになって横島さんの後ろへと逃げて行った。

 

「待って、動けない!?」

 

「きばー」

 

足にしがみ付かれて動けない横島さんが声を上げるのを見て、好機だと判断したのかアリスちゃん達が水鉄砲を片手に横島さんへダッシュする。

 

「わーいッ!!」

 

「楽しくなってきましたわね!!」

 

【負けないですよー!!】

 

友好的なアリス達の声を聞きながら私は水鉄砲の銃口を横島さんに向ける。

 

「なんで皆俺ばっかりロックオンする訳!?うりぼーが疲れるとか相当だぜ!?」

 

「ぷぎゅー」

 

「うきゅいー」

 

横島を乗せて駆け回っていたうりぼーとモグラちゃんだが完全にダウンして、今は横島さんの頭の上に乗せられている。

 

「説明して無かったのですか?」

 

私の言葉にアリスちゃん達はへたくそな口笛を吹いて誤魔化そうとしているのでくすりと笑って、このゲームの報酬を口にした。

 

「明日遊園地に行くのでその時に一緒に回る組み合わせが掛かっているんですよ」

 

「俺聞いて無いよ!?」

 

「だって優勝商品だから」

 

「ああ、なるほど、じゃなくてえ!?」

 

自分が追い回される理由を知った横島さんに向かって水鉄砲を撃つ。動けない横島さんに直撃すると思ったのですが……。

 

「ぴいいいいッ!!!」

 

「コッコォッ!!!」

 

芋虫の火炎放射と金属龍が地面に前足を叩きつけて作り出した砂の壁に阻まれて水鉄砲が横島さんに命中する事は無かった。

 

「手加減はしてくれないの?」

 

その壁から手加減してくれると嬉しいなあと言う感じで笑みを浮かべて尋ねてくる横島さんに私達も笑みを浮かべて首を左右に振った。

 

「NO-。何故ならば」

 

「短時間でも独占したいって思うのは皆一緒だからね」

 

「手加減して欲しいなあー!!!」

 

自分が獲物と知り手加減して欲しいと横島さんが叫ぶが、誰も手を緩めるつもりはない。

 

「とう!私も参戦ですッ!」

 

「運動音痴だけど頑張るよ」

 

「ふふふふふふふ」

 

「やばい、また敵が増えた!?」

 

そしておキヌさんと舞さん、ダークネス小鳩さんまでもこのサバイバルゲームに参加し、横島さんの勘弁してくれーっという悲鳴が響くが、その声色は楽しそうに弾んでいて困ってはいるものの楽しそうで、私達も笑みを浮かべながら遊びを再開するのだった……。

 

 

 

リポート14 鬼神降臨 その6へ続く

 

 




参加者でありながら優勝商品にされていた横島は大変ですが、楽しんでいます。根本的に横島は愛される事に餓えているのでこれが1番の治療であり、そして幸せな牢獄と言う奴ですね。しかし次回は美神達の視点で重苦しい雰囲気になりますが、どうか温度差にお気をつけください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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