機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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火星再生機構総会

 

 

 

 

 

「そうですか。まだ・・・」

 

ツクモさん達との対面を終えてから三回目の訪問。

最近はカグラ大将の方に直接お邪魔してしまっている。

こちらの方が効率も良いし、行動に移しやすいからね。

 

「うむ。苦悩しているのだろう。だが、割り切ってもらうしかない」

「草壁中将に付いたら如何しますか?」

「・・・致し方あるまい。若者の決意を無駄にしてはならん」

「はい。ですが・・・」

 

もし草壁に全てを話してしまったら・・・。

 

「ふむ。その時はケイゴを保護してもらいたい」

「保護ですか?」

「ああ。ケイゴが生きていて、今現在木連にいる。そう伝われば、漏洩を防ぎたい中将は確実にケイゴを暗殺しに来るだろう」

「・・・確かに」

 

草壁にとってケイゴさんが生きていては都合が悪い。

 

「しかし、そう簡単には殺せまい」

「それは護衛がいるという意味ですか?」

「違う。三羽烏は既にケイゴと妹が生きていると知っているんだ。ここでケイゴが暗殺され、シラトリ・ユキナも暗殺されれば、明らかに草壁の犯行。流石の三羽烏もその事実を知れば、草壁を見限るだろう。だから、そう簡単には殺せんよ」

 

三羽烏の影響力を考えれば是が非でも手元に置いておきたい。

親友や妹を殺されてまで、付き従う訳もなく・・・。

なるほど。三羽烏は抑止力としての意味も含まれているのか。

バラしてしまう危険性はまだあるが、抑止力としても期待したい。

草壁を怪しみだした三羽烏なら草壁が不自然な行為をしたら意味を考えてくれる筈。

これだけでも充分彼らに真実を話した意味はあるな。

草壁にとって三羽烏は切り札であり、獅子身中の虫にもなりかねないという訳だ。

 

「だが、それでも強行されるやもしれん」

「だから、私達でケイゴさんを保護して欲しいと」

「その通りだ。万が一も考えねばならん」

 

確かに俺達の切り札になるケイゴさんは何としても生かさねばなるまい。

 

「分かりました。司令と相談し、必ずや色よい返事を」

「うむ。ありがとう」

「いえ。その際、マリアさんはどうしますか?」

「駄目だといっても付いていくだろう。昔はあのような子じゃなかったのだが・・・」

 

カエデのせいです、多分。

 

「分かりました。マリアさんも保護するよう伝えます」

「何から何まですまないな」

「いえ」

 

こちらにとっても意味がある事ですから。

 

「ところで夜天はいつお返しすれば?」

 

未だに預かっているケイゴさん専用機。

整備班の中に放り出してしまった為・・・結果は分かるだろう?

分解して組み直して、もう解析しちゃっていたんだよね。

あの技術が何かにフィードバックされると思うと・・・うん、怖い。

一応、手を組んでいる方々の機体だから許可を得た方がいいと思ったんだけど・・・。

もう遅いし、言えません、怖くて。

 

「うむ。旗艦となるカグラヅキはまだ半年程は掛かる」

 

カグラヅキ。壊れたカグラヅキの次の戦艦もカグラヅキの名を引き継ぐらしい。

これはカグラヅキが神楽家の旗代わりだからと言える。

 

「それでは、カグラヅキ完成と共にお返しすれば?」

「ふむ。それまで預かってもらう事になるだろうな」

 

まぁ、別にそれは構いませんが・・・。

司令や参謀の許可も貰っているし、ちゃんと秘匿できているし。

 

「代わりとしてそれまで夜天は好きに使って良い」

「好きに、とは?」

「破壊しなければ、研究に使ってもいいという事だ。戦場に出されては困るがな」

 

お! これならある意味事後承諾として・・・。

 

「既に解析してしまっているのだろう?」

「え?」

 

バレていらっしゃる?

