仮面ライダーセイバー 外伝 黄昏の国と楽園の妖精   作:翠風

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第2章 終わりの村、コーンウォール。

 その後、コーンウォールの住民達によって歓迎の宴が開かれることになった。多くの肉や野菜に果実、酒が振る舞われ、宴は大盛況となり、それは夜になっても続いていた。

 

「いやぁー、お腹いっぱいだ…」

 

 これ以上食べきれないとライサンダーはお腹をさすり、横に座っているストリウスもそうだね、と相づちをうつ。出された料理は普段食べ慣れている(といっても確かな記憶はないが)ものより数倍美味しく感じており、そのため二人は普段よりはるかに多くの量を食べていた。それに反してトリストラムはジュースと僅かな果実しか口にしていなかった。しかも堅琴を体に寄せて何かにひどく警戒しているようであった。

 

「それにしてもライサンダーとストリウスはすごいですね! 土の氏族と風の氏族と分け隔てなく話せるなんて!」

 

 マシュ曰く、土と風の氏族、どちらかに肩入れするのが妖精國とやらの常識らしい。またでてきた新たなワードに首を傾げるライサンダーとストリウス。そんな二人にマシュは妖精國について教えようとしたその時。

 

「はい、みなさん静粛に! 宴はここで終わりですよ! 夜になってしまったので、歓迎会はまた明日に持ち越しましょう!」

 

 顔のいい妖精---ハロバロミアが終わりを告げると、獣人らしい妖精のまとめ役であるドーガや、ドワーフに似た妖精のまとめ役であるオンファムを筆頭に解散していき、広場は静けさを取り戻す頃には誰もいなくなった。

 

---

 

 その後、ストリウス達はハロバロミアの頼みによって少女の案内で住処まで案内された。家のつくりは先ほどまでいた小屋よりしっかりとした造りになっており、内装は質は上がっているものの、全体的な感じとしてはあまり変わりは無かった。

 

「で、では、おやすみなさい。ここは広場から離れていますが、村の中なので安心して休めますよ。」

 

 そう言うと、少女は一礼をし、去って行った。少女が去ったのを確認するとマシュは先ほどの会話の続きを始めた。ここは妖精國ブリテンという地であること。この地における妖精の氏族、理性的で平和的な風の氏族に建築などに携わる土の氏族。好戦的で大地と共に生きる牙の氏族などについて説明していった。なお、特殊な氏族である王の氏族については何故か私情100パーセントで話していた。

説明を聞いているストリウスはふと先ほどから黙っているトリストラムの様子に気になり顔を向けた。するとそこには宴の時と変わらない険しい表情をしたトリストラムがいた。

 

「トリストラムさん、どうしたんですか? さっきから緊張しているように見えますけど…」

「それは…はい、緊張しています。いえ、これは恐れている、といってもいい。広場に行ってからこのトリストラム、気の休まる時はありませんでした。三人には弱々しい生き物にみえているようですが、彼らは妖精であるだけで、恐ろしい。記憶が無くとも、それだけは分かります。

あの少女ですら何らかの神秘を宿しています。彼らは無害のようですが、その力は人間を遙かに凌駕しており、その気になれば簡単に殺害できる。それをどうかお忘れ無く。……私は、とても恐ろしい。」

 

 そう言うと黙ったトリストラム。小屋の中はどこか薄ら寒くなり、誰かがゴクリと唾をのみこむ音が大きく響いた。そんな三人を安心させようとマシュはわざと明るく言う。

 

「大丈夫ですよ。さっきの広場に、私たちを嫌う妖精はいませんでしたよ。みんな、呆れるほど平凡な妖精で――おや?」

 

 何やら外から歌が聞こえてきた。耳を傾けていると、それはどこか悲しいものだとストリウスは感じた。歌を聴いているうちにライサンダーは大きなあくびをした。夜もかなりふけてきたらしく、四人はそれぞれ寝る準備を始めた。

ストリウスは着ていたコートを掛けようとするとそこから何かが落ちた。ストリウスがそれらを拾っていると、トリストラムは興味を示した。

 

