「プロスさん。それでは」
「はい。・・・コホン」
一拍置き、そして・・・。
「第一回! 新型機命名コンテスト! 開催ですぞォォォ!」
「「「イエェェェイーーー!」」」
「「「ヒュー! ヒュー!」」」
相変わらずお祭が大好きな方々だ。
「それでは、ナデシコ整備班班長であるウリバタケさんと、新型機担当のマエヤマさんから説明してもらいましょう」
いつから担当になったんだろう?
まぁ、別にいいけどさ。
「えっと、ウリバタケさん、煽りは任せました」
「任せとけ!」
ノリノリですね。ウリバタケさん。
「皆さん、着々と新しい装備が揃い、ナデシコの戦力も充実してきました」
「色んな種類の追加装甲があるわな」
「ですが、それを総称した呼び方がないのです」
「出撃にしたって整備にしたって名前がねぇのはやりづれぇ」
「そこで名前を付けよう。そう思った訳です」
「でもよぉ、それを俺らだけで勝手に決めちまうのはあまりにも身勝手だ」
「この新型はナデシコを護る為の矛であり盾でもある。それならば、ナデシコ皆で考えて欲しい。いや、考えるべきだ!」
「そうだ! そこで! てめぇらの考えを俺らに聞かせて欲しい!」
「「「「「「「「「「「「「オォォォ!」」」」」」」」」」」」」
大歓声。
「良いか! てめぇの考えた名前が歴史に残るんだ! これ程、名誉な事はねぇだろ!」
「そうだ! そうだ!」
「俺の考えた名前が・・・」
「歴史に俺の名が・・・」
いや、盛り上がっている所、悪いけど・・・。
流石に命名した人の個人名は残らないと思いますよ。
・・・機体名に自分の名前が入っているなら別だけど。
「今まで溜め込んで来たてめぇらの妄想力! ここで解放しやがれ!」
「「「「「うおっしゃぁぁぁ!」」」」」
・・・妄想力なんだ。
「条件なんてねぇ! 誰にだって権利はある! 好き勝手にやりやがれ!」
「「「「「オォオォオォオォオォ!」」」」」
煽り役を任せたのは間違いだったか?
下手すると暴動に・・・はならないか、
そういうけじめはしっかりしているもんな、何故か。
「えぇ~本日の午後五時までにコミュニケで本部へ、機体名、名の由来、理由を文章にて連絡してください」
プロスさんが引き継ぎ、場はちょっと落ち着いた。
でも、結局、最後にプロスさんも煽る気がする。
「あて先はこちらです。お間違えのないようにお願いします」
コミュニケにあて先が送られてくる。
別に俺には必要ないんだが・・・本部で働くのも俺だし。
「大丈夫ですね。それでは! コンテスト! 開始です!」
「「「「「オオォオォオォオォ!」」」」」
・・・やっぱり。
ま、いいか。熱い事は良い事だ。きっと。
さてさて、どんな名前が送られてくるやら。
「はい。こちら新型機命名本部」
いや。妄想力を甘くみていました。
次々と送られてくる案を整理するだけで疲労困憊です。
「セレスちゃん。アイウエオ順に整理しておいて」
「・・・はい」
さて、俺は名前が被った案でもまとめておこう。
「しっかし、これが五時まで続くのか?」
いや。まだ昼過ぎなんだけどさ。
クルーの人数以上の案が既にあるという謎。
プロスさぁぁぁん。一人一案って言うのを忘れていたでしょ~~~。
コンコンッ。
「マエヤマさ・・・失礼します」
突然のプロスさんの入室。
手伝わせようと思ったら、即行で逃げやがった。
「しかし、そうは問屋が卸さない」
ガシッ。
「ふふっ」
「マ、マエヤマさん?」
「手伝ってください。プロスさん」
「し、しかし、私ではお役に立てないかと」
「いえいえ。悪ふざけの案もありますから、それの除外を御願いします」
いや。真面目な案の方が多いよ。
多いけど、ナデシコってば悪ガキの集まりみたいなものだから。
それはないだろっていう案も結構送られてくる。
「たとえば、このスズキンガーとか」
鈴木さん。これはない。
「後はガイ・カイザーとか」
ガイ。頼むから自重。
「他にもユリユリとか」
いや。ユリカ嬢LOVEなのは分かったから。
副長なんだし。ジュン。自重してくれ。
「・・・ハハハ」
何を笑って誤魔化してやがる。
一人一案にしなかったせいで悪ふざけが出たんですよ!