 

「ふふっ。敵国の技術を盗むのは悪い事ではない。当然の事だ」

「は、はぁ・・・」

「私達とて貴国の技術を活用している。言わば、それのお返しだな」

 

豪胆な事で。

それならお言葉に甘えるとしましょう。

 

「ありがとうございます。遠慮なく使わせてもらいます」

「多少は遠慮してくれたまえ」

「いえ。存分に」

「フハハハハ」

「アハハハハ」

 

見た目は怖いけど、気さくな人だって分かっているからな。

こうしてお互いに言葉の掛け合いで笑い合う事が出来る。

 

「カグラヅキだが・・・」

「はい」

「やはりどうしても以前までのより性能は落ちてしまう」

 

・・・それはそうだろう。

カグラヅキはナデシコCであり、未来の戦艦。

未来の技術をそのまま再現するなんて出来まい。

解析するだけでかなりの時間を要する。

 

「搭載するAIだが・・・」

 

・・・オモイカネ。ナデシコAから引き継がれたナデシコシリーズの要。

カグラヅキ撃墜と共に失われてしまった・・・ルリ嬢の親友。

・・・この事をルリ嬢に伝えた時、彼女は泣かなかった。

それが・・・何よりも辛い。

あれは辛いのを必死に隠して・・・無表情になっていただけ。

その心は今まで見た事がないぐらい、泣いていた。

・・・当たり前だよな。ルリ嬢にとっては誰よりも大切な友達なのだから。

あの時のルリ嬢の涙は今でも胸に痛みとして残っている。

俺達がもっと上手く動いていれば墜とされなかったんじゃないかって。

誰のせいでもないですよって逆に慰められて、本当に悔いばかりが残った。

 

「黒夜のAIをそのまま利用する事にした」

「黒夜?」

「データによると正式名称はユーチャリスだったな」

 

ユーチャリス。黒の王子と妖精の住処。

あれに搭載されていたAIはオモイカネのコピーだったと聞くが・・・。

 

「元々先代のカグラヅキは白夜という名前だった。白夜と黒夜。神楽家の旗艦とする際に名称を変更して、カグラヅキとしたんだ」

「それなら、カグラヅキ弐号には黒夜を?」

「うむ。だが、そのままでは損傷が激しくて通常業務すらままならない」

 

そういえば、かなりの損傷だったと聞いたな。

今まで登場しなかったのも修理が必要だったからか。

 

「そこで、白夜からの解析技術を活かし、黒夜を改修する事にした」

 

大元がユーチャリスでそこからナデシコCに近付けようって事だな。

 

「あれは全体的に人を乗せる事に適していない。まずはそこからだった」

 

二人乗りでしたからね。ユーチャリスって。

まぁ、二人だけとは限らないだろうけど、少なくとも大人数は乗せられない。

 

「攻撃面では先代カグラヅキより優れていると言えるな」

 

ナデシコCはハッキングがメインだった。

しかも、ルリ嬢並のIFS処理能力がなければ無用の長物になる程の扱い辛さ。

それに対してユーチャリスは突撃急襲型の戦艦。

攻撃力、ステルス機能に優れており、そこまで高い処理能力は必要としていない。

どちらかというと木連にはこちらの方が適していると思う。

 

「全体的に大きくなる。武装面も充実させるつもりだ。武装には―――」

「あ。これ以上はいいです」

「そうだったな。戦場で合間見れば我々は敵だった。忘れていたよ」

 

敵に情報を渡しては駄目ですよ、大将。

俺も敵だという事は忘れていましたが。

 

「うむ。とにかくカグラヅキ完成までには時間が掛かる」

「カグラヅキはどのように?」

「ケイゴに任せるつもりだ」

「ケイゴさんに?」

「戦闘中、あいつに乱入させる。そして、全てを、真実を告げさせる」

「・・・それが神楽大将の秘策」

「そうだ。だからこそ、簡単に沈まない何よりも強い戦艦を用意せねばなるまい」

 

草壁派を共通の敵とする秘策。

その為のケイゴさんを護る盾としてカグラヅキを用いるのか・・・。

 

「大将はその時どうするのです?」

「ふっ。年寄りのやるべき事など決まっている」

「大将? それって・・・」

 

どういう意味ですか?

 

「若者は先を見る。老いた者はその道を指し示す。それが自然の理なのだよ」

 

・・・何を考えているか分からなかった。

今聞かないと何か大きな事を見逃してしまうのではないか・・・。

そう思うも、とてもじゃないが追求させてくれる雰囲気ではない。

何もなければいいけど・・・そう不安に駆られながら今回の会談は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

「ん? 招待状?」

「どうしたの? コウキ君」

「総会だそうです、火星再生機構の」

 

 

 

 

 

「皆様、本日はお忙しい中、お越しくださりましてありがとうございます」

 

名も知らないミルキーウェイ会長の挨拶。

アキトさん達三人はその隣で待機していた。

 

