「順平。君って君が馬鹿にする奴らの次くらいには馬鹿だから」
そして、順平に触れようとした瞬間。
帳が降りる。太陽光を遮ることに特化したそれに、辺りが一気に暗くなる。
虎杖 悠仁は、声を上げた。
「俺ぇ!? しかもちょっと格好いい!?」
突如として現れたもう一人の虎杖 悠仁が真人を蹴り飛ばして順平を確保する。
「俺、双子だったっけ!?」
そして、首のあたりの服を引きちぎって舌を這わせる。
その背には黒い羽が、その口元には鋭い牙があった。
「悠仁!! こっちの世界の人にはあまり干渉しないようにしようって言っただろ」
「俺の順平に触れたんだ。消毒しないと」
「君の順平じゃないから。あと、こっちの人は眷属にしないって約束だろ」
悠仁の腕から順平を奪い取って自らの背後に突き飛ばすように開放し、ため息を吐くのは、五条 悟。
さらにその背後には、夏油 傑がいた。
「先生っ」「五条 悟!?」
「僕は君の先生ではないよ。初めまして。並行世界の虎杖 悠仁。僕は並行世界の五条 悟」
「どういう事かな?」
警戒して下がる真人。
「さとる」
「大人しくしててね。傑」
優しく夏油に話しかける五条。
「……宿儺の器? 何か妙だ」
警戒する真人。
「悠仁。一応聞くけど、君は不死族?」
「不死族って何? 吸血鬼? 先生もそうなの? 呪霊と違うの?」
「ごめんね。不死族じゃないならいいんだ。伊地知いる?」
「外で待ってる」
そう外を指差す虎杖に、羽の生えた虎杖が顔を寄せる。
「自分を食べるなんて経験、絶対味わえないと思う!」
「食うなよ」
「やめろ、何が起こるかわからん」
五条先生と宿儺が揃って止める。
「不死族? 何それ」
「吸血鬼!? まさか、吸血鬼の世界からやってきたの!?」
「あー、まあ、そうかな?」
「うわあ!」
順平は目を輝かせる。
「聞こえてたよ、順平。母ちゃん、死んじゃったんだってな。可哀想な順平」
「虎杖君……」
「大事な人って、とっても美味いのに」
「虎杖君!!」
「遺体残ってる? 今からでも食いに行こうぜ。今度はちゃんと順平のこと、吸血鬼にしてやるから」
「嫌だよ!!」
「テメェ!! 順平に近づくな!!」
「悠仁。お願いだから役目を穏便に果たすことを考えてくれ」
「順平だけ。見逃してくれれば、俺もせんせーのすること、見逃すからさ♪」
「っ」
「あっはっは! いいね、君! 並行世界の虎杖だっけ? それで吸血鬼! 人を食べるんだ?」
「人喰いってより血啜りかな? 肉も食べれねーことはねーけど、最初の一口以外は美味しくねーからさ。人1人食べるのは無理」
「ご、五条先生も吸血鬼なのか……?」
絶望した表情の虎杖は、それでも戦闘耐性を取る。
「ウッソ、負けたの? 最強の五条悟が!?」
「呪術師、お前が負けたのか」
真人と宿儺は2人で突っ込んでくる。
「せんせーのち、スッゲーおいしいんだぜ? な、せーんせ♡」
五条のところにすり寄る虎杖。エロい。
「悠仁。遊ぶな。後で僕の血飲んでもいいから」
その言葉に、虎杖は大人しく人間の姿となった。ぐいぐいと牙を押し込めて、引っ込めていく。
「行けよ、真人。虎杖 悠仁。お前はさっさと伊地知に連絡しろ」
虎杖は、ギッと睨む。
「大丈夫。悠仁。伊地知には何もしないし、呼ばなくてもいい。代わりにアポを取って欲しいだけだ」
「調べるって何を?」
「不死族を殺せる人間の所在地。名前は悠仁が知ってる。……僕は傑を人間として眠らせてやりたい」
そういって、夏油を振り返る五条。
「……その人も吸血鬼なの?」
「一緒にすんなよ。傑さんはゾンビ。ホルマリン漬けの賞味期限切れの死に損ない。それに、俺達の任務は始祖様の開放だろ。封印解除方法の捜索が先……」
「悠仁。僕だって全部どうでも良くなることはあるんだけど?」
「ごめーん。せんせ」
ぺろっと舌を出して、吸血鬼虎杖は手を合わせた。
「ふん、いいよ、今日は下がってあげる」
真人は下がり、人間の虎杖は電話をした。
「せんせー。どーせ順平が暴れたんだろ、ちょっと誤魔化してくる」
「人数多いけど」
「順平の為だもん♡」
「食うなよ」
「はーい♡」
吸血鬼虎杖は駆けていく。虎杖は電話を切り、気遣わしげに五条先生を見る。
「はあ……」
ため息をついた五条は、悠仁をジロジロ見る。
「君が生きている悠仁か。傑は死んでだいぶ経ってたし、不死族になるとどれだけ変わるのかなって思ってたけど。いや、結構違うね」
「吸血鬼と一緒にされたくないっす」
「それはそうね」
「せんせー。顔色悪い? 疲れてる?」
「まあね。少し休みたい。昼は傑も大人しいしね」
連絡を受けた七海が駆け付ける。
当然だが、高専に事情聴取を受けることとなったのだった。