機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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艦長コンテスト・承

 

 

 

 

 

「さてさてコンテストも終盤に差し掛かりました。皆様、心残りはありませんか!?」

「あるぞぉ! もっとやれぇ!」

「終わらせるんじゃねぇ!」

「もう毎日やってもいいんじゃね?」

「ええ。ええ。分かります。ですが、終わりがあるからこそのコンテスト。皆様、最後まで盛り上がっていきましょう!」

「うぉぉぉうぉぉぉ!」

 

会場はとっくの昔に最高潮。

今では既に限界突破。

いやはや。ナデシコクルーに限界はないんでしょうね。

 

「残るは艦長を含めた主要メンバーのみか・・・」

 

メグミさん、ミナトさんと審査を終え、それから続々と審査を終えていった。

何人もの女性が審査を終えたが、やっぱりナデシコ主要クルーは飛び抜けていたなぁ。

メグミさんもそうだし、ミナトさんもそう。

それに、着ぐるみで登場したラピス嬢も男共の心を刺激した。

うん。あれはやばかったね。

日頃とのギャップみたいな感じで。

いや。言葉に出来ないよ。うん。

残るは艦長、ルリ嬢、セレス嬢の三人。

今回、ルリ嬢は正式に登録していたらしい。

秘書さんは出ないのかな? 原作でも参加してなかったし。

ルリ嬢と同じように突然参戦しようとしてたんだっけか?

まぁ、確かにルリ嬢は突然参戦して優勝を掻っ攫っていったもんな。

ルリ嬢が歌った曲の名は“あなたの一番になりたい”だ。

ルリ嬢が誰に向かってどういう気持ちで歌ったかは俺には分からない。

でも、曲調、雰囲気、詩、全てからその気持ちが痛い程に伝わってきた。

あれだけ感情が込められていれば、優勝も当然だって思える程に。

良い曲だなって素直に思えたし、何度聴いても飽きなかったものだ。

あの曲は何度も聴いていたな、マジで。こっちに来る前の話だけどね。

さて、残った三人だけど、やっぱり俺としてはセレス嬢を応援したいかな。

頑張りますって告げる時は微笑まし過ぎたし。

頑張れ! セレス嬢。

 

「続きまして、エントリーナンバー二十八番。我らが銀色の妖精。セレス・タイトさんです」

「うぉぉうぉぅぉ!」

 

大歓声。

いや。凄まじい。

ラピス嬢は桃色の妖精でセレス嬢は銀色の妖精か。

オペレーター勢は妖精三人衆といった所かな?

 

「・・・よろしく御願いします」

 

ペコリッ。

 

現れたのは大人しい色で染められた浴衣姿のセレス嬢。

いつもは垂れ下げられている髪の毛が纏められており、そこはかとなくうなじから色気を漂わせている。

浴衣という俺からしてみれば日本の伝統衣装に身を包んでおり、日本人らしい黒髪こそが浴衣には最上だと思っていた俺の価値観を変えさせた。

華奢な身体で護ってあげたくなるような、そんな浴衣姿の醍醐味を遺憾なく発揮しているセレス嬢。

言葉では表せないぐらいに魅力的な女の子だった。

そして、更に、いつもはどこか無口で感情表現の少ない彼女が恥ずかしそうに浴衣の裾をギュッと握っている姿。

照れているのか顔から首筋にかけて真っ赤になっており、でも、そこがまた彼女に対する庇護欲を湧かせた。

 

「・・・頑張れ」

 

思わず口から出る言葉。

心の底からそう思ったから飛び出たのだろう。

そして、そんな思いを浮かべたのは俺だけじゃない筈だ。

 

「・・・・・・」

 

周囲を見渡す。

 

「・・・・・・」

 

審査員席にいる会長とウリバタケさん。

 

「・・・・・・」

 

会場の裏の方でそわそわしているミナトさんとメグミさん。

 

「・・・・・・」

 

そして、会場にいる全ての観客。

それら全員が見守るように、固唾を呑んでセレス嬢を眺めている。

その視線からは頑張れ、と暖かい言葉が込められているように感じられた。

 

「・・・」

 

バッ!

