機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記   作:ハインツ

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決意の演説

 

 

 

 

 

『私は多くの犠牲の上に成り立っています』

 

それがミスマル・ユリカ。

我らが艦長の代表就任挨拶の最初の言葉だった。

 

『そして、皆さんも多くの人の犠牲の上で成り立っているのです。今、私がこうして話している間にも、何人もの兵士が命を散らしています。たかが一人の死。されど一人の死です。これまでにどれだけの人の命が失われ、積み重なっているのか? 皆さんは考えた事があるでしょうか? 多くの若い命が失われ、その夢ある未来を潰された。多くの老いた命が失われ、その偉大な軌跡を踏み躙られた。命は数ではありません。ですが、あえて数えましょう。これまでこの戦争で失われた命は・・・』

 

ユリカ嬢の口から告げられる莫大な数。

地球の人口の何%かって? そんなものを計算して何になる。

数でも確率でもない。その死、一つ一つに意味がある。

命は未来へ繋がるバトン。

そのバトンを落とし、次に繋げられない事がどれだけ無念な事か。

過去、今、未来。その軌跡を描けない事がどれだけ悔しい事か。

 

『彼らの死は無駄なのか? 無駄である筈がありません。彼らは私達に教えてくれた。死を持って教えてくれたのです。この戦争はどこまでも愚かなものでしかないと。過去の地球が木連に対して行った非道な仕打ち。木連が火星を含めた地球に対して行った非道な仕打ち。双方友に反省し謝罪するべき所がある。それなのに、何故、互いに戦おうとするのか? 自らの罪に眼を背け、相手の罪だけ相手に突き付ける。その結果が戦争です。地球も木連もただただ愚かだとは思いませんか。私達には自らの罪を認め、相手の罪をも飲み込む必要があるのではないでしょうか。ただ、勘違いはしないでください。これは決して、水に流せといっている訳ではありません。ですが、何故こうなってしまったのか、それを考えるだけでも大きな進歩だと思うのです。家族を、友人を、大切な人を失ってしまった方々。憎しみを覚えたでしょう、恨みを抱いたでしょう。分かります、そう言いたいですが、その者の思いはその者の思いにしか分からない。だから、私も私だけの思いを伝えたいと思います。私は父を銃で撃たれました。現在も集中医療室で意識を取り戻す事なく眠っています。私にとって唯一無二の父。私の愛するお父様。正直に言いましょう。私は父をこんな眼に合わせたものを許せません』

 

世界単位で流される艦長の就任挨拶映像。

和平派のトップである父を撃たれての悲劇の就任に世界中の関心が集まっていた。

 

『ですが、私が言いたい事と皆様の考えている事は恐らく異なると思います。私が許せないのはお父様を撃った木連ではありません。木連を撃たざるを得ない状況まで追い込んでしまった彼らとの関係が許せないのです』

 

就任挨拶の会場は連合宇宙軍総本部にある会見用の部屋。

以前、ミスマル司令は街の中で演説を行い、暗殺されかけた。

だが、ここでは不可能と言い切れる。

街の中での暗殺では不意を突かれたという言い訳ができよう。

でも、ここで暗殺されるのは連合軍全ての威信に関わる。

どれだけ忌わしくとも連合軍の面子に関わってきたら、暗殺に手を貸す事などできない。

ましてや、自分達で暗殺など考えようともしないだろう。

この会場をセッティングしてくれたのはムネタケ元総参謀長。

彼の軍人としての最後の仕事がこれだった。

彼女の横には地球の英雄であるアキトさんの姿もある。

これによって改革和平派の一員にはあの英雄もいるんだぞという事を知らしめているのだ。

国民の支持率はこれで更に上がるだろう。それ程、アキトさんの知名度は高い。

 

『どうして父が殺されかけたのか? それは和平を成し遂げようとする父を邪魔だと思う者がいるから。何故、和平を成し遂げようとするのが邪魔なのか? 先祖の恨みを返したい。地球への恨みを返したい。そう願うから。何故、恨みを返したいのか? それは地球の仕打ちが許せないから、憎くて憎くて仕方ないから。何故、私達は恨まれているのか? それはたった一つのシンプルな答え。きちんと向き合っていないから。何故、過去の過失に頭を下げられないのか? ・・・これが私には分かりません。謝罪とはそれ程難しい事なのでしょうか? 親はまず子に謝る事を教えます。それはこれから幾つもの罪を抱えていくからです。間違った事をしてしまったのなら、きちんと相手に謝りなさい。生まれてすぐに親から習う事をどうして私達は行えないのでしょう』

