GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート14 鬼神降臨 その6
~くえす視点~
会議室の空気は分かっていた事だが非常に重い物になっていた。見せたくなかった横島の切り札を躑躅院に見せる事になったし、反英霊を地球の意思が召喚し、ここで私達を全滅させようとしていたのも紛れもない事実であった事が明らかになったからだ。
「景清が首を切った人達ですが、頭の中に天使の羽が埋め込まれている事が分かりました。恐らくですが景清は首を切って取り出せる物は取り出し取り出せない物は殺していたと思われます」
天使の羽と聞けば良い事がありそうに思うかもしれないが、今回の天使の羽は洗脳あるいは思考誘導の為の物であり、南部グループ達の裏にいた天使が日本国内で暗躍していたという紛れもない事実になった。
「天界側は動いてくれるのかしら?」
「日本や中華系の神が西洋系の神に警告をする予定ですが……」
小竜姫の暗い顔を見れば何を言わんとしているのか一目で分かり、美神が机を叩いた。
「効果は殆ど期待できないって事ね。神魔の最高指導者って何やってるのよ、自分の部下も御せてないじゃない」
「デタント反対側の過激派神族に賛同している者が多すぎるんです。最高指導者は頑張ってはいるんですが……すべてを御す事は出来ていないと、近いうちに謝罪に訪れる予定なのでそこで改めて話し合いたいと行っております」
最高指導者が日本に来ると聞いて私は正気かと声を上げた。
「そんな連中が来れば日本が特別だといっているような物でしょう。国際GS協会やオカルトGメンが日本入りする理由を作らないで欲しいですわね」
国際GS協会やオカルトGメンからすれば横島は間違いなく危険視される。今でも綱渡りなのに最高指導者が日本入りしたなんて分かればそれこそ大惨事になりかねない。
「小竜姫様には悪いですけど私も同じ意見ですね。いくら擬態したとしても完全に誤魔化せるとは思えないですし」
「謝罪したいって言う気持ちは分かりますけど……今は迷惑としか」
誰もが最高指導者が日本に訪れると聞いて良い顔はしない。魔界側はアスモデウス一派を野放しにしているし、天界側はセラフの離反と到底信じられない失態を重ねているからだ。
「其方に関してはこちらからも待つようにと言っているんですけど」
「あの方々がどう動くかは私達も予測がつかなくてですね……」
上級神魔の小竜姫もブリュンヒルデも天界と魔界では中間管理職に近い立ち位置だ。進言する事は出来ても止める事は出来ないようで苦々しい表情でそう言うとすみませんを頭を下げた。最高指導者来訪をどう防ぐかと頭を抱えているとある人物が声を上げた。
「分かりました。私の方からルイ様にお声掛けをしておきましょう」
ルイ・サイファーの側近でありながら現在横島の所でメイドをしているルキフグスがにこにこと笑いながらそう言った。
「止めれるワケ?」
「はい、出来ますよ?と言うか強さで言えば私の方が上ですし、ベルゼブルもストレス溜めてるでしょうし、彼女と私がいれば最高指導者2人相手でも勝てますよ?なんなら魂ごと消滅させれます」
それはちょっと困るが……叩きのめして追い返す事が出来ると言うのならばルキフグス達に任せても良いだろう。
【次は頼光殿と酒呑童子の事ですね】
【いや、その前にお前が取り込んだ景清は大丈夫なのか?】
【はい、それに関しては大丈夫です。霊格が上昇したので前よりも強くなりましたよ】
牛若丸が自信満々の表情で言うが、私達の心配している事はそこではない。
「また身体乗っ取られたりしない?」
【大丈夫ですよ。景清殿は何故反英霊がこんな事をしなくてはならんのだとぶつぶつ言いながら消えて行きましたから、あと短時間なら大人の姿になることも可能ですよ!】
景清に身体を乗っ取られないというのは安心だが、大人の姿と言うのは些か問題があるように見える。私だけではなく蛍達もなんとも言えない顔をしているが、とりあえず今はおいておくとしよう。
「……金時、頼光は今どうしてる?」
【うんともすんともいわねえな……もしかしてだけどあの3人が頼光の大将に何かしてたんじゃないのか?頼光の大将も俺ッチじゃ理解できねぇ事を言っていたし】
「その可能性はあるわね……そもそも頼光がどの時代で召喚されたのかも定かじゃないし」
ジャンヌ・オルタのように横島が最悪の結末を辿った世界の記憶を頼光も持っていたという可能性もあると考えているとパチンっと大きな音が響いた。
「与太話はもうよろしいでしょう?私が知りたいのはあの3人の正体です、酒呑童子も最高指導者も、私にはどうでも良いのです。あの3人の話が真実かどうかです、もしもそうだと言うのならば……」