「どうやら資産提供をした者の集まりみたいね」

「ええ。後々の契約内容の確認といった所でしょうか」

 

スーツ姿と同じくスーツ姿のミナトさん。

一応、秘書としてミナトさんには付いて来て貰った。

こういう企業関係の知識はまるで皆無ですからね、僕。

 

「あそこにいるのは広告会社の社長さんね」

「お知り合いですか?」

「前の会社で付き合いがあったの」

 

ほへぇ~。ここにいる誰もがどこかしらの社長さんやら会長さんですか。

 

「何人か、ビックネームも来ているわね」

「・・・誰ですか?」

「たとえば、あの人ね」

 

ミナトさんが視線である人物を指す。

 

「ネルガルの社長よ」

 

ネルガルの社長? アカツキと争っているっていうあの社長?

 

「後は建築業界の業界二位の社長、運送業界の業界三位の副社長とかとか」

 

随分と分かり易い人選な事で。

確かに再生には必要な業界の人だ。

 

「しっかし、結構多くの資産提供者がいるんですね」

 

見回せば結構の数の人達。

これらの皆全てから資金提供を受けている訳だ。

 

「資金はあればある程良いもの」

「確かにそうですけど、多過ぎても混乱するのでは?」

「その辺りをしっかり管理するのが火星再生機構の仕事な訳でしょ?」

「まぁ、そうなんですけどね」

 

全員が全員、再生機構に従うとも思えないし。

どこかしら、必ず影でこそこそ動くんだろうな。

・・・特に大企業が怖い。

 

「一体どれくらいの資金が集まったのかしら?」

「分かりませんが、それ程多くないかもしれませんよ」

「どうして?」

「恐らくですが、どの企業からも一定の金額しかもらってないと思います」

「それまたどうして?」

「多い少ないで優遇、不遇が出来ちゃいますからね。全員が対等である事が計画の前提です」

「でも、地球内での上下関係は出来ちゃっている訳でしょ?」

「火星内では出来ていません。火星では全て公平に扱うと思います」

「それでも、逆らえば地球内での権力で潰されちゃうんじゃない?」

「そうなったら、火星に完全に移動しちゃえばいいんです。片手間に火星で活動している企業に火星だけに力を注ぐ企業が負ける訳がありませんから」

「随分と思い切った行動ね、それ」

「ここにいる中小企業は命を賭けていると思いますよ。懸命に働いてくれる筈です」

「そんな彼らにも大企業と同じだけの権限を与える為に同じ金額って事?」

「ええ。だから、割と低い次元で金額を決めていると思います」

「そうしなくちゃ払えないものね」

「まぁ、あまりにも低過ぎても意味がないので、その辺りは色々と考えているかと」

 

活動できなくちゃ意味がないからな。

それに、大した金額も貰ってないのに権限は与えられない。

うん。この辺りの見極めは難しいだろうな。

誰か経営、経済のスペシャリストをゲットしてくれ、アキトさん。

 

「懐の痛み具合を考えれば頑張らざるを得ないって訳ね」

「ええ。大企業は大して痛まなくても中小企業は普通に痛む。懐を痛めた企業と痛めていない企業。どちらが頑張るかなんて分かりきっているでしょう?」

「でも、中小企業にはない資産力や人材力が大企業にはあるわよ」

「それはもちろんですが、地球と同じで成功するとは限らないですし」

「それはそうだけど・・・」

「それに、俺達が考えても仕方ないと思いますよ。頑張るのは企業の方々ですから」

「ま、それもそうね」

 

それをコントロールするのが火星再生機構のお仕事という訳だ。

 

「先日、ミスマル総司令官が告げた遺跡の件ですが・・・」

 

遺跡・・・ねぇ。

 

「ここに参加している企業は遺跡目当てが多いのかしら?」

「どうでしょう? 案外少ないかもしれませんよ」

「火星再生の利益にのみ注目しているって事?」

「ええ。遺跡の技術を解析するだけでもかなりの金額が必要になるでしょうし」

 

そもそも、今まで存在すらも知らなかった遺跡だ。

それがどれだけ利益を生み出すかも分からないだろう。

 

