――ここは……どこだ?
はたと気がついたときには、柴義富はイージーゴアに乗り、ゲート入りを済ませていた。
義富は一切状況が掴めずに混乱した。
なぜなら、先ほどまで義富は自室で眠っていたからだ。
目が覚めればいきなり己のお手馬に乗っていて、さらにレースが始まる前だという。義富を混乱させるには十分すぎる内容だった。
――ええい! こうなればなるがままよ! 馬場はダート、距離は2000m、か。ケンタッキーダービーと同じようなものだな。
一度頭を冷やして、義富は馬場と距離、そして他馬の分析を始める。
――四頭立て――とても少な――。
と、脳内に情報を巡らせるうちに、ガチャリという音を立ててゲートが開き、イージーゴアと赤毛の馬がやや出遅れる形で火蓋が切られた。
慌てて義富は手綱を握り直して、イージーゴアを最後方に位置取らせる。
『さあ、始まりました。ダート2000m、■■■■■■ダービー。逃げていくのは最内枠一番ジャスティファイ。四番人気です。その後ろには二番アメリカンファラオ。こちらは三番人気』
――アメリカンファラオ? ジャスティファイ? なんだ、その馬は?
そんな疑念が義富の頭にこびりつくも、今は『紅蓮の怪物』を勝たせるために振り払う。
アメリカンファラオ、ジャスティファイという二頭は超ハイペースといっていいほどの速さでダートを駆け抜けていく。
早めに仕掛けなければ間に合わないかもしれない。そんな考えが義富の脳裏によぎった刹那。
赤毛の巨躯が音速に等しい末脚で、二頭を瞬く間に抜き去った。
『ここで一番人気――セクレタリアトが先頭に躍り出たッ! まだ800mもあるぞ!』
今、この瞬間――義富は確信した。してしまった。あれに手も足も出ずに負ける、と。
だが、だからこそ、だからこそだ。
義富は知っている。窮地に陥れば陥るほど、イージーゴアは強くなる。
今までで一番力強く、鞭を三度振るう。
「なあ、イージーゴア! 楽しいなぁ!」
イージーゴアが、一瞬でアメリカンファラオ、ジャスティファイを躱す。
「俺もこういう窮地では、勝たせ甲斐があるって――もんよッ!」
もうわけもわからず、ただがむしゃらに手綱を押し上げる。
『おっと!? イージーゴアが疾風のように加速、怒涛の豪脚でセクレタリアトに迫る! 残り200m! イージーゴアとセクレタリアトとの差は二馬身ほど! 残り50m――並んだ並んだッ! 二頭並んでゴールインッ!』
義富は左手を挙げて、ガッツポーズを取る。
と、そんなとき。
空が、ダートが、ガラスのようにひび割れていく。
しかし義富とイージーゴアは至って冷静に、赤毛の馬――セクレタリアトのほうを見向く。
――夢とはいえ、楽しかったぞ! 誇れッ、お前たちは伝説に並んだッ!
セクレタリアトが天に嘶く。それと同時に、世界は砕け散った。
「――ハッ!?」
義富は冷や汗を拭いながら、目を覚ます。
起き上がって、手を握ったり開いたりしてみる。
「……夢、か?」
しかしその手は、どこか一段と力強かった。
――データがアンロックされました。
――伝説『赤き怪物』を破ったことにより、柴義富の騎乗技術が上昇しました。
――称号『怪物を喰らいし怪物』が登録されました。
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