「寒い……寒い……虎杖くん、じゅ、呪術師じゃ……」
「吸血鬼だってことは、内緒にしてくれよ? 終わったら、おふくろさんを二人で食べよう? きっと美味しい」
言いながらも、首から流れる血を味わう。
順平は、目を見開いた。
「そ、んな……! 嫌だ……!!」
「そんな気持ちもすぐなくなる」
順平の血、美味しい。
「貴様は清々しい屑だな」
「煩いな、宿儺」
牙を突き立てた時、血が全身から吹き出さなかった。やはり順平には素質があるのだ。
「な、良い事教えてやるよ。俺に噛まれたら、道は三つ。このまま死んで、ゾンビになるか。俺と同じになって人を喰うか。キャリアになって俺を殺すか。順平はどうする?」
まあ、キャリアになっても俺を殺せなければ、おふくろさんの肉をお前に食わせるけどな。フェロモンを出して甘く囁やけば、きつくきつく服を握られる。
「僕は……!! 僕は!! お願いだ、母さんには手を出さないで」
「いいぜ?【順平が望む限り、俺はお前の母親を傷つけない】」
「へ?」
「【俺の事、誰にも内緒にしてくれるなら】な。あ、お前のお友達の呪詛師と呪霊にも内緒な」
「!!」
「わかってる。俺と話している間、呪詛師の匂いがしたからな。心配すんなよ、順平。俺、吸血鬼だからさ。正義の味方の呪術師とか、その、なんだ……わかるだろ?」
「で、『縛って』くれる?」
順平が熱を出したとおふくろさんを誤魔化し、優しく看病し続けたら、キャリアになってしまった。ま、ぎりぎりイビル・ジーンに勝てた程度のキャリアなんて強くね―だろ。
それに、俺のイビル・ジーンから進化したキャリア。それだけで愛しい。
釘崎は所詮、別の系譜のイビル・ジーンだからな。
伊地知さんに迎えに来てもらった時、順平は言った。
「僕、呪霊にお願いして呪力を操作できるようにしてもらってます。全部話します。だから母を保護してください」
「「は!?」」
俺の目を見てはっきりきっぱり言った順平は、ちょっと格好良かった。
「『何を捨てても、何を利用しても、何と戦っても殺したい「悪」があります。その為に死んでも構いません』って順平が入学試験のときに言ってたけど、心当たりある?」
「さあ?」
「言われてるぞ、小僧」
「うるせ」
「悠仁が?」
「順平は俺の大事な友だちだよ」
フェロモンたっぷりに笑顔を向ければ、ごまかされてくれる。
その間に宿儺を引っ込める。この体を冒す病原菌全てが意思を持つからこそ出来ることだ。イビル・ジーン。吸血鬼のその真の姿は、病原菌である。
呪力による攻撃には敏感だけど、フェロモンには無頓着みたいで助かる。今の所は。
順平と二人きりになった時、順平は言った。
「僕は、戦うよ。虎杖くん。幸い、僕の体は『育ってる』からね。戦える」
「ああ、まあ、順平が俺に『正しい死』を与えてくれるなら、それはそれでいいよ」
そして、交流会がスタートした。
俺はその時、初めて二年生を紹介された。
狗巻 棘。美味しそうだな。
でも、やっぱり一番は。
「真希先輩! 俺、虎杖 悠仁。よろしくお願いシャース!」
「あ、ああ……。なんだよ、惚れたか?」
「ちょっと虎杖、あんた真希さんにてぇ出したらぶっ殺すからね!」
なんか真希さん、単純にすげー美味しそうなんだよな。
生命力に溢れてるっていうの? ヨダレ出そう。
「狗巻先輩もよろしくな」
「しゃけ」
「食べれないパンダ先輩はどうでもいいや」
「食べれないってなんだよ!?」
「おっと本音が。冗談だって。よろしくな♡」
「悠仁は血しか摂取できないからね」
五条先生、余計なことを。
「はあ!? お前、本当に宿儺じゃないのか? 大丈夫なのか?」
「ダイジョーブだって♡」
フェロモンを出して、のほほん空間を演出する。
「……本当に宿儺じゃないってしばって言えるか?」
そっか。パンダ先輩にはフェロモンが通じないのか。
気をつけないと駄目だな。
「……良いぜ。縛る。【俺は宿儺じゃない。本当だ。違ってたら死んだって良い】」
それで、ようやくパンダ先輩は体から力を抜いた。
「悪かったな。でも心配させるなよ? 虎杖」
「ごめんって、パンダ先輩♡」
そして、俺は五条先生の胸元に光る小瓶の気配に気づく。
「五条先生。それ、何?」
「あ、これ? 野薔薇がプレゼントしてくれたんだ。お守りだって」
「……ふーん」
野薔薇と順平とパンダは要警戒対象、と。
ちゃんと気をつけとかないとな。