 

きちんと向き合い、謝罪する。

たったそれだけで防げたかもしれないこの戦争。

そのちっぽけな虚栄心でどれだけの命が散ったのか。

 

『私の父は全てを曝け出しました。連合軍の罪、連合政府の罪。ですが、一つだけ、たった一つだけ、皆様方に伝えてない事があります。それは暴動を恐れた連合軍、連合政府に口止めされ、止むを得ず諦めた真実。それをこれから私は皆様に伝えます。殺されてもいい。地球に居場所を失っても構わない。それでも、私は父の意思を継ぎ、どこまでも真っ直ぐ皆様と向き合っていきたいと思います』

『会見を止めろ! 早く!』

『殺したければ殺しなさい! 私の死で誰もが貴方達の罪を理解する! 私が死のうとこの事実は絶対に公表しされるでしょう! 私の後を引き継いでくれた者によって!』

 

ユリカ嬢の発言に騒々しくなる会見会場。

必死に止めようと壇上に走る者をユリカ嬢が一喝する。

 

『こ、小娘が!』

『この者を外に連れ出しなさい。今の私の相手は貴方じゃありません。国民の方々です!』

『き、貴様! 上官に向かってなんて口を』

『上官よりも国民の方々の方が何倍も偉い。私は真実を告げる義務があります!』

『クッ! 離せ! 離せ!』

 

暴れる者を外へと連れ出していくSP達。

この映像が世界に流れる事を知っているのだろうか?

なんたる醜態。無様の一言に尽きる。

 

『反対する方は出て行きなさい! 真実を隠す事に正義はない!』

『よく考えたまえ! それを言って暴動が起きたらどうするつもりなのだね!?』

『それが私達連合軍、連合政府が背負うべき罪です』

 

・・・どこまでも凛々しい姿だった。

罪を罪と認め、背負う覚悟がある。

その姿は圧倒的なカリスマ性と相俟って、この人に付いていこう、この人に付いて行けば大丈夫だ、そう思わせてくれた。

 

「しかし、万が一にでも暴動が起きれば・・・」

 

余計に悲しむ者が出てくるよな。

まぁ、だからこそ、こうして俺が、俺達が各地に散らばっている訳だが。

 

『皆様は火星大戦が戦争の始まりだと知らされているでしょう。木連の突撃の襲撃。逃げ延びた軍人によって木星蜥蜴の存在を知らされたと』

 

それが一般的な戦争の始まり。

でも、この戦争にはその前がある。

 

『ですが、それは事実ではありますが、真実ではありません。地球と木連との最初の接触は火星大戦よりずっと前にありました。この戦争の全ての始まりは木連から送られてきた和平の使者を地球が暗殺した事にあります』

『なッ!』

 

会見会場にいる真実を知らない報道者が驚きの声をあげる。

きっと世界中でこの報道者と同じ言葉を発している事だろう。

驚愕、唖然、困惑。

この言葉には世界中を混乱させるだけの意味が含まれていた。

 

『御願いです。どうか最後まで私の話を聞いて下さい』

 

その言葉で騒がしかった会見会場が静まる。

 

『この話を聞き終えた後、皆様方が何を思い、何を考えるか。恐らく、政府の人間や私達軍人に怒りを抱くでしょう。当然です。それ程の事を私達は行いました。罪を犯しました。 私は、いえ、私達は甘んじてその裁きを受けましょう。それが私達改革和平派の総意です。 ですから、まずは私の話を最後まで静かに聞いて欲しいのです』

 

ユリカ嬢にとってまったく関係のない話。

その時はナデシコにもいなかったし、軍人にもなってなかった。

あくまで士官学校の一生徒でしかなかった筈だ。

それなのに、連合軍全ての罪を背負おうとしている。

その小さな背中では支えきれずに押し潰されるであろう醜く重い罪を。

なんて、なんて強い人なんだろう。

 

『木連とは私達のような陸地を持たない国家です。市民船と呼ばれる巨大な宇宙船の中に住み、日々の生活を機械的に作り出した物で賄っています』

 

