「……つまり、そちらの世界の虎杖くんは吸血鬼で、吸血鬼はこの世界にも存在すると?」
七海は頭が痛そうにして問いかけてくる。
「さあ? この世界がどれだけ同一性があるかはわからないしね。むしろ悠仁が吸血鬼じゃなかった事にびっくりかな」
伊地知が買ったスポーツドリンクを飲み干しながら、五条は答えた。
「俺としては、吸血鬼にならない分岐点はたくさんあったからあんまり意外でもねーけど。なー、伊地知さん」
そう言いながら、改造人間を爪で傷つけ、滴る血を行儀悪く口で受け止めて飲む。
「ひぃっ」
「……オカルト研究部で吸血鬼を突き止めちゃったのが原因って言ってたけ」
「そー」
「それ、先輩無事だったの?」
「おう。無事、三人とも不死族になれた」
「致命傷じゃん」
「それは無事ではないでしょう……」
人間虎杖と七海がげんなりした顔をする。
疲れた様子でうとうとし始めた五条。
「……五条さんがここまで参っている姿は初めて見ました」
「こ、この世界には何故?」
「んー。俺達の王様、始祖様が呪術師解放戦線に封印されちゃってさ。解除方法を探しにきた。五条先生に来てもらったのは、呪術師に顔聞くかなって」
「……今の言葉で色々わかりました。お帰りください」
「ご、五条さんが負けたんですか!?」
「いや? だって俺ら平和好きだし」
「周囲全部落として人質とって脅迫しつつ取引するのを平和主義というのは初耳だな」
「宿儺、これやるから黙ってて」
吸血鬼虎杖の頬から口が現れ、宿儺が言う。
ちぎった改造人間の肉を押し込み、吸血鬼虎杖は宿儺を宥めた。
「ひぃっ」
「そこまで聞いて従うと?」
「俺が原因なら、俺が五条先生を助けないと」
「吸血鬼がこの世界に……」
「とにかく五条さんを呼びましょう! 俺らには荷が重いっすよ!」
「やるな、小僧。いや、やったのは始祖様とやらか」
「んー、俺、こっちの始祖様に直に命令されたら、従っちゃうかもだけど。そうでなかったら、俺の始祖様でなければ比較的どうでも良いんだよな。だから、五条先生がこっちの始祖様に勝つ為に情報リークしようが、五条先生の人質のゾンビ一体処分しようが、見ないふりしてもいいんだよな。目的を果たせればだけど。ナナミンだって、並行世界なんざどうでもいいだろ?」
「なるほど。確かに貴方は吸血鬼で、虎杖くんとは別人のようだ」
そこに、五条が駆けつけた。
「並行世界の僕が現れたって……マジか。マジかー」
「ついでに、並行世界の呪術界も陥落しているようです」
「それで、悠仁と傑と一緒に救援要請に来たの?」
「いえ。虎杖くんは吸血鬼で、五条さんは捕虜なようです。向こうの呪術師解放戦線が始祖を封印したので開放を手伝えと」
「は? そんなの聞くわけないじゃん。というか、僕が悠仁に負けた? 嘘でしょ? というか吸血鬼ってマジで?」
「今の悠仁、かなり力をセーブしてるからね。殺されても良いと思う程度には悠仁の魅了は強いよ。匂いを嗅がなければかなり防げるけど」
起きた五条が告げる。
「正直、呪術界が落ちたのは油断かな。呪力がない事を馬鹿にして、呪力以外の力がある事を認めなかった。今、吸血鬼がまだ入り込んでないなら、後は対吸血鬼の力を持つものを保護さえできれば、ほぼ負けはないかな。こっちの世界の野薔薇に不死族について知らないか聞いてみて。少なくとも僕の世界では、不死族と知り合いだったから。始祖と対吸血鬼の力を持つ者に関しては、悠仁に聞いて。僕は情報を貰ってない」
「ふぅん。教えて悠仁」
「獄門彊開ける道具貸してくれたらなんでも話すよ」
「悠仁との交渉前に。僕の封印用を急遽始祖に回したって呪術師解放戦線のトップが言ってたからよく考えた方がいい。対不死族の準備を終えるまでは悠仁と明確に敵対しない方が良いかな。魅了と霧化はかなり厄介だし、もう死んでるから尋問も手が掛かる。秘匿死刑もそもそも不死族を殺せる人を探す所から始めないとだし、呪術師解放戦線、元は東京を壊滅させる計画を立ててたみたいだし、この詳細も悠仁が知ってるから」
「もうっ どっちの味方なんだよ、五条せんせーっ!」
「人間の味方に決まってんだろ」
「嘘だろ。まだ人間のつもり? いつまでがんばんの?」
「ずっとだよ。僕最強だもん」
2人の間に横たわるピリピリとした空気が大変に胃に悪い。
「とはいえ、吸血鬼がこの世界にいるとは限らないのでしょう? 実在が確認されてから対応を考えたいと思いますので、確実にいるかどうかわかるというものはありますか。釘崎くんが知らないこともありえます」
「それは確かに。現在過去において、四辻学園が存在してればいる。いなければないと思って良いんじゃないかな」
七海、五条、伊地知は検索する。
「20年前にそういう学校は存在していたようだね」
「じゃいるな。どうする?」
「少し考えさせてよ。君らは呪専でひとまず預かるからさ。輸血パックもあげるよ。ただ、隔離はさせてね」
「んー。血液貰えるならいいや! ついてく」
「にしても、荷物多いよね。そのトランク、中身は何?」
「ゾンビの拘束具。夜になると、人を襲うから」
「……一応、君らも夜は拘束させてもらおうか」
「俺、霧化使えるし、もうちょっと理性あるんだけど。安心するならそうしてもいいよ」
「そうして」
こうして、彼らは呪専に隔離された。
呪専は、荒れた。