機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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砂の上で語る

 

 

 

 

 

「・・・そうですか。懸念していた事が・・・」

 

救出作戦を終え、その日の夜。

テンカワさん達とミナトさんを俺の部屋に招集した。

議題はもちろんカエデの事だ。

 

「映像は加工したけど、あの場には艦長とイネスさんがいた。イネスさんはそういう事を他言しないと思うけど」

「・・・そうですね。ユリカさんなら訊かれたら素直に答えてしまいそうです」

「・・・否定できない」

 

艦長、言われていますよ。

・・・否定できないのは俺も同じだけど。

 

「もしかしたら、他にも目撃者がいたのかもしれない。でも、問題なのは誰かじゃなくて、知られてしまったという事」

「アカツキさん達を監視しましょうか? 少なくともエリナさんとアカツキさんの会話を聞ければ意図は掴めるかと」

「そうは甘くないでしょ。彼らだって監視の死角くらい知っていると思う。聞かれたらまずいと分かっていて平気で話すような事は・・・」

 

流石にないと思う。

 

「ですが、しないよりはマシでしょう。おそらく目的はボソンジャンプの実験でしょうが」

「そうだろうな。まさか予定が崩れてしまうとは・・・」

 

悔やむように告げるテンカワさん。

 

「テンカワさんはどうするつもりだったんですか? 自分が誘われていたら」

「知らない振りをして誘われたな。月に飛ばなければ月臣の破壊活動を阻止できない」

「・・・そうか。カエデはパイロットじゃない。という事は飛ばされたとしても・・・」

「ああ。何の対処も出来ずに月が破壊されるだろな」

 

・・・それはやばい。

今まではどうにか犠牲になる人を少なくする事ができていた。

でも、もしカエデが月に飛ばされるようになったら、原作以上の犠牲が出る。

ましてや、カエデ自身が危ない。

 

「しかし、カエデさんをナデシコから降ろす理由がないのでは? アキトさんの時はパイロットとしての問題行為という理由付けが出来ましたが」

「確かにそうだな。一コックが降ろされるような事態はないと思う」

「いや。可能性としてはありえますね。たとえ問題を起こさなくても」

「それってどういう意味? コウキ君」

「自主的にって意味ですよ」

「どうして自主的に実験に参加しようとするんだ?」

「カエデは木星蜥蜴に恨みがあるんです。だから、木星蜥蜴を見返せるのならって」

「・・・そういえば、彼女、言っていたわ。火星大戦で全てを失ったって。両親、妹、お店も居場所もって」

 

両親が死に、妹も死んだ。

お店というのはきっと自営業で和食レストランでもやっていたって事だろう。

だからこそのあれだけの和食の腕前。

居場所。色んな意味だろうな。

家族という居場所、町という居場所、お店という居場所。

そして、火星という居場所。

全ての居場所を同時に失ったんだ。

その喪失感はどれ程か。

・・・俺にはとてもじゃないが、理解してあげられないな。

 

「木星蜥蜴への恨みを利用されるかもしれないという事か」

「彼女は本当に思いやりがある子なのよ。きっと両親も妹も愛していたんだと思うわ。それを奪った相手になら・・・」

 

思い出す。

フクベ提督に対するカエデの態度を。

あれは日頃の彼女を忘れる程に憎悪に満ちた顔だった。

 

「復讐。・・・俺には批判できないものだな」

「・・・アキトさん」

「・・・アキト」

 

そう、カエデは復讐という名目で実験に参加しかねない。

復讐は簡単に理性を失わせる。憎しみ、恨み程に強い感情はない。

 

「君の力で木星蜥蜴を滅ぼせるんだ。そう言われたら自主的に参加しかねません」

「・・・そうだな。少なくとも俺もそう思っていた節がある。こんな俺でも木星蜥蜴を倒す為に何か出来るんだと煽てられて調子に乗った事もあった」

「ボソンジャンプが出来たぐらいで何も変わらないんですけどね」

「国や軍単位ではな。だが、暗殺やテロ活動ではこの上なく便利だ」

「瞬間移動。どうして争い事ではなく、民事的に利用しないのでしょうか」

「それが人間の性なのだろう。人の歴史は全て戦争から始まっている」

「聞いた事があります。民事的に使われている物は全て戦争で進歩した技術であると」

「ヒサゴプラン。軍が管理するようだから駄目だったのかもしれんな。軍である限り、戦力として扱われる」

「ヒサゴプラン自体は民事的だったのかもしれませんが、結局、戦争の準備の隠れ蓑として使われました」

「平和は次の戦争の準備期間。そんな悲しい言葉を俺は知っています」

「フッ。そうなのかもしれんな」

 

自嘲するように笑うテンカワさん。

短期間で二度の戦争に中心人物として巻き込まれれば、その思いも深いだろう。

 

「今はそういう話は置いておきましょう。問題はカエデちゃんをどうするかよ」

 

そうでしたね、ミナトさん。

 

「ネルガル関係者を近付けないようにしたいんですけど、流石に厳しいですよね?」

「厳しいだろうな。一人にならなければ近付かないと思うが、ずっと近くにいるのも変だろう?」

「そうよね。勤務場所も違うし、常に誰かを食堂にいさせる訳にもいかないもの」

「そうですよね。そもそもこれじゃあ根本的な解決にはならないですから」

 