プラントと呼ばれる製造工場。

何を作れて、どれだけ作れて、どう作るのかは知らないが、少なくとも木連自体の資源が地球に比べて極めて乏しい事は分かる。

 

『そのような状況に追いやってしまったのは私達ですが、本題はそこではありません。彼らの求めるもの。それは安住の地。憎しみや恨みよりもまず安住の地を求めていたのです』

 

市民船での生活。プラントや輸入だけに依存する生活。

どれだけ不安な事か。どれだけ心細い事か。

すぐにでも安心できる環境に身を置きたい筈。

 

『安心できる暮らしの為に、と彼らは恨みや憎しみを抑え、過去の事は水に流すから、土地や物資を我々に分けて欲しいと地球に対して友好的な和平の使者を送ってきました』

 

恨みや憎しみを押さえ込んででも欲しかった安住の地。

どれだけ追い詰められていたかが分かる。

 

『しかし、彼らにとって予想外だった事があります。それは木連の存在を国民の誰一人知らなかった事。彼らは当然、木連の存在を誰もが知っていると思っていたのです』

 

地球政府が国民に隠し事をしている。

それが信じられなかった。

 

『地球政府は過去にあった事を知られる訳にはいかないと使者を暗殺してしまいました。国民に真実が知られてしまったら、連合軍、連合政府への信頼がなくなってしまうからと』

 

結果、余計に荒れた。

あの時、すんなり認め、謝罪していればこうも命は散らなかっただろう。

また、過去の事は過去の事と国民も妥協してくれたかもしれない。

それなのに、自己保身に走り、全てを隠そうとした為、逆に追い込まれている。

 

『全ては木連のせいだ。木連が勝手に攻めて来たからこうなった。それは間違いなのです。戦争の原因を作ったのは・・・地球の方だったのです』

 

決定的な一言。

全ての悪を木連としていた地球政府、地球連合軍との決別。

今ここに地球の悪事が完全に晒された。

 

『確かに宣戦布告もなしに火星を襲った木連は酷いやり方をしました。それは事実です。ですが、同じように地球も木連に酷い事をしています。どちらが悪? どちらが正義? この戦争に正義も悪もありません。言うなればどちらも正義であり、どちらも悪です。どちらか一方のせいではない』

 

一方の責任ではない。

ただただ責任転嫁をしていた人間を真っ向から否定した。

自分達にも責任はあるのだと。

 

『どちらも悪いのに、どうして片方が片方に対して断罪が出来るのでしょうか? どちらも悪いのに、どうして片方が片方に対して被害者になれるのでしょうか? どちらも悪いのに、どうして片方が片方に対して加害者とされるのでしょうか?』

 

何故、同じ程の罪を重ねているのに、相手の罪を重くし、自分の罪を軽くするのか。

確かに責任転嫁したがるのは人間の性だ。誰だって、自分を罪人としたくない。

だが、それを認めなければ、何も始まってはくれない。

 

『地球に住む皆様方!』

 

ユリカ嬢が声を張り上げる。

 

『木連も元をただせば同じ地球人! 何故私達は同胞の帰還を喜べないのでしょうか!?何故安住の地を求める同胞に手を差し伸ばしてあげられないのでしょうか!?』

 

同胞。ユリカ嬢が木連人を同胞と呼んだ。

 

『いつまで続ければ、人間同士の争いに満足するのですか? どこまでやれば、この争いに満足してくれるのですか? 滅ぼすまで? 滅ぼされるまで? その時、人類はどれ程残っているのでしょうか? 争いの果てに何も見えないこの戦争に、私は、私達は、貴方達は何を求めるのですか?』

 

この争いの果てに何がある?

木連を滅ぼして地球が得るものは?

誇り? 栄達? ・・・何も得られはしない。

汚点を更に汚し、真実がバレ、今度は違う争いが始まるだけだ

地球を滅ぼして木連が得るものは?

