The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
『もっといい書き方はないのか』と悩むスパイラルに陥ってました。
まぁそういう時は大抵それ以上の書き方は見つからない物だとさっき気づきましたので投稿します。
◆今回のスポットライトは★6狙撃の彼女です。
作者は彼女がお気に入りだったりします。
なので可愛い子には旅をさせよ、の言葉を送ります。
別衣装もいいですよね。
見れば見る程背筋が冷えるようなものがたっぷりで(震え声)
数多の神々を祀る者達を指すならば
天命を受けた者とその
神より権を賜った者達を指すならば
1096年12月月。
◆ペテルヘイム高校・第二食糧庫◆
火災の難を逃れた食糧庫。
納められている食糧はより重要性を増し、ペテルヘイム高校の生命線も同然であったはずの場所。
しかし今は高校に強制収容された貴族生徒達の支配下にあった。
庫内は校舎内から高価なものを全てかき集めて装飾を施されており、そして保管庫には他の生徒達から略奪した物資もまた数多く集められていた。
その
今日の任務は平民生徒達が命じられて物資の略奪を行っていたのだが。
「『ナターリア』様、本日の『物資徴収作戦』の『成果』についてですが……恐れながら申し上げます。その任を命じられた平民生徒の調達隊が作戦行動先で『冬将軍』と遭遇して返り討ちを受け、敗走……それまで集めていた食糧を冬将軍に強奪され、全て喪いました」
ペテルヘイム校内の中でも来賓室や校長室にある良質な家財を用いて作られた貴族用の天幕の中で、その身に纏う服の飾り一つ一つが平民の生活費に相当しそうなほど華美な衣装を纏った貴族の男子生徒が、今日の『結果』に関する報告をその場にいる貴族生徒達に行っている。
その報告の中心には、少し前にソニア達を襲撃して返り討ちに遭った平民の生徒達が身を縮こませて凍えるような石の床に伏せていた。
平民生徒達五人は最低限の手当てを受けた後休む間すら与えられずにこの場に連行されており、冬の空気に冷やされた床に座らされて尚、傷のじくじくとした熱のような痛みに襲われている。
しかし今の彼らは、床の冷たさよりも、傷の痛みよりも、首筋にかからんとする断罪の刃を避けようとするかの如く地に伏して心胆を震えさせていた。
無理もない。
これは報告会というより弾劾裁判も同然の代物だからだ。
報告会に出席する貴族生徒の関心は、喪った食糧もさることながら醜態を晒した平民生徒がどのような処刑宣告が言い渡されるのかのほうが大きく、最早貴族生徒にとっての見世物であると言っても過言ではなかった。
そしてその裁判の決断を下すのは天幕の奥に座る最も高位の貴族である女生徒で、彼女がどのような沙汰を下すのかを貴族生徒達は注目していた。
「貴族の下したる使命を全うすること能わず、それどころか物資を奪われ逃げ帰ってきたこの不忠者達には直ちに罰を与えて綱紀の粛正を図る必要があるものと思われます」
「ナターリア様、私にお命じ下さい!平民共がこれ以上つけ上がることのないよう、目に見えた厳罰を施してみせましょう!」
貴族生徒から飛び出す『罰』の言葉を聞いて負傷した平民生徒達は更に震えが止まらなくなり、それを見る貴族生徒の一部から嘲笑が飛ぶ。
彼らを
一拍、間が流れてから女生徒は手を翳して貴族生徒に静粛を求めると、それまで閉ざされていた口を開いて言葉を紡ぎ始めた。
「皆々様、この平民達はこれまでの間、私達貴族のために数々の成果を挙げてその忠節を示してきました。その功績を鑑みれば此度の失敗は只の躓き、喪った物資も些細なものです。……それに作戦を認めて命じたのはこの私、『ナターリア=アンドレーエヴィナ=ロストワ』です。であれば私こそ、此度のような失敗によってあらぬ負担を皆様にかけたことを謝罪しなくてはなりません」
