感想、評価は小説を書くモチベとなっています。なのでどしどし来るのをお待ちしています。
モースを撃破し変身を解除した飛羽真は、マシュとライサンダーのもとに駆け寄る。未だに意識がない少女にむけてマシュは治癒の魔術をかけている。だがその表情を見るに、状況は芳しくないらしい。
「マシュちゃん! 彼女は!?」
「治癒をかけていますが、全然効き目がありません! 衰弱していく一方です!」
「なっ…!?」
マシュの言葉に愕然とする飛羽真。火炎剣烈火は悪しきものとそれ以外のものを切り分ける力を持つ。この力を使い、飛羽真は新型メギドに融合された人を幾度も解放してきた。取り込まれた人は解放された直後は衰弱していたが、すぐに回復していた。
今回もその力を使い、呪いの塊であるモースと少女を切り離すことに成功している。だが、解放されてもなお衰弱していくという現象は見たことが無かった。
(やり方が間違っていたのか? いや、そんなことはない。なら一体……?)
すると、不意に後ろから声が聞こえてきた。
「驚いた、まさかモースから妖精を分離するなんて」
足音がしたほうを向くとそこには一人の男の妖精がいた。その妖精は頭に冠を被り、童話の世界から抜け出した様なメルヘンな王子服に身を包み、アゲハ蝶の羽を背に生やしていた。
「あ、あなたは――」
何故か驚愕しているマシュを横にトリストラムはライサンダー達に近づいてくる男に問いかける。
「あなたは…、その気配を見るに先ほど槍を放った者ですね。あなたは一体何者ですか?」
「本当はもうちょっとかっこよく登場したかったけど、状況が状況だけに仕方ない。今は簡単に名乗ろう。僕の名はオベロン。人呼んで妖精王オベロンだ」
(妖精王オベロン!? たしかウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に出てくる妖精の名じゃないか!?)
男の名がかの著名な作品に出てくる妖精であることに驚く飛羽真。だが、今はそれどころではないと思考を戻す。
オベロンは少女のもとによると、彼女の腕をとる。するとオベロンの手が光に包まれていく。少しして光が収まると、オベロンは「ああやっぱり」と諦観した顔をした。
「今、少し
「そんな…!」
オベロンの言葉に愕然とする飛羽真達。すると少女の体が震え、僅かに眼が開く。
「眼が開いた!」
少女の容態に気づいたライサンダーの声に全員が少女のもとに集まる。
「ごめんなさい……、皆さん…。あんなこと言うつもりじゃなかったの……。わたしは……」
「いいえ、あなたのせいではありません! あなたは決して悪くないのです! 悪いのは……」
声を震わせながら謝る少女に、マシュは目尻を赤くしながら貴方のせいではないと言う。
そのことに少女はどこかほっとする。
「ありがとう…、マシュさん…。何もかも忘れていた素敵な名前をくれて…。」
そう言うと少女は飛羽真の方に顔を向ける。
「ストリウスさん…。約束…、守ってくれてありがとうございます……」
「そんなことない! 俺は君を……!」
約束を果たせなかったことに歯を食いしばる飛羽真。だが、そんなことはないと少女は微笑みながら言う。そう言いながら、咳き込む少女。呼吸は喘ぎ始めており、少女の生きる炎がもう長くないことを物語っていた。それでも少女は語り続ける。
「私…もう長くないこと……、分かっていたんです…。だから、こうして最後に話せることが……お礼をすることができるのは…ストリウスさんのお陰です。」
そういうと少女は両手を上にあげ、力を込める。すると虹色の光がともり始める。光がホープの手の中に収束すると、ホープは握っていた手を開く。すると、貯められていた光が解き放たれ、虹色の粒子となって5人に降り注いでくる。
「これは……」
「これは幸運の祝福です…。私の…本当の名前はホープ…。 希望を振りまくことがわたしの役目で……、なにもいいことがなくて……、疲れて……。でも……最後……楽しかった。マシュ……、あなたには……、笑顔……似合……る。だから……泣かないで。…………ありがとう」
そういうとホープの手の力が抜ける。マシュがしっかり!と言おうとするが、ホープは既に笑顔を浮かべながら事切れていた。
ホープが亡くなったことに周りは重苦しい空気が漂う。するとマシュはバチンと自分の両頬を思いっきり叩いた。
「ええ、そうです! 私は笑顔が似合っているんです! だから泣きません!」
