・・・え~と、うん。
・・・どうしてこうなった?
「木連の馬鹿野郎~~~!」
えっと、アキトさん。熱血ですね。
「ふふっ。分かっているんだよ。僕じゃ会長なんて務まらないって事はね・・・」
・・・あの会長が。
なんて弱気・・・。
「わ、私だって・・・私にだって、女の子らしい所ぐらいあるわよ・・・」
ス、スバル嬢。だ、大丈夫ですよ。はい。
「うぅ・・・。俺なんかがヒーローになれるのか・・・?」
いつもの強気はどうしたんだ!? ガイ!
「大好きですぅぅぅ。アキトさぁぁぁん」
ル、ルリ嬢~~~。一体、君に何があった?
「ルリ~~~。うるさいよぉ。あ、アキトォ。アキトだぁ」
な、なんて天真爛漫。艦長みたいだぞ、ラピス嬢。
「・・・コウキさんは私のものです」
コ、コメントに困るぞ。セレス嬢。
「作戦実行中は静かにしなさい。お気楽でやっていける程、世の中は甘くありません」
ク、クールだ。艦長が、ユリカ嬢が、なんかちゃんとした艦長っぽい。
「・・・・・・クマさん・・・うふっ・・・可愛いなぁ」
幼き記憶、アイちゃんが表に出てきたんですね。イネス女史。
「嫌ね。皆して私の身体ばかり見て。見たいなら見せてあげるのに」
イ、イズミさん。遠慮しておきます。
「え、えっと・・・み、皆ぁ・・・待ってよぉ」
ど、どうした? ヒカル。迷子みたいに涙目で右往左往して。
なんか庇護欲が湧いてきたぞ。
「ハーッハッハ。皆! 僕に、いや、俺に付いて来い! ハッハッハ!」
分かりますよ。ジュン君。暴れたかったんですよね? 溜まっていたんですよね?
「はぁ・・・。もうやってられないわ。何なのよ、まったく」
イ、イツキさんがグレたぁぁぁ~~~!
「お前達、慌てる必要はない。迅速、かつ、冷静に作戦を遂行しろ」
キ、キノコがダンディーだ。これが素? いや。違うよな。
「・・・なんてカオス」
この状況を説明する為には時間を遡らないといけませんね、はい。
「今日、私達は月奪還の最終攻略作戦に参加する事になっているわ」
艦長コンテストの結果発表から数日が経った。
衝撃的なルリ嬢の告白は一部を除き皆が受け入れ、祝福されている。
一部っていうのは、ほら、あれ、整備班とかとか。
それ以外は特に異常? というか、何事もなく進んだ。
正直な話、ユリカ嬢あたりがもう少し何かしらの行動を取るだろうなぁとか。
そんな事を考えていたんだけど・・・。
「私達は作戦時間までに作戦ポイントに移動し、その後、ナデシコに新しく搭載された相転移砲で敵艦隊を殲滅します」
・・・意外にもルリ嬢の告白イベントに対しては無反応だったりするんだ。
うん、一応は、結果発表の後、一日、二日は閉じ篭っちゃったんだけどさ。
出て来てからはいつも通りなんだよね。
俺の眼が間違ってなければ、態度とかも普段と変わらないし。
あれかな? ようやくジュン君の想いに気付いたとか?
というか、ようやくジュン君が男を見せたとか?