ナターリアは己が不出来を恥じるように会釈し、天幕内にいる貴族生徒達に雪結晶のように綺麗な顔で
明かりが燭台のみの空間で、その炎に照らされた顔はあまりの美しさに一種の幻想的な美すら感じ取れた。
それはこの場にいる貴族生徒達全員が思わず目を奪われ、俎上に上がった平民生徒達ですら痛みと凍えを忘れて見惚れてしまう程だった。
「……っ!いいえ!仰る通り、この者達の忠節は疑うまでもなく、ナターリア様のご指示にも誤りがないのは過去の作戦のいずれもが成功していることで明らかです。此度の失敗はあくまで冬将軍が厚かましくも我々貴族に抵抗したからであってこそのもの。我々の誘いに応じることもない、さながら自然災害のようなあの女の相手をしろというのは平民には荷が勝ちすぎたというものでしょう」
一足早く意識を取り戻した男子貴族生徒はナターリアの発言に追従すると、ナターリアは
その笑みを受けた男子貴族生徒の頬に赤みが差す傍らで、ナターリアは次に先の平民生徒達を自陣営に勧誘した貴族生徒に話しかけた。
「卿が任務のために推薦した彼らのお蔭で私達は貴族としてあるべき姿を保ち、他の生徒達に高貴たる者の範を示せています。私はそうした卿の帝国貴族としての精勤と忠節にこの場にて敬意と謝意を示したく思います。このことを卿の御父君が耳にすればさぞ誇らしく思われることでしょう」
「……おお、ナターリア様!」
ナターリアにそう称えられた貴族生徒は感極まって涙を流し、周囲の貴族生徒も彼女の貴族への厚い敬意と平民への寛大さに心服した。
ナターリアは最後に平民生徒達に向き合うと、今度は一転して厳かに言い渡した。
「貴方達については今までの功績を以て先の失敗は不問と致しますが、徴収作戦の任を解き代わりにこの拠点修繕の任を言い渡します。明日は傷を癒すべく静養に充て、明後日から作業にかかりなさい」
「は、ははっ!貴き方々の慈悲に、只々感謝するばかりです!」
平民生徒は自身の首が繋がったことと今までの行動が評価されたこと、そしてナターリアが自身らの怪我を案じていることに強い感銘を受けて泣き崩れた。
一番傷が浅かった生徒がどうにか他の生徒を支えて退出すると、貴族生徒はナターリアの慈悲深くも威厳に満ちた裁定をこぞって賞賛したのだった。
◆◆◆
◆食糧庫内・元:宿営室→現:ナターリア用私室◆
報告会が終わり、元は宿営室で今は彼女のために改装が施された部屋に戻ったナターリアは耐え切れぬとばかりに部屋に持ち込まれた高級なソファに座り込む。
部屋より離れたワイン樽貯蔵室では貴族生徒の一部が景気づけにと酒宴を開いており、ナターリアも参加を請われたものの『体が冷えてしまったので先に休む』と断り、代わりに以前彼女に
「茶番だわ。野盗の集団が派手な服を着飾ってごっこ遊びをするのと何が違うというのかしら?」
ナターリアは今日までのことを含めて酷く虚しい思いを捨てることが出来なかった。
明らかな危機の渦中にいるにも関わらず、血筋と爵位を第一に優先する貴族生徒に。
暴徒によるチェルノボーグ蹂躙、そしてペテルヘイム高校への強制収容という重篤な困難を凌ぐ為には貴族と平民の立場を越えた協力が必要であるにも関わらず、『貴族の在り方』を守ろうと他の生徒から物資を略奪する貴族生徒に。
そして貴族生徒の首領という立場でありながら、暴虐に振る舞う貴族生徒を制御できない自分自身、彼らの
彼女自身が我欲によって他の生徒達を直接手に掛けたことはない。
しかし彼女の一言や一指し、考案がその手の数以上に他者を踏みにじっていることを彼女自身がよく理解しており、同時にそれらの結果がこうして貴族生徒が冷静さを保てているのを理解している。
ナターリア自身の思いに反する行為である行為が貴族グループの維持には一番効果的であると理性的に理解できてしまうことに、彼女は罪悪感を強く抱き自身の貴族としての誇りと良心を容赦なく磨り殺していた。
