四辻学園は崩壊していた。その上、行方不明者が大量に出ていた。
なぜ、今まで発覚しなかったか不思議なくらいである。
明るい教室の中、三人は拘束されていた。
なお、封印の部屋ではないのは、並行世界の五条に太陽のない閉じた場所に連れて行くのは自殺行為だからとアドバイスをもらった為である。親切だ。
麗かな秋晴れの太陽の光が三人を照らす。
「で、傑はどうしてゾンビになっちゃったの」
「百鬼夜行後、死体が脳を乗り換えるタイプの呪詛師に盗まれたらしくて」
「は?」
「呪詛師と戦っている時、色々あって、僕にもイビル・ジーンが打ち込まれて。後は、僕の手でイビル・ジーンを打ち込まされて」
「は?」
「死体はイビル・ジーンに感染させてもゾンビにしかならねーからな。しかも歳くってるし」
「今のところ、人喰いにならずに済んでるのは弱らせたイビル・ジーンを打ち込んだ僕と適正のある高校生だけかな。若さと強さと柔軟さを併せ持つから、らしい」
「俺の順平もキャリアだったんだ! ギリギリだったし、同族になるかなーと思ったけど、絶対お袋さんを食いたくないって頑張ってさ。さすが俺が選んだだけはあるよな! 死んだから食っちゃったけど」
資料を見ていた五条 悟は頭を押さえる。
「少し疑問なんだけど、随分口が軽いよね。吸血鬼は縛りを結ばせなかったの?」
「彼らは呪術師じゃないからね。縛りなんて知らないし、多分出来ないし、気にもしないと思うよ? 多分、現時点は術師の不死族はいないんじゃないかな? 元が海外から入ってきた者で、数も極小。同じく希少な呪術師と被ることはなかったんだよ。長生きしていた先代始祖はどうかわからないけれど、最近代替わりした者達は呪術師の存在すら知らなかった。呪術師側がどうだったかは言わなくてもわかるよな? 本来、ニアミスすらせず互いに知らないままノスフェラトゥは滅びるはずだった。でも、不幸な事故が起きて術師兼不死族が誕生した」
そして、じとっと吸血鬼の虎杖を見る。
「俺!」
「誇らしげに言わない。悠仁は、というよりオカルト研究部は、一回吸血鬼に食い殺されてるのに活動やめないで呪いに関わって宿儺の指を食った。しかも、お行儀の良いことによく噛んでイビル・ジーンをよーく感染させながらね。良くない事に、虎杖は呪詛師が作った宿儺の器の実験体でもあった」
そして、五条は項垂れた。
「僕も悪かったよ。悠仁の可笑しなところを、宿儺のせいだと勘違いしてしまったし、宿儺が抑えられているから大丈夫だと勘違いしてた。事実、悠仁は宿儺を抑えることはできてたしね。ただ、悠仁自体が吸血鬼だっただけで。六眼は呪いは見抜けても、病気は見抜けない。悠仁の匂いによる魅了の攻撃も、呪力がないからと気づけなかった。これだけされても、僕は……悠仁を心の底から憎めない。呪術師なのにね」
「下手を打ったものだね。でも、そのおかげでこっちは「事故」が起きる前に手を打てるわけだけど。イビル•ジーンって病気のカテゴリなの?」
「血液検査をすれば素人でもわかる。顕微鏡持ってくるといいよ」
「伊地知、血液検査に回して」
「はっはい」
血を採取して、血液検査に回すと、硝子は絶句した。
「何これ」
顕微鏡の中では、小さな人々が会話をしていた。
会話である。
しかも、虎杖は虎杖、夏油は夏油そっくりのウィルスであった。
なお、五条の血は五条そっくりのウィルスと虎杖そっくりのウィルスが殴り合っていた。
「ちょっと理解が追いつかないんだけど」
「多分、勝負ついたら先生も不死族になってくれるのかなって。たまに順平の血清入れて弱めてるけど」
「血清は傑の血液と一緒にしたほうがわかりやすい。僕の胸ポケットに入ってる」
言われた通りにすると、吉野が夏油を集団で囲ってキャンプファイヤーに!