その場凌ぎでしかない。

いずれカエデはきちんとした形で話を受ける事になるだろう。

俺達が知らぬ間に。

 

「カエデちゃんから憎しみの念を取り除ければいいんだけど・・・」

「無理だな。何かを失うという事はそう簡単なものではない。憎しみ、恨み、喪失感が、常に心を苛む」

「・・・そうよね。彼女を支えてくれる人が現れればいいんだけど・・・」

 

どうして俺を見るんですか? ミナトさん。

 

「ごめんなさい。なんでもないわ」

 

だから、どうして、俺を見ているんですか? ミナトさん。

 

「どうにかして対象をカエデから逸らさせるしかないですよね」

「ああ。俺なら対処可能だが、彼女だったらどうしようもない」

「こちらからボソンジャンプの情報を提供しますか? それならば、喰い付いて来るかもしれません」

「喰い付いてはくるだろう。だが、それと平行して彼女を誘うのは間違いない。エリナはそういう女だ」

 

一つだけで満足せずにあらゆる観点から物事を観察し、解析し、試行する。

流石は弱冠二十歳で敏腕秘書と呼ばれる訳だ。

慎重さ、大胆さ、計算高さを兼ね揃えている。

 

「そうなれば、たとえ対象を逸らさせてもカエデは狙われ続けますね」

「・・・そうなるな。やはり本人を説得するしかないようだ」

「コウキさん。カエデさんをどうにか説得できませんか?」

「一応、よく考えてから動けとは言っておいたけど、感情的に動きそうだ」

「それならば、カエデさんにボソンジャンプを教えますか? そうすれば、彼女も危険性が・・・」

「・・・そうだよね。でも、出来れば知らずにいて欲しいんだよ。ジャンパーである人間がボソンジャンプの事を知るのは危険だと思うから」

「・・・そうですね。ボソンジャンプが出来る事で自分が何でも出来ると勘違いされても困りますし。周囲からの視線にも敏感にならざるを得なくなりますから」

「・・・む。耳が痛いな」

 

そういえば、そんなキャラでしたね、テンカワさん。

 

「でも、逆に知らない事も怖い事なんじゃないかしら? 何の理由も知らないでいきなり攫われるなんて事になったら・・・」

 

火星の後継者によって攫われた火星の人達はそんな感じだったのかもな。

 

「ボソンジャンプを教えるとしたら、俺が見せればいいんですかね?」

「現状でジャンプできるのはお前だけだからな。俺はCCがなければ無理だ」

「私達は単純に無理ですね」

 

ルリ嬢とラピス嬢は遺伝子改造してようやく機械補助付きで飛べるようになったらしい。

要するに、それ以前の身体になっているから・・・。

 

「飛べないの? 本当に?」

「え? だって、まだ遺伝子改造をしていませんから」

 

・・・俺とミナトさんの理論が正しければ飛べる可能性はなくはない。

ま、今言っても混乱するだけだから、言わないけど。

・・・でもな、やっぱり・・・。

 

「・・・俺としてはカエデを巻き込みたくないんですよね」

「ボソンジャンプを知るという事は木連との争いに巻き込まれるという事だからな。否が応にも」

 

そう、必ず巻き込まれる。

あいつは食堂で平穏にコックをしていて欲しい。

戦争なんかに囚われないで。

・・・こういうのはどうだろう。

 

「現状では、木連は火星人がジャンパーという事は知らないんですよね?」

「ん? ああ。知っていたら火星人を殺そうとはしないだろう」

「それなら、ボソンジャンプの使用を抑えれば、火星人がジャンパーという事実を隠せるんじゃないですか?」

「・・・俺の存在が木連に火星人こそがジャンパーと教えていたからな。これから先、ボソンジャンプを使わないように物事を運べば・・・」

「・・・可能かもしれません。あくまで可能性ですが」

 

ジャンパーの特定。

アキト青年の存在がなければ気付かなかったという可能性もある。

向こう側はアキト青年が人類で初めて生身のボソンジャンプを成功させたと知らない訳だし。

それに、ネルガルが火星人=ジャンパーという結論を出したから、周囲にも伝わったと言う可能性もある。

どちらにしろ、この時点であれば、火星人=ジャンパーという事実を周囲に知られる事を回避できるかもしれない。

 

「・・・その為にもカエデさんの実験参加は避けたいですね。跳べてしまえば、条件付けが出来てしまいますから」

「やはりボソンジャンプを教えない方向でどうにか説得するしかないですね」

 

ボソンジャンプをどう扱うにしろ、カエデは巻き込めない。

そもそも火星人がジャンパーだと知られなければ、これからの火星人の被害を失くす事も可能かもしれない。

ジャンパーの条件をあやふやにするのもいいか?