「……いっそこの部屋が崩れて私が下敷きになってしまえば、私の全ての悪の禊ぎとならないかしら?」
ナターリアは部屋にある窓を見上げて自嘲した。
「なーんかめんどくさい女になってるな、お姫さん」
そんな彼女に対し窓の外から急に声がかかる。
ナターリアがそこを見ると、窓から貴族生徒でない女生徒がポケットや鞄に何か詰め込んだ様子でナターリアを覗き込んでいた。
「……『ロザリン』さん」
「よっ、ほっ、てぃ」
ロザリンと呼ばれたウルサス人少女は窓を開けて部屋に進入すると、照明器具や壁の飾りなどを利用してするすると床に降りてきた。
ナターリアとロザリンが知己を得たのは度重なる貴族生徒の干渉に、空腹も相まって腹を立てたロザリンが貴族生徒の警備の目を盗んでナターリアに直談判をしにいったことに起因した。
夜間、食糧庫に潜入したロザリンは当初ナターリアを軽く脅しつけてやればいいと思っていた。
しかしいざ食糧庫の窓からナターリアが住まう宿営室を覗き込んでみれば、そこにいたのは貴族生徒達の前に居る時のような尊大さや威厳など見る影のない、ただ環境に圧し潰されて身をうずくまる子供がいるだけだった。
貴族生徒の前に居るときの彼女と同じとは思えない、まるで大切な物を自分の手で壊してしまった子供のような悲嘆を湛えて音もなく涙するナターリアを見たロザリンは思わずその光景に気を取られ、誤って指が滑って窓の
不幸中の幸いだったのは、そんなトラブルがあってもロザリンの侵入が発覚しなかったことだ。
ナターリアの生家であるロストフ家が貴族の嗜みとしてナターリアに様々なスポーツや護身術を指導し彼女が修めていたために彼女自身が優れた肉体をしていたことと、彼女の格に相応しい寝所をと彼女の支持者が目利きを働かせペテルヘイム高校で最も高品質なベッドを宛がったことが相乗効果となり、ロザリンにとって非常に優れたクッションとなって彼女へのダメージ及び衝撃音を最小限に抑えこんていたのだった。
そのお蔭でロザリンの侵入は部屋中の外にいる警備担当の生徒に気づかれなかったのだが、代償としてロザリンは落下の衝撃で肺から空気が抜け少し息が出来ず、ナターリアは流す涙の代わりに目から星が飛び出すこととなった。
声にならない声を挙げる高貴な女生徒を下に敷いた状態で、ロザリンは落下による息の乱れを整えながらこの場からの脱出策を案じる。
外の様子から未だ侵入には気づかれていないようだが、ナターリアが一度叫べば脱出は不可能になってしまう。
『(…縛るか)』
ロザリンはとりあえず口封じしようとナターリアのほうを向くが、先に衝撃から復帰したナターリアが背に乗るロザリンに驚きの目を向けながらも己の被っていたシーツを彼女に巻き付け瞬く間に包み込んでしまった。
『(やっべ……このお姫さん、ウルサス
ロザリンはどうにかして
『待って、『夏将軍』。私は貴女を見張りに突き出すつもりはないわ』
ナターリアはそう言ってロザリンの頭の辺りをポンポンと撫でる。
まるで寝たくないとむずがる子供をあやすような仕草にすっかり牙の抜けたロザリンは抵抗を諦め脱力した。
ロザリンが落ち着いたのを見たナターリアは外に声が聞こえないよう、自身も同じシーツの中に潜り込んでロザリンと相対した。
『はじめまして、夏将軍。空から流星のような訪問をするなんて一体どういう風の吹き回しかしら?』
『あたしが闇討ちしにきたとか思わないのかよ、お姫さん?』
『闇討ちに来るならもっと確実な方法があります。少なくとも私が身悶えしている間にいくらでも機会はありましたもの』
『実はナイフを構えてるかもしれないよ?』
『暗殺者がいちいちそんなこと言うことなどありえませんわ。ドラマのように掛け声を挙げることはなく、大抵は黙ったまま狙ってきますもの。それに夏将軍とも讃えられる貴女がそんなまどろっこしいことを為さいます?貴女としては真正面から相手を撃破していくほうが好みではなくて?』