「僕は、それを大規模にできる力の強いキャリアを探している。傑と……最悪の場合は僕も火葬する為に」
「呪力が呪力でしか消せないように、イビル・ジーンはイビル・ジーンじゃないと殺せないってこと?」
「呪力ほど絶対じゃねーけど、火葬しても土に埋めてもバラバラにしても死ねないかな」
そして、虎杖は笑った。
「なーなー。それなりに役立っただろ、情報」
「そうだね」
「じゃあ、始祖様解放する為の道具かして! できれば頂戴! 呪具だから俺らわかんねーんだよ」
「うーん、すっごくざっくりした交渉だね。始祖様解放したら、吸血鬼が支配するとか?」
「いや? 俺らはただ普通に人間を食べつつ存在したいだけ。餌は向こうから来るし、支配なんて面倒なことしねーよ。イビル・ジーンは感染と変異を繰り返すたび、劣化して最後にはキャリア……俺ら自身を殺す毒となる。俺が宿儺を食べなければそのままゆっくり滅んでいくはずだったんだ」
「君が宿儺を食べなければ?」
「そ。弱くなる一方だったはずが、なんか俺、強くなれちゃったんだよな。始祖様にも期待されてるんだぜ。滅びるだけだったのがなんとかなるかもって。呪術師としても、宿儺に明確なキャリアの炎って弱点ができるのは良いことだし、ウィンウィンってやつだろ」
「全然ウィンウィンじゃないからね? もしかして中の宿儺も影響受けてんの?」
「そりゃ、呪霊も見える食える誘えるようになったし。なんなら感染させられるし」
「人間の食事が食べられなくなった。人の血肉しか受け入れられん」
「うわああああああああ」
「頭を抱えたいのはこちらだ馬鹿者」
「その血清で虎杖殺せねーの?」
「さすがに弱すぎるかな。火傷はするし治りがたくなるけど、もうちょっと火力が欲しい」
「悠仁のほほんとしてるけどいいの?」
「だって俺もう死んでるもん。一応抵抗はするし消滅も嫌だけど、あまり強い死への恐怖はないな。キャリアに火葬されるなんて、一番良い死に方じゃん。縛られて埋められてゆっくり腐りながら何百年も死ぬのを待つゾンビとか、想像してみろよ。ちなみに不死族はそれも無理。意識あるし腐らない」
「君らは君らで地獄だね……」
「でもまあ、支配はしねーよ。見逃すのだけお願いするかもだけど。呪術師の近くにいれば死体を手に入れるの楽そうだし、飼われても良いくらいだって始祖様言ってたし。呪霊とか呪とか表沙汰になると俺らまで警戒されるから、始祖様も呪術規定に賛成だし」
「でも君ら、本能でかいから呪術師食べないで被害者だけにするって無理だろ。それも十分アウトだけど」
「あーまあ、美味しそうだと思ったら食べちゃう。だってウィルスだし、末端になるほど思考が雑になるし」
「待って本体こっち? 顕微鏡で見るような奴の群体ってこと?」
「だからそう言ってるじゃん」
「頭が痛い……」
「胃が痛いです」
「あっ でも! ちゃーんと無理矢理子作りとかさせて数増やす計画も立ててたし! 年取ったのはゾンビとか不死族にして寿命伸ばしたし!」
「「人でなし」」
「ウィルスに期待をするな」
五条と伊地知は困った様子を見せる。
とにかく、夜蛾のぬいぐるみを見張りに、報告を行なった。
『危険だ!! 秘匿死刑をするのだ!!』
「だから根絶やしにする為にキャリアが必要だって言ってるだろ。傑も並行世界の僕も悠仁もそりゃ処分するよ? 当たり前だろ。その為にも呪力に呪力をぶつけるように、キャリアを探さないと。四辻学園に何かがあることは確実なんだから、まずはそこの調査をしないと」
『悠長な』
『全員殺してしまえ』
『20年前だぞ? どれほど散らばっているか』
「補足した端から殺したら根絶やしにする為の情報収集できないだろ。秘匿死刑はする。油断してたとはいえ並行世界での僕を含めた呪術界を陥落させる事が出来るウィルスだ、当然だろ。三人とも秘匿死刑はする。一網打尽にする為に、良い案があったら聞きたい」
『縛りをするのは駄目なのか?』
「聞いたけど、縛りは自分に課す戒め。破ろうと思えば破れる約束事でしかない。ウィルスに約束が守れるか試してみる?」
『まあ、犠牲になってるのが自分自身なのだ、他人事ではないか』
「あっ 悠仁達、一定以上の年齢の上層部はゾンビにしちゃったそうだよ。だって年寄りは子供出来ないし。あと、呪術師増やすためにブリーダー計画とか色々お節介焼いてたみたいね」
『細切れにしても駄目なのか?』
「木っ端微塵にして破片吸ったらどうなるんだろうね。僕は嫌だな。そもそも悠仁が霧になれるし、キャリアがいるなら素直にしっかりこんがり火葬したい」
そして、大規模な調査が始まった。