GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
その1
リポート15 不思議の国の横島君 その1
~横島視点~
雲1つない晴天、そして爽やかな風とほんのりと暖かい日の陽射しを浴びながら俺は原っぱの上に寝転がっていた。余りに穏やかでこのまま目を閉じてしまえばとても気持ちよく昼寝が出来そうだ。
【横島。現実逃避をしている場合じゃないぞ?】
「……うん、それは俺も分かってるんだけどさ……」
心眼の言葉に頷いて上半身を起した俺の目の前に広がるのは東京の街並み……ではなく、長く広い川に巨大な樹木、そして……空を飛んでいる幼女と少年に魔界の動物達の姿だった。
「がうがう~♪」
「待て待てー♪」
「ぶいぶーい♪」
「パオーンッ!」
魔界で仲良くなった魔界の子供達とその使い魔がきゃっきゃと楽しそうに駆け回っている姿は見ていて実に微笑ましい。
「みーむーッ!!」
「うきゅきゅーん♪」
あとチビとモグラちゃんも楽しそうにしているし、セクターシティで仲良くなった赤ちゃんと言うのは正しいかどうか判らないが魔界に預けていたグリード達(コラボメモリークロスヒーローズ参照)も楽しそうに飛び跳ねたり、原っぱを駆け回っている。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
「こんな事になるって思ってなかったんです」
「悪気は全然なくて……すみません」
「お兄様、ごめんなさい……喜んで貰えると思ったんです」
「いいよいいよ、俺は怒ってないからおいでおいで」
しょんぼりとしているアリスちゃんと天竜姫ちゃんと天魔ちゃん、そして紫ちゃんに達においでおいでと声を掛けるが、3人とも一定の距離から近づいて来てくれない。呼んで駄目なら近づくしかないなと立ち上がって尻についた葉っぱを払ってアリスちゃん達に近づくとびくっと身体を竦める。
「大丈夫だって、タタリモッケさんに美神さん達が何とかしてくれるって、遊園地にいけなかった分遊ぼう。ほら、行こう」
「怒ってない?」
「怒ってない怒ってない、アリスちゃん達は俺の事を考えてくれたんだから怒る訳無いだろ?ほら、茨木ちゃん達も呼んでるから行こう」
逃げようとするアリスちゃん達の手を取って遊ぼーと声を掛けてくるアガレス君や、パイモンちゃん達の元へ向かって歩き出す。
(でもどうするんだ、帰れないんだぞ?)
(いや、くえすとかが何とかしてくれるって、大丈夫大丈夫)
俺が今いるのは魔界でも、人間界でもない……紫ちゃんの障子の中の異空間をアリスちゃんの魔法に天竜姫ちゃんの竜気と天魔ちゃんの妖気とかで拡張してチビ達が遊べて、魔界の子供達もやってこれる公園のような物を作ってくれたのだが……俺は入れたが出れなくなってしまったのだ。理由は単純で人間を前提にして無かったわけだが……タタリモッケさんにお願いはしたし、無理に出て身体がバラバラになっても困るので美神さん達が外から何とかしてくれるのを待つしかない訳だ。それに臨海学校の最終日に行く予定だった遊園地も駄目になってしまってアリスちゃん達は面白くなさそうにしていたし……それにこういうとあれだが、今の状況は結構好都合だと思ってる。
(それに今東京にいると美神さん達に迷惑が掛かるだろ?)
(まあそれはそうだが……ううむ。仕方ない、外からの救出を大人しく待つか)
臨海学校での頼光の顕現、そして景清や酒呑ちゃんと言った数多くの問題と、天使に操られ景清に殺害された人達の件で天界と魔界から査察部が東京に来るとは聞いていたが、俺の事を面白くないと思っている神族と魔族は一定数いるので小竜姫様にどこかに隠れてもらえると都合が良いと聞かされていたのでこの異空間にいるのはある意味好都合だと前向きに俺は受け取っていた。
「ほら。遊ぼう遊ぼう」
「本当に怒ってない?」
「怒ってないって、ほら行こうッ!」
とにかく今はどうやれば帰れるのではなく、失敗してしまったと落ち込んでいるアリスちゃん達に笑顔を取り戻すために遊ぼうと声を掛けてくれている茨木ちゃん達の輪の中へ加わっていくのだった……。
~美神視点~
天界と魔界からの査察部が今回の事件の事で調査に来ると言っていたが、やってきたのはヒャクメとワルキューレの2人でその2人の顔を見た段階で査察と言う名の現在の魔界と天界の情報を伝えに来てくれたのだと一目で理解した。
「最高指導者から許可は取っている」
「とりあえず、そちらの言い分を全面的に信用するのね~」
話が早くて助かる。神族のヒャクメと魔族のワルキューレが査察に訪れたと言うだけでGS協会やオカルトGメンの査察部はほぼ無力化出来たと言っても良いだろう。