『いや、まぁその通りな上に評価が高いのは有り難いけど、実際あたしはお姫さんに直談判しに来たんだけど、その』
『あら?その割には大胆な侵入方法ですわね?私、貴女の顔を見るまでは獣か何かが落ちてきたのかと思ってましたわ』
『落ちたのはあたしだって不本意だよ……お姫さんのあんな顔を見ちまったらさ』
ロザリンがばつの悪そうな顔でぼやくと、ナターリアは一瞬きょとんとした顔を浮かべた後に逆に楽しそうな笑みをロザリンに見せた。
『私の秘密がバレてしまいましたね。どうか内緒にしておいて欲しいのですが、その代わりお話と行きませんか?』
『じゃああたしに勧誘しないように手下共に命令しておいてくれよ。こっちはいい迷惑なんだ』
『判りました。他の者にはそう指示します。では私からの要求ですが……』
『おいおい、お姫さんの秘密を明かさない事との交換だろう?』
『これからの話は貴女を無事に外に出すことの条件です』
『あーはいはい。で、あたしに何をしろって?』
『はい、それは……』
『自由に窓から入ってもいいから、話し相手になってほしい』と、そう願ったナターリアに対しロザリンはその約束を呑んだ。
こうしてロザリンはナターリアに秘密裏に面会することになった。
「どうしたの、ロザリン?貴女がここに来る時間としては少し早めね?」
ナターリアはそのくたびれた顔を隠すことなくロザリンに尋ねる。
お互いに対し畏まった態度はとらない……そういう雰囲気があってこうしてナターリアはロザリンに気兼ねなく話しかけることができた。
「それがよ、今グラウンドのほうでおいしいことが起きてたんでソニアからお姫さんの分も貰ってきたんだよ。ほら」
ロザリンはそう言ってポケットから赤い箱のような物と缶を取り出すと、ナターリアのソファにそれらを投げつけた。
「……何かしら?」
ナターリアはそれを見たことがなかった。
赤い小箱にはミシン目の切れ込みがあり、自身の記憶にない丸と三角をベースにした顔のようなイラストがデカデカと描かれていた。
イラストの他には何かサンドイッチのような絵があり、もう一つの缶には同様のイラストとスープ鍋のような絵が載っていた。
「何でもタマゴサンド味のクッキーとポタージュスープの缶だってさ。クッキーはちょっとパサパサしてるから水と一緒に飲むといいぞ」
「……これを、私にくれるの?」
ナターリアはロザリンの言葉に酷く狼狽した。
この高校に収容されてから食糧の献上など嫌いになる位に受けてきた彼女だったが、平民もといロザリンから自発的に施しを受けるなど、彼女の収容生活どころか人生を通して経験したことがなかった。
ましてや今はパン一欠片すら奪い合うような状態だ。
それこそロザリンのような平民生徒こそ機を逃さず食糧をしまい込むべきであり、比較的物資に恵まれているナターリアに貴重な食糧を分けることは言わば不要の行為であった。
「何だよ、お姫さんはあたしみたいな平民の手にあったもんは食えないっていうのかよ?」
そんなナターリアの驚愕をよそに、ロザリンは呆れた様子で今度は水の入ったペットボトルをナターリアに投げ渡す。
「そんなことはないわ。誰かの手にあったかどうかなど些細な……ではなくて、ロザリンこそこういうのは私に構わず蓄えておくべきじゃないの?」
ナターリアは慌ててロザリンの不審を否定し、暗に自身の分もロザリンが食べるべきだと主張したが、ロザリンはほんの少し苦笑すると彼女自身の分のクッキーを封切りながらナターリアのソファに近付いて言った。
「いいから気にすんな。このクッキーはあんたにも配られたもんなんだからさ。だからお姫さんが貰ってもバチはあたらねえよ」
◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。
◆中途半端な所で切れてますが、続けてもう一話投稿します。
合体させると長すぎるかなって……。