「それは……短剣と本?でしょうか?」

「ええ、これらは俺が気づいたときに持っていたものです。今の俺はこれらが何か分からないですが、忘れちゃいけない大切なものだと思うんです。」

 

 そういいながら短剣と本を見つめるストリウスにトリストラムはフッと笑う。

 

「ストリウス。あなたは私の仲間に似ていますね。」

「仲間ですか?」

「ええ、今はおぼろげにしか覚えていませんが。私の仲間にはどんなことがあっても決して折れることがない深い信念を持った者がいます。あなたはその者に似ています。

あなたの言うとおりそれはきっと大切なものでしょう。早く記憶を取り戻するといいですね。」

 

 そういうとトリストラムはポロロンと堅琴を鳴らした。

 

---

 

 翌日、ストリウス達は昨日の少女の案内のもと、村の周りを散策していた。ここコーンウォールは元々街だったが、200年前に起きたキャタピラー戦争によって当時の領主が討たれた際の呪いによって村は放棄、その後“嫌われもの”となった妖精達が集まって現在の形となったのだという。

 

「よう、ライサンダー! 昨日は楽しかったな! おまえさんメシをうまそうに食うから好きだぜ! 今日はもっと持ってくるからな!」

「ごきげんよう、ストリウス。あなたの声には命がある。今日は詩でもどうでしょう。」

「よう、お二人さん。まだノリッジ製の布があるからな。お前さん達に服を作ってやれるぞ。」

 

 村を散策する中で、次々と声をかけられる二人。一方マシュは通りすがる妖精達に何も言われず「何だろう……この格差…」と苦笑いを浮かべた。

 

「やっぱりあれかな…にじみでる品格?ですかね…私そういうの無頓着なので…」

「そうですか? 私はマシュさんも素敵だと思います。ストリウスさんとライサンダーさんはそこにいるだけで楽しくなる空気をお持ちですが、マシュさんは空気が温かいというか、明るいというか、平和だった頃を思い出すんです。」

 

 不貞腐れるマシュに対し、少女はアナタにもいいところがあると伝える。するとマシュは、はっとした顔を浮かべた後、照れるように言った。

 

「えへへ、何を隠そう、私は明るさだけが取り柄なのです! どんな時でも笑っている、が私の方針なので! ありがとうございます!」

「そうですよね、笑顔が一番ですよね。」

 

 そういうと、二人は笑顔で笑い合った。

 

---

 

 村の案内が終わった一行であったが、ライサンダーはどんよりとした空気を纏っていており、マシュは何処か気まずい顔をしていた。というのも、マシュが村のすこし外れた場所で腕試しをしようと提案したのが原因である。曰く、魔術は力、何事も実践あるのみだのこと。結果、ライサンダーは戦闘に参加出来ず、ただ指示を出すことしか出来なかった。

 

「ごめん、何もできなくて……」

「いいいえ、こちらこそももも申し訳なく…! 戦闘技術が必要ない…つまり戦う必要がない身分……もしかしてライサンダーは氏族長のご子息だったり…!?」

 

 テンパるマシュを片目に、トリストラムは未だにうなだれているライサンダーに話し掛けた。

 

「お気になさらず、ライサンダー。私は逆に納得がいきました。理由は思い出せませんが、貴方はそれでいい。指揮官としての頼もしさ、といいましょうか。貴方がいれば最終的には何とかなるはず……そんな確信すらするのです。」

「イゾルデダイスキ…!」

「トリストラムです。ライサンダー」

 

 目を輝かせるライサンダーにフッと笑いながら名前を訂正するトリストラム。その様子をみて「良かった」とストリウスはうんうんと頷いていた。一方、パニックから落ち着いたマシュはストリウスの方に視線を向けた。

 

「それにしてもストリウスさんは不思議ですね。小説家っていうには剣の扱いが慣れていますし、その短剣も鞘から抜けると長剣になるなんてエクタ―でも出来ないと思いますよ。いやまぁ弦を鳴らすだけで切り刻むトリストラムも大概だと思うんだけど…」