う~ん。どうなんだろう? そういう話も周りから聞かないし。
でも、直接ユリカ嬢に訊くのもどうかと思うしまぁ。
分からん。何がどうなってこうなったんだろうか。
まぁ、恋愛は当事者同士に任せて、俺は傍観するべきなんだろうけど。
余計なお節介だろうしさ・・・物凄く気になるが。
あ。ちなみに、艦長コンテストの結果、ユリカ嬢は艦長じゃなくなった。
・・・なんて事もなく、優勝トロフィーは頂いたものの両者とも艦長の座は辞退。
結局、第二位であるユリカ嬢が艦長の座を防衛した、という結末となった。
やっぱり、ナデシコの艦長は誰が相応しいかとか皆が理解していた訳だ。
うん。しっくりくるよ、ユリカ嬢が艦長の方が。
あ。でも、特別賞のラピス嬢との間で揉めたとかなんとかってのも聞いた。
ラピス嬢が艦長の座を狙っていたとかなんとかって。
まぁ、所詮は噂だと思う。多分、うん、きっと。
「月奪還最終作戦において、私達ナデシコは作戦の核を担っています」
おっと、話が逸れ過ぎたな。
これから作戦行動に移さないといけないっていうのに。
えっと、作戦内容はこうだ。
まず、地球連合軍の艦隊が木連の艦隊と交戦。
その後、うまい具合に敵を引き付けつつ、機を見て離脱。
纏まった状態で停止している敵艦隊を側面から大量撃破。
簡単に言うとまぁ、こんな感じだ。
それを達成する為には、うまく月で隠れつつ作戦ポイントに到達しなければならない。
ま、実際、移動にはあまり梃子摺らないと思われる。
原作でも、移動に関しては支障なかったし。
だが、しかし、他の所で問題があったんだよな、これが。
それはYユニットの制御を乗っ取られるというびっくり仰天の事態。
元々、四番艦であるシャクヤクに取り付けられる予定だったYユニットだ。
いくら規格が同じだからって、一番艦のナデシコに取り付けるのは無謀だった。
その隙、というか、穴を突かれて敵機の侵入を許し、ハッキングを受けてしまう。
まぁ、それはYユニットに搭載されたサルタヒコというAIの整備不良っていうのも原因の一つであったりする。
今回は取り付けの際にきちんとハッキング対策をしたから大丈夫さ!
「皆さんの力を遺憾なく発揮して、作戦を成功させましょう!」
「「「「「おおぉぉぉぉ!」」」」」
・・・でも、皆、忘れてないか?
敵艦隊の殲滅。それと同時に失われる莫大な量の命を。
人を殺すんだって・・・。
少なくとも俺はそれをきちんと受け止めようと思う。
・・・なんて余裕ぶっこいている時が僕にもありました。
うん、まさかね、同じようにハッキングされるとは思わなかった。
このハッキングは制御が不可能になるっていうのともう一つ問題がある。
それはIFSなどナノマシンを持つ者の意識が争奪されてしまうという事。
まぁ、簡単に言えば、日頃の人格を奪われ、隠された人格が表に出るって事さ。
別に二重人格って訳じゃないと思う。
でも、ほら、抑圧されたストレスとかが爆発して犯罪を起こしてしまったみたいな。
そんな感じで人には深層心理世界に幾つもの意識を持つんじゃないかなと。
そして、それが、そいつらが主人格を奪った事で表に出てくるって感じ。
具体的に言えば・・・。
「アキトさん。アキトさん。アキトさん。アキトさん。テヘッ」
頬を緩めながらオペレーター席で含み笑いをするルリ嬢とか。
「ん~~~。気持ち良いです。ずっとこうしていてもいいですか?」
「え。あ。うん。いいよ」
思う存分って感じで抱き付いてきて饒舌に話すセレス嬢とか。
日頃の二人じゃ絶対にしないであろう事をしてしまっている。
俺の記憶によればコミュニケを通して意識が奪われてしまうんだよな。
今回、対策万全だし、別にコミュニケを外さなくても大丈夫だろう。
とか、甘い事を考えて、普通にコミュニケを付けていた自分を罵りたくなる。
いや。別に俺自身は何故か大丈夫なんだよ、何故か。
でも、こうなるかもと分かっていて、この事態を招いてしまったっていうのが悔やまれる。
そして、こうなってしまって何よりもまずいのが、アキトさん達の記憶が流出する事だ。
今回、意識を奪われると同時に記憶も奪われてしまう。
まぁ、最終的には戻ってくるんだけどさ。
でも、たくさんの意識を奪っておいて、それが独立している訳がない。
敵のハッキングにより、彼らは意識が混在してしまうんだ。
いや、別に意識が混ざり合って新しい人格が生まれるとか、そういう訳じゃない。
ただ、意識の混在化により、記憶が流出、統合という形で過去を知られてしまう。
別に原作のように、まずい記憶なければ、うん、困るけど、問題はない。
でも、今回のように未来の記憶を持つアキトさん達がいるのは非常にまずい。
アキトさん達が経験した事。それを実体験のような形で垣間見る事になる。
更には、俺達が隠してきたボソンジャンプの事や計画の事がバレてしまうかもしれない。
いや、別にヒカルやスバル嬢、ガイなんかの普通のパイロットは構わないんだ。
きっと、何か奢ってね、とかは言うだろうけど、黙っていてくれると思うから。
でも、あの極楽トンボ達、ネルガル勢に知られるのはマジでまずい。
会長という強い権力を持つ彼が計画とかの事を知ったら・・・。
うん、計画の建て直しが必要になる。ボソンジャンプの事も。
・・・はぁ。まさかな~~~。
でも、どうしてこんな事になったんだろう?