 

俯いていたセレス嬢が頭を上げる。

その顔は少し泣きそうで、でも、頑張ろうとする強い意思が込められていた。

頑張れ。頑張るんだ。セレス嬢。

 

「~~~♪」

 

・・・透き通るような歌声。

日頃あまり喋らないセレス嬢が懸命に歌う。

セレス嬢の声を連続してこんなに聞けるのは初めてじゃないだろうか。

そして、なんて安らぐ声だろう。

可憐な姿に心癒される歌声。

今、この瞬間、会場は彼女の舞台だった。

会場の全てを彼女が彩らせていた。

 

「・・・ありがとうございました」

 

ペコリッ。

 

恥ずかしそうにタタタッとステージの奥の方へ走っていくセレス嬢。

そして・・・。

 

「オォォォォォォッォォォォッォォ!」

 

大歓声。

そのあまりの声に会場が揺れた。

 

「・・・セレス・タイトさんでした。天使のような歌声。妖精の名に相応しい素晴らしい歌声でした」

「・・・僕達は世紀の瞬間に立ち会えたのかもしれない。彼女の歌は世界の宝だよ」

「・・・ああ。優勝しようがしなかろうが、彼女ならば世界中に歌声と共に感動を運んでくれるだろうよ」

「・・・アイドルデビュー。本気で考えた方がいいかもね」

 

いや。アイドルデビューは困るのですが・・・。

しかし、本当に素晴らしかった。

感動で涙が零れている者も何人かいる。

俺もその一人だ。歌でここまで心に響いた事はなかったかもしれない。

それ程までに、セレス嬢の歌声には不思議な力があった。

 

「さぁ。残る所、後ニ名。お次はエントリーナンバー二九番。我らが蒼銀の妖精であり、妖精三姉妹の長女。ホシノ・ルリさんです」

「うぉうぉぉっぉぉぉ!」

 

現れるルリ嬢。

その可憐な容姿に誰もが歓声後、言葉を失った。

そして、彼女は歌いだす。

 

「~~~♪」

 

あなたの一番になりたい。

あなたをいつまでも支えていたい。

だから、ずっと傍にいさせて。

あなたを私は愛しているから・・・。

 

「・・・・・・」

 

ペコリッ。

 

去っていくルリ嬢。

その歌声の余韻に、誰しもが酔いしれていた。

 

「・・・ルリちゃん」

 

ルリ嬢の想いはアキトさんに届いたのだろうか?

・・・届いていて欲しい。

貴方の近くにはこんなにも想ってくれている人がいるんだと。

そう理解して欲しい。

貴方の幸せを探してもいいんだと。

そう・・・理解して欲しい。

ルリ嬢の歌声にはアキトさん、貴方への想いが溢れていたのだから。

 

「・・・ホシノ・ルリさんでした。・・・最早言葉もありません」

「・・・感動の嵐だ。妖精はどうしてこうも僕達の心を揺さぶる。どうしてこうも心に響かせる」

「・・・幸せ者だ。俺達はなんて幸せ者なんだ・・・」

 

分かります。ええ。分かりますとも。

この瞬間に立ち会えた事に感動を覚えずにはいられません。

 

「それでは、最後になりました。エントリーナンバー三十番。我らがナデシコ艦長。ミスマル・ユリカさんです」

「野原一面に咲く白き百合の花。あぁ、その美しさは全てを包み込み、そっと癒す。穢れなき純白の花弁が今、この場で咲き誇る! ミスマル・ユリカ!」

「オォォオォオォ!」

 

・・・熱の入った紹介と声援ありがとうございます。ジュン君。

 

「~~~♪」

 

テンポの良い歌声に観衆の誰もが歌にあわせて身体を揺らす。

先程のような感動はもしかしたら味わえないかもしれないが、この歌にはこの歌の魅力がある。

何故か惹き付けられるその歌声は彼女のカリスマ性から来ているのだろうか?

