弊ウイポ世界の競馬掲示板の妄想   作:佐月檀

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 今回から掲示板形式ではなく小説として書いていきます。掲示板形式のほうは申し訳ありませんが、しばらくお休みとなります。


黒いステイヤー編 リベンジと春風と栗毛と

 春風が訪れる季節へ移り変わりゆく三月。

 クラシックの有力候補が集うGⅡ弥生賞。

 芝十ハロンで行われる、クラシックの前哨戦。本番である皐月賞の2000mと同距離かつ同舞台で、若駒たちがぶつかり合う激戦区だ。

 そんな弥生賞だが、今年は事実上の一騎打ちとなっていた。

 

 クラシック戦線の本命馬二頭が今、この場で再び激突するからだ。

 黒い艶が日光で燦々と輝く馬がパドックに現れた瞬間、周囲は緊張感に包まれる。

 

 

『二番人気五番ライスシャワー。鞍上は蘆名正義。前走を快勝しての参戦となります』

 

 

 厩務員に引かれるがままライスシャワーはパドックを悠々と歩く。

 足取りは軽く、しかし強く地面を踏み込んでいた。

 それはまさに、逆襲(リベンジ)を誓う者の姿だ。

 破るべき標的は、ただ一頭のみ。

 

 

『一番人気十番アイルトンシンボリ。鞍上は前走と同じく岡辺幸斗。ホープフルステークスのときのような末脚で、中山の2000mを再び制するのか』

 

 

 ホープフルステークス(中山2000m)の勝者が姿を現す。

 素人目から眺めても力が漲っている鹿毛の馬体。パドックでも落ち着いている様子で闊歩している。

 やはりGⅠ馬は違う。アイルトンシンボリに賭けた誰もが勝ちを確信する。

 そんな観衆を傍目に、ライスシャワーに騎乗せんとしていた正義は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 ――主戦ではない俺でも、ライスシャワー()からは確かに伝わってくる。『あいつに勝ちたい』『目にものを見せてやりたい』、そんな闘気がな。

 

 

 鞍に跨り、手綱を握ると同時に、春の空気を深く吸う正義。

 次の瞬間には、手綱を力強く握り締め、ライスシャワーをゲートまで駆けさせた。

 それを眺めていた者たちからは歓声があがる。

 

 

「いいぞ蘆名! ライスもいい動き!」

「返し馬がええな。ライスシャワーも買っとくか?」

「アイルトンシンボリに勝ってくれーッ!」

 

 

 歓喜、声援、困惑。さまざまな感情が返し馬で競馬場に入り乱れていく。

 けれども正義は意にも介さない。今集中すべきなのはただ一点。

 そう、一着をもぎ取る。今の彼らはそれしか眼中にない。

 誘導員に引かれ、正義が乗ったライスシャワーはゲートに入る。

 正義は瞬きもせず、今か今かと待ち望む。

 そして、そのとき。

 

 

『GⅡ弥生賞、スタートしましたッ! おっと二頭出遅れた様子。さあ前へ行くのはどの馬か。ロケットスタートでライスシャワーがやや前、三番手に着けました』

 

 

 内心で正義はガッツポーズを決める。非常に好ましいスタートを切れたからだ。

 今回、正義が採った作戦は前走と同様、逃げ馬をマークし最終コーナーで押し切る作戦である。いわゆる前目に着ける王道的な先行だ。

 

 

『一番人気十番アイルトンシンボリは九番手。これは前走のホープフルステークスとほとんど同じ位置取り! 競馬場はどよめきと歓声に包まれております』

 

 

 やはり、と不敵に笑む騎手がひとり。もちろん、ライスシャワー騎乗の正義である。

 正義は予めこの展開を予想したうえで、敢えてライスシャワーを三番手に着けたのだ。

 

 

『各馬、何も動きがないまま1000mを通過しました。おっとこれはスローペースだ! 後方勢にはやや辛い展開! 九番手のアイルトンシンボリは大丈夫か! 岡辺幸斗は大丈夫か!』

 

 

 スローペース。その単語が響いたときには、アイルトンシンボリを本命に推した馬券師たちから落胆の声が漏れた。

 アイルトンシンボリはスタミナがあり、切れる末脚もある。だがスローペース時はどうだ。スローペースに陥った最終直線では瞬間的な切れとスピードが重視される。

 けれどもアイルトンシンボリには末脚や持久力こそあれど、瞬間的な対応力がなかった。

 だからこそ、最終コーナーを回る刹那、正義は確信する。

 

 

『最終直線で先頭に立ったのはライスシャワー! 前走と同じく逃げ馬を差して先頭だ! このまま押し切るか! アイルトンはどうだ!? アイルトンは厳しい! アイルトンは厳しい! 鞍上の岡辺が必死に鞭を振るうがこれはもう届かない!

 ライスシャワー、押し切ってゴールインッ! ライスシャワーが一着! ホープフルと同じ中山の2000mで、雪辱を果たしましたッ! アイルトンシンボリは三着です!

 右腕を掲げ咆哮した蘆名正義、見事な展開読みでしたッ!』

 

 

 

 

 ――GⅡ弥生賞はライスシャワー! 中山十ハロンでの雪辱を果たす!

 そんな記事が載っている新聞を片手に、ひとりの調教師が栗毛の馬に目を向ける。

 

 

「定博、どうや? 追い切りのほうは?」

「はい、とても順調です。坂路も難なくこなしてますし」

「そうか」

 

 

 調教師は再び新聞を読もうとする。

 

 

「青山先生、まさか気になってるんですか? ()()()()()()

「正直、そうやな。要警戒や」

「……僕とミホノブルボンでしたら勝てます、必ず」

「わからんで。勝つからには勝つようにミホノブルボンを仕上げる。けれども当たったときは注意しとき」

「わかりました」

 

 

 騎手――戸島定博はそう返すと、再び栗毛の馬――ミホノブルボンを走らせる。

 一方で調教師である青山為男は、不安そうに顔を強張らせた。

 

 

「日本ダービーと菊花賞。そのふたつが決戦やな」

 

 

 春の風とは思えない冷たい風が、虚空を吹き抜けていった。




 ――データがアンロックされました。




 ――ライスシャワーがアイルトンシンボリにリベンジできたことにより、ライスシャワーが成長しました。
 ――ミホノブルボン陣営がライスシャワーをマークしました。

シーザスターズが目指すレースは?

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