「西条さんがもう少し頑張ってくれればこんな面倒な事をしなくても済んだのにね」
「そう言わないでくれ、僕も出来る範囲の事はやったんだ。なぁ、教授?」
【中間管理職の割には頑張っていたさ。只ね……オカルトGメンも国際GS協会もかなりやばいみたいだねネ】
楽しそうに笑い教授が差し出してきた調査報告書を見て、私は目を見開いた。
「待って、これ……嘘でしょ?」
「ちょっと冗談きついワケ」
同じ様に書類を見たエミも嘘だろと教授に問いかけるが、教授は楽しそうに笑うだけだった。
【喜んだら良いじゃないか、君の母君は生きているよ。まぁ詳しくは……あの狸と西条君に聞くと良い】
教授の言葉に西条さんに視線を向けると西条さんは肩を竦めた。
「先生は生きているよ。かなり厄介な立ち位置にいてね、あちこちの協力者に助けられて世界を転々としているよ」
「ママと話は出来るのかしら?」
「……出来なくは無いが、今は止めておいた方が良い。先生を追っているのは……聖堂協会の執行者に過激派の神魔だ。場所を特定される可能性のある行動は控えるべきだ」
「そう……分かったわ。生きてるって分かっただけで今は良いわ」
死んだと思っていたママが生きている。それはとんでもなく嬉しい話だが、それに喜んでいる場合ではない。分かっていた事だが……私達を取り囲んでいる状況は悪化の一途を辿っている。
「凄く言いにくいのですが……西洋圏の神界は結界による籠城に入りました。裏にはまず間違いなく4大天使がいるでしょう」
「魔界も似たような状況だ。ガープとアスモデウスにつく魔族が多くなっている。その理由は……言いにくいが……」
「4大天使に恨みを持つ悪魔と魔族という事ですね?」
琉璃の言葉にワルキューレが沈鬱そうな表情で頷いた。判っていた事ではあるが……4大天使がデタントに反対し、動き出したとなれば情勢は大きく変わるのは当然だ。
「4大天使に殺された魔族の眷属や、転生した魔族も復讐をする為にアスモデウス側についた。今の所は上級に留まっているが、最悪最上級も絡んでくるだろう。魔界正規軍が押さえ込んでいるが……どこまで抑えれるかは正直自信が無い、それだけ4大天使は恨みを買っている」
天使の中でも最上位の存在であり、ルシファーと対成す存在とされるミカエルを筆頭に4大天使――即ちセラフは悪魔の伝承にまず関わってくる。4大天使に恨みを抱いている魔族や悪魔というだけでどれだけの数がいるのか……想像するだけで頭が痛くなってくる。
「天界のほうは龍神王様を筆頭に過激派や戦争賛成派の押さえつけに入ったのね」
「それ愚作じゃないですか?」
「一応天使側の最上位のメタトロンも同意しての行動なのね。独善的な正義による暴走を食い止める為に致し方なくって所なの、天界は完
全な縦社会だからこれである程度は抑えれると思うのね」
ある程度は抑えれるって言われてもね……。
「「「4大セラフが離反してる所でどうなの?」」」
「ちょっと信用出来ないわね~」
小竜姫様含めてぐうの音も出ないようだが、まさか天使の最上位が離反するなんて誰も思わない。仮にも西洋の神魔のトップの一員であり、地位も名誉も十分にある筈なのに何故このタイミングで離反したかと考えれば、思いつくのは1つしかない。
「小竜姫様達のほうで人造救世主って見つけられないの?」
セラフが自分達の為に作り出した救世主が誕生したからに違いない、何百年も掛けて最高指導者の目を掻い潜り作り出した人造救世主が神魔、そして最高指導者でさえも倒せる切り札からこそ動き出したに違いない。
「探してはいるんですけども、人間と大差が無いんです」
「人間と大差が無い?人造生命体なのに?」
「多分なんだけど……普通の女性に産ませてると思うのね、魂に細工されていても肉体は普通の人間と同じだから神魔では見つけられないのね」
「全部繋がってたのか……南部グループから何もかも、全部」
西条さんが怒りを滲ませた声でそう呟いた。私達も当然人造救世主のカラクリに気付いた……まず間違いなく海外に売られた日本のGSや、旧家の霊能者の多くが人造救世主を作る為の実験台にされたのだろう。女性が多く海外に運び出されていたのも、資金だけではなく、母体として選ばれた可能性がある。
「こんな事をやっておいて救世主って呼ぶなんて正気じゃないワケ」
「本当ね~早く何とかしないと大変な事になるわよ~」
人を使い、霊能を奪い取り、1人の人間に霊能を全て集束させる……望むだけの能力を得るのにどれだけの人間が死んだのか、しかもそれを神魔が行なっていたという事が信じられなかった。だがそれが紛れもない事実であり、そして……。
