機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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恨みは恨みを呼び

 

 

 

 

 

「・・・君」

 

ん? 何だ?

 

「・・・キ君」

 

誰の声だろう?

 

「・・・コウキ君」

 

聞き覚えのある声に眼を覚ました。

重い瞼を開ける。

 

「・・・ミナトさん?」

 

そこには心配そうにこちらを見詰めてくるミナトさんの姿。

あれ? どうしてこんな状況に?

 

「えぇっと、ツッ!」

 

キーンと頭の奥が痛む。

ほら。あれだ。カキ氷食った後の奴。

それの倍ぐらい痛い、いや、10倍ぐらいにしておくわ。

 

「コウキ君! 大丈夫!?」

「ど、どうにか・・・」

 

痛みはあるけど、そこまでではない。

それよりも状況を確認したいんだけど・・・。

 

「ここは?」

「医務室よ。最近、お世話になってばかりね」

「そう・・・ですね」

 

本当にそうだ。

火星に行くまでは全然お世話にならなかったのに。

一度医務室にお世話になってから癖になっちゃったかな?

 

「まったく、危ない事をして。ギリギリ脱出できたからいいものを」

「・・・ギリギリ?」

「ええ。もうちょっとで向こうのジャンプに巻き込まれる所だったわ」

 

・・・という事は成功したって思っていいのかな?

 

「俺ってどんな形で救助されました?」

「フレーム全部がジャンプに巻き込まれて、アサルトピットだけが地上に転がっていたって感じね」

「爆発は?」

「何故かは知らないけど、あっちがジャンプしてくれたお陰で地上に被害はないわ」

 

フレームは巻き込まれて、アサルトピットだけが残る。

爆発は地上ではなく、月で。

うん。理想的な形で終われたな。

 

「巻き込まれたらどうするつもりだったの?」

「えぇっと、自爆を許したら被害が、ですね」

「馬鹿! 貴方が死んだら意味ないでしょ!」

「すいません!」

 

アキトさんも絡んでいる事は言わない方がいいな。

アキトさんまで説教喰らうぞ、この様子だと。

 

「どれだけ心配したか分かる?」

「・・・すいません」

「許さないんだから」

 

やばいな。これは本当に許してもらえなそうな雰囲気。

 

 

結局、一時間近く説教されました。

頭が痛いのに休めないという地獄。

ミナトさんは怒らせないようにしないと・・・。

 

「分かったの!? コウキ君!」

「は、はいぃぃぃ」

 

もう休んでもいいですか?

 

 

 

 

 

「おぉ! 大丈夫だったか!? コウキ!」

 

しばらく休んで、ブリッジに顔を出す。

すると、ギョッと誰もがこちらを見てくる。

 

「あ、ああ。うん。大丈夫。大丈夫。そんな事より―――」

「コウキさん!」

 

おぉ? 何故にイツキさん?

 

「えぇっと、何かな? イツキさん」

「自分で接近戦は駄目だと言っておいて、何をやっているんですか!」

「す、すいません」

「聞きました。あの瞬間移動に巻き込まれたら死んでしまうって」

「・・・え? そうなの?」

「そうなんです! 巻き込まれたどうするつもりだったんですか!?」

 

うわぁ。永久ループ。

誤魔化したのに、それすらも怒りの炎を燃え上がらせる結果に・・・。

 

「ま、巻き込まれなかったんだからさ。ね?」

「結果じゃありません!」

 

うがぁ。許してくれぇ。

 

「まぁまぁまぁ、コウキだって反省していると思うから許してあげてよ」

「しかし、アマノさん」

 

ナイスだ。ヒカル。

 

「大丈夫。もっと怖い人がいるから」

 

え? 味方じゃないの? しかももっと怖いって?

 

「・・・・・・」

 

グッ。な、何て心が痛む。

 

「・・・コウキさん」

 

ああ。セレス嬢。そんな悲しい眼で俺を見ないでくれ。

こ、心が罪悪感でパンクする。

 

「・・・また会えなくなるかと思いました・・・」

 

な、涙目? もはやハートブレイク寸前です。

 

「ご、ごめんね。心配かけちゃったね」

「・・・許しません。二度目ですから」

 

え? セレス嬢まで・・・。

 

「ほらね? 一番効くでしょう?」

「・・・そうみたいですね。しかし、コウキさんにあんな一面があるとは・・・」

 

気楽そうに、この野郎。

というか、なんか勘違いされた?

 

「えぇっと、ごめん」

「・・・・・・嫌です」

 

だ、誰か、助けてくれ。

この無垢な瞳に涙を溜められ、かつ、怒っていますといった表情で見詰められてみろ。

自分を全力で殴りたくなる程の罪悪感が湧いてくるぞ。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

ど、どうしろと!?