確かに俺もルリ嬢もしっかりと準備・点検して万全にしといた筈なのに。
「・・・コウキ君。これが話に聞いていた・・・」
「はい。裏人格って奴ですね。人間って面白いです」
「・・・現実逃避はやめなさい」
「・・・はい」
突如、性格というか、キャラが変わってしまった彼らに困惑する一同。
ユリカ嬢の変化とかマジで恐ろしい。
いつもあれだと思うと・・・。
うん、言葉に表せないね。
「でも、どうしてコウキ君だけ平気なのかしら?」
「俺にもそれが分からないんです。どうし・・・」
ん? なんだ?
「どうかしたの? コウキ君。ま、まさか、今から変わっちゃうとか!?」
そ、それはないと思いますよ。
そして、何故赤くなっているんですか?
どういう人格を貴方は想像しているんでしょうか? ミナトさん。
「いえ。あれ? おかしいなぁ・・・」
幻覚が見えた。
なんというか、右目と左目で違うものを見ているかのような。
「あれは・・・」
麻雀の牌?
『ポン』
『チー』
『ロン』
『・・・次はどうやら私の記憶のようね』
あれ? 今度は幻聴まで・・・。
でも、これって、確か・・・。
「・・・コウキ君?」
怪訝な表情で見詰めてくるミナトさん。
「・・・どうやら、俺も一応は意識を奪われているみたいですね」
「え? それってどういう意味?」
「ミナトさん。俺は今、どこにいますか?」
「え? ブリッジでしょう。なんでそんな当たり前の事を訊くの?」
ミナトさんが言ったように俺が現在いる所はブリッジのいつもの席。
そして、パイロットとジュン君は制御を取り戻す為にYユニットの制御室まで自転車で移動中。
・・・何故自転車かは置いといて、だ。
その他、俺達ブリッジクルーはブリッジで待機しつつ作戦ポイントにナデシコを移動させているって状況。
もちろん、彼らの豹変はブリッジをも困惑させたさ。
メグミさんとか、秘書さんとか、プロスさんとか特に。
あ、でも、プロスさんはなんか感動の涙を流している。
ようやく艦長としての自覚が・・・とかなんとか。
プロスさん。今日だけですから。南無三。
「もちろん、見えるものも聞こえるものもブリッジの筈です」
「え、ええ。それはそうよね」
そう、それが当たり前なんだ。
右足をだして左足をだせば歩くかのように当たり前の事。
「でも、何故かブリッジの事と同時にパイロット組の会話とかも聞こえるんです」
「それって、以前話していた記憶麻雀とかいう奴の事?」
「ええ」
何故かは知らないけど、彼らは記憶を垣間見る際に麻雀を利用している。
それぞれの牌に意識を奪われた者達の顔が書いてあって、ロンやツモを出した時、揃った模様の人間の記憶が見られるって感じだったかな、確か。
「俺にもよく分かりませんが、俺はどちらの空間?にも存在している状態にあります」
「それで二つの光景や会話が感じられるって訳か。不思議な状況ね」
「ええ。まったくもって」
本当に不思議だ。
「あれかしら? まがりなりにも意識を奪われた経験で耐久力が付いたとか」
「・・・嫌な成長方法ですね」
あのトラウマの事は今でも忘れた訳ではない。
忘れず、きちんと心の中にしまってある。
二度とあんな事をしでかさない為に。
「人間万事塞翁が馬。何が事態を好転させるか分からないわね」
「まぁ、確かにそうですね」
そう思えば、無駄な経験ではなかったとも・・・。
いや。反省はちゃんとしないと。言い訳にしちゃ駄目だ。
「コウキさん。抱き締めてください」
「え~っと?」
突然の宣言。
どうすればいいんだろう?