 

「マエヤマ。頼めるか?」

「・・・はい。出来る限りはやってみます」

 

なんとしても、カエデの実験参加は避けないと。

そうしなければカエデがアキト青年のような悲惨な目にあう可能性がある。

ネルガルにとって都合の良いジャンパーとして。

 

 

それからしばらくは今後の方針などの確認。

互いの考え、主張を話し合った。毎度の事だけど、世界を変えるという事の大変さを思い知る。

こんな行動を取ったら、未来はこうなるのではないか。

そんな水掛け論みたいな答えのない問いを解き続けるのだ。

結局、いくつもの可能性を考えて、臨機応変に対応するという結論に達する。

数学のように必ず計算の果てに同じ答えがある訳ではない。

それが怖くもあり、同時に時代を変えようとする者として期待する事でもあった。

 

「ねぇねぇ、ルリルリ」

「あ、はい。・・・え?」

 

唐突に告げられるルリルリという言葉。

この平行世界では初めてではないだろうか。

 

「あの・・・ミナトさん」

「ルリルリか。流石は私。良い渾名だわ」

 

なんか自己完結されていて話が見えてこないんですが。

 

「ルリルリって・・・」

「コウキ君からルリルリって渾名は聞かされていたんだけど、ほら、自分で納得するまで呼びたくなかったのよ」

 

同意を求められても困ると思いますよ。

でも、何となくその気持ちは分かる。

平行世界の自分が名付けた渾名をまるで自分が考えたかのように振舞う。

ルリ嬢に記憶があると分かった後なら更に呼びづらい。

それは仲良くなるまでの過程を無視したかのようで。

 

「ルリルリとはやっと仲良くなれたじゃない? だから、これからルリルリって呼ばせてね」

「はい!」

 

笑顔のルリルリ、って、俺まで影響されてどうするよ。

でも、やっぱりルリ嬢はルリルリって呼ばれるのが似合っているよ。

嬉しそうに笑う所をみると流石はミナトさんだと思う。

今よりもっと前から呼んでいたらこんな笑顔は見られなかったんだと思うし。

 

「ついでだが、その敬語はどうにかならないのか? マエヤマ」

 

え? 俺?

 

「いや。何かテンカワさんって年上オーラがありまして」

「まぁ、精神的に上なのは認めるが、年齢的にはむしろ下だぞ」

「ま、まぁ、そうなんですけどね」

「そうね。丁度いいわ。私にも敬語をやめましょう」

「えぇ!?」

 

それは流石に無理ですよ。

ミナトさんは無条件で敬語です。

 

「ま、突然には無理よね」

 

流石ミナトさん。わかってらっしゃる。

 

「だから、少しずつ慣れなさい。まずはさん付けをやめる所から」

「い、いや、いきなり難易度高くないですか?」

「最初に大きな壁を乗り越えれば後は楽なものなのよ」

「えぇ~っと・・・」

 

無理。心臓バクバク。

 

「ほら。思い切って」

「・・・ミナト」

「聞こえないわよ」

「・・・ミナト!」

 

ふわぁぁぁ。真っ赤。絶対真っ赤だよ、俺。

 

「ふふっ。意外と私も照れるものね」

 

それでも余裕そうだからズルイ。

俺はこんなにも余裕がないのに。

 

「まったく。俺達の前という事を忘れてないか?」

「・・・本当です」

「・・・コウキ、真っ赤」

 

呆れた眼で見てくるテンカワ一味。

それがまた羞恥心を・・・。

 

「そうだな。ひとまず敬語と俺の事はアキトと呼んでくれ。同じ目的を持つ仲間だからな。堅苦しいのはやめにしよう」

「・・・そうですね。それなら、俺はコウキと呼んでください」

「さっそく、敬語なんだが?」

「えぇっと、癖みたいなものなんで。意識はしますから」

「ま、ミナトさんの言う通り、突然は無理だろうかなら。少しずつ慣れていってくれ」

「はい。あ、いや、おう」

「おうってのも変よね?」

 

突っ込みはいりません。

 

「それじゃあ、これで解散としようか」

「そうです・・・、そうだな」

「ま、早く慣れろ」

 

そう言いながら去っていくテンカワ一味。

残されたのは要するに俺とミナトさん、いえ、ミナト。

うん。無理だ。ミナトさんの方がビシッとくる。

 

「コウキ君」

「ミナトさん。やっぱり敬語の方がビシッと来るんですけど」

「いいわよ。別に」

「え? だって・・・・」

「あれはアキト君に便乗してみただけ。久しぶりにコウキ君をからかいたくなっただけよ」

「はぁ・・・」

 

何だ。そういう事か。

緊張して損した。

 

「ま、呼び捨ての方が嬉しいのは事実だけどね」

「気が向いたらで」

「はいはい。そうするわ」

 

そう言いながらちょっとずつ近付いてくるミナトさん。

えぇっと? その? あの?