「分かりました。それらしいもの以外除外させて頂きます」
「御願いします」
これで俺とセレス嬢の負担も減るだろう。
というか、煽るだけ煽って後は俺任せってどういう事ですか? ウリバタケさん。
これは何か仕返しをするべきなのかもしれんな・・・。
『今寒気がしたんだが・・・変な名前でもあったのか?』
「いえいえ。クスックスッ」
『こ、怖・・・そ、それじゃあな!』
逃がしませんからね。ウリバタケさん。クスッ。
「それでは、皆様から送られてきた名前を下に話し合いを行いたいと思います」
議長、俺。
書記及び記録係、セレス嬢。
参加メンバー。
艦長、ユリカ嬢。
副長、ジュン君。
通信士、メグミさん。
操舵士、ミナトさん。
パイロット代表、イツキさん、ガイ。
整備班班長、ウリバタケさん。
知恵袋、イネス女史。
常識人? プロスさん。
以上、十一名にて行いたいと思います。
他のパイロット組は残念ながら、教官業で忙しいらしい。
しかし、イツキさんはともかく、ガイはどうなんだろう?
ガイ・カイザーなんて案を出してきたし。
あ。もちろん、即刻却下でしたが。
「さてさて、俺、セレス嬢、プロスさんの三人でいくらか絞らせてもらいました」
悪ふざけ案はバッサリと。
「候補をお伝えします」
うん。ちゃんとアイウエオ順になっているな。
分かり易いぞ。ありがとう。セレス嬢。
「まずは『アイリス』花言葉は『和解』です。理由は、花言葉がナデシコの目的に相応しいと思ったから」
やっぱり、花の名前が多かった。
この世界の人間は花が好きなのだろうか?
まぁ、僕も花の名前がいいかなって思っていたから良いけど。
「響きも良いし、理由の通り花言葉が今後にピッタリじゃねぇか」
「そうですね。ちょっと戦闘には向かない可愛らしい名前の気もしますが」
「可愛らしくて良いと思います」
そう言われてみれば・・・。
あれだね。和平計画を総称してアイリス計画にするとか。
「次は『アゲラタム』花言葉は『信頼』です。理由は、ナデシコの団結のもとであり、和平に必要なものだから」
「信頼・・・か」
「良い名前だと思うよ。ユリカ」
「信頼あっての団結。信頼あっての和平か」
何事にも欠かせない信頼。
それを全面に出すこの名前は機体名として良いかもな。
想いが伝わる気がする。
「次は『アザレア』花言葉は『愛される事を知った喜び』です。理由は、敵同士であった者達が手を組む。その事を表してみました、だそうです」
敵同士が手を組む。
憎しみや悲しみといった悪い感情しかなかった者が真実を知り、相手を信じてみようと考えた。
信じてみよう。そう思ってくれた事は至上の喜び。
信じよう。そう思えた事は至上の喜び。
「・・・私のお気に入りです」
「セレスちゃんの?」
「・・・はい。私はナデシコで愛される事の喜びを知りました」
「・・・そっか」
「・・・私はこんなにも嬉しい事が世の中にあるとは思いませんでした。だから、私はこの言葉を皆さんに伝えたい。そして、喜びを感じて欲しいです」
いつになく饒舌なセレス嬢。
そっか。愛される事を知る。それはとっても幸せな事なんだな。
親の愛、友の愛、異性の愛。愛には色々な形がある。
自身を想ってくれる者が一人でもいる。それだけで人は勇気が持てるもんだ。
「私もこれが良いわ」
セレス嬢の味方、ミナトさんも賛成する。
ニッコリ笑顔でセレス嬢を見詰めるその視線は慈愛で溢れていた。
なんだかミナトさんらしい。
「次は『アドニス』これはエステバリスの属名ですね。理由は、エステバリスの上位なら、こういう考えもありだと思ったから」
なるほどね。そういう考えもあるか。
「ほうほう。言い易いな」
「アドニス! 行くぜぇ! おぉ。確かに言い易い」
ガイ君。試さなくていいからね。
「次は『アルメニア』花言葉は『共感』です。理由は、想いを共感し、和平を成し遂げて欲しいから」
共感。和平を成し遂げたいという思いは互いに同じだ。
「アルメニア。これもまた言い易いな」
言い易いってのも大事か。
