「課外授業の時間だよ、悠仁」
呪力操作の基礎訓練をしていると、いきなり呪霊の前に連れてこられた。火山みたいなやつ。
「そうだ、悠仁。ちょっと戦ってみる?」
「無茶言うな」
人前でどこまでやっていいか、わからないんだよな。
まあ、いざとなったら宿儺のせいにすればいいか。
俺が準備運動を始めると、先生は見学の構え。マジでか。
「せんせー。人間が一人見てるみたいなんだけど。俺、そっちの相手でも良い?」
「嘘。どのへん?」
俺が指差すと、気配が遠ざかっていった。
「お、逃げた」
先生が消える。
「え?」
と思ったら戻ってきた。花みたいな呪霊を掴んでいる。
「人間は見つけられなかったけど、呪霊はいたよ。悠仁。人間ってのは確か?」
「花御!」
火山型の呪霊が叫んで、次の瞬間景色が変わった。
「呪霊もいたけど、人間の気配も確かにしてた」
「呪霊がいたなら言おうね。しかし、そうか。悠仁。もしかして僕よりも気配読むの上手い?」
「俺、鼻がいいから。気配ってか体臭でわかる」
「……マジで? 元から? ……にしても、呪詛師と結託しているのは確かみたいだね」
その後、特級二体は荷が重いからということで、五条先生が戦った。
逃してた。
「やれやれ。悠仁。呪詛師の匂い、覚えた?」「覚えた」
「じゃあ、その匂いの人に会ったら教えて」
「了解!」
「うん、良い返事だね。中々やるじゃん、悠仁。有能有能。その調子で覚えていってね」
それにしても。
せっかくの呪霊を食べれなかったのは、残念、かな。
「悪食」
「なんだい、宿儺?」
やっべ気を抜いてた! 俺は宿儺を引っ込めて、笑って誤魔化した。
ノスフェラトゥの微笑みは、全てを誤魔化しきれるほどに美しいのだ。
次の俺の任務は、七海さんについてまわることだった。
映画館を見た後、妙な形の人間に襲われた。
「ねぇ、ナナミン。あの人間、食っていい?」
「食っていい、とは。あれは……まさか、呪霊ではなく人だとでも」
「だから言ってるじゃん。呪われたらこんなふうになるわけ?」
まっ昼間だから、あんま気が乗らないんだよな。昼の太陽の下では、俺はほとんど力を出せない。牙を出すことすら不可能だ。せめて、建物の中だったら良かったんだけど。
あの領域の中は良かった。帳も張ってあったし、昼だけど力を出せた。
「……相当なやり手のようですね。それはそれとして、食っていい? という発言は報告しておきます。生け捕りにしますよ」
「りょーかい」
今の俺の力じゃ、生け捕りがせいぜいっぽいけど。頑張るとしますかね。
改造人間? を倒した後、俺は順平から情報収集をしていた。
順平は、控えめに言って最高だった。
気弱で、何をどうしたらいいかもわからない迷える子羊。
餌にするのに相応しい、ノスフェラトゥにするのに相応しい生贄の羊。
どうしよう。俺、初めて仲間を作るなら、順平がいい。
話が弾み、俺は順平の家にお呼ばれすることに成功していた。
人間のご飯を笑顔で食べる苦痛の演技タイムが終わり、順平の部屋で二人きり。
でもなあ。せっかくだから、サプライズも成功させたい。
初めての子を作るか。サプライズを敢行するか。どっちにしようかな。
悩んでいると、順平が話しかけてくる。
「人を殺したことある?」
「うーん。まだかな。呪霊は殺ったぜ!」
そう。実はまだなのだ。俺が自分で獲物を狩ったのは、特級呪霊のアイツが初めて。
「でもいつか、悪い呪術師と戦ったりするよね。その時はどうするの?」
「……悪いって言うけど、悪い人とか、死ぬべき存在とか、そんなのあるのかな」
「あるよ!!」
「俺は、そういうの傲慢だと思うな。誰もが皆、戦って、自分の人生を勝ち取ろうとしてる。だから、俺は俺以外のやつが俺を殺してもいいよ」
「!?」
「その代わり、俺も黙って殺されることはない。それだけの話じゃないかな」
「じゃあ! それじゃあ、弱いやつはずっとやられっぱなしってこと!? 僕は……!!」
「大丈夫。順平も戦える」
そうして、順平の体を撫でる。
「!?」
「ちゃんと、体も育っているし。笑うと魅力的だし。何も問題はね―よ」
「いいい、虎杖くん?」
「電気消そっか」
「虎杖くん!?」
そうして、暗くなった瞬間、俺は翼と牙を出し、俺は順平のなめらかな項に牙を立てた。