 

「セレスちゃん。許してあげて」

「・・・ミナトさん」

 

おぉ。ミナトさん。女神に見えます。

 

「代わりに御願いを聞いて貰いましょう」

「・・・御願い・・・ですか?」

 

め、女神なんかじゃなかった。あ、悪魔がいる。

 

「こんなに心配させたんだもの。ちょっとやそっとじゃ許してあげられないわよね」

「・・・はい」

 

はいってちょっと、セレス嬢。

君はそんな子じゃ・・・。

 

「御願いは保留にしておいてあげる。セレスちゃん、考えておきなさい」

「・・・そうします」

 

・・・と、とりあえず、許してもらえたと認識して―――。

 

「マエヤマさん! ユリカ、プンプンです!」

 

ま、まだですか!? 次は艦長?

 

「勝手な行動をされては困ります。今回は運良く敵側が退いてくれましたが、後少しで巻き込まれる所だったんですよ!」

「は、はぁ・・・」

 

一応、巻き込まれても死にませんが・・・。

飛ばしたのも俺だし・・・。

 

「ですが、マエヤマさんに助けられた事も事実です。あの特攻がなければ、自爆に巻き込まれてナデシコも危なかったでしょう」

「そ、そうですよね。いやいや。俺も頑張った甲斐が―――」

「それとこれとは別です!」

 

もう! 勘弁して!

 

「・・・すまないな、コウキ」

「・・・すいません、コウキさん」

「・・・コウキ、ごめん」

 

あ、謝るぐらいなら助けてください。

 

「・・・無理だ」

「・・・無理です」

「・・・無理」

 

グハッ。俺に味方はいないのかぁ・・・。

 

 

ミナトさんの説教から数時間後。

ブリッジクルーのたくさんの方々から説教を頂きました。

あれですね。俺って説教されに戻ってきた訳じゃないんですけど。

 

「分かっているんですか!? マエヤマさん!」

「は、はいぃぃぃ!」

 

もう一度休みに戻らせていただいてもよろしいでしょうか?

 

「「「「「「マエヤマさん!」」」」」」

 

休めそうにありませぇぇぇん!

 

 

 

 

 

「どうしたのよ? グタ~っとして」

 

食堂。晩飯。心休まる時。

 

「あぁ。カエデ。お前だけだよ、俺の味方なのは」

「な、何言っているのよ! バカ!」

 

ふっふっふ。今の俺にお前をからかう元気はない。

もう精神的に無理。

 

「ねぇ、コウキ」

「ん? どうした?」

 

どこか不安そうに話しかけてくるカエデ。

何だってんだ?

 

「護ってくれるのよね?」

「あん?」

「私が貴方と一緒に行っても、貴方は私を助けてくれるのよね?」

「はぁ? 当たり前だろう。責任もって面倒見てやるよ」

「だ、誰が面倒を見るよ。むしろ、私が貴方の面倒を見てあげるわ」

「じゃあ、そうしてくれ。お前に全て任せる」

 

基地暮らしは面倒な事が多いんだ。

面倒を見てくれるってんなら面倒を見て欲しい。

 

「い、嫌よ。何で私が貴方の面倒を見なくちゃいけないのよ」

「はぁ・・・。自分で言ったじゃん。面倒見てあげるって」

「じょ、冗談よ。冗談に決まっているでしょう。・・・予想外だったわ。まさかそう返してくるとは・・・」

 

ボソボソと小さな声で話されても聞こえないっての。

 

「とりあえず、お前は承諾してくれたんだな?」

「だって、仕方ないじゃない。それ以外に方法がないんだもの」

 

そっか。それなら、ちゃんと俺が面倒見てやんないと。

 

「ねぇ、どうして、貴方はそんなに私を実験に参加させるのが嫌なの?」

 

・・・やっぱり、気になるよなぁ。

 

「今日の戦闘の事、何か知っている?」

「えぇっと、一応はモニターに出ていたし」

 

それじゃあ、ボソンジャンプって事ぐらい教えてもいいよな。

 

「あれ、敵の大きな機体が瞬間移動していたじゃん」

「そうだったわね。何の手品かと思ったわ」

 

手品って・・・気楽だな。おい。

 

「あれがボソンジャンプっていう奴だ」

「えぇ? それじゃあ、私にも瞬間移動できるって事? それって凄い事じゃない」

 

喜んでいる場合じゃないぞ。

 

「そりゃあ、瞬間移動できたら便利だろうよ」

「そうよね。何でそんなに嫌がるの?」

「それじゃあさ、お前、瞬間移動できたら何するよ?」

「えっと、色んな事に使うと思うわ。お買い物とかさ。寝坊しちゃった時とかさ」

 

まぁ、普通はそれぐらいだよな。

俺だってそれぐらい気楽に使えれば嬉しいよ。

 