「恐らく、それぞれの企業から各方面の研究者を派遣する事で解決すると思いますよ」

「どこの企業にも参加させ、平等に扱う為ね」

「ええ。自分達から拒否した企業には参加させないでしょうが」

「でも、それじゃあ、その派遣された技術者の能力次第で上下関係が出来るんじゃない?」

「そればかりは企業の努力ですから」

「それもそうね」

「それに、研究の代表には再生機構の人間を据えるでしょうから大した差は生じませんよ」

「そんな人材が火星再生機構にいるの?」

「スカウトです。ネルガルから、いや、正しく言えばナデシコからですね」

「それって、もしかして・・・」

「ええ。イネスさん。彼女に遺跡研究の代表者を務めてもらうと思います」

 

能力的にこの人以上の候補はいないだろう。

アキトさんにとっても信頼できる人だし。

 

「彼女の下にそれぞれの企業から派遣された研究者を配属。これが遺跡関係の結論だと思います」

「なるほどね」

「まぁ、予測でしかないんですけどね」

 

俺の勝手な考えだし、確実にこれだと言い切れる訳でもない。

まぁ、多分、方向性的にこんな形だとは思うけど・・・。

 

「それぞれの企業から研究者を派遣して頂く事で遺跡に関わってもらおうと考えています。成果を出せば出す程、その企業にとっても有益ですので、是非とも皆様方には参加して頂きたい。なお、研究所の代表はこちらから派遣いたしますので、最初はどの企業も公平だと約束できます。その後は研究者次第ですので、優秀で信頼できる研究者の派遣をお考え下さい。最後になりましたが、私共は徹底して清廉潔白を貫こうと考えております。派遣された研究者が汚職をしたならば、企業ごと追放致しますので、ご了承ください」

 

最後に脅しも付けましたか。

まぁ、再生というお金も時間も掛かるもので汚職なんてされた日には処刑もんだよな。

 

「コウキ君の言った通りみたいね」

「まぁ、言い回しは違いましたけどね」

「企業の協力を煽る口調だっただけよ。システムは同じだわ」

 

要するにイネス女史の下で公平に各企業が働く仕組みな訳だ。

イネス女史は知的好奇心を満たしてあげれば汚職なんて考えもしないだろうし。

むしろ、研究の邪魔になるような要因は率先して排除すると思う。

身も心も研究者ですからね。イネス女史。

 

「それでは、本日はありがとうございました。この後は皆様方との親睦を深める為に、懇親会の御用意をさせて頂きましたのでどうぞご参加下さい」

 

これも招待状通りですか。

 

「それじゃあ行きますか。ミナトさん」

「ええ。ドレスも持ってきたし。コウキ君も着替えなくちゃね」

「何度も言いますけど、俺にああいう服は似合いませんよ」

 

高級感溢れまくるスーツなんて。

今着ているちょっとした高級なスーツですら気後れしているのに・・・。

アレですか? 胸にバラでも挟めばいいんですか? あれ? これって偏見?

 

「いいのよ。ああいうのが似合わないからこそコウキ君なんだもの」

「褒められているのか、貶されているのか、悩む所ですね」

「もちろん、褒めているに決まってるじゃない」

「・・・複雑な気分です」

 

こういうお偉いさんが集まるような所は正直言って居心地が悪い。

一般人丸出しで恥とか掻きそうだし。

笑わすのは好きなんだけど、笑われるのは嫌いだ。

ま、不慣れなのは自覚しているし、精々恥を掻かないように頑張るとして・・・。

 

「もっと大きな問題がある」

 

別に自身が恥を掻くぐらいなら問題ない。

俺が我慢すればいいだけだから。

でも、ミナトさんに恥を掻かせる訳にはいくまい。

ミナトさんは今でも綺麗だけど、着飾るともっと綺麗。

本当に大人の女って感じでカッコイイ。

そんな方を僕は秘書として付き従わせる訳ですよ? 恐れ多いじゃないですか。

ミナトさんならパーティー会場の華になれちゃうっていうのに。

そんなミナトさんの前を俺は歩く訳だ。

俺の評価がそのままミナトさんにまで影響しかねない。

ミナトさんに恥を掻かせないようシャキッとしなければな、シャキッと。

・・・あれ? 結局、どっちも俺が頑張るって結論?

あぁ、いいさ、やってやる。完璧に紳士をこなしてやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

・・・駄目でした。

 

「どう? 似合う?」

 

もちろん、後光すら見えます。

 

「返事は? コウキ君」

 

いや。ちょっとボーっとしちゃって・・・。

 

「もう、お~い、コウキ君」

「あ、はい」

 

おっと、あまりの美しさに固まってしまった。

 

「どうかしら?」

 

以前、艦長コンテストで見た漆黒のドレス。

あれも妖艶さと綺麗さでボーっとしたのを覚えている。

でも、今回はもっと綺麗だな。

 

「凄く綺麗です」

「ふふっ。ありがとう」

 

笑うミナトさんを見ているとドキッとする。

それ程、彼女の姿は輝いていた。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「はい」

 

淑女をエスコートする紳士を精一杯演じる。

秘書をエスコートするのはおかしいって?