「抱き締めてあげなさいよ。御願いされているんだし」
「でも、この時の事ってあんまり覚えてないらしいですよ、あくまで別意識がしている事ですから」
「それならそれでいいじゃない。きっといつもそうやってして欲しいって思っているのよ」
「・・・駄目ですか?」
う~ん。はい。参りました。
「うん。分かったよ。はい」
「気持ち良いですぅ」
・・・まるで子猫のようだ。
隣でミナトさんは悶えているし。
「とにかく、俺は一度あちらの方に参加してこようと思います」
「そんな事が出来るの?」
「多分ですけどね。どちらにも意識があるなら俺の意識の傾け方次第で・・・」
突然、意識を失う時のような感じとは違う。
まるで夢の中に入るかのような感覚で、俺はブリッジから意識を手放した。
「そういえば、さっきからコウキは何の反応も示さないな」
「どうかしたのでしょうか?」
ん~。成功・・・かな?
「う~ん。ちょっと頭が痛いな」
「お。やっとコウキが反応したな」
「ん? おぉ。ガイか」
総勢十五名の麻雀大会。
うん。常識じゃ考えられない状況だな。
あれかな? ルールとか無視なのかな?
「さっきまで黙っていたが、何をしていたんだ?」
対面に座るアキトさんから話しかけられる。
ちなみに、左隣にセレス嬢、右隣にガイだ。
「面白い事にですね、俺は現実世界にも意識があるんです」
「ん? どういう事だ?」
円卓に座る皆から視線を向けられる。
「えっと、皆さんは今、現実世界っていうか、実際の状況がどうなっているか分かっています?」
その問いかけにイネス女史が手をあげて答える。
「普段抑圧されている人格が表に出ている。それが私の見解よ」
流石はイネス女史。
普通そんな事は分かりませんよね。
「ええ。その通りです」
「やはりそうなのね。でも、なんで貴方がそう断言できるのかしら? 貴方も囚われているのではなくて?」
流石に鋭いな、イネス女史。
「ええ。それについてもきちんと説明します」
「説明?」
グワッと目を開くイネス女史。
説明お姉さんは健在って感じだな。
「今いるここを皆の意識が混在している空間という事で混在世界、そして、実際に俺達がいる空間、これを現実世界と呼びましょう。皆さんは現実世界の事を認識できていますか?」
「いいえ。別の人格、意識っていってもいいわね、だもの。分かる訳ないわ」
「はい。それが普通ですよね。ですが、俺には認識できるんです」
「あぁもう! さっきから何を言っているか分かんねぇんだよ! もっとわかりやすく言え!」
うおっ! スバル嬢が暴走した。
「・・・なるほど。そういう事」
不敵に笑うイネス女史。
あぁ。完全に理解した顔だな、あれは。
「要するに、私達の恥ずかしい一面を彼は知っているって事よ」
・・・なんでそうやって人聞きの悪い言い方をするかな?