土地? 資源? ・・・何も得られはしない。

生産力も開発力もない木連が生きていける訳がない。

この争いの行き着き先は、結論、人類の滅亡でしかないのだ。

争いの果てに何も見えない。言い得て妙である。

 

『木連が同じ人類であったと知った時、なんて愚かな事をしていたんだと実感しました。そして同時に、同じ人類ならば、手を取り合う事も可能なのではないかとも思ったのです』

 

木連蜥蜴。木星からやって来た知性なき侵略者。

だから戦えた。一方的な加害者であったから。

だが、知ってしまった。一方的ではなかったと。

だから戦う意味を考えた。彼らと何故争うのか、を。

同じ人類なのにどうして戦わなくちゃいけないんですか。

以前、メグミさんが言っていた言葉だ。

地球人も木連人もそう思ってくれる人ばかりだったら争いなんて続かない。

でも、そう思わない人もいる。

自身の利権だけを考え、どうしたら自分にとって得があるかで全てを決める者。

たとえそう考えても、立場が、環境が許してくれない者。

その他様々な事情によって、この争いが終わる事はない。

それなら、誰かがその連鎖を断ち切るしかない。

己だけしか考えない者に他の事を考えさせ、立場、環境に囚われているものを解放させる。

それが改革和平派。

意識を改革し、真の和平を目指す組織だ。

 

『私の父は木連の事実を知った時、何よりも先に悔いたそうです。木連に、地球に、火星に、軍人として心から木連に謝罪したいと。だからこそ、こうして改革和平派を立ち上げました。そして、そんな父の意思に賛同する者が加わり続け、今こうして私がここに立っています。木連を憎む皆さん、地球を憎む皆さん。どうかその憎しみを堪え私達に力を貸して頂けませんか? 父が何を願い、何を思い、何を考え、この席にいたのか。私は私なりに父の事を理解しようと努めました。そうして出した結論が父の意思を継ぎ、父の願いを叶えるという事。たとえ父が殺されかけようと、いえ、殺されようと、父の思いを踏み躙る事だけはしたくありません、してはなりません。父はどんな状況でも地球と木連との和平を考えていました。今、ここで木連に恨み言を言うのは簡単です。ですが、果たしてそれは父が望んだ事でしょうか? それは果たして、亡くなった方々が望んだ事でしょうか? 私は父の意思を継ぎます。たとえ父が亡くなろうと私は父の願いを叶えてみせます。父の願い、父の想い、そして、何より私の和平への想い。父は己が死んでも和平を目指すでしょう。それが父です。そんな、父を慕う方々が父を理解していない筈がありません。 私は改革和平派の皆さんと団結し、必ずや、必ずや和平を成し遂げてみせます。だから、皆さん、どうか、どうか私達に皆様方の力を貸して頂けないでしょうか? 誤魔化しなんかじゃない。嘘偽りなんかじゃない。本物の和平の為に、貴方達の力を』

 

ただひたすら頭を下げるユリカ嬢。

その姿は代表者という言葉に相応しかった。

目的の為に思いを込めて頭を下げる。

誰にだって出来る事じゃない。

こんなに心に響く訴えは。

 

『・・・以上で、ミスマル・ユリカの改革和平派代表就任挨拶を終わります』

 

一礼し、映像が切り替わる。

本当の意味で彼女の謝罪が終わったんだ。

後は・・・俺達の仕事だな。

 

「フクベ提督」

「うむ。行こうか。頭を下げにのぉ」

 

暴動鎮圧の為の改革和平派所属員の出張。

といっても、決して武力行使ではない。

俺達の謝罪の想いを伝える為には映像の代表の謝罪だけでは伝わらない。

だから、世界中の都市部といえる場所に赴く事にしたのだ。

これはユリカ嬢が代表に就任すると派閥内で決定した際に決議を取ったもの。

何人か渋ったものの、本当の意味で国民に理解して貰う為です、というユリカ嬢の言葉に動かされた。

その説得力と何故か信じてしまう信頼感は最早代表の貫禄さえ見えていたように思える。

 

「では」

 

俺達の担当は日本のヨコハマシティ。

基本的に日本人は日本を、アジア人はアジアを担当している。

北米支部の中にも改革和平派の所属員は少数だがいるので、その者達が北米の都市部を行う予定だ。

本来であれば、世界中のあらゆる所を回りたいのだが、そうもいかない。

その為、大きなモニターがある都市部へ行き、モニターの前に飛び出して行うと決定した。

案の定、モニターの前には演説を聞いていた市民が集まっている。

 

シューーー・・・・ダンッ!