 

「なに緊張しているの?」

「え? いつだって緊張しますよ」

「もぅ可愛いんだから」

 

落とされる唇と視界一杯に広がるミナトさん。

パッと眼を閉じると唇に感触。

なんどやっても慣れない。

でも、なんどもやりたくなる。

ボーっとして、でも、心はうるさいくらいバクバク言って。

心地良くて、恥ずかしくて、でも、やっぱり気持ち良くて。

 

「・・・ん・・・はぁ」

 

ドキッとするぐらい妖艶な溜息。

覗き込むように見詰めてくる瞳。

少しトロッとして、目尻が下がっていて。

・・・気付けばまた唇を落とされていた。

 

「・・・好きよ」

「・・・はい。俺も・・・です」

 

長い夜は始まったばかりです。

 

 

 

 

 

「夏だ! 海だ! 温泉だ!」

 

え? 温泉? 何故? ってか、夏でもないよ。

 

「ルリルリ。日焼け止め塗ってあげる」

「海。二回目です」

「ラピラピもおいで」

「・・・海、初めて」

「セレセレ」

「・・・海、初めてです」

 

何だかお母さんみたいですよ、ミナトさん。

とても絵になっています。

・・・凄く雰囲気にそぐわない発言をしますが、その二文字を重ねるという行為がキラーなパンサーを思い出させてくれます。

確かゲレ②?

・・・一緒にするなって話ですよね。分かります。

すいません。反省しています。ごめごめ。・・・意味わかるかな?

 

「それで、私はコウキ君がもちろん塗ってくれるのよね?」

「え?」

 

海辺でパラソルやら何やらを並べての息抜きタイム。

遊びとなればナデシコクルーは凄まじい。あっという間に夏場の海辺が再現されてしまった。

赤道直下、熱帯雨林、真っ赤な太陽、でっかい海。

海なんて久しぶりだな。なんか楽しくなってきた。

でも、ミナトさん・・・。

 

「ほ~ら」

 

き、際どいですから。その水着。

ってか、既に半裸。背中に塗れですと!?

 

「早く塗って。コウキ君」

「・・・・・・」

 

太陽がサンサンと照らす心地の良い青空の下。

・・・無言で日焼け止めを塗り続ける情けない僕の姿があったとか。

 

「お、終わりました」

「あら。そう? ありがと」

 

笑顔でウインクするミナトさん。

当分、俺は固まっているんだろ―――。

 

「・・・もっと凄いの見ているくせに」

「ブフォッ!」

 

ボソッとなんて事を!

バッとミナトさんを見ると・・・。

 

「ふふっ」

 

ニヤニヤしていましたよ、この人。

あれですね。からかいモードですね。

 

「次は前も塗る?」

「なッ!?」

「あら? 嫌なの?」

「い、嫌じゃないですけど」

「じゃあいいじゃない。ほ・ら」

「し、失礼します」

 

ぜ、全力で逃げ出す。む、無理。心臓が破裂する。

 

「もぉ。初心ねぇ」

 

聞こえな~い。

 

 

 

 

 

「何してんの?」

 

はぁ・・・はぁ・・・と全力でダッシュしたが故の弊害である息切れをどうにかして抑えようとしている時、こいつはやってきた。

 

「お前こそ。海で遊んで来いよ」

 

隠しコマンド、弄くる。

・・・はちょっと余裕がない。

胸の動悸が激しくて必死に抑えようとしているからだ。

まったく。ミナトさんは・・・。

 

「私、海って初めてなのよね」

「あぁ。火星って海少ないもんな」

「よく知っているじゃない。少ないというか、人工的な湖みたいのしかないのよね」

「そうとも言う。ほら、一応、俺って火星育ちだから」

 

設定ではね。

 

「え? 貴方って火星育ちなの?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「へぇ。同郷なんだ、じゃあ」

「そうなるな」

 

何か普通の会話。

おかしいな。何だこの穏やかな空気は。

 

「ねぇ、コウキはさ」

「ん?」

「木星蜥蜴を恨んだりしてないの?」

 

木星蜥蜴を恨む。

火星人なら当たり前か。

 

「そりゃあ火星が被害にあったんだ。嫌いだよ」

「私ね。火星大戦で家族みんな死んじゃったの。友達も」

「・・・そうか。家はどうだったんだ?」

「家も潰れちゃったわ。私の家って火星でも話題の和食レストランだったのよ。知らない?」

「知らん」

「貴方ねぇ・・・。・・・はぁ。まぁいいわ」

 

呆れられてしまった。

 

「生き残りの中に知り合いはいなかったのか?」

「始めはいたんだけど、すぐに死んじゃったわ」

「そっか。それじゃあ・・・」

「ええ。ナデシコに保護されてからも気軽に話せる人はいなくて」

 

ナデシコで保護する前の火星の民達。

絶望して、周りとコミュニケーション取ろうとかも考えなかったんだろうしな。

そうか。こいつはずっと一人ぼっちだったのか。

 

「ま、貴方みたいな馬鹿のおかげでナデシコでは楽しくやらせてもらっているわ」

「馬鹿は酷いぞ。でも、ま、お前が寂しい思いをしてないっていうのは嬉しいな」

「ホント、貴方って真面目な時と普段でギャップが激しいわね」

「そうでもないだろ」

 

友達になれたって事だよな。

部屋に送り届けた時、寂しそうだったのは居場所がなかったからか。

ナデシコがこいつの新しい居場所になってくれると嬉しく思う。

 

「ねぇ、話、変わるんだけど」

「ん? 何だ?」

「貴方ってあのミナトとかいう人と付き合っているの?」

「あれ? 話してなかったか?」

「・・・そう・・・なんだ」

 

何だ?