分かってないな。ミナトさんは既に主役だっての。

 

「・・・・・・」

 

登場した俺とミナトさんの姿を見て固まる一同。

ま、十中八九、ミナトさんを見てだろうな。

俺を見て固まる事なんて顔に何か付いているぐらいのもんだ。

 

「注目の的ですね」

「妬いてくれる?」

「ええ。嫉妬で狂いそうです」

「ふふっ」

「でも、どこか優越感も感じます」

「私の恋人だから?」

「ええ。美人過ぎる恋人を持って幸せですね」

「当然」

 

皆の視線を集めるミナトさん。

そんなミナトさんが自分の恋人だなんて信じられないくらいだ。

でも、確かに俺の大事な恋人で将来に渡るパートナー。

今更ながら、大きな喜びが湧いてきた。

こんなにも輝いている女性をエスコートできて光栄ですよ。ミナトさん。

 

「お久しぶりです。アキトさん。ルリちゃん。セレスちゃん」

「久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「久しぶり」

「私もいるわよ」

「凄く綺麗です。ミナトさん」

「輝いている」

「ふふっ。ありがとう。ルリルリ。ラピラピ」

 

誰がどう見ても輝いているよな、やっぱり。

 

「ルリちゃんもラピスも負けてないさ」

「・・・アキトさん」

「・・・アキト」

 

もしかして、ちょっとお酒が入っていますか? アキトさん。

いつものアキトさんらしくない台詞。

少女二人も恥ずかしそうに照れちゃっています。

 

「一つ質問していいですか?」

「いいぞ。何だ?」

「・・・そちらのお方は?」

 

アキトさん達の隣には威厳のある男性。

さっきからずっと気になっていたんだよね。

 

「ああ。紹介がまだだったな。こちらは火星再生機構の副社長を務める」

「神谷と申します」

 

神谷さんですか。

 

「よろしく御願いします」

「こちらこそ」

 

ガッチリと握手。

 

「そして、ネルガルの元専務でもある」

 

えっと、ネルガル・・・ですか?

 

「アカツキがよければ使ってくれ、とな。ただ、これはネルガルの意向というよりは本人の希望だそうだ」

 

あのアカツキがねぇ・・・。

裏がありそうだけど・・・協力するって言っていたし。

なんか癪だけど、信用しようと思う、癪だけど。

 

「失礼ですけども、理由をお聞きしても?」

「ええ。もちろんです。火星再生機構と縁が深い貴方とも是非友好的な関係を築きたい」

 

いえいえ。私はそんな立派な人間ではないですよ。

ただ代表の友人というだけです。

 

「私は以前火星支社に勤務しておりました」

「火星支社に、ですか?」

「ええ。火星支社の専務として本社より派遣されましてね」

「何年程?」

「かれこれ十数年は」

 

そんなに長い間火星で生活を。

それなら愛着も湧くか。

 

「ちょっとした左遷でしたが、火星での生活は充実していましたよ。懸命に働き、最終的には支社のNO.2にまで登り詰める事ができましたから」

 

それは凄いな。支社のNO.2が本社のどれくらいみ相当するかは知らないけど。

 

「その後、火星大戦の一年前程ですね、功績が認められ、本社へと戻ってきました」

「それでは、火星大戦は経験していないんですね?」

「ええ。運良く。ですが、娘や息子の友人が亡くなり、やるせない思いでした」

 

そうだよな。本社に戻ろうとそれまで生活してきた跡は消える訳ではない。

彼にとって気の置けない友人だっていたかもしれないんだ。

第二の故郷だと思える程の年月だっただろうし、悲しいに決まっている。

 

「その後はネルガルの会長派として活動してきた私ですが」

 

え? 会長派? 社長派ではなく?

