ご了承ください。
コーンウォールを抜け出してから数十分、一行は全力で走っていた。途中、二人の追っ手が迫っていたが、村の外で過ごしていた少女の土地勘のおかげか、1つめの丘で逃れることが出来た。
「みなさん大丈夫ですか? ここまで休みなしで走ってきましたが…」
「何とか、平気……!」
「ライサンダー君……、俺より下なのによくそんなに走れるね……」
一行は途中の木陰で休みをとった。この中で一番バテていたストリウスはコートを脱いで、木によたれかかっていた。
「道案内、本当にありがとうございます。……ですが、良かったのですか? もう村に戻れないのでは……」
心配するマシュに少女は「あなたのお陰で私のお家はしばらく安全だから大丈夫」と言う。するとライサンダーはとあることに気づいた。
「君、その顔の染みは……?」
「染み? 何のことですか?」
よく見ると少女の顔の右側はどす黒い染みに覆われていた。どう考えても普通じゃない様子にライサンダーは心配するが、少女は染みを認識してないような反応をした。そんな少女にライサンダーはかすかな違和感を感じながらも、なんでもないと言った。
「それよりも早く森を抜けましょう。また追手が来るかもしれません。ストリウスさん、いけますか?」
「うん、何とか」
休憩していたストリウスに確認をとり、一行はまた走り出した。
そこからさらに数十分、鬱蒼と茂っていた木々が徐々に少なくなり、霧も薄まったのか日の光が差し込んできた。そして前方に傾斜が見えてきた。中原に出るためには4つほどの丘を越えなければならないらしく、数的にもあそこが最後の丘らしい。無事森から抜け出られそうなことにマシュがお礼を言おうとすると、突然少女は苦しみ始めた。マシュが大丈夫かと寄り添おうとすると少女はマシュの手を振り払った。
「さわるな、わたしにさわるなぁあああ! 痛い、痛い、痛い! 何百年もずっと痛いの、何百年も一人だったの…!
できないことばっかり押しつけられて、無理なことばっかり溜まっていって! 今まで助けてくれなかったクセに、一度も見てくれなかったクセに、いまさら良かったことなんて、いらなかった!」
少女の突然の錯乱に驚く4人。なおも少女の怒濤の悪意ある言葉は続く。
「バカじゃないの、あなたたち!? わざわざ連れてきたのなんて、独り占めするために決まってるじゃない! うぅ…あぁ……違う、違う、わたし何で……あ、あ゛ぁ゛ぁぁ!!!」
すると少女の右顔に覆っていた染みが泥のようになり、少女の全身を飲み込んでいく。そして少女は黒い霧を纏った一体の怪物と成り果てた。その姿にかつての面影はない。少女の変貌に呆気にとられるトリストラムとライサンダー、それにストリウス。するとマシュは震える手で杖を持った。
「―――構えて下さい。彼女は……もうダメです。あれはモース。ただそこにいるだけで世界を汚し、妖精を殺すブリテンの呪いです。彼女はもう殺すしか救う方法はありません。」
モースと呼ばれた黒い怪物は金切り声を上げると、禍々しい色をした呪いの塊を四人に向けて放つ。間一髪、四人は直撃を避けることに成功した。黒い塊が命中した地面はドロドロに溶かしていた。次々と呪いの塊を放つモース。それをトリストラムは精密な射撃で次々と撃ち落とす。
だが、モースとの間が近すぎるうえ、放たれた呪いの塊が多いため、防戦一方となっていた。マシュもトリストラムを援護するために動こうとし、ライサンダーもやるしかないのかと顔をしかめながらトリストラムに指示を出そうとする。が、ストリウスの言葉に動きを止めた。
「そうだとしても、絶対に助ける!」
「は!? いや何を言ってるんですか!? モースになったら助けられないって今言ったじゃないですか!?」
「それでも、俺は彼女を助けたいんだ!」
なおも彼女を助けると言うストリウスに、マシュは本気で頭おかしいんじゃないかと思い始める。
「もう無理なんです!モースになった妖精はもとに戻らない!倒すしかないんです!というか、どうしてそこまでするんですか!?」
「記憶が無くても分かるんだ。約束は必ず守るべきものだって。俺は彼女と約束をしたんだ。困っていることがあったら助けるって。だから俺は彼女を絶対に助ける!」
約束したから助ける。ただそれだけのことに息をのむマシュ。すると、ストリウスのコートに着いているポケットが眩く光りはじめた。
一体何がおきたんだ?とポケットの中をのぞくと、短剣が赤く輝いていた。ストリウスは恐る恐るそれを手に取る。すると、ストリウスの脳内に数々の記憶がフラッシュバックしていく。
『覚悟を越えた先に、希望はある!』
『俺は俺の想いを貫く!』
『大切な人達は、僕が守る!』
『最強の子育て王をなめんじゃねえぞ!』
『強さこそ正義だ!』
『私はお前と共に戦う!』
『最光だな!』
『もし世界の最後が決まっていたとしても、物語の結末は俺が決める!』