清姫の瞳孔が縦に開き、純白の着物が漆黒に染まった。
「お前達を殺す。私は横島様を傷つける者を許さない」
本気の殺気を放つ清姫の怒りの最もだ。それにその言葉は私も気になっていた。
「私以外の全員が裏切ったと言うのも恐らく事実でしょうが……さてどうしましょうかね」
狂気に満ちていたがその言葉は真実だった。美神達が横島を裏切ると言うのはこれから分岐するであろう未来の1つの結末であり、紛れもない事実なのだろう……。
~琉璃視点~
横島君をこの場に呼んでいないのもこの話を聞かせない為だった。くえすと清姫の怒りも最もだが、それは今の私達には知らない事でもある。だがそう遠くない未来でそうなる可能性は極めて高いと言える何故ならば……。
「南部グループ達の研究か、天使の羽か……さてさてどっちだろうねえ」
躑躅院がニヤニヤしながら口にし、思わず睨みつけると躑躅院は怖い怖いと言って肩を竦めた。
「だが事実だろう?女は洗脳されやすいというのは紛れもない事実だ、それに見目麗しい女を収集したいと言う悪趣味な連中はこの世には山ほどいるぞ?」
……それもまた事実である。南部グループの隠し研究所で魔界の媚薬などで精神に異常を来たした女性GSや魔界の機器に達磨にされて埋め込まれていたのも全部女性だ。
「神魔であっても、いえ神魔だからこそ……」
「抗えない物もあるという事ですね」
小竜姫様やブリュンヒルデさんの顔色も悪い。女であるからこそ、いや女だからこそ組みやすいというのは紛れも無くあるだろう。誰もが口にしないが魔法や媚薬などで動きを奪われ、そこを組み敷かれ犯されながら術を掛けられたらそれに抵抗する術は限りなく少ない。
(裏切ったって言うのも多分そうなのよね……)
考えたくは無いが私達は穢されたのだろう。そしてその上で操られて横島君に害をなした……その結末の1つがあの3人が見た絶望の未来なのだろう。
「清姫。天界から色々と薬剤の材料を持ち込む事は可能かしら?」
「構いませんよ、それで貴女方が横島様を裏切らないというのならば幾らでも協力しましょう」
清姫の怒りは今の私達ではなく、薬か、魔法か、人質か、何かは分からないがそれに屈した私達に向いている。正直信じたくはないのだが……最悪の可能性を私達は考える必要がある。
「冥華さん。永琳さんの所に行っても良いですか?」
「ん~今回は横島君に頼むわけには行かないしねぇ~良いわよ~」
流石に横島君に頼める内容ではないので気付かれないように永琳さんに頼むのに加えて、ルーン魔術とかで天使の洗脳術に耐える方法を見つける必要があるだろう。
「でも1番の対策は罠に自ら飛び込まない事のワケ。確実に国際GS協会とオカルトGメンは黒」
「そうねえ~私もそう思うわね~」
南部グループの屋敷に美神さん達を派遣するように命令が出た所で黒と言うのは確信している。だが逆らって会長の立場を失えばますます窮地に追い込まれるので従いながらも、相手の罠を打ち破る術を身につけるのがこれから要求されてくるだろう。
【あの英霊……普通では無かったぞ】
【ええ、間違いなく私達よりもはるか上ですよ】
S、ユンユン、北斎と名乗った3人組の英霊。3人が3人とも狂気に囚われ、その上小竜姫様の言葉の通りならば……。
「生きたまま英霊になるってどういうことなんですか?」
英霊は死んでいるから英霊である筈なのに生きているのに英霊とはどういう意味なのかと蛍ちゃんが問いかける。
「多分死ぬ寸前に世界と契約して、瀕死の状態で世界から隔離されたんだと思います。生きているから成長する、強くなる英霊と言えるでしょう」
「最悪ね、それ」
神魔は技術を鍛える事は出来ても、その神格の間でしか強くなれない。強くなる上限が最初から決まっていて、英霊も死んだときから全盛期の強さを得るがこれも上限が決まっている。だが生きているという事は人間という扱いだ、そして人間は成長できる。成長できる英霊という信じられない存在がS、ユンユン、北斎の正体だ。
「ただ普通は無理なんですよ。多分彼女達はなんらかの神の端末の1つなのではと思うのです」
「神の端末……それってつまり彼女達は操り人形って事?」
「いえ、そこはちょっと分からないです。ヒャクメに頼むつもりですけど……神に操られているのか、それとも神に憑依されているのか、それとも神と融合しているのかは定かではないんですが……1つだけ言える事があります。あの3人はそれぞれ3人とも違う神の端末であると言うこと、そして……私達とは恐らく法則の異なる神が関与している可能性が高いです」
小竜姫様達と法則の異なる神と聞いて脳裏を過ぎる存在があるが、美神さんやくえす達も同じ様だが全員があり得ないと言う顔をしている中小竜姫様が搾り出すように言葉を紡いだ。
