The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆ナターリアサイド《SB-4N》より少し時系列が遡っています。
ナターリア側の裏側?で起こっていた出来事みたいなイメージです。

◆時間がかかったのはフォントサイズとかロボットのAA作成でした。
AAは作者には難しかったです。(敗北)

R05/10/24 文中の一部表記を変更


SB-4A.検問ゲート

目に見えぬ線を越えることは

子供達にとって生きるための一歩であり

今までの人生を置き去ることでもあった

 


 

◆ペテルヘイム高校:旧グラウンド→現ウルサス学生自治団臨時ベースキャンプ◆

 

 ペテルヘイム高校の夜のグラウンドでは、平民生徒達がまるで何年も前に無くしてしまったかのように思えてしまう一時の平穏と空腹感の解消に心を休めていた。

グラウンドではアンナ達ウルサス学生自治団が主体となってロボット甲虫が運んできた食糧庫と医薬品を集まってきた生徒達に分配していた。

 

「ラーダ、スープ缶の湯煎は他の奴に任せてお前もちったぁ休みな?」

「大丈夫だよ、ソニアお姉ちゃん!ラーダ、みんなからあまーいクッキー分けて貰えたから今度はラーダがみんなにお返しするんだから!」

 

 ソニアが厨房に放置されていた取手の壊れた寸胴鍋とグラウンドの雪を使ってスープ缶を温めるための湯沸かしをしているラーダを労って話し掛けるが、ラーダは楽しそうに火種と燃やすものを即席の竃に放り込みながら答える。

 

「怪我してる人は早く言ってね?包帯と消毒液ならまだあるからね?」

「どうぞ。指が冷えて(かじか)んでいると思いますので持つにはちょうどいい塩梅だと思います」

 

 その横ではヴィカが傷ついた生徒達の手当てを行い、アンナが湯煎で温まったスープ缶を手渡して介抱する。

 

 巨大ロボット甲虫を中心に教室のカーテンなどをかき集めて作られた簡易的なテント群の中。

チェルノボーグの寒さは変わらず厳しいものの、グラウンドにいる生徒達はほんの少しだけ訪れた安寧を享受していた。

 


 

◆◆◆

 

◆ペテルヘイム高校・グラウンド◆

 

 思いもよらぬ存在の来訪に呆気にとられたソニア達だったが、普段よりも幾分か快活なアンナが最初に動き出した。

 

「ソニア、私とその箱を開けるのを手伝って下さい。ヴィカ、ラーダを呼ぶついでに校舎に残っている他のメンバーにも声をかけて教室からカーテンやシーツをありったけ持ってきて下さいませんか?此処にテントを立てようと思います」

「お、おう……設定とかじゃなかったのかよ

「ちょっとちょっと!一体なんなのよなんなのよ?!それにカーテンやシーツって?」

「うるさいですね……いや、ごめんなさい、冷静さに欠けてました」

 

 アンナは乱雑になった言葉遣いを正してヴィカに説明を始めた。

 

「えっとですね、たった今届いたのは私がとある相手と取引して得た支援物資です。救助はもう暫くすれば来ると思いますので、当座はこれで凌ぐ形になります」

「救助?取引?誰が?その相手って校外を囲んでいる感染者のこと?それとも都市外の貴族とか軍とか?」

 

 ヴィカが取引相手の候補を思い付く限り挙げてみるが、アンナは首を横に振って否定した。

 

「いいえ、そのどちらでもないです。宇宙人……いや、帝国でない他の移動都市と言えばいいでしょうか。ですが、帝国とは全く国交がありません」

「他の移動都市?帝国と国交がない?そんな国の都市が近くにあったかしら?」

「あります。正確には近くまで来ている、といった所でしょうか……そして皆に話をしなくてはならないことがあります」

 

 アンナはそう言ってソニアとヴィカ達のほうを強い眼差しで見つめる。

 

なんだ、あれ?

でっかい……虫?

見て、冬将軍がいるわ!

アンナさん?一体