ニヤニヤと・・・狙ってやっているよ、この人。
「な、なんだと!?」
妙に驚くスバル嬢。
・・・まぁ、隠れた欲求を知られるようなものなのかもしれん。
そりゃあ嫌だ。
「ねぇねぇ、コウキ、私ってどんな感じだった?」
楽しそうに訊いてくるけどさ・・・。
「結構、予想と違うと思うぞ。多分、聞いたら後悔する」
「マ、マジ?」
「うん。マジ」
まぁ、ヒカルはそんなでもないけど・・・。
「な、何よ? 私がなんだっていうの?」
キノコさんの変化は今でも信じられない。
「ヒカル。提督がクールを地でいくダンディーな人だったらどう思う?」
「んげ。似合わないと思う」
「うん。そんな感じ。それぐらい、皆違うから」
「・・・やっぱやめとくよ」
顔を引き攣らせながら下がっていくヒカルだったとさ、チャンチャン。
「ちょ、ちょっと、勝手に私を例にしないでよ!」
「提督。昔の貴方はもしやあんな感じだったの―――」
「キィーーー。だ、黙りなさい!」
・・・ムキになったって事はそうなのかも・・・。
うん、やっぱり、信じられない。
「・・・・・・怖くて訊けない」
はい。訊かなくて正解だと思います。イツキさん。
貴方も結構ストレスが溜まっていたんですね。
まさか、グレるとは思いませんでした。
「コウキさん」
「何? ルリちゃん」
「私達はサルタヒコに対して万全の対策をした筈です」
「うん。そうなんだよね」
だから、余計に不思議。
「それなのに、一体何故このような事態を招いてしまったのでしょうか?」
眉を顰めながら問いかけてくるルリ嬢。
確かに、俺も気になっている。
「分かった。ちょっと調べてみるね」
「はい。御願いします」
まずは現実世界に戻って、オモイカネに訊いてみるか。
「戻れるのか?」
「ええ。意識を完全に奪われていない状況ですからね」
「なるほど。経験、もしくは、ナノマシンの性能差か」
あぁ。そういう考え方もあるのか。
俺の体内ナノマシンってやばい高性能らしいしな。
たかがこの程度のハッキングじゃ攻略されないって事か?
まぁ、現状じゃ分かりっこないんだけど。
「それじゃあ、俺は行きます」
「ああ。頼むな」
「御願いします」
「あ。マエヤマさん。お土産よろしく御願いし―――」
「「「「「艦長!」」」」」
「シクシク。頑張ってきてくださぁい」
ははっ。やっぱり艦長はこうでないと。
「・・・・・・」
・・・戻ってきたか。
「おかえりなさい」
「ただいまです。よく分かりましたね」
「ま、それぐらいは当然よ」
ウインクを飛ばしてくるミナトさん。
自分の事を分かってもらえているんだなってなんかちょっと照れくさかった。
「それよりも、どうしたの?」
「ええ。ハッキング対策は万全だった筈。それなのに何故ハッキングされてしまったのか。それを調べる為に一度戻ってきました」
「そっか。オモイカネにでも訊いてみるの?」
「ええ。多分、それが一番の近道かと」
えーっと、オモイカネにコンタクトを―――。
「マエヤマさん! 作戦行動中に何をしているんですか!?」
うおっ! か、艦長?
「作戦中に勝手な行動は困ります」
「せめてそれらしい理由を説明しろ」
な、なんて息の合った指揮官コンビ。
この状態のユリカ嬢と提督が組んだらもしや最強か?
「ハッ!」
こういう時に軍人だった時の経験は役に立つ。
割と様になっている筈だ、俺の敬礼。
「現在、御存知の通り、敵より我が艦はハッキングを受けております」
「うむ。続けよ」
「ハッ! しかしながら、以前、私達はハッキングを危惧し、万全の対策を取っておりました」
「なるほど。対策を取っておきながら、それを突破されてしまった。その原因が知りたいと」
「ハッ。その通りであります」
な、なんかミスマル提督ぐらい緊張する。
こ、これが本来のキノコパワーか?