「そう。色んな事に使えるんだ。たとえば、爆弾抱えて飛べばテロにだって使える」

「・・・テロ? でも、それって話が飛躍しすぎじゃない?」

「馬鹿。それじゃあ、何でネルガルがあそこまで強引に欲しがるんだよ」

「ば、馬鹿って何よ」

「よく考えてみろ。世界中の誰もが瞬間移動を使えれば問題はないかもしれない。でも、もし、この世でお前だけが使えたらどうなると思う?」

「そりゃあ、私は引っ張り凧ね。世界一有名になれるわ」

「その前に実験のモルモットにされて終わりだよ」

「な、何でよ!?」

 

そんなに驚くような事でもないだろうに。

 

「当たり前だろ。色んな事に使える便利な特技を持っているんだ。誰だって確保したいと思うだろう?」

「そ、それは・・・」

「そして、何故使えるのかを散々調べて、自分達も使えるようにしたいと思うのも当然の事だろ? その結果、実験のモルモットって訳だな」

「だ、だったら、すぐに瞬間移動で逃げればいいじゃない」

 

確かに逃げればいいんだけどさ。もちろん、CCがなくちゃ飛べないけど。

 

「俺は嫌だけどね。毎日が逃げる日々。いつ襲ってくるか分からずに毎日不安に過ごすなんて」

「・・・そ、それは・・・」

 

誰もが使える夢の道具とかならいいよ。

でも、一人しか使えないとなったら、誰だって確保したいと思うのは当たり前。

 

「お前が凄く強かな奴なら大丈夫だと思うぜ。でも、大企業だったり、軍だったり、そんな奴らと対等に渡り合えるかよ?」

「・・・無理ね」

「だろ? だから、たとえお前に瞬間移動できる素質があっても、そんな事、周囲に広めるのは愚かな事なんだよ。別になくても困らないし」

「それじゃあ、コウキはずっと私の事を心配して、忠告してくれていたの?」

「危ないって分かっていて止めない奴はいないだろうが・・・」

「・・・コウキ」

 

悲劇しかないって分かっていて勧める奴なんていないだろうに。

あんな未来は悲惨過ぎる。

 

「し、仕方ないわね。そ、そこまで言うのなら、付いていってあげるわよ」

「まったく・・・」

 

素直になれないかねぇ、もっと。

もう少し教えといてやるか。

 

「それにな。ネルガルの実験って既に何回も失敗している訳よ」

「そういえば、あの人も多くの犠牲者が出ているって言っていたわね」

「だろ? その人達はもう死んじゃっているらしいんだ」

「・・・死んじゃっている?」

「ああ。だから、もし、お前に素質がなかったら、お前は実験失敗で死んでいたかもしれないんだぞ」

「う、嘘」

「本当」

 

多分、大丈夫だと思うけどね。

 

「・・・ねぇ、どうしてコウキはそんな事に詳しいの? 普通は知らないでしょ?」

「マエヤマ・コウキ。特技はハッキングってな」

「ハ、ハッキングって。もしかして・・・」

「ま、そういう事だ」

 

本当は違うけど。

 

「そっか。ふふっ。一つ弱みを握った気分だわ」

「ん? 何だ?」

「ハッキングって犯罪よね? いいのかなぁ? そんな事をして」

「バレなっきゃいいんだよ」

「でも、私は知っているわ。本人の口からの証言もある。ふふっ。何を奢ってもらおうかしら」

「て、てめぇ、それが恩人に対する態度か?」

「それはそれ。これはこれよ」

 

クゥ。こいつめぇ~。

・・・ま。証拠不十分で無駄だと思うけどね。

俺の証言ってのも録音していた訳じゃないし。

 

「ま、今は許してあげるわ。助けてもらったもの」

「何だ? それで借りは返したとか思ってんのか?」

「へぇ。貴方、恩を着せようだなんて考えていたの? 小さな男ね」

 

カッチ~ン。

 

「んな訳ねぇだろ。恩を着せようだなんて思ってねぇよ」

「じゃあいいじゃない」

「よくないだろ。まったく、恩を仇で返しやがって・・・」

 

最近、こんな役ばっかり。

 

「ありがとね。コウキ」

「何だよ? 突然」

「なんとなくよ。なんとなく言いたくなったの」

「ふ~ん。変な奴」

「貴方に言われたくないわよ」

「はぁ? この普通の人間に対して何を―――」

「はいはい。普通の人間じゃないって自覚しなさい」

 

普通の人間ですから。

 

「ところでさ、補佐役? 副官だっけ? それって何をすればいいの?」

「一応は副官扱いだ。んで、特に仕事はないぞ」

「え? そうなの?」

「ああ。正式な副官は軍の方で用意してくれるらしいからな。お前じゃ俺の仕事手伝えないだろうし」

「ば、馬鹿にしないでよ。それぐらい出来るわ」

「無理だから。ま、それはいいんだよ。それで、お前には食堂で働いてもらおうかなぁって」

「食堂って軍の?」

「そうそう。ほら、軍の食事ってナデシコに慣れちゃうと全然物足りなくてさ。お前の料理が食えたら嬉しいなぁって」

「そ、そこまで言うのなら食べさせてあげない事もないわ」

「お。マジか。嬉しいな。最近は舌が寂しくてさ」

 