会場の全てをミスマル・ユリカが掌握していた。

 

「ありがとうございましたぁ!」

 

元気良くそう告げ、ユリカ嬢はその場を後にした。

 

「ミスマル・ユリカさんでした。いやぁ~。彼女らしい元気な歌声でしたね」

「はい。身体が自然と動き出す。彼女独特の空気が会場中を包み込んでしまった。そんな感じです」

「いやぁ。良かったな。自然と元気が出てきたぜ」

 

そうですね。僕もそう思います。

改めて、やっぱりこの艦の艦長はユリカ嬢が相応しいなと思った。

まぁ、コンテストの結果は別だけどさ。

 

「それでは、結果は後ほど集計して発表したいと思います。皆様、お疲れ様でした。持ち場に戻―――」

 

ウィーンウィーンウィーンウィーンウィーン!

 

プロスさんの言葉を遮るようにして突然鳴り出すエマージェンシーコール。

これは・・・木連!?

あ! やばっ! 忘れていた。

そういえば襲撃されるんじゃないか。

ブリッジに顔を出そうと思っていたのに、結局最後まで残ってしまった。

まずい。急いでブリッジにいかないと!

・・・もしかしたらケイゴさんが出てくるかもしれないし・・・。

 

 

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

艦内を駆け抜け、ブリッジに到達する。

状況的に動けない人間が多いせいか、ブリッジには殆ど人がいなかった。

 

「コウキ」

 

審査を逸早く終えたからだろう。

オペレーター席にはラピス嬢がいる。

ルリ嬢とセレス嬢の合流は少し遅れそうだな。

 

「ラピスちゃん、ゴートさん。状況は?」

「レーダー上で木連の戦艦を確認。待機していたパイロットが迎撃に当たっている」

「待機していたパイロット?」

「ああ。コンテストの出場していなかったスバル・リョーコとイツキ・カザマの両名だ」

 

あぁ。そういえば、イツキさんは出場してなかったな。

スバル嬢は出ないって分かっていたけど。

・・・イズミさんのステージは気付かぬ間に記憶から消去していたらしい・・・。

彼女も出ていたんですよ、コンテスト。

でも、あまりのインパクトにね。なんにも思い出せません。

 

「敵戦艦はこちらに何を?」

 

確か、このタイミングで仕掛けてくる襲撃は敵にとっても確認の意味合いが強いミサイル攻撃だった筈。

詳しくは覚えてないけど、簡単に返り討ちにしたし、向こう側の被害も少なかったと思う。

但し、それは原作での状況下だ。確認の度合いという意味では、向こう側には・・・。

 

「ミサイルに小型有人機を取り付けて操作しているみたい」

「・・・それだけ?」

「今の所は」

 

・・・それなら、原作通りだ。

でも、原作通りに行くとは思えない。

何故なら、既に状況は著しく変わっているから・・・。

 

「おっくれましたぁ」

 

急いで駆け込んできたのは、流石に水着ではなかったけど、審査の時に着ていた衣装に身を包む艦長。

多分、着替えている暇はなかったんだろうな。最後だったし。

続々と他クルーも駆け込み、自分の席に座っていく。けど、その殆どが審査衣装。

その格好のまま見学していて、緊急事態に陥ったって所かな?

ラピス嬢が制服なのはある意味流石というべきか・・・。

 

「状況はどうなっていますか?」

「木連からのミサイル攻撃。待機していたスバル機、イツキ機が迎撃中」

 

先程よりも簡潔な報告。

 

「パイロットは急いで格納庫へ向かってください。全機で迎撃に当たります」

『了解!』

 

コミュニケ越しの通信でパイロット達に指令が送られる。

俺は状況的にパイロットよりもブリッジで情報解析に勤しむべきだろう。

 

「艦長。俺はブリッジに残ります」

「はい。マエヤマさんはこちらで周りのフォローを」

「了解」

 

パッと急いで自分の席へ。

隣にいる漆黒のドレスに身を包むミナトと浴衣姿のセレス嬢にドキドキしそうになったが、事が事なだけに無理矢理落ち着かせた。

 

「ちぇっ。つまんない」

「・・・・・・」

 

状況を考えてくださいね。ミナトさん。

後、残念そうな顔をしない。セレス嬢。

戦闘が終わったらね。今は照れている場合じゃないのですよ。

 

『各機、散開。ナデシコに通すな』

『『『『『『了解』』』』』』

 