何故、俯く?

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

・・・しんみりとした空気だな。

重いのは嫌だ。

 

「ほら! 行くぞ!」

「い、行くってどこによ!」

「海だよ。 海!」

「え、ちょ、嫌よ!」

「ハハ~ン。分かったぞ。お前、泳げないんだろ?」

「そ、そんな事ないわよ!」

「それじゃあ、泳げるんだな?」

「ふ、ふんっ。当たり前じゃない!」

「おし。それなら、見せてみろ。平クロールを」

「な、何よ、その変な泳ぎ方」

「なッ!? お前、知らないのか!? あの有名な―――」

「え? ま、まさか、知っているわよ。知っているに決まっているじゃない」

「そうだよな。まさか平クロールを知らない奴なんていないよな」

「ええ。常識よ。常識」

 

平クロールって何?

俺が知りたいし。クックック。

 

「おし。行くぞ!」

 

海の中に突入。

港町生まれの俺を甘く見るなよ。

海なんて慣れっこだぜ。

 

「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよぉぉぉ!」

 

やっぱり泳げないみたいだな。

必死に海の中を走ってやがる。

 

「このあたりでいいな」

 

高さが俺の腹くらいの所で停止。

深過ぎたら可哀想だしな。

溺れられても俺が困る。

 

「おし。平クロールだ」

「え、ええ。見てなさいよ」

 

スーハーと深呼吸して・・・ダイビング。

足と手をバタバタさせて必死に進む。

・・・何だ? その泳法。

ってか、息継ぎも出来ないとは。

 

「ふ、ふんっ。どうよ?」

 

十メートルくらいしか進んでないのに何故そんなに胸を張れる?

 

「お前、あれが平クロールだと思ってんのか?」

「え? ち、違うわよ。あれは練習用」

「なるほどな。まずはアップって奴か」

「ええ。アスリートとしてアップは欠かせないわ」

 

お前、いつアスリートになったんだよ。

 

「はい。じゃ、本番」

 

・・・碌にクロールも出来てなければ、平泳ぎも出来てない。

 

「なるほど。お前の平クロール。見せて貰った」

「ええ。完璧だったでしょ?」

 

そもそも泳げてなかったけどね。

 

「ああ。そうだな。完璧だった」

「当たり前じゃない。私を誰だと思っているの?」

「カエデ」

「ま、間違ってないわ」

「そんなカエデに質問がある」

「何? なんでも答えてやるわよ」

「平クロールって何だ?」

「え? それって・・・」

「ああ。俺は平クロールという泳法を聞いた事も見た事もない」

「そ、そんな・・・。騙したのね!? 騙して私で遊んだのね!?」

「うん」

「うん、じゃない! いつもいつも騙して! 何なのよ!?」

「いや。つい」

「つい、じゃないわよ! もぉ・・・信じらんない・・・」

 

やばっ。泣きそう。

ミスった。

 

「えぇっと、ほら・・・ごめん」

「・・・・・・」

「反応が面白くて・・・。ごめん。調子に乗った」

「・・・・・・」

「カエデ?」

「・・・知らない! もう知らない!」

「お、おい!」

 

陸に上がろうと去っていくカエデ。

 

「馬鹿! コウキの馬鹿! 死んじゃえ!」

 

追いつこうにもその声が拒絶を表していて。

追うに追えなかった。

 

「・・・はぁ。やっちまった」

 

調子に乗り過ぎたかな。

 

「まったく。何やってんだか」

 

傷つけちゃ駄目だろ、女の子を。

 

「・・・はぁ。太陽が眩しいぜ。太陽の馬鹿野郎」

 

八つ当たりでもしなっきゃ、やってらんない。

あぁ。本当馬鹿だな、俺。

 

 

 

 

 

「あら? コウキ君。元気ないわね」

 

パラソルの下で日光浴を楽しむミナトさん。

それの真似してセレス嬢も日光浴を楽しんで?いた。

 

「ええ。ちょっと」

「ま、それなら。セレスちゃんと遊んできなさいな」

 

セレス嬢とか。

そうだな。気晴らしにもなるだろうし。

 

「おし。セレスちゃん。砂の御城を作ろう」

「砂の御城って何ですか?」

「ま、とりあえずおいで」

 

セレス嬢と手を繋いで、浜辺に向かう。

 

「このさ、少し濡れてる砂があるでしょ?」

「・・・はい」

「まずはそれを山みたいに盛るんだ」

「・・・山みたいに、ですか? 分かりました」

 

手じゃ辛いか。おし。ウリバタケさんあたりなら持っているだろ。

むしろ、砂の城作りも手伝ってもらおうかな。

 

「手じゃ大変だから、シャベルとか持ってこようか」

「・・・はい」

「じゃ、おいで」

 

手を繋いでウリバタケ氏の所へ向かう。

一人で山を作っていてとも言えたけど、まだ心配だしな。

 

「ウリバタケさぁん!」

「おう! 何だ。マエヤマ」

 

出た! 海の家!