まずい訳じゃないんだけど、やっぱりナデシコの食事と比べると劣っちゃうよな。

 

「名目は俺の副官。勤務場所は軍の食堂。ま、そんな所かな」

「分かったわ。でも、私に手伝える事があればやらせなさいよ。副官なんだから」

「お? どういう風の吹き回しだ? お前が自分から手伝おうなんて」

「私だってそれぐらいはするわよ。恩知らずじゃないもの」

「ま、そういう事にしておきますよ」

「何よ。バカ」

 

不貞腐れてやんの。

しかし、これで美味しい食事が期待できる。

おぉ。やる気が出てきた。

 

「お前、今日のシフトは?」

「夜までよ。なんだかまだここに残れそうだったから、仕事を入れてもらったの」

「他の人はもうとっくに降りているもんな」

「ええ。火星人でナデシコにいるのはもう私だけじゃないかしら」

 

よく働く事で。

意外と真面目なんだよな、こいつ。

もっと傍若無人なのかと思っていたけど。

普段の様子的に。

 

「そっか。じゃ、その頃にもう一回こっち来るわ」

「何でよ?」

「届けもんだよ。一応、俺の副官になるんだから、軍服を渡そうと思ってな」

「えぇ? 嫌よ。着たくないわ」

「形だけだから我慢しろ。慣れればそんなに悪くないぞ」

「私はコック。軍服なんて着たくもないわ」

「ま、ちょい我慢しろ」

「分かっているわよ」

 

さてっと、辞令を受け取りにいかないとな。

もうそろそろ来ているだろう。

 

「んじゃ、またな」

「ええ。分かったわ」

 

今の所は予定通りに進んでいる。

さっき連絡があって、月周辺で爆発が観測されたらしい。

ネルガルがそれに焦れば月へナデシコを向かわせようとするだろう。

二週間分のズレでどう変わるのかな? シャクヤク襲撃も更に二週間延びるのか?

まぁ、後はアキトさんに任せるしかない。俺は地球に残って自分の仕事をしないといけないし。

あ。もう白鳥九十九さんはナデシコにいるのかな? 

脱出ポット、まぁ、ジンの頭部なんだけど、回収したって言っていたし。

ふぅ・・・。色々と立て込んで忙しくなってきた。

クリスマス。ミナトさんと一緒に過ごしたいんだけどなぁ。

・・・あ。そういえば、クリスマスパーティー、どうなったんだろう。

もしや、終わった? はぁ・・・。俺って奴は・・・。

 

 

 

 

 

「う、嘘でしょ?」

 

嘘じゃないんだ。

 

「だ、だって・・・」

 

ああ。気持ちは分かる。

 

「・・・私には信じられないわ」

 

そうだな。俺だって信じられない。

 

「ま、まさか・・・コウキが女だったなんて」

 

そう。俺は―――。

 

「っておいこら! 違うだろうが!」

 

そんな事、一言も言ってねぇ!

 

「え? 違うの?」

「当たり前だろうが! 何だ!? どうすれば俺が女に見える?」

「見えない」

「見えないだろ? 見えないよな? じゃあ、何でそうなる!?」

「ん~。なんとなく?」

 

首を傾げて指を顎に当てて・・・この女。

 

「なんとなくっておい! 何だ? 男の証拠でも見せてやろうか?」

「や、やめなさいよ! 見たくなんてないわよ!」

「ほぉ。何を見せられると思ったんだ?」

「ちょ、あ、貴方、馬鹿じゃないの!?」

「あぁ。馬鹿だ。馬鹿で結構」

「ひ、開き直っているんじゃないわよ!」

「ハッハッハ・・・はぁ・・・」

 

そろそろ終わりにしようか・・・。

 

「・・・現実逃避はやめないか」

「ええ。そうね。私もそう思うわ」

「ふぅ・・・。日頃ツッコミキャラのお前がボケると反応が遅れる」

「はぁ!? それぐらいちゃんとフォローしなさいよ!」

「理不尽だぁ!」

 

おっと。マジで現実逃避はやめておこう。

 

「・・・本当の話なの?」

「まぁ、信じられないかもしれないがな」

 

遂に白鳥九十九さんが捕まった。

そして、その口から木連の事が告げられる。

地球人にとっては青天の霹靂。

予想外に予想外を重ね、更に予想外を重ねたぐらいに予想の範疇を超えていたと思う。

誰だって信じないよな?