アキトさんの指示で各機が動き出す。

その見事な連携と戦闘技術は圧巻の一言。

地球最大戦力の異名は伊達じゃないな。

ナデシコだけじゃなく、パイロットもまた頼れる戦力だ。

 

「どうやら大丈夫そうね」

 

恐らく乱入を企んでいたのだろう。

出場もしてないのにそれなりの衣装に身を包んだ秘書さんがそう呟いた。

イツキさん同様、真面目な彼女なので出場しないと思っていたけど・・・。

染まりましたな。秘書さん。まぁ、ナデシコだし。分からなくないけど。

 

「恐らく向こうも本気じゃないでしょうね。確認やら小競り合いとでも思っていた方がいいわ」

 

・・・貴方も乱入するつもりだったのですか?

久しぶりの解説、ありがとうございます。イネス女史。

その格好は何なのでしょうか? グラマラス過ぎて僕には言葉に出来ません。

・・・それにしても、今まで何をしていたんだろうか? この方は。

もしや、ウリバタケさんと共同で新しい開発でも?

まぁ、俺には分からないか・・・。それにしても・・・。

 

「・・・確認だけで済むならいいけど」

 

原作通りに進んでくれれば俺も安心だ。

でも、あの新型兵器。

まだ開発途上である以上、データ収集の為にもまた仕掛けてきそうだ。

何といっても地球の最高戦力はナデシコ。

機動データを集めるのならば、ナデシコ勢と戦うのが一番だ。

 

「でも、コウキ君は他にも心配事がありそうね」

「えっ?」

「いつになく必死じゃない。先日現れた木連の新型兵器が気になるのかしら?」

 

・・・鋭いな。相変わらず。

しかも、俺の悩み事まで的確に見抜いてやがる。

 

「ええ。もちろんです」

 

それなら、下手に隠さないで意見を聞こう。

そちらの方が遥かに良い。

 

「あの新型兵器。恐らくこちらのエステバリスを参考に開発されたものでしょう」

「そうね。十中八九そうでしょう。でも、こちらに比べて完成度は低い」

「そのようですね。しかし、DFやGBといった最先端ともいえる技術においては向こうの方が遥かに進んでいる」

「・・・確かにそうかもしれないわね。GBやDFを備えている戦艦がこちらとあちらではあまりにも違い過ぎる」

「はい。それだけは判断できませんが、技術的な問題でもあちらの方が進んでいる可能性があります。少なくとも、こちらと同等以上」

 

少し聞いた話ではプラントで生産する為に戦艦の中身を把握していない可能性もあるらしい。

でも、流石にそんな事はないと俺は思う。草壁もそこまで現実を軽視していない筈。

むしろ、彼はゲキ・ガンガーを民意誘導に用いているだけで、本人は至って現実主義な気がする。

あくまで原作で彼を見た俺の感想でしかないが・・・。

それに、向こうには劇場版で悪魔のような頭脳を発揮したヤマザキ博士がいるんだ。

少なくとも、エステバリス並の完成度にまで持っていく事は可能だと思う。

 

「・・・そうね。こちらのエステバリスに追いつくのは時間の問題かもしれないわ」

「ええ。だからこそ、ナデシコという最高戦力で機動データを集めると思うんです。最初の接触のように」

「ナデシコを基準に設定していれば、他の部隊は確実に討てると。そういう事?」

「恐らくという予想の範疇でしかありませんが。どちらにしろ、木連側からの接触です。何かしらの意図があると思われます」

「・・・少なくともこの程度の攻撃で終わる事はないと?」

「はい。杞憂で済めばいいのですが・・・」

 

今の所、そのような予兆はない。

唯の杞憂で済んでくれれば俺の胃にダメージが来るだけで済むんだけど―――。

 

スドォォォン!

 

な、何だ!?

 

「この揺れは!?」

「突如現れたミサイルにより右翼部が損傷!」

 

これはボソン砲? そんな!? このタイミングじゃない筈だろ!?

 

「被害ブロックは・・・爆発の割には軽微です」

「それってどういう―――」

「ハーッハッハ。こんな事もあろうかと。こんな事もあろうかと。クーッ。言ってみたかったんだよなぁ。この台詞」

「ウリバタケさん! いいから説明を!」

「おう。これは俺の開発したディストーションブロックのお陰でな。これはなんと―――」

「後の説明は私がしましょう」

「おい。ちょ、ちょっと待て! 俺が―――」

 

プツンッ!