 

低空飛行で降り立つ場所を見つけ、機体を降ろす。

突然の軍所属の機体に驚き、エステバリスを見詰める国民達。

 

「どうぞ」

「うむ」

 

拡声器を手渡す。

 

「私は改革和平派所属のフクベ・ジンである」

「フクベ・ジン?」

「あのチューリップ落としの英雄か?」

「あの英雄も改革和平派の一員だったんだ」

 

フクベ提督の登場にざわめき立つ周囲。

 

「先程の代表の就任挨拶を聞いてくれただろうか?」

 

騒がしい中では言葉が聞こえない。

そう思ってくれたのか、周囲は静かに次の言葉を待っていてくれた。

 

「あれこそが私達連合軍の一番の汚点。全ての責は私達にある」

「・・・・・・」

 

責める事も慰める事もせずただただ無言を貫く国民達。

その顔はどこか無表情に見えた。

悲しむでも怒るでもなく、ただフクベ提督を見詰める。

 

「既に退役済みの私だが、元軍人として心より謝罪する」

 

拡声器を傍に置き、深く頭を下げる。

自身を取り巻く全てをかなぐり捨てて。

年齢も地位も関係なく、ただ一人の民の命を護る者としての謝罪。

 

「そして、この老いぼれに機会を頂けないだろうか?」

 

頭を上げ、再び拡声器で話し出すフクベ提督。

 

「和平を成し遂げる為には何より国民の方々の支持が必要になる。この中に知人を、家族を、木連によって失った者もいるかもしれない。だが、それでも、その怒りを抑え、どうか、どうか和平の為に力を貸して頂きたい」

 

拡声器を置き、床に膝を付くフクベ提督。

そして・・・。

 

「頼む」

 

頭を下げた。

威厳もプライドもあったものじゃない。

全ての思いを込めた土下座だった。

・・・それなのに、どうして俺が立っていられるというのだ。

 

「お願いします」

 

フクベ提督の隣まで行き、同じように土下座をする。

意地もプライドもいらない。

ただ想いを伝える為だけに、頭は下げられるものなんだ。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

周囲は静まり返っていた。

でも、それでも、俺達は頭を上げない。

想いが届くまで、いくらだって頭なんか下げてやる。

 

「・・・だ」

 

・・・え?

 

「俺は賛成だ! 俺達を見てくれる軍人を信用できない訳があるか!」

「おう! 詳しい事を何も言わずに表面だけしか教えない奴らなんて信じられるかよ!」

「国民にちゃんと向き合い、心から謝罪した!」

「事実を認め、きちんと謝罪し、国民に筋を通した!」

「そんな奴らを支持しない訳がないぜ!」

「改革和平派! 万歳!

「「「「改革和平派! 万歳!」」」」

 

パチパチパチパチパチパチ。

 

誰かの一言をきっかけに周囲が騒がしくなる。

拍手まで聞こえてきて。

 

「・・・提督」

「うむ。国民が分かってくれたんじゃ」

 

それが嬉しくて、もう一度深く頭を下げる。

信じてくれてありがとう。

その思いに俺達は全力で応えます。

 

「「ありがとうございます」」

 

最後に深く、深く頭を下げた。

 

 

俺の所だけでもなく、他の場所でも改革和平派の行動は良い方向へと転んだ。

あらゆるものを誤魔化し、騙してきた連合軍。

そんな中にも事実をきちんと認め、その上でしっかりと謝罪をする派閥もあるんだと人々は知った。

国民にとって許せない事でも、正面から謝罪されれば怒る気も失せる。

むしろ、正直に罪を認めた姿は好感を覚える。

アメリカの大統領も正直の素晴らしさをとある事で知った。

己や己の罪を誤魔化す事は己を偽る事と同じ。

自身を偽らず、ありのままの姿であった事が国民達の支持を得たのだ。

国民に対してしっかり正面から向き合う事が政府や軍にとって大切なのではないかと思う。

何も知らされていない国民。

それは根本的に間違っている。

税を払っている国民は全てを知る権利がある筈。

税を貰っている政府は全てを話す義務がある筈。

それが軍人や政府の人間としての筋を通すというものなんだと俺は思う。

今日、この日、徹底抗戦を訴えていた地球人の多くが和平を考えるようになった。

 

 

 

 

 


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