 

「ヤキソバか? ラーメンか? カキ氷か?」

「いえ。ウリバタケさん。ウリバタケさんはセレスちゃんに夢を与えたいと思いませんか?」

「夢・・・だと?」

「ええ。そう、砂の御城という夢を!」

「何!? 砂の城だと!?」

「そうです。ウリバタケさん。セレスちゃんと共に城を作りませんか?」

「おう! 任せろ! こんな店、撤収じゃぁ!」

 

パパパとあっという間に崩される海の家。

凄まじいバイタリティ?だ。

 

「おっしゃあ! この海の男と呼ばれたウリバタケ・セイヤが砂の城作りを一からレクチャーしてやるぜ!」

「あ。班長。ズルいっすよ。一人だけセレスちゃんと遊ぼうだなんて」

「そうっすよ。俺達も参加させてください」

 

整備班が合流。

 

「楽しそうな事やっているじゃねぇか」

「私達も作ろうよぉ」

「・・・・・・」

 

パイロット三人娘も合流。

 

「ガイさん。私達の愛が一番だって証明しないと」

「よっしゃあ! 誰よりも高くカッコイイゲキガン城を作ってやるぜ!」

「それでこそガイさんです!」

 

またまた合流。

 

「いいですな。偶には童心に帰るのも」

「ミスター。続きは?」

「また後でいいじゃないですか。ゴートさんも参加です」

「・・・む。構わないが」

「僕もやろうかな」

「会ちょ―――」

「おいおい、プロス君、君は何を言っているのかな?」

 

あれれ? いつの間にか大所帯に。

 

「コウキ君。そんなに人を引き連れて何やってんの?」

「えっと。城を作ろうと思ったらこうなっちゃって」

「そう。じゃ、私も参加しましょう」

 

ミナトさんが近付いてくる。

周りの整備班の眼が垂れ下がっていて・・・むかつく。

 

「あ。じゃあカエデちゃんも誘ってきなさいよ」

「えぇっと、喧嘩しちゃって」

「喧嘩ぁ? 珍しいじゃない」

「ちょっとからかい過ぎて」

「まったく。コウキ君、気を付けなさい」

「はい。反省しています」

「仲直りのきっかけになるじゃない。ほら」

「で、でも・・・」

「セレスちゃんは私に任せて」

「はぁ・・・。分かりました」

 

話しかけづらいってのに。

カエデ。どこにいるんだろう?

 

「・・・あれは・・・」

 

カエデ・・・とエリナ秘書。

そうか。ここで接触か。流れを断ち切るとしよう。

 

「カエデ」

「・・・ん? フンッ」

 

ん!? 眼を逸らされた。

やばいな。マジで怒ってやがる。

 

「ちょっと! 今、私が話しているのよ」

「あ。すいません。何の話ですか?」

「クッ。覚えてなさい」

 

何だよ、その悪役の去り方は。

 

「なぁ、カエデ」

「・・・・・・」

 

ツンと顔を背けていらっしゃいます。

意地でもこっちを見ないつもりでしょう。

 

「さっきは悪かった。調子に乗っていたな」

「・・・・・・」

「・・・すまなかった。・・・許してくれないか」

「・・・はぁ・・・。分かったわよ。私が悪者みたいじゃない」

 

ほっ。良かった。

 

「それで? 何か用?」

「あっちで砂の城を作ろう大会をするんだが、来ないか?」

「砂の城? 何それ?」

「プールでは絶対に無理な事だな。浜辺の砂を積み重ねて城を作るんだ」

「へぇ。楽しそうじゃない」

「難しいから城になるかは分からないが、お前もやってみないか?」

「いいわよ。暇だし」

 

よし。了承を得られた。

 

「じゃあ、行こうぜ」

「ええ。仕方ないわね」

 

肩を並べて、浜辺へと向かう。

大会の会場はちょっと遠い。

今の内にエリナ秘書の話を聞いておくか。

 

「さっきのエリナさんは何て?」

「今度、実験に参加してくれないかって。ボソンジャンプがどうたらこうたらって」

「・・・参加するのか?」

「貴方、前に言ってたじゃない」

「え?」

「ほら、よく考えてから行動しろって。だから、まだ返事してないわ」

「そうか。カエデ。俺としてはそんな事に参加して欲しくない」

「何で貴方にそういう事を決められなくちゃならないの?」

「何の実験かは知らないが、わざわざ危険な目にあう事はないだろ?」

「でも、私は―――」

「カエデ。お前の木星蜥蜴を見返したいという気持ちは分かる」

「・・・・・・」

「でも、本当にその実験が木星蜥蜴を見返せるものなのか分からないだろ?」

「え? ・・・そういえばそうね」

「それに、もし、そうだったとしても、お前が犠牲になる必要はない」

「それでも!」

「ネルガルに利用されて欲しくないんだよ!」

「・・・コウキ」

「家族を失ったのは辛い。友達を失ったのも辛い。でも、お前は生きているんだ。そうだろ?」

「・・・でも、私は・・・」

「恨むな、憎むな。そんな事は言わない。俺だってそんな事になればそう思うだろうから」

「・・・・・・」

「でも、そんな感情で一生を無駄にする必要はない。だから、自分がどうしたいか、しっかりと考えて欲しいんだ」

「・・・自分がどうしたいか・・・ねぇ」

「ああ。俺ならいつだって相談に乗るからな。ゆっくりと考えてみてくれ」

「・・・分かったわ。考えてみる」

「ありがとう。カエデ」

「べ、別に貴方に礼を言われる筋合いなんてないわよ」

 