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

・・・折角の緊迫した雰囲気が台無し。

そ、そんな事よりも!

 

「イネスさんの説明は後にして、艦長! とりあえず、この宙域から!」

「はい。分かっています。ミナトさん。全速で前進。メグミちゃん。パイロットにミサイルを迎撃しつつ帰艦と連絡を」

「「了解」」

 

急いで状況を立て直す事が大切だ。

 

「イネスさん。説明を御願いします」

「分かったわ。艦長」

 

・・・このタイミングでボソン砲の襲撃。

原作とはタイミングも場所も違う。これが改変した故に起きた誤差か。

ディストーションブロックが装着済みで助かった。マジでウリバタケさんには感謝だな。

 

「ディストーションブロックとは艦内の空間をディストーションフィールドで包み込む装置の事よ」

「ディストーションフィールドで包む?」

「ええ。例えば各ブロック事に包めば、被害はブロック単位で抑えられるじゃない? 被害は最小限になるって訳」

 

確かに被害は最小限で済む。

でも、機関部やブリッジなど、ナデシコ艦内において重要な場所に直撃すれば、その時点で終了だ。

ボソン砲の怖い所はそういう所。何の予兆もなしに、好きな場所を爆発できる。

欠点としては機体にではなく、空間の位置にミサイルを出現させる為、避けられてしまう可能性があるという事。

要するに、出現までのタイムラグを利用して、絶え間なく、かつ、凄まじい速度で動き続ければ避け続けられるという訳だ。

まぁ、それだけしか欠点がないというある種ほぼ確実に命中する恐ろしい武器な訳だけど・・・。

 

「分かりやすく言うならば、唯の物質を用いた隔壁ではなく、ディストーションフィールドを用いた隔壁って事ね」

「へぇ~。なるほど」

 

しきりに感心してみせる艦長。

おい。お気楽思考は流石にまずいぞ。

冷静なのは良い事かもしれないけど・・・。

 

「艦長。状況を」

「あ。アキト。おかえりなさい。怪我はなかった?」

「ああ。全パイロット。健康状態に異常はない。それよりも状況を教えてくれ」

 

どうやらパイロット組は無事に帰艦出来たようだ。

エステバリスがいなくなって迎撃する機体がいなくなったな。

ボソン砲には対処できないけど、向かってくるミサイルにはまだ俺でも対処できる。

まぁ、ディストーションフィールドを越えられるとは思えないけど、万が一の為にな。

 

「艦長。念の為にレールカノンで迎撃体制に入っておきます」

「はい。御願いします」

 

おし。艦長の許可も得たし。

 

「オモイカネ。レールカノン。セット」

 

懐からいつものを取り出し装着。

そういえば、ナデシコのレールカノンを使用するのって久しぶりじゃないか?

大丈夫だよな? 俺。

 

「コウキ君。無理しちゃ駄目よ」

「大丈夫ですよ。ミナトさん」

 

相変わらず心配性なんだから。

もう大丈夫ですよ。安心してください。

 

「そう。それならいいけど」

「え、ええ」

 

とりあえず、ミナトさんを視界に入れちゃまずい。

ドギマギして集中力が欠けてしまう。

戦闘終了後、目に焼き付くほどにばっちり見させてもらうとしよう。

 

「そういえば、まだ感想聞いてないんだけど?」

「え?」

「コンテストの感想よ。気になるわよ。ね、セレスちゃん」

「・・・はい」

 

えぇっと、そのような状況ではないのでは?