響き、意味、言い易さで考えましょうか。
「次は『アングレカム』花言葉は『いつまでも貴方と一緒』です。理由は、ナデシコは運命共同体。皆の力で和平を成し遂げたいから」
「運命共同体かぁ。なんかいいね。ジュン君」
「ナデシコの強さは皆の団結力だからね」
ナデシコクルーにピッタリの名前って訳か。
「次は『カミツレ』花言葉は『逆境の中の活力・親交』です。理由は、どれだけ追い込まれようと俺達なら成し遂げられる。そんな思いから」
「逆境の中の活力か。今は逆境に近いからな」
「なんだか頑張れる気がします」
「親交ってのも悪くないぜ。仲良くなってこそだしな。俺とメグミのように」
「関係ないから、それ」
あ。思わず突っ込みを入れてしまった。
まぁ、いいか。スルーしよう。
「こら。コウキ。てめ―――」
「次は『ニバリス』花言葉は『逆境の中の希望』です」
「無視かよ!」
「うるさいよ。ガイ。えっと、理由を言いますね。理由は、どれだけ絶望的でも希望を失ってはいけないから。その戒めとして」
「逆境の中の希望ですか。ナデシコならどんな状況でも希望を捨てないと思います」
「それに、ナデシコは希望でもあるしな。地球と木連を結ぶ架け橋としての」
希望。ナデシコそのものを表してる言葉だな。
「そうそう。ニバリスだけど、これはエステバリスと同じ日の誕生花ね」
「おぉ、流石はイネスさん」
誕生花なんてあるんだ。
知らなかった。
「次は『フェザンツ・アイ』これはエステバリスの学名ですね。理由は、木連が和名の福寿だから、それに対抗してこれにしてみた」
「対抗心か。確かにそれも必要だな」
「まぁ、対抗するのは福寿じゃないんですけどね」
「でも、エステバリス関連だから、馴染み易いといえば馴染み易いです」
確かに。
直訳、雉の目?
見た目的な何かなのかな? 福寿草の。
「最後はまぁ、分かり易く、『エステバリス改』、『エステバリスカスタム』、『超絶エステバリス』、 という改造しましたよっていう・・・あれ? あれれ?」
「どうしました? マエヤマさん」
「あ、いえ。プロスさん」
「はい。何でしょう?」
「『エステバリス改』も『エステバリスカスタム』も分かります」
「ええ」
「『超絶エステバリス』って何ぞや?」
「いやぁ。良い響きではないですか。超絶」
「・・・・・・」
プロスさん。貴方もやはり常識人ではなかった・・・。
「コホン」
もう、いいや。
気にしない事にする。
「それでは、候補の中から選びましょう」
結構多いなぁ。果たしてここから絞れるだろうか。
「はいはい~。私は『アングレカム』で~す。運命共同体。良い響き」
「僕もユリカと同じかな。ナデシコと運命を共にしたい」
「流石、ジュン君。一緒だね」
「う、うん。気が合うね」
お前が合わせたんだろ。
皆がジト眼でジュンを見る。
無論、俺も。
「あ、でも、『フェザンツ・アイ』も捨てがたいなぁ」
「そ、そうだよね。エステバリスの学名だし」
ジュン君。自分の意思で決めなさい。
ユリカ嬢に影響され過ぎだぞ。
「結局、どっちなんですか?」
「う~ん。決めた。『フェザンツ・アイ』」
「どうしてだい?
「だって、エステバリスはナデシコ出航からずっとナデシコを守ってくれたんだよ」
「うん」
「名残惜しいから、せめて、エステバリスの事を忘れないようにってさ」
「分かった。それなら、僕もそうするよ。僕だって名残惜しいし」
「ありがとう。ジュン君」
ジュン。お前・・・。
どこまでも尻に敷かれてやがる。
「コ、コホン。プロスさんはどう思いますか?」
逃げたな。ジュン。
「やはり超絶エステ―――」
「却下です」
「むぅ。そうですか。それならば、『ニバリス』ですかね。逆境に打ち勝ってこそ、何かを得られるというものです」
プロスさんは『ニバリス』ですか。
まぁ、逆境とか好きそうですもんね。なんか。
「ウリバタケさんはどう思います?」
プロスさんがウリバタケさんに振る。
あれ? これって振って答える方式になっちゃってる?