流されるのではなく、自分で考えて動いて欲しい。

それが、きっとカエデの為になるから。

 

「さて、着いたぞ」

「・・・何? これ?」

「ああ。これがナデシコクオリティなんだ」

 

気付けば、司会者用のステージが作り上げられており、審査員席なんてものもあった。

司会としてプロスさんがマイクを握り、審査員席には艦長、ホウメイさん、何故? ウリバタケさん、作るんじゃないの? の三人がいた。

ん? 艦長はそわそわして様子。きっとアキトさんの姿を探しているんだろう。

そういえば、アキトさん達は何を? アクアさんと接触しているのか? あえて。

あ。補足ですが、副長は一人ナデシコでお留守番だとかなんとか。可哀想に。

あ。更に補足ですが、アクアさんとはネルガルの敵会社クリムゾンの関係者です。

社長の一人娘だったかな? 問題児として有名らしいですが、その実体は・・・どうなんでしょ? 僕にも分かりません。

 

「お~い。コウキ君」

「あ。あそこか」

 

手を振って場所を示してくるミナトさん。

隣ではセレス嬢が黙々と砂を積み上げている。

 

「ほら。行くぞ。カエデ」

「・・・ええ」

 

何だろう?

あまり乗り気じゃない?

 

「えっと、嫌だったか?」

「え、違うわよ。ほら。作り方わかんないし」

「何だ。俺が教えてやるって」

「ふんっ。貴方なんかに教わらなくても作れるわよ!」

「・・・どっちなんだよ」

 

ま、いいや。

とりあえず、移動っと。

 

「お待たせしました」

「・・・・・・」

「いらっしゃい。カエデちゃん」

「・・・ふんっ。私の力がどうしても借りたいって言うから来てやったのよ」

 

そんな事、言ってないっての。

 

「じゃ、さっそく、御願いしようかしら」

「ま、任せなさいよ」

 

強がりだよねぇ。ま、ミナトさんならうまくリードしてくれるだろ。

じゃあ、俺はセレス嬢を手伝うか。

 

「セレスちゃん。頑張っているね」

「・・・はい。これがトンネルです」

 

ミナトさんに教わったんだろう。

砂の山の真ん中あたりが空洞になっている。

・・・懐かしいな、トンネル。

 

「おぉ。やるねぇ。崩れないように気を付けて」

「・・・はい。でも、もう一回崩しちゃいました」

 

シュンとなるセレス嬢。

ま、難しいもんな。城作りとかいいながら、俺もトンネルで満足していた覚えがある。

 

「いいの、いいの。崩れたらまた作ればいい。楽しければいいんだから」

「・・・はい」

 

別に城じゃなくても楽しめるし。

俺はよく穴を掘って、堀だとかいって楽しんでいたし。

 

「おし。それじゃあ、綺麗な城を作りますか」

 

シャベルを片手にこの時間を楽しむ事にしました。

 

 

 

 

 

SIDE MINATO

 

セレセレとコウキ君がちょっと離れた所で楽しんでいる頃。

私はカエデちゃんとおしゃべりをしていた。

 

「へぇ。プールも中々入れないんだ」

「水は大事な資源だもの。プールみたいに水を溜めるのは勿体無いわよ」

 

地球と火星の生活環境の違いはかなりのものがあるみたいね。

 

「突然だけど・・・」

「・・・何よ?」

「初恋ってどんな感じだった?」

「えぇ!?」

 

素っ頓狂な悲鳴をあげるカエデちゃん。

この子もコウキ君と同じで初心なのかしら。

 

「ほらほら。お姉さんに教えなさいな」

「お姉さんって何よ?」

「年上だし。ほら。そんな事はいいから」

「初恋なんてまだよ」

「あら? そうなの?」

「ま、私に見合うだけの男が見つからなかったって所ね」

「クスッ」

「何よ!? 何笑っているの!?」

「カエデちゃん、可愛いからね。カエデちゃんのお眼鏡にかなうカッコイイ男の子はいなかったか」

「ま、まぁね」

 

可愛いって言われて照れる所を見るとやっぱり初心なのね。

私に言われてこれだけ反応するんだもの。コウキ君の時はもっと凄いのか。

 

「ねぇ、カエデちゃん」

「何よ?」

「コウキ君の事・・・どう思う?」

「ッ!?」

 

とっても知りたい。

コウキ君が彼女を救える存在になれるのか。

彼女がコウキ君をどう思っているのか。

・・・嫉妬しない訳じゃないけど。

 

「べ、別になんとも思ってないわよ」

「カエデちゃん。真面目な話よ」

「真面目な話? 貴方、あいつと付き合っているんでしょ?」

「え、ええ」

「意味わかんないわ。どうして彼女がそんな事を訊くのよ」

 

正論。

でも、気になってしまう。

 