「あの・・・ミナトさん」
「何? メグミちゃん」
「皆、一体どうしちゃったんですか?」
「えっとね、うん、色々とあったのよ」
「で、でも、ガイさんがガイさんらしくないんです」
「えーっとね、それは・・・」
とりあえず、周りへの説明は、ミナトさん、お任せします。
「艦長。如何する?」
「確かに早急に原因を見つけ出す必要がありますね。許可しましょう」
「だ、そうだ。マエヤマ。早急に原因を探り当て、報告しろ」
「ハッ! 了解しました」
敬礼し、席に戻る。
あ。ちなみに、怒られるのを覚悟でセレス嬢は抱っこしたままでした。
待っていてって言っても多分離れてくれないと思ったので、止むを得なく。
でも、何故かスルーされ、うん、激しくラッキー。
「どうにか許可を頂けました」
「ふふっ。お疲れ様。でも、今の感じが本当の軍艦なのね」
「まぁ、気にしちゃ駄目ですよ。ナデシコですから」
「そうね。ナデシコだものね」
なんでもナデシコだからで納得ができてしまう。
それが不思議なナデシコクオリティ。
「オモイカネ。ちょっといいかい?」
手元のコンソールに触れ、オモイカネにコンタクトを取る。
『何?』『何でしょう?』『教えたくない』
何故か既に反抗期の奴もいる。
「どうしてハッキングされちゃったの? 対策してあったよね?」
『知らない』『僕は悪くない』『あいつが悪いんだ』
でも、何故か反抗期の奴が一番素直に状況提供してくれるという不思議。
人間っていうか、思考って面白いよね。
隠そうと思えば隠す程、それを露見させちゃうんだから。
「あいつって?」
『サルタヒコと・・・シタテル』『サルタヒコが悪い』『シタテルとサルタヒコ』
シタテル?
話し相手として作ったオモイカネの恋人のシタテルの事だよな?
それとサルタヒコは満場一致らしい。
「シタテルが何かしたの?」
『サルタヒコと』『ばっかり』『話すから』
・・・もしかして、ヤキモチ?
「サルタヒコは?」
『喧嘩中』『絶対に許さない』『シタテルは僕の』
うん。決定。完全にヤキモチだ。
「今、シタテルは?」
『サルタヒコの所』『シタテルの馬鹿~』『もう嫌い』
え~っと・・・。
要するに、シタテルの取り合いで喧嘩したオモイカネとサルタヒコ。
その両者間の疎通が成されていない所を突かれちゃったって事かな?
いくら両者に対して対策を万全にさせても間を抜かれちゃあな。
シングルスが凄くうまいプレイヤーでも、ダブルス組むとメチャクチャ弱いとか。
多分、きっとそんな感じなんだろう。
う~ん。とりあえず、パイロット勢がハッキング元は破壊するだろうし。
二人、というか、三人の三角関係は後でルリ嬢達と相談して修復だな。
・・・はぁ。予想外の連続で溜息が出ちゃうぜ。
まさか、ヤキモチの果ての喧嘩が原因だったとは。
原作でもきちんと接続されてなかったのが原因だったらしいし。
ある意味、これも接続不良だもんな、友情の接続不足。
そこらへんも含めての整備ミス。うん。反省。
まぁ、とにもかくにも多くの人間を巻き込んだ痴話喧嘩っちゅう訳だ。
はぁ・・・。
「ミナトさん。という訳です」
「ハハハ・・・。了解」
苦笑いのミナトさん。
まさか痴話喧嘩で危機に陥るなんて思いもしなかった。
「とりあえず、艦長達に報告を―――」
「あ。それは私がやっとくから、ルリルリ達に教えてきてあげなさいよ」
「そうですか? それじゃあ御願いします」
任せてばかりで大変申し訳ないです。
あ、いや、違うな、なんでも謝るのは悪い癖だ。
ありがとうございます。ミナトさん。
それじゃあ、もう一度、混在世界へ行ってくるとしますか。