「俺は『アドニス』だな。何より呼びやすい。それに、エステバリスに愛着がある身としては関連性があった方が良い」
「私も『アドニス』ね。アドニスとはエステバリスの属名。そして、属とは種のまとまりを示す。単機なら別のでいいけど、総称ならこれがベストじゃないかしら?」
マッド二人組は『アドニス』ですか。
確かに響きも良いですしね。僕も賛成です。
「あれ? それなら『フェザンツ・アイ』じゃなくても―――」
「艦長。もう遅いです」
「はぁ~い」
属名が出たから余韻は残るだろうって意味だろう。
でも、艦長、頼むからこれ以上混乱させてないでくれ。
『フェザンツ・アイ』も良い名前なんですから。
「私は『アイリス』が可愛らしくて好きですね。でも、戦闘機には不向きかもしれません」
「可愛さは大事ですよ。私も賛成です」
イツキさんとメグミさんは『アイリス』ですか。
「俺はプロスの旦那に賛成だな。逆境を打ち克つ強さ。それがパイロットには必要だと思うぜ」
「分かってらっしゃる」
ガイも『ニバリス』って事か。
確かにこいつも逆境っていうのが好きそうだよなぁ。
プロスさんもウンウンって満足そうに頷いているし。
「私達は断固『アザレア』よねぇ」
「・・・はい。譲れません」
胸の前でガッチリと拳を握り締めるセレス嬢。
その可愛らしさに負けそうです。
「えっと、皆さん?」
見事なまでに二名ずつで分かれちゃっていません?
「残る一人はマエヤマ、お前だけだ」
え?
「おい! コウキ! 分かっているよなぁ?」
ガイ。怖いんだけど。
「コウキ君。分かっているわよねぇ?」
「・・・コウキさん」
い、いや、涙目は反則だと思うんだよね。
「マエヤマさん。運命共同体。良いですよね?」
「僕は大賛成だよ」
え? え?
「コウキ君。貴方なら、私の考え、分かるでしょ?」
え? え? え?
「教官」
「マエヤマさん」
ひ、ひたすら見詰めるのだけはやめてくれませんか?
「減給にしましょうか?」
それはあまりにも公私混同!
「えっと、僕は議長なので、投票できないんですよね」
そういう意味ではセレス嬢も書記だから駄目なんだけど・・・。
誰も気にしてないしなぁ。
俺としても、別に咎めるつもりはない。
セレス嬢の気に入った名前も参考にしたいし。
というか・・・。
「は?」
「はい?」
「え?」
「ん?」
全員で睨むのもやめてください!
・・・仕方あるまい。
「分かりました。議長として、この事態を収拾しましょう」
「お。流石議長。パッと決めちゃってくれ」
煽らないで下さい。ウリバタケさん
「『アドニス』『ニバリス』『アイリス』『フェザンツ・アイ』『アザレア』」
これが絞られた候補。
「ハッキリ言いましょう。意見が分かれた以上、一つに絞るのは不可能です」
どれだけ話し合おうと決まる訳がない。
全員が全員、納得する事などないのだから。
「その為、今回の命名ですが、新型装備に限らずにいきましょう」
「え?」
「どういう意味?」
「えっと、ウリバタケさん」
「ん? 何だ?」
「確か他にも開発したものがありましたよね?」
以前、仰っていた奴です。
「おぉ。あるぞ。一つはエステバリス援護兵器。これはナデシコオペレータがナデシコから操って援護する奴だな。それと重力波アンテナ中継装置。空戦フレームを参考に作った行動範囲を広げる奴だ」
一つはエステバリス援護兵器。
これは劇場版でラピス嬢がやっていた事を参考にウリバタケさんに作ってもらった奴だ。
ラピス嬢はバッタを操作していたけど、今回はこれを操ってもらう。
実際、そんなに細かいものではない。
球状にしたものにDFを張らせ、体当たり、もしくは備え付けられたレールカノンで援護。
やれる事はその程度でしかないが、充分、役に立ってくれる。
弾薬とかを備え付けておけば、帰艦せずに補給とかも出来るようになるだろうし。
もう一つは重力波アンテナ中継装置。
これは戦闘限界距離が短い事の対策として前から考えていたらしい。
空戦フレームは重力波を受信し、周りの機体に配給するシステムがある。
それを参考に、重力場を作れるよう調整した奴を後は任意の場所に放るだけ。
それだけで中継装置を中心に円を描くように行動範囲が広がる。