突如くずれさるストリウスに「大丈夫ですか?」と声をかけるライサンダー。するとストリウスはゆっくりと起き上がる。彼の眼にはさっきまでとは違い、確固とした熱いものが宿っていた。
「ストリウスさん?」
「俺は大丈夫。マシュちゃん、ライサンダー君。後ろに下がってて」
そう言うとストリウスは二人のまえに出て、短剣を納めた鞘――聖剣ソードライバーを腰に当てる。するとベルトが形成し装着された。そしてもう一つ、ストリウスは懐から赤い本――ワンダーライドブックを取り出し、それを開く。
『ブレイブドラゴン!』
『かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた……』
起動したワンダーライドブックをソードライバーの一番右側のスロット、ライトシェルフにセットする。
すると神秘的なメロディをした待機音が流れ、後ろに巨大なブレイブドラゴンワンダーライドブックが顕現する。
ストリウスは短剣――火炎剣烈火の柄を掴むと一気にソードライバーから抜刀する。すると巨大なブレイブドラゴンワンダーライドブックが開かれ、ブレイブドラゴンが出てくる。そして、最後に必要な言葉を力強く叫ぶ。
『烈火抜刀!』
「変身!」
『ブーレーイブドラゴーン!!』
抜刀し、長剣となった火炎剣烈火をストリウスはX字に振り下ろし、斬撃波を飛ばす。するとストリウスの体にブレイブドラゴンが纏われ、赤と白と黒の装甲に変化する。そして、斬撃波がストリウスに帰ってきて、複眼「クロスフレイムバイザー」へと変化する。
『烈火一冊』
『勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』
変身したストリウスの姿にトリストラムとマシュは驚き、ライサンダーは何故か目を輝かせる。
「ストリウス、あなたは一体……!?
困惑するマシュの問いにストリウスは自分の本当の名を告げる。
「俺は神山飛羽真! 仮面ライダーセイバーだ!!」
自分の真名を告げると、セイバーはモースを見据える。
「トリストラムさん、援護お願いします!」
そう言うと、セイバーはモースに向かって走り出した。飛羽真の変身にモースも動きを止めていたが、セイバーが近づいてくるやいなや、次々と呪いの塊と放ってくる。それをセイバーは火炎剣烈火で切り払う。
モースもただ呪いを放つのではなく、アンダースローなど、様々な形で放つ。だがそれはトリストラムの正確な射撃で撃墜されていく。モースはこのままでは倒されると本能で悟ったのか、周囲の呪いを自分に吸収、その身を異形な形に変化させる。
モースは頭部と思われる部分から高濃度の呪いを纏った複数の触手を高速でセイバーに向けて突き刺そうとする。
だが、これまで多くの敵と戦ってきたセイバーにとってこれくらい攻撃などものともしない。触手が向かってくるのを視認するやいなや一気に跳躍、回転しながら火炎剣烈火で全て切り裂く。
「■■■■■■――!!?」
触手を全て切り払われたことに驚くモース。その隙にセイバーは剣が届く範囲まで迫る。
「はぁぁぁ……!!」
少女を助けるという想いで心を一つにするセイバー。すると刀身が赤熱・発光し、聖なる炎がまとわりつく。セイバーは火炎剣烈火を大きく振りかぶると、モースに向かって勢いよく振り下ろした。
「■■■■■■■■■■――!!!!!」
火炎剣烈火に切り裂かれ、苦悶の声を上げるモース。するとモースから少女が分離、解放された。崩れ落ちる少女をセイバーは抱きかかえる。少女の様子を見るに、意識がないらしい。
「マシュちゃん、ライサンダー君! 彼女を!」
「分かりました!」
「了解です!」
意識の無い少女を二人に託そうとしたその時、トリストラムが大声を発す。
「ストリウス、後ろです!」
トリストラムの警告に振り返ると、核となる少女を失ったためか、先ほどより不定形となったモースが腕を展開し、セイバーを少女ごと貫こうとしていた。
(しまった!)
少女を助けようとするあまり、周りを見ていなかったことに悔やむセイバー。トリストラムとマシュはそれぞれの得意分野でセイバーを貫こうとするモースを倒そうとする。
「テーセウスの鎧!」
その時、セイバーから見て、正面から投擲された一つの槍がモースの手を吹き飛ばした。 手を吹き飛ばされ苦悶の声を上げるモース。どこの誰かは分からないが、この好機を逃さない。
セイバーはブレイブドラゴンワンダーライドブックをライトシェルフから抜き取り、火炎剣烈火の先端に内蔵されている「シンガンリーダー』に読み込ませる。
『ブレイブドラゴン! ふむふむ…。』
『習得一閃!』
「火炎一文字斬!」
火炎剣烈火の刀身に龍状の炎を纏わせると、セイバーはモースを横なぎに切り払う。呪いの塊であり、力が弱まったモースに聖なる力がこもった一撃を耐えきれる術は無く、爆発、四散した。
モースの異形な形はEXアタックのモーション時の姿をイメージしています。