 

「この度、ご縁があり、こうして組織の一員として迎え入れて頂いたという訳です」

「アカツキからミルキーウェイの事は伝えられたんですか?」

「ええ。ですが、私は会長から言われなくてもこちらに来るつもりでした」

「アポを取り終えた後、こちらから赴こうと思っていたのだが、その前に火星を再生したいという思いでミルキーウェイまで来てくれた。彼自身の能力の高さもあり、将来的にも俺の片腕として働いてもらう予定だ」

 

どうやらアキトさんは強い味方を手に入れたようだぞ。

大企業の重役だった神谷さんなら経営手腕にも優れている筈。

既に右腕候補として信用もされているみたいだし、これは期待できる。

・・・ネルガルに深い人脈を持つ人間が機構の重役にいるのは、なんかこう、アカツキにしてやられた気分になるが、

 

「火星再生に向けて全力を尽くす所存です」

「よろしく御願いします」

 

筆頭株主らしいので、一応、火星再生機構の一員として頭を下げる。

よろしく御願いします、頼りにしていますという想いを込めて。

 

「私達も火星再生の折りには全力で協力させて頂きます」

「ありがとうございます」

 

これまた頭を下げる。

大事ですよね、お辞儀って。

 

「しかし、お美しいですな」

「ありがとうございます」

 

綺麗過ぎるお辞儀を見せて頂きました。

というか、話題の展開が早過ぎです、社長。

 

「この方は?」

「私の秘書です」

「羨ましいですな。これ程お美しい方は中々いない」

「自慢の秘書です。容姿のみではなく、秘書としても優れていますから」

「ますますもって羨ましい」

 

そして、自慢の恋人です。

 

「それでは、そろそろ私は失礼します」

 

そう言って去っていくネルガル社長。

出来れば、良い関係を築きたいものだ。

 

「私は他の方々を回ってきます」

「ああ。頼む」

 

近くの企業関係者に話しかけにいった神谷さん。

役職としてはアキトさんの方が下である筈。

でも、態度的にはアキトさんの方が上のようだ。

そもそも・・・。

 

「アキトさんってミルキーウェイでどんな役職をしているんですか?」

 

会長と社長には火星の生き残りの方に就任してもらったんだろう?

そして、副社長には先程までいた神谷さん。

そうなると、アキトさん達は一体何の役職なのさ?

 

「俺は会長秘書だ」

「私達は社長秘書です」

「実質的にはアキトが会長だけど」

 

まぁ、アキトさん達は軍からの出向という形だから代表者になれないのは仕方がない。

実質的に会長として活動しているのなら別に問題ないだろう。

 

「さて、せっかくだから懇親会を楽しんでくれ」

「正直、一般人の俺には居心地が悪いんですけどね」

「ハハハ。それは俺も変わらん。やはりこういう場は俺に相応しくない」

 

苦笑する俺とアキトさん。

お互いに堅苦しいのは嫌だって事だろう。

 

「ミナトさんは流石ですね」

「ルリルリもラピラピも落ち着いていて様になっているわよ」

「私はこう見えてもお姫様ですから」

「夢見る女はパーティーに憧れる」

「ふふっ。そうね。私も憧れるわ」

 

・・・相変わらず女性陣は能力が高い。

こんな場面でも変わらず落ち着いていられる。

 

「とりあえず俺は引き立て役にでもなっておきます」

「それがいい。それが無難だ」

「男って何なんでしょう?」

「女にしがみ付かないと生きていけない弱い存在さ」

「・・・アハハ」

「笑うなよ。悲しくなるだろう」

「アキトさんも引き立て役。頑張ってください」

「一応、主役の筈なんだがな」

「マジで言っています?」

「・・・すまん。自覚が足りなかった」

 

この後はミナトさんの引き立て役となりつつ企業の方々と色々話した。

一応、面識を持っておいてもらうのは後々の為になるだろうし。

そして、毎度の如く、ミナトさんの評価を聞かされる俺。

まぁ、そのお陰で話のきっかけを作れたりした訳だが。

眼の前に男がいるのに口説くのってどうよ?

何が、美しいお嬢さん。お一人ですか? だ。

俺がここにいるだろうが!

お前の視覚は女性しか映さないのかっての!

とまぁ、俺は一人で青筋を浮かべていた訳だが・・・。

冷静にかわしていく様は流石としか言いようがなく・・・。

 

「後で、夜にでも相手してあげるから」

 

なんて言われれば俺もすんなり落ち着く訳で。

案外、俺も単純だなと自分に呆れつつ、懇親会を過ごしていった。

 

「懇親会も悪くないな」

 

意外な大きい収穫もあり、一夜を終えて、そう評価する俺だった。

 

 

 

 

 


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