今まで戦っていた相手が未確認の勢力ではなく、元々地球人だった者達だなんて。

 

「・・・だって、信じられないもの」

「だが、実際に木連と告げる人間がいるぞ」

「あんなの出任せよ。木星に人がいる訳ないじゃない」

 

そう。それが地球人と火星人の常識。

でも、その常識は作られたものなんだ。

 

「話してみるか?」

「・・・え?」

「木連から来たっていう男と話してみるか? 俺が頼めばきっと機会を与えてくれる。というよりそもそも俺もその男に用があるしな」

「・・・・・・」

 

黙り込むカエデ。

 

「お前が木星蜥蜴、いや、木連に恨みがある事は俺もよく知っているつもりだ。別に恨むなというつもりはない。だけど、話してみるのもいいんじゃないか?」

 

木星蜥蜴という知性を感じない一方的な侵略者であるからこそ、単純に恨んでいられた。

だが、何か理由があり、どうしようもなく争い始めたのだとしたら・・・。

恨みは消えない。憎しみは消えない。でも、何か思う事があるかもしれない。

 

「どうする? カエデ」

 

俯くカエデに問いかける。

 

「・・・分かった。お願いできる?」

「了解した」

 

木連の存在を知り、復讐の念を抱くカエデがどうなるのか?

それを俺は知りたかった。

火星の人達の木連に対する思い。

それを把握してなければ、カイゼル派の働きは何の意味もなくなってしまうからだ。

地球と木連との間に嘘偽りのない和平を。

それこそがカイゼル派の目的。だが、そこで火星の人間を忘れてはいけない。

火星の人達は完全なる被害者。地球と木連とのエゴとエゴの争いに巻き込まれただけの被害者だ。

彼らを無視して両国家間で勝手に和平を結ぶ? そんな馬鹿げた話があってはならない。

地球からも、木連からも、火星の民達に謝罪と弁償をしなければならないと俺は思う。

 

「それなら、行くか」

「・・・分かったわ」

 

もちろん、その程度で許してもらえるとは思っていない。

でも、まずはそこからが始まりだと俺は思うんだ。

いつか、国家間の枠を超えて歩み寄ってくれればって。

・・・そう願うのは傲慢なのかな?

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

懐かしい独房の中、一方的に敵意を向けるカエデと困惑するシラトリさん。

 

「貴方は先程の・・・」

 

軽く一礼。

 

「突然の訪問すいません。訊きたい事がありまして」

「はい。何でしょうか?」

「シラトリさん。貴方は火星に対して木連が何を仕掛けたか理解していますか?」

「・・・宣戦布告もせずに攻め込んだ非は認めます。ですが、我々にはああするだけの理由がありました。されて当然の罪が貴方達には―――」

「ふざけないで! どんな理由があったって勝手に攻め込んできていい訳ない! 当然なんて事はないわ! 返してよ! 私に返して!」

「カエデ。落ち着け」

「離して! コウキ! 離しなさい! こいつに! こいつに、私は!」

「カエデ!」

 

独房の檻に掴みかかるカエデを抑える。

カエデは射抜かんばかりの目付きでシラトリさんを睨みつける。

 

「あの彼女は?」

「彼女は火星大戦で全てを失った者です」

「ッ!? そう・・・ですか・・・」

 

俯く九十九さん。

別に彼一人が悪いと言っている訳ではない。

だが、自覚して欲しい事がたくさんある。

 

「貴方達はこの戦争を正義の戦いと称しているそうですね」

「当然です。我々は先祖の苦しみや憎しみを返しているだけなのですから」

「何が正義よ! 私の家族を殺しておいて!」

「カエデ。落ち着けってば」

 

駄目だ。予想以上にカエデの憎しみは深い。

でも、俺にもきちんと訊いておきたい事がある。

少し静かにしていてもらおう。

 

「カエデ。後で話す時間を作るから」

「・・・ふんっ」

 

すまんな。ちょっと待っていてくれ。

 

「正義・・・と言いますが、宣戦布告もせず、戦う理由も告げず、一方的に滅ぼす。そんな侵略者たる貴方達が正義であると?」

「・・・それは・・・」

「我々にとっては悪魔のような所業です。火星の民達は一生貴方達を許す事はないでしょう」

「それは我々の台詞です! 私達は、決して地求人を許しはしない!」

「それでは、何故地球人の非を告げずに責めるのです? 何を持って復讐と成すか。それをきちんと戦争前に告げるべきでしょう」

「私達は和平の使者を派遣しました。それを暗殺という形で殺したのは貴方達だ」

 

・・・やっぱり、和平の使者が派遣されていたんだな。

それを地球政府が汚点を隠したい為に暗殺した。

本当に火星は一方的な被害者だ。地球の勝手な判断で全滅させられた。

 

「和平の使者が派遣された。地球が貴方達にした所業。それら全てを俺達は知らないんですよ」

「知らないでは済まされない! 私達は正当な権利を持ってして攻撃を開始したまでです」

 

知らないでは済まされない、か。

それもまた道理だな。

汚点を隠す為に木星蜥蜴と偽り、民間に何も告げずにいた地球政府。

・・・やはりまずは地球政府をどうにかしないと駄目って事か。

 

「それでは、これは戦争であり、貴方達の本拠地を攻撃しても許されるという事ですね」

「そ、それは・・・」

「今まで一方的に地球側は被害を受けていました。それらの憎しみを返しても貴方達は許してくれるんですね?」

「・・・・・・」

 