 

 マシュの指摘に確かにと頷くストリウス。ストリウスが今覚えている記憶には物語を書いている自分しかない。それにもかかわらず、腕試しの時には流れるような動きで、次々と森に生息する蟲を斬っていったのである。

 

 

「ええ、あなたの剣技には洗練された動きというものがありました。おそらく記憶を失う前の貴方は小説家にして剣士だったのでしょう」

 

 トリストラムの言葉に首を傾げるストリウス。確かに蟲を斬った時の動きは自分でも信じられないほどになめらかだった。剣とは一朝一夕で扱えるものでは無い。かなりの鍛錬が必要である。しかし、今自分が覚えている記憶にはそういった機会がまったくない。失われた記憶が関係しているのだろうか、と考えた。

 

「小説家にして凄腕の剣士…なんかキャラ濃いですね。まるで味噌ラーメンネギ多めニンニクマシマシで、みたいだ。」

「マシマシ……なんかどっかで聞いたような、聞いてないような……」

 

 ライサンダーの例えに何故かマシマシという言葉に引っかかるストリウス。小説家に剣士にマシマシ。一体、記憶を失う前の俺は一体何なのだろうと疑問を抱いた。

 

 

ーーー

 

 夜、歓迎の宴は1日目と変わらない勢いで続いていた。妖精達は全員酔っ払ってきたのか、たき火を囲みながら大合唱で歌っていた。音程はバラバラでありながらも不思議と一つの歌として成立していた。そんな彼らの様子をストリウスは果実酒を飲みながら眺めていた。眺めているうちに、ふと前々から気になっていたことをライサンダーに話し掛けた。

 

「そういえばライサンダーくんの右手についてる赤い紋様は一体何かな?」

「俺も分からないんです。これは目覚めた時からついていたもので…」

「そりゃぁ令呪だな。全く、ひどいもんだ。三画もつれられている。」

 

 声のしたほうを見ると、そこには木製のジョッキを持ったオンファムが近づいてきていた。オンファムはドシンとライサンダーの隣に座った。令呪。ストリウスの知識にその名は無いが、オンファムの反応を見るかぎり、良いものではないらしい。

 

「だがもう忘れろ。ここじゃぁおまえさんに無理強いするヤツはいないんだ。今までよく頑張ったな。細っこいのにたいしたヤツだ。」

 

 そう言いながらオンファムはライサンダーの背中をバシンとたたいた。するとライサンダーは突然ボロボロと泣き始め、強くたたきすぎたか?とオンファムは動揺した。それを見たストリウスは記憶を失う前の彼の身に一体何があったのだろうと考えを巡らせたが、慰められるライサンダーを見ている内に、こういうのは邪推かなと考えるのをやめた。

 すると、ハロバロミアの陽気な声が聞こえてきた。彼に反応している妖精達を見るに明日も宴を開くつもりらしい。住処に帰ろうとしたその時、罵声が響いてきた。

 

「おい、そこの! 明日もあるんだ、ちゃんと片付けておけよ!」

「は、はい、分かりました。みなさんの後片付け、ですよね……?」

「それ以外なにがあるってんだマヌケ! いちいち言われなきゃ何もできねえのか!」

「ごめんなさい、ごめんなさい……! がんばります、がんばります!」

 

 

 罵倒されている声があの時の少女だと気づいたライサンダーは、声のした方に駆け寄ろうとするもマシュに引き留められる。

 

「テントに戻りましょう、ライサンダー。私たちはまだ部外者です。彼らの内情に立ち入りたいのなら、もう少し様子を見てからにするべきかと。

それにこの村は閉鎖された環境です。もし何らかのトラブルが起きたとき、私たちに逃げ場はありません。だから、ここは慎重に、ね。」

 

 マシュの意見にトリストラムとストリウスは同意し、ライサンダーも渋々頷き、一行は住処に戻っていった。その道中、ストリウスは先ほどの罵声とそれに対する反応から少女のこの村での立ち位置に一抹の不安を感じた。

 

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