そして先に謝罪とご報告を。申し訳ないですが、イージーゴアのラストランも小説のように描こうと思います。
イージーゴアが左後ろ脚を痛めた。その報告は関係者を非常に動揺させた。
現在、十一月の二週目。さんさんと降り積もる雪を踏みしめながら、はあ、と溜め息をついてオーナーは頭を抱える。
「有馬記念までには治る、か」
雪に覆われた地面をサクサクと軽快な音を立てて進む。
そんな音とは裏腹に、心は纏っている防寒着が乗っかっているように重かった。
しばらく歩いていると、オーナーは目的地に辿り着き、頬を両手で叩く。
「スワーヴダンサーに会うんだ。馬主が暗い気持ちでいてどうすんだ」
しかしオーナーの足取りは重くなる一方だった。
「あっ、オーナー。今日はどうなさい、まし……」
牧場長の樫田は、オーナーの表情を観察して――察した。
ああ、と思わず声を出す。
「……何かお辛いことがあったご様子で」
「まあ、そうやね」
「……よろしければ、お伺いしても?」
「わかった。一から話すわ」
それからオーナーは、イージーゴアがレース後に脚を痛めていたこと、けれどそれは有馬記念までには治ることを、弱々しい声音で説明した。
樫田はただ、それに対して相槌を打つのみだった。
「オーナー、有馬記念にイージーゴアを出走させるご予定で?」
「…………」
こくり、とオーナーは頷く。
「止めはしません。イージーゴアが望むようでしたら、出してあげてください」
ポンと突然、樫田が手を叩く。
「そうだ! スワーヴダンサーに会いに行きませんか? あれからさらに成長したのですよ!」
「ほら、早く早く!」と言いながら、強引にオーナーの腕を引っ張って、柵の前に立たせる。
すると、一頭の一歳馬――スワーヴダンサーが駆け出してきて、柵を軽く飛び越える。
だが止まり切れず、オーナーの腹部にダイブする形となった。
「ゴフッ!?」
「オーナー!?」
「だ、大丈夫だ。問題ない」
腹部に乗っているスワーヴダンサーの頭を撫でながら、オーナーは満足げに微笑む。
「すまん、ちょいと重い」
申し訳なさそうにオーナーが言うと、渋々といった様子でスワーヴダンサーは彼から離れる。
「このスワーヴダンサーなんですが、将来必ず大物になりますよ!」
嬉々とした語調で、樫田が口を開く。
オーナーはドヤ顔で鼻息を吹いた。
「当たり前だろう。俺の相馬眼を舐めるなよ」
「ははは」
「おい、なんの感情も込めずに笑うな」
「フゥハハハハハ!」
「それは込めすぎィ!? しかもなんだか偉そう!?」
そんなツッコミを入れたのち、オーナーはふうと深呼吸する。
そして、スワーヴダンサーのほうに振り返る。
「――勝ってくるからな、スワーヴダンサー」
――ああ、勝ってきてくれよ! 次はこの俺の出番らしいからな!
オーナーにはどこか、スワーヴダンサーがそう言ったように聞こえた。
――データがアンロックされました。
――スワーヴダンサーに雷が落ちなくなりました。
――スワーヴダンサーの没年が不確定となりました。
シーザスターズが目指すレースは?
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