「マシュ……。そうだね。泣いてばかりじゃいられないよね」
「はい、私もそう思います」
目尻を赤くさせながらも気合いをいれるマシュに同意するライサンダーとトリストラム。
トリストラムは飛羽真に大丈夫か?と問うと、飛羽真は「大丈夫です。彼の言うとおり、泣いてばかりじゃいられませんから。」と答える。だが、その顔はどこか悲しげだった。
「彼女のお墓、簡単でもいいから作らないとな」
「いいえ、ライサンダー。妖精に墓は作らなくてもいいのです。」
曰く、妖精とは死んだとしても、腐らずに、変化して残り続けるらしい。それでもと渋るライサンダーにオベロンはいいんじゃない?と言う。
「ここブリテンの常識は彼らにとって慣れないものだからね。それにマシュ。君も彼女をそのままにするのは気分が良くないだろう」
オベロンの言い回しに違和感を覚えるマシュだが、ホープとの思い出を浮かべ、ライサンダー達が行い始めた墓作りに参加した。そして数分後、一行は少女の遺体に土をかぶせただけの簡単な墓を作り終えた。
「さて、改めて自己紹介を。僕の名はオベロン。人理に喚び出された英霊にして、この異聞帯で君たちを助ける運命を担ったただ一人のサーヴァント。人呼んで妖精王オベロン。どうだい? かっこいいだろう?」
人理、英霊、異聞帯、サーヴァント。これらのワードが告げられた瞬間、ライサンダーの脳内にこれまでの記憶がフラッシュバックする。タ・ヴィンチちゃん、ゴルドルフ新所長、ホームズ、ノウム・カルデアのスタッフ全員、トリスタン、そしてマシュ・キリエライトのことを。
「そうだ……俺は藤丸立香! そして、トリストラムは――」
「はい、その通りと申しましょう。貴方はカルデアのマスター、藤丸立香。そして、私は妖弦の騎士、嘆きのトリスタン。ようやく思い出せました。そして、マシュ。あなたも」
そう言いながらトリスタンは横にいるマシュに視線を向ける。マシュはオベロンの方を見ており、何かに困惑していた。
「オベロン? マーリンではなくて……?」
「マーリン?」
マーリンという言葉に全く心当たりがないような顔をするオベロン。どうやら勘違いをしていたらしくマシュはオベロンに「あ、いえ、なんでもありません。」と訂正した。なんでも彼女が知っているマーリンという人物に雰囲気が似ていたらしい。
「私の名前はキャスター。アルトリア・キャスターです。って、長くて照れますね。キャスターというのは村での名前だったので、どうかアルトリアと覚えて下さい。」
どうやら全員、自分の記憶を思い出せたらしい。良かった良かったと飛羽真は笑顔で頷いていると、トリスタンがそういえばと飛羽真の方に顔を向けた。
「ところで、飛羽馬殿。貴方は一体何者でしょう?」
「え!? 飛羽真って立香の仲間じゃないの?」
飛羽馬が実は立香の仲間ではないというまさかの事態に驚くアルトリア。すると藤丸も確かにと頷いた。
「うん、実は飛羽真さん、全く知らない人なんだよね」
「俺も立香君達のこと全く知らないんだよね。そもそも人理やらサーヴァントやらよく分からないし……」
「ふむ、君は彼らのすぐ近くで倒れていたはずだけど……。チェンジリングで来たのかな?」
首を傾げながら深く考えるオベロン。すると先ほどより霧が濃くなってきた。
「おっと、このままじゃまた霧に呑まれてしまう。ほら、急いだ急いだ。あの木々の向こうがゴールだよ。まずはブリテンの本当の景色を見るといい。積もる話は、またその後で」
「ブリテンの本当の景色?」
「はい! 行きましょう、立香! 風と土と生命、詩と雨に愛された理想郷、多くの妖精が暮らす黄昏の島、ブリテンへ!」
そういうと、アルトリアは藤丸の手を取り、丘の向こうへ駆け出していく。彼らを追うように飛羽真達も走り出した。
数分後、飛羽真達は最後の丘を越え、開けた場所で立ち尽くしている二人に追いついた。
「二人とも、どうした――」
立ち尽くしている二人に声をかけようとした飛羽真だったが、目の前に広がる光景に眼を奪われた。それは朝焼けのようで、それでいて黄昏のような空、地面いっぱいに広がる緑、天を突くかのような巨大な樹らしき物体と幻想的な美しさに満ちていた。
「これがブリテンの風景--」
見たことがないほどの幻想的な風景に一行は暫くの間、見とれていた。
・本編裏話
前章でセイバーの変身シーンにて
オベロン「へぇ、あれが仮面ライダーか……」