「ピートさんから聞いたのですが以前シルフィーさんが異界を開いたらしくてですね……それをブラドー伯爵と唐巣神父が閉じたらしいんですけど……多分彼女がまだアンテナになってます」
「「「何やってくれてんだッ!!あの野郎ッ!!!」」」
これで決まってしまった。まず間違いなく今回の件に関与している神は旧支配者――ラヴクラフトの創作とされているクトルフ神話の神の数々……霊能者の中でも懐疑的な存在だが本当に強力な霊能者と言うのはその存在を知っている。だがこちら側から干渉しなければ良かったのだが……シルフィーちゃんが異界を開いた事で向こうがこちらを認識してしまった事が全ての原因であり、思わず私達の口から悪態が飛び出したのも当然の事なのであった……。
~躑躅院視点~
西条に言われて使いっぱしりにされ、苦労する事になったがその分の見返りは十分に得た。未来で美神達が誰かのメス奴隷になった挙句に横島君を裏切って殺すなんて……なんて……。
(なんて愉快なのだろうか……ッ)
所詮はその程度だったという事だろう。現にくえすはそれに抗ったと言うのだからなんともおかしな話だと声を上げて笑いそうになるのを我慢するのに必死だった。
「ほら、暴れない!」
「みぎーみぎやああッ!!」
「ぷぎゃああああッ!!」
「この色水全然落ちねえなあッ!!」
ホテルの窓から水で肌についた色水を落そうとしている横島君の姿を見つけて、それをジッと見つめる。
『私も遊びたかった』
「すまないね、美弥。でもこれも仕方ないことなんだよ」
脳内に響くいじけた半身の言葉にしょうがない子だと肩を竦める。今回は下地を作ることが目的だった、横島君の切り札を、隠しておきたい霊能を知った私はもう神代琉璃達も無碍に出来る存在ではない。私がほんの少し口を滑らせただけで何もかもが終わる。それをさせないためには私を囲い込むしかないのだ。
『明日は遊べる?』
「すまないね、此処に来ているのは私1人になっているんだよ。美弥、だから君は表に出れないんだ」
1人で来ているのに美弥を表に出すわけには行かない……そうすれば私と美弥の秘密が暴かれてしまうからだ。まだ私の、躑躅院の1000年に渡る願いは隠し通さなければならない。
「ほら、ちゃんと覚えてくれているみたいだよ」
『それなら良いけど』
私を見て手を振る横島君に手を振り返しながら思う。愛とは狂う物であると、狂って狂って壊れて、狂って……その者だけに尽くそうと、その者為だけに生きようとすれば他者の介入など取るに足らないものだ。人心を乱された?薬を投与された?そんな物は言い訳に過ぎない。
「あーあ、怖い怖い。貴方はいつも怖いわ、躑躅院さん」
突如聞こえて来た弾むような少女の声に振り返る。そこにはぬいぐるみを抱え黒衣を着込んだ金髪の少女の姿があった。
「君はS……かな?」
「ふふ、そうよ。こんにちわ」
聞いていた特長から昨晩現れた生きた英霊の1人だと理解し、Sかと問いかけると少女は狂気を孕んだ目で私を見つめて笑った。
「何をしに来たのかな?」
「暇だからうろうろしているだけよ、そしたら懐かしい人を見つけたら声を掛けたくなったの」
「私を知ってるのかな?」
「知ってるわ。くえすと同じで最後までお兄さんの味方だった人……身体が腐り落ちても、両腕を失っても口で剣を咥えて戦った強い人」
禁呪を使ったのかと思いつつも、私ならばそうすると直感で理解した。
「貴方は最後までお兄さんの味方でいてね?じゃないと……許さないから」
何の予兆も無く消え去るSの姿に驚き、何時の間にか手に絡みついていた触手の跡に苦笑する。
「言われなくても私はずっと彼の味方だよ。そう……1000年前からね」
躑躅院はその為だけにあるのだ。地位も名誉も富も名声も必要ない、1000年前から彼の味方である事だけがすべてである。
「何をしても……私は私達は……君の味方であり続ける」
結ばれなかった婚姻、救えなかった絶望……初代六道が自身を封印してまで生きているのと同じで初代躑躅院も同じである。違うのは霊体だけで存在しているのか、否かである。
「今回の事で分かった。私が何をするべきなのかを……」
ホテルの外で水道に繋いだホースで使い魔と戯れている姿に笑みを浮かべて背を向けて歩き出す。今はまだ彼の近くにはいれないけど……必ずあいつらの場所を奪ってやると改めて心に誓うのだった……。
リポート15 不思議の国の横島君 その1へ続く
と言う訳で臨海学校変はこれにて終了となります。かなり先行き不安なフラグが乱立しましたが、ちゃんと収集できるように計算しておりますのでご安心ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。