 

「今の所は大丈夫よ。艦長の指示待ちだもの」

 

そ、そりゃあ確かにそうだけど・・・。

 

「で? どうだったの?」

 

・・・こりゃあ堪忍するしかないな。

 

「ミナトさんは物凄く綺麗でした。それに、いつまでも聴いていたいような歌声で。本当に感動しました」

 

俺の拙いボキャブラリーではこれ以上の言葉は出てこない。

文字通り、言葉に出来ない程に凄かった。

 

「セレスちゃんは本当に可愛らしくて。それに、透き通るような歌声で本当に心に響いたよ」

 

セレス嬢もミナトさん同様、俺なんかでは言葉に出来ない程に凄かった。

両者共に感動して、両者共に身近にいられる事が本当に嬉しくて幸せに感じた。

彼女達の家族であるという事を誇りに感じた。

 

「ふふっ。高評価みたいね。良かったわ」

「・・・はい。頑張りました」

 

笑顔の二人。今の格好も相まって本当に魅力的だ。

 

「二人ともアイドルデビューしても問題ない。むしろ、そこらのアイドルよりずっと魅力的でした」

「あら。そう?」

「・・・恥ずかしいです」

 

嬉しそうに笑うミナトさんと真っ赤に頬を染めるセレス嬢。

むぅ。アイドルになれるぐらい綺麗だし可愛いと思うけど、二人が有名になるのは嫌だな。

 

「でも、あまり二人を他の人の眼に入れるのはちょっと嫌ですね。やっぱり俺だけの・・・というか、はい、そんな感じです」

 

・・・なんか調子の乗って変な事を言っちゃった気がする。

案の定、眼を丸くしてこちらを見てくるミナトさんと余計に顔を赤く染めたセレス嬢の姿が見えた。

でも、すぐにミナトさんは表情をニヤリとしたもの変えて・・・。

 

「へぇ~。アイドルを独り占めにしたいだなんて強欲ねぇ。独占欲が強いのかしら?」

 

と、こうやって弄くってくる。

でも、この感情は仕方ないと思うんだ。

 

「二人とも本当に魅力的ですからね。誰だって独占したいと思いますよ」

 

当然の思いだと思う。

誰だって大切な人を他人に見せるのは嫌だし、独り占めにしたいでしょ。

別に浮気が心配とかそういう訳じゃなくてさ。

自分にとって特別だって思っていたいんだって。

 

「それじゃあしょうがないわね。アイドルデビューは諦めてあげるわ」

「ね、狙っていたんですか!?」

「冗談よ。冗談。私にはアイドルデビューよりコウキ君との生活の方が大切だし」

「ミ、ミナトさん」

 

て、照れるような事を言わないでください。

 

「・・・私もコウキさんと一緒にいたいです」

「セ、セレスちゃん」

「・・・私はコウキさんだけのアイドルになります」

「・・・・・・」

「あらまぁ」

 

・・・やばい。

間違いなく俺の顔は真っ赤だ。

セ、セレス嬢。その発言は威力が強過ぎる。

こ、子供だからこその発言で、深い意味はないと思うが・・・。

セレス嬢。なんて恐ろしい子だ。将来が心配になってきた。

彼女の天然さで何人の男が落とされるのか・・・。あぁ。罪深い女の子だな。

 

「おぉ~い。帰ってこぉい」

 

うぉ!? げ、現実逃避していたのか?

 

「す、すいません。ミナトさん」

「気持ちは分かるけど、ちゃんと返事してあげなくちゃ可哀想よ」

 

え?

 

「・・・・・・」

 

うぉ。不安そうに見上げてきている。

そ、そうだよな。なんか無視する形で現実逃避しちゃったし。

純粋な彼女にはこれからちょっとずつ教えていってあげよう。

そうしなっきゃ、マジで将来が小悪魔ちゃんになりそうだ。

 

「うん。ありがとう。セレスちゃん」

「・・・はい」

 

何がありがとうなのかは自分でも分からないけど、喜んでくれたみたいだから多分いいでしょ。

 

「・・・罪深い男よねぇ。コウキ君って」

 

・・・何がだろうか?

罪深いのは貴方達ですよ。

美人、可愛いは正義だけど、罪なんです!

誰もが逮捕(独占)しちゃいたくなりますからね。

 

「作戦を発表します」

 

どうやら、艦長達の話し合いが終わったらしい。

俺の出番がなかった事から、単純なミサイルの脅威はない。

あくまで気を付ける必要があるのはボソン砲だけという訳だ。

それに対して、艦長が取る行動は・・・。

 

「ナデシコ! 相転移エンジン停止」

「「「えええぇぇぇえぇぇぇえぇ!」」」

 

原作通りの作戦だった。

 

 

 

 

 


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