戦争である以上、被害が出るのは仕方のない事だと思う。

でも、何も知らない、何も攻撃する術を持たない者を殺めるという事はそれを返されても文句は言えないという事だ。

 

「最後に、こうして悪である俺達地球人と交流した訳ですが・・・」

「・・・・・・」

「俺達は貴方達の思う悪でしたか?」

「・・・そんな事はありません。貴方達は捕虜である私に対しても礼儀を通してくれた。極悪な地球人とはまるで違う」

「・・・そうですか」

 

少しでもそう意識が改善されたのなら良かったと思う。

シラトリさんだけじゃない。

俺達はお互いの事を知らな過ぎる。

互いに歩み寄る事は無理でも、知ろうと思う事が大事だと思う。

 

「俺の用事はそれだけです。後は・・・」

 

カエデ。お前の、火星人の思いを聞かせて欲しい。

 

「・・・私は絶対に貴方達を許さない!」

「・・・・・・」

「・・・ただ普通に生きていただけ。・・・ただ毎日を静かに生きていただけ。それが突然壊されたのよ! 貴方達のせいで!」

「・・・・・・」

「私達が何をしたっていうの!? 私が貴方に何をした!? どうして私は家族を失わなければならなかったの!?」

 

・・・爆発した。

今まで溜めに溜め、誰にも話せなかった負の念が一気に解放される。

ずっと我慢していたんだって今更気付いた。

俺にはこいつを苦しみから解放してやる事は出来ないのだろうか?

 

「私に力があれば、貴方達に復讐している。でも、私には力がないから・・・何も出来ない」

 

悔しげに拳を握るカエデ。

その姿は力を求める復讐者そのものだった。

力さえあれば、絶対に復讐してやるのに!

そんな気持ちが痛い程に伝わってきた。

 

「貴方達の先祖がどんな目にあったかなんて私には分からない。もし分かっていても私には関係ない」

「関係ない!? その発言は許せ―――」

「関係ないわよ! 私が貴方達を憎む事に貴方達の理由なんて何の関係もない!」

「ッ!」

「私は貴方達が同じ人間であろうとたとえこうされるだけの理由があろうと、絶対に許さない」

 

そう言って、去っていくカエデ。

その背を追おうとも思ったが、少しだけシラトリさんに言いたい事が出来た。

それを言い終わったら、カエデを追おう。

 

「・・・・・・」

 

去っていくカエデの背を見詰め続けるシラトリさん。

あれだけの激情を突きつけられ、今のシラトリさんは何を思うのだろうか?

 

「・・・これが戦争ですか・・・」

「そうですね。争いがある限り被害者が出る事は当たり前です。そして、憎しみをぶつけられる事もまた当たり前」

「・・・私には覚悟が足りなかった・・・」

 

よく見れば、シラトリさんは震えていた。

命の重さに気付いたのだろうか?

今までは無人機でゲームのように敵を殺すだけだった。

当たり前だ。それじゃあ心は痛まない。

でも、実際に憎しみをぶつけられる事で、命を奪うという事がどれだけの意味を持つのかを実感したんだと思う。

 

「俺は火星大戦の被害者じゃないので、貴方達に何も言えません」

「・・・そうか」

「だけど、憎しみが憎しみを呼び、貴方達も復讐される側の立場になった。いつまでも正義の戦いと主張しない事ですね」

「・・・ああ」

「それだけです。あいつのフォローはしておきます」

「・・・すまない」

「いえ。それでは」

 

そう言って、その場を後にする。

シラトリさんはこれから色々と考える事があるだろう。

この交流が彼にとって良い影響になるといいんだけど・・・。

 

「さて、カエデは何処に行ったんかな?」

 

フォローしようにも何をしていいか分からない。

でも、話を聞いてやる事ぐらいは出来るよな。

 

 

 

 

 

「カエデ」

「・・・コウキ」

 

木星蜥蜴が人間である事を知り、こいつも苦悩しているんだろうな。

だから、ここなんだろ?

 

「火星の景色・・・ね」

 

展望室。

数多の景色を表現する夢の世界。

滅ぼされる前の火星すら、この世界でなら具現化できる。

 

「・・・ごめん。気付いたらあんな事になっていたわ」

「謝るなんてお前らしくない」

「わ、私だって謝るわよ。・・・冷静に話してみようとは思ったんだけど・・・」

 

冷静に話そうと思った。でも、駄目だった。

・・・それ程、カエデの想いが深いって事だと思う。

少なくとも、俺だって復讐の対象が眼の前にいたら激情をぶつける。

 

「私ね。眼の前に家族を奪った相手がいるって思ったら、ついカッとなっちゃったのよ」

「別に悪いだなんて言ってないだろ? 俺だって多分そうなるし」

「・・・そう。ねぇ、私が間違っているの?」

 

間違っている?

