──イージーゴアが、敗れた。
鞍上の柴義富は、信じられないという表情でイージーゴアから降りる。
「…………」
ただ何も言わず、イージーゴアの頭をそっと撫でる。
しかし撫でていないほうの左腕は、悔しさのあまり震えていた。
イージーゴアはそんな義富を、目を細めて見つめる。それから小さくぶるる、と嘶く。
それが義富には『レース内容は悪くなかったぞ。次こそあのいけ好かない黒毛に先着してやろう』と励ましてくれているようでならなかった。
「ありがとうな、イージーゴア」
義富の口から自然とそんな言葉が零れる。イージーゴアも応えるように小さく頷く。
すぅ、と息を吸って、落ち着いた眼差しで義富は言う。
「俺はお前という名馬に恥じないような、そんな騎手になるよ。だから、いつでも見守っていてくれ。
いついかなるレース、馬であっても、必ず力を引き出して勝たせる。そんな騎手になりたい、いや、なるんだ。だからな、イージーゴア──。
──お前に乗った俺を超える、超えてみせる。それでお前の一歩先に行って、こう言ってやるよ。〝俺は待ってるぜ〟ってな」
それはまさしくイージーゴアに対する、義富なりの誓い。
イージーゴアは義富に接触するギリギリまで顔を近づけて、足を二度踏み鳴らす。
──『やれるものならやってみせろッ、ヨシトミッ!』
馬の声などわからないはずなのに、義富にはそのように聞こえた。
「ハハッ、ありがとうな、イージーゴア。そのためにはまずお前を勝たせてからだ」
ぶるる、とイージーゴアは応えた。
「──義富」
落ち着いていて、けれど震えている声で──調教師の深川勇二がひとりと一頭の前に立つ。
それを察したのか、義富は真剣な眼差しで深川の目に視線を定める。
「本当にすみません。次こそは勝ちます」
「ああ、わかってる。次は勝ってくれ。ちなみに、イージーゴアの次走はもちろん、ベルモントステークスだ」
「……なるほど、米二冠を獲りにいくのですね」
「そうや。鞍上は義富、お前しかおらん。だからな、次は本当に頼む」
「……わかりました」
深川は心底悔しがっていた。この場では堪えているのだろうが、腕が震えていたのが義富には見てとれた。
義富に背を向けて去る姿は、まさに夢が破れた男の、悲しきそれだった。
「……深川先生」
ぽつりと悲しき男の名を呟く。
「あの人は二度も、夢が破れてしまったか」
──一度目はミホシンザンという馬を調教していたとき。その馬は皐月賞を圧勝し、三冠は間違いないと確実視されていたさなかに骨折。二冠目の日本ダービーへの出走を断念せざるを得なかった。
──二度目は今、このとき。米三冠を余裕で獲れるほどの実力を持ったイージーゴアが、米二冠目のプリークネスステークスで惜敗。
「……あの人は幾度も、三冠への夢が阻まれてしまっているな……」
どこか悲しげな表情で義富は言う。
と、そんなとき──。
「……どうした?」
イージーゴアが目で義富に訴える。その瞳には、確かな闘志の炎が滾っていた。
「わかった、やってやろう。出るレース全部勝ってやろうぜ」
義富はイージーゴアの頭をポンと撫でた。
条件が満たされました。データをアンロックします。
──柴義富とイージーゴアの絆が高まりました。イージーゴアに騎乗時の柴義富の技術がさらに上昇します。
──柴義富の縁の馬に、イージーゴアの名が刻まれました。
──イージーゴアがサンデーサイレンスをライバルと認識しました。
──イージーゴアの没年が不確定になりました。
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