(あの3人組の話と繋がるかもしれない)
私達が横島君を裏切り、そして殺す。人造救世主は間違いなくそれに関わっている筈だ。
「だけどそれが「美神さんッ!!横島が異界に行って戻れなくなったから助けてくれてって言ってます!!」……は?どういうこと!?なにがあったの!?」
人造救世主について、そしてこれからどうするべきなのかワルキューレ達を交えて話し合いを始めようとした所で蛍ちゃんが横島君が異界に落ちたと叫んだ。どうして家にいるはずの横島君が異界に落ちたのか、私達は何がどうしてそうなったのか詳しく説明を求める。
「それに関しては私が説明します」
「「「「誰!?」」」」
会議室に入ってきた短い茶髪の女性に思わず誰と叫んでしまった。初対面で失礼極まりないが、それだけ混乱していたのだ。
「魔界の新生の地の管理をしておりますタタリモッケと申します。横島さんなのですが……アリスちゃんや天竜姫様達が作りました、その……遊び場に行って帰れなくなってしまったんです。どうも横島さんへのプレゼントのつもりだったそうなんです、魔界の子供達や魔獣と横島さんが遊べるようにと……頑張ったみたいなんです。只人間が帰る事を前提にして無かったみたいで、なんとか外から抉じ開けてもらえないでしょうか?」
なんで今でも頭痛いのにまた別の頭の痛い問題がやってくるのか……私達は額に手を当てて、思わず天を仰ぐのだった……。
一方その頃、異界から帰れない横島はと言うと……。
「シャア?」
「もうちょっと上、そうそう、そこら辺」
「シャアッ!!!」
アリス達の作った異界には寝床などは無く、魔獣達に木を切って貰い、地面を均し、寝床の作成をしていた。
「ここらへんかな~?」
「もうちょっと左かな」
「じゃあここだッ!!」
「んーチルノちゃんは行きすぎかなあ?」
ここに横島がいれば遊んでくれると知っているチルノ達は張り切って切った木材などを運び、それを豪快に地面に突き立てる。
「もっと優しくしないと駄目だよ」
「……そうですの、横島が此処で暮らすんですから、ちゃんと考えてやりましょうですの」
「ううー分かった。たまちゃん、ゴーッ!!!」
「あうあうあーッ!!!」
たまちゃんの体当たりでチルノが突き刺した木材が地面から吹っ飛び、再び音を立てて地面に転がる。
「あ、あうあうあ」
「たまちゃん!?大丈夫ッ!?」
「休ませたほうが良いと思うぞ、でっかいたんこぶ出来てる、そのかわりに吾がやろう」
「うーありがとうイバラギン」
木材を吹っ飛ばした代償にでっかいたんこぶをこさえて目を回しているたまちゃんを見て茨木童子が休ませるようにチルノに促し、チルノとたまちゃんの変わりに家の組み立て作業に加わる。
【天竜姫ちゃん、そっち、天魔ちゃんはこっち。行きますよー、せーの】
「「よいしょっ!!」」
見た目10歳前後の幼女達が巨大な木材を運び、空を飛んで家を組み立てる光景を横島は信じられない物を見る目で見ていた。
「見た目子供でも皆凄いな」
【そうだな、だがいつ帰れるか分からないんだ。拠点はしっかり作るべきだし、また遊びに来る時の家にもなるだろうしな。しっかり作っておいて損はないさ】
「分かってるって、おーい、誰でも良いから俺を上に運んでくれるか?」
「「「はーい!!」」」
「ガウガウ!!」
「シャーッ!!!」
私が運ぶ、僕が運ぶと寄ってくる魔獣達にすっかり気を取り直して笑顔で駆け寄ってくるアリス達に横島は困ったような、それでも嬉しそうな笑みを浮かべて建築作業を再開する。
「お兄様ー♪色々持ってきましたわー♪」
「ふふ、このレミリアに感謝すると良いわ!」
「おーありがとうな、レミリアちゃん」
「ふふん♪もっと褒めても良いのよ!!」
横島は異界から出れないが紫達は移動出来るので魔界の新生の地から椅子や布団を運んで来て、完成した横島の家(仮)に次々と家具を設置する。
「良し、じゃあ夜はカレーでも作るか、カレー食べたい人ー」
「「「「はーい!!」」」」
「じゃあ皆でカレーを作るぞー!!」
「「「おーッ!!」」」
外で美神達が頭を抱えている中、横島はアリス達とキャンプに来ているような気軽さで異界に順応し、アリス達とカレー作りをしていたりする。
リポート15 不思議の国の横島君 その2へ続く
と言う訳で横島は異界入りしました。東方で言う幻想郷ですが、それよりももっと小規模な本当にキャンプ地のような場所になっております。前回がシリアス続きだったのでちょっとここで新加入の酒呑童子とかとのコミュをやりつつ、横島のいない間の美神達を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。