 

「何がだ?」

「彼らにもああするだけの理由があった。そう言っていたわね。それなら、私達が間違っていて、これは自業自得って事じゃない。じゃあ―――」

「そんな事はないさ。お前が間違っているなんて事はない。家族を殺されて何も思わない奴の方がどうかしている」

「・・・そっか。ねぇ、彼らは過去、何をされたの?」

「俺が知っていると思うか?」

 

知っているけど。

 

「なんとなくコウキなら知っているかなって思っただけよ。別に―――」

「知っているぞ」

「知らないなら知らなくてもって知っているの!?」

「ああ。俺が知らない事なんてこの世にはない」

 

事実です、紛れもない。

 

「・・・神様のつもり? 貴方」

「神様も何もどこにでもいる普通の青年だが?」

「絶対に普通じゃないわ」

「・・・そこまで断言されると傷付くな」

「事実だから仕方ないわ」

 

うわ。マジで落ち込む。

俺は自分の事を普通の人間だと認識しているのだが・・・。

違うのか? まぁ、異常な能力持ちなのは認めるが・・・。

 

「やっぱり貴方と話すと気が楽だわ。馬鹿らしくなってくる」

「それは褒められてんのか? あん? 貶されてんのか?」

「褒めてやってんじゃない。感謝しなさい」

「おい、こら」

 

偉そうに、こいつめ。

 

「それで? 教えてくれるの?」

「馬鹿にされたから教えてあげない」

「子供ね」

「ああ。いつまでも少年の心を忘れないのが男っていう生き物なんだよ」

「何、ガキな事を正当化しようとしているのよ」

「ガキだと? てめぇは俺を怒らせた」

「はぁ!? 変な事ばっかり言ってないで、さっさと教えなさい」

 

つれない奴。ま、いっか。

 

「木連。正式名称は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家間反地球共同連合体といってな」

「長い。短くしなさい」

「嫌」

「貴方だって嫌でしょ? そんなに長いのを何回も言うの」

「ああ。嫌だ。だが、ネタとしては言い続けた方が面白い」

「はぁ・・・。貴方の思考回路は独特過ぎて意味がわかんないわ」

「それは光栄」

「褒めてないわよ!」

 

話が進みませんね。

 

「えぇっと、簡単にでいいよな?」

「ええ。難しく言われたってわかんないもの」

 

このお馬鹿ちゃんめ。

 

「元々は月へと移り住んでいた人達だったらしいんだ」

「月って今でも人が住んでいるじゃない」

「もう百年近く昔の話だな。二十二世紀の最初の方だ」

「そう。木連? だっけ、彼らの歴史はそんなに昔から始まっていたのね」

「ああ。それで、月へ移住した人達は月という一つの国家を認めてもらおうと独立運動を行い始めた」

「独立運動。そういえば、火星でもそんな動きがあったらしいわね」

 

アキト青年の両親が殺された時の話か。

確かテロ紛いの方法だったって聞いたけど・・・。

 

「ま、火星の事は置いといてだ」

「そうね。早く話しなさい」

 

お前が話の腰を折ったんだろうが・・・。

 

「地球側としては独立なんて認めたくない訳だよ。月は地球政府の一員だとしておきたいんだ」

「ま、そのあたりはなんとなくって事で納得しとくわ。よくわかんないもの」

「・・・ま、お前は美味しい料理を作ってくれればいいや」

「なっ!? それって・・・」

 

料理が出来れば文句は言うまい。

他に取り得がなければ、勉強しろと言うつもりだったが・・・。

 

「んで、だ」

「スルーされたわね、私」

「ん? 何の話だ?」

「なんでもないわよ! 早く! 続き!」

 

何なんだ? 一体。

 

「地球側はどうしても独立を阻止したい。でも、直接介入は許されない」

「何で?」

「そういうもんなんだ」

「そういうものなのね」

 

それでいいのか? カエデよ。

 

「ああ。だから、月側に内部抗争を誘発する工作を行った訳だ。独立派と、そうだな、保守派とでも言えばいいのか」

「要するに月の中で内乱が起きちゃった訳ね」

「お。よく分かったな」

「それぐらいは分かるわよ」

「うんうん。成長して嬉しいぞ、俺は」

「保護者か!」

「違う!」

「突っ込みに突っ込みで返すのはどうかと思うわよ」

「それもまた一つのギャグだ」

「はぁ・・・。続き続き」

 

そうだな。続き続き。

 

「んで、結局内乱が起きて、月の独立派は争いに負け、テラフォーミングしたばかりの火星に逃げ込んだ」

「火星に?」

「おう。それで、だ。独立派をどうしても殲滅したい地球側は火星に核ミサイルを撃ち込んだんだ」

「か、核ミサイル? それじゃあ、その独立派っていうのは・・・」

「ああ。僅かな数を残して後は全滅したよ。火星にも影響が出ただろうな、地形とか」

 

きっと百年の間に異常が出ないくらいに修復したんだろう。

そうでもなっきゃ、公転周期とか自転周期とか変わって偉い事になっちまう。

 