形状的にはエステバリス援護兵器に近いかな。
違う所としては、これは一定の場所に浮いていれば良いって事と操る必要がないって事。
まぁ、攻撃を回避するぐらいの機能は付けておきたいけど。
「花言葉や意味を考慮して、援護兵器に『フェザンツ』を、重力波アンテナ中継装置に『ニバリス』の名を付けようと思います」
『フェザンツ・アイ』から『フェザンツ』の名を抜粋。
直訳は雉であり、雉とはピーチボーイの旅の御供。
また、エステバリスの事も示している事もあり、俺達を影から見守ってて欲しい。
その二つの意味から、援護兵器に『フェザンツ』の名を付けようと思った。
また、『ニバリス』とは希望を示す。
戦闘距離に限界があるという逆境を覆し、希望を見せてくれた中継装置。
戦闘区域が広がった事でより様々な事が出来るようにもなるだろう。
苦しい状況を打破できるものとして、この装置は希望になる。
「良いと思いますよ。確かに決まらないでしょうし」
「私も賛成です」
「ユリカが言うなら」
「ま、仕方ないだろ」
ありがとうございます。プロスさん。艦長。
ジュン君、流され過ぎ。
ガイ。すまんな。
「コウキ君。それなら、他の三つはどうするのかしら?」
「ちゃんと考えてありますよ。ミナトさん」
もちろんじゃないですか。
「『アイリス』とは和解。我々が目指す目的に一番近い意味を持っています」
「そうね。私達は木連と和解したいんだもの」
「はい。そこで、ナデシコが掲げる和平を成し遂げる為の計画。それ自体を今後、『アイリス・プロジェクト』と呼ぶ事にしませんか?」
アイリス・プロジェクト。
地球、火星、木連の三陣営を和解させ、恒久的な平和を目指す計画。
俺はその計画にこの名を付けたい。
「アイリス・プロジェクトか・・・」
「可愛らしい響きですし。私は賛成です」
イツキさん、メグミさんの賛同も得られた。
「『アドニス』はイネスさんの言う通り、総称として相応しいので、今後、追加装甲を身に付けたエステバリスを総称する際には『アドニス』という名前を用いたいと思います」
う~ン、新型の名前を勝手に付けてしまった訳だが・・・。
賛同してもらえるかな?
「俺は始めから賛成していたし、別に文句はねぇぞ」
「流石はコウキ君ね。私の意図をきちんと理解している」
「私も『アドニス』で良いと思います」
ウリバタケさん、イネス女史、艦長の許可はもらった。
他の皆も頷いてくれたみたいだし、うん、一安心。
「でもさ、『アザレア』は? 何か名前付けるものってある?」
ミナトさんとセレス嬢がこちらを見詰めてくる。
安心してくださいって。
「ええ。そろそろ僕もプログラマーとして活躍しようかなと思いまして」
「え? どういう事?」
「パイロットそれぞれに補助用のAIを用意しようと思っています」
性能が上がった事でパイロットへの負担も重くなった。
別にそれぐらいで潰れるナデシコパイロットじゃないけど、補助はあっても損じゃない。
俺が出来る事って今の所、調整とそれぐらいしかないし。
「そのAIの名称に『アザレア』を使用したいと考えています。どうかな? セレスちゃん」
「・・・私も御手伝いできますか?」
「もちろん。むしろ、こちらから御願いする」
「・・・それなら、喜んで」
ニッコリ笑って受け入れてくれるセレス嬢。
うん。良かった。嫌がられたらどうしようかと思ったぜ。
「セレセレがいいなら私もいいわよ」
おし。皆が皆、俺の意見を受け入れてくれたぞ。
これで新型やその他の命名関係は決着がついた。
「それなら、艦長」
「はい。早速、ナデシコクルーにお知らせしましょう」
こうして、新型機の名称は『アドニス』で決定した。
これからはアドニスという名称を起点にそれぞれの追加装甲を呼ぶ事になるだろう。
アドニス○○型って感じで。
さてっと、俺は空いている時間を使って、早速AIを組み始めまるとしますかね。
「セレスちゃ~ん。手伝って欲しい事があるんだけど」
「・・・はい! すぐに行きます!」
クスッ。やる気満々で微笑ましいな。
あ。ちゃんとミナトさんにスケジュール調整を頼まないと。
ぶっ倒れたら色々と申し訳ないし。
ぶっ倒れるぐらい頑張っちゃうのはしょうがないと思うんだ。
セレス嬢の喜び様を見ていたら、ね。