「たとえば、私が好きって言ったらどうなるのよ? 身を引くとでも」

「そ、それは・・・」

 

それはない。

私はコウキ君が好きだから。

私自身でも整理できない矛盾した感情なの、これは。

カエデちゃんを救って欲しい、コウキ君に。

でも、コウキ君は取られたくない。

 

「あいつは火星大戦後に初めて出来た友達。ただそれだけよ。・・・ええ。それだけなの」

 

火星大戦で全てを失った少女の初めての友達。

それがどれだけ心の隙間を埋めてくれる事か。

 

「・・・そう」

「何? 心配しているの?」

 

はぁ・・・。

これ以上は訊けないか。

またの機会にしましょう。

 

「ほら。コウキ君って良い男だし」

「はぁ!? ないない。変なだけよ」

「そうかなぁ?」

「ええ。おかしいわ。彼女になると眼が曇るものなのね」

「あら? 失礼ね。ツーっと」

「や、やめなさいよ。くすぐったいでしょ!」

 

背中を爪でツーっと掻いてやる。

その反応がまた可愛らしい。

身を仰け反らせる所とか、男性陣が見たらやばいわね。

 

「ほらほら」

「や、やめなさいっての。仕返しよ」

「ちょ、キャッ!」

「ふんっ。私だって・・・キャッ!」

 

負けじとくすぐる。

 

「・・・おい。あれ」

「ああ。いいよなぁ。海って」

「おぉ。美女の戯れは絵になる」

「・・・なぁ、やっぱりマエヤマを殺すべきだと思うんだが」

「・・・ああ。今なら全力で肯定してやる」

「行くか?」

「おう!」

「「マーエーヤーマー!」」

「え? え? えぇ!?」

「死ねぇぇぇい!」

「人誅だぁぁぁ!」

「ちょ、クソッ! セレスちゃん。帰ってくるから大人しくしていてね」

「・・・はい。頑張ってください」

「応援されても困るんだけど・・・」

「マァエェヤァマァ!」

「クソッ!」

「海に逃げたぞ! 追え!」

「「「「おう!」」」」

「増えている! 何故か増えているよ!」

「「「「「「死ねぇぇぇい」」」」」」

「また増えているぅぅぅ!」

 

楽しそうね、コウキ君。

 

「ふふっ」

「クスッ」

 

その光景があまりにも可笑しくて。

 

「「ハハハハハハ」」

 

二人して顔を見合わせて大笑いしてしまったのは仕方のない事よね。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

ドタンッ! ガタンッ!

 

「え? 何だ? 何だ?」

 

大量の男共追われている意味の分からない展開。

突如の轟音と振動で誰もが唖然とした。

 

『休憩は終了です! 破壊対象のチューリップが動き出しました!』

 

ナデシコからの音声報告。

ジュン君の久しぶりの仕事だ。

 

「・・・おい」

「・・・うん」

「・・・潰す」

 

え?

 

「・・・ガイさん。私・・・」

「大丈夫だ。あんな奴すぐにぶっ潰してまた作れば良い」

「・・・はい」

 

え? え?

 

「ぐぉぉぉ! ここまで作ったのに!」

「潰せ! やっちまえ!」

 

・・・あぁ。そういう事ですか。

お城が崩れてしまわれたのですね。

 

「おら! 行くぞ! 野郎共!」

「おぉおぉっぉぉ!」

 

スバル嬢が男になっています。

というか、城作りに参加していたメンバー全員が血走ってやがる。

これは・・・ご愁傷様だな。

 

 

案の定、殆どのクルーの怒りを乗せたエステバリスの問答無用の攻撃によりすぐさま破壊されました。

敵ながら、可哀想な気も・・・。

 

「・・・グスッ。ここまで頑張ったのに・・・」

 

全然しねぇ! セレス嬢を泣かせたんだ! 当然だろ!

むしろ、俺が潰したかった! トラウマ? 関係ねぇ!

いっその事、今からでも潰しに行くか!?

 

「コ、コウキ君。落ち着きなさい」

 

・・・宥められてしまいました。

それから、大会は再び開催された。

優勝は整備班の見事な洋風のお城。

これは仕方ない。

大泥棒の三代目が心を盗んだ場所のような豪華さだったから。

でも、セレス嬢だって受賞したんだぜ。

その頑張り、充分に入賞に値する。

賞は審査員特別賞。景品の浮き輪で非常に楽しく遊ばせていただきました。

あ。そうそう。メグミさんの特別ジュース。

賞を貰えずに嘆くガイに笑顔で渡したらしいです。

これから愛を育むのかという程にピンクオーラを発していたのですが、一瞬にしてカオスになりましたよ。

ご愁傷様とでも言えばいいのか。頑張れ、ガイ。負けるな、ガイ。永遠に。

アキトさんはユリカ嬢から夜食を送られたそうですが、見事にジュン君へ受け流しました。

あの幸せそうな顔して気絶するジュン君は二度と忘れられないでしょう。

あ、僕は触発されたミナトさんとセレス嬢からクッキーを頂きました。

普通に美味しかったですよ。はい。一人だけ勝ち組ですね。はい。

 

 

 

 

 


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