「その残された人達はどうなったの? 火星に隠れ住んだの?」

「いや。それも無理だと判断したんだろうな。火星から離れ、更に遠い木星へと移り住んだ」

「そう。それで、木連か。でも、テラフォーミングも出来てない木星でよく生き延びたわね」

「ああ。人間って凄いんだな」

 

本当は遺跡とか、プラントが見付かったらしいけど、それを俺が知っていたらおかしいよな。

 

「何で生き延びられたの?」

「え? 流石にそこまでは知らないよ」

「へぇ。知らない事なんて何もないんじゃなかったの?」

「ほぉ。この俺を挑発するつもりか?」

「えぇ~。そんな事ないわよ。ただ、断言しておいてカッコ悪いなぁって」

 

カッチ~ン。いいだろう。教えてやろうとも。

 

「木星にはな、俺達の知らない超文明があったんだ」

「それで?」

「木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家間反地球共同連合体はそれを―――」

「縮めなさい」

「嫌じゃ!」

「いいから! 縮めなさい」

「木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑―――」

「・・・コウキ」

 

いいじゃんかよぉ。睨むなよぉ。

 

「コホン。木連はその超文明を活かして過酷な環境を克服できたんだそうだ」

「でも、少数だったんでしょう? よく子供とか出来たわよね」

「あまりよくは知らないが、遺伝子改良もしていたらしいな。木連は女性が少ないらしいんだけど、それが原因なんだそうだ」

「へぇ。そうなんだ」

「ああ。お前でも木連ならモテるんじゃないか?」

「貴方、私を馬鹿にしているの? 私はこっちでも充分モテる―――」

「もうちょっと成長してから言おうな、そういう事は」

「うるさいわよぉぉぉ!」

 

やっぱり気にしているんだな、身体の事。

 

「・・・随分と詳しいのね」

 

・・・あ。もしかして、言い過ぎた?

・・・だよな。調子に乗って語り過ぎてしまった。

 

「貴方、知っていて黙っていたんじゃないでしょうね?」

「グッ」

 

ひ、否定できない。

 

「何でそんなに詳しいのか説明してもらいましょうか?」

「・・・はぁ」

「何故に溜息!?」

 

仕方がない。カイゼル派の事を少し話そう。

 

「俺はな。連合軍に所属してからある派閥と接触した」

「ある派閥?」

「ああ。その派閥はきちんとした形で木連と向き合おうとする派閥で、俺もその派閥の一員なんだ」

「その派閥が木連について調べていたのを教えてもらったって事?」

「そうなるな」

「そう。それでそんなに詳しいのね・・・」

 

元から知っていて情報を提供したのがこっちだって事は言わない方がいいよな。うん。

 

「当然、俺の副官であるお前もその派閥に関わる事になるだろうな」

「・・・・・・」

「俺は丁度いいきっかけじゃないかと思っている。お前がこの派閥に関わっていれば、木連の情報もお前に行くだろうからな」

「それは、私の考えを改めさせようって事?」

 

凄い剣幕で睨まれました。

 

「別に改めようという訳ではない。ただ、お前にもきちんと受け止めて欲しいだけだ」

「受け止める?」

「ああ。地球政府のせいで木連という存在は秘密のままにされてきた。それは間違っているだろう?」

「・・・そうね。過失があるなら認めないといけないわ。誤魔化そうとしたのは許せない」

「そうだな。だから、お前にも逃げずに正面から受け止めて欲しい。恨みや憎しみを捨てろとは言わないから、もっと木連の事を知った上で結論を出してもらいたい」

「・・・そんな言われ方したら、拒否なんて出来ないじゃない」

 

実際、互いの事を知らずに争っていたら永久に解決しない。

まずは互いの利害を知る必要があると思う。

 

「・・・分かったわ。私も色々と考えてみる」

「おう。そうしろ。そうしろ」

「偉そうね」

「そうか? ま、いつでも話相手ぐらいにはなってやるから」

「ありがと。意外と役に立つわよね、貴方って」

「意外とは失礼だな。俺は何でも役に立つぞ」

 

それなりにだけど。

 

「・・・そうね」

 

あ。肯定していただけるんですか。

ありがとうございます。

 

「ねぇ、コウキって火星育ちなのよね」

「あ、ああ。一応は」

「一応って何よ?」

「え? ア、アハハ。気にすんなよ。それで?」

「怪しい・・・。ま、いいわ。どこに住んでいたのかなって・・・」

 

それから、偽りの経歴をどうにか誤魔化しつつカエデと火星の事を話した。

怪しまれながらも、どうにか楽しいおしゃべりにする事は出来たと思う。

俺なんかじゃ話し相手になる事ぐらいしか出来ないけど、それでも、少しでも気が楽になってくれているのなら・・・。

俺にも多少は意味があったって事かな。

支えてやろうと決めたんだから、それぐらいは役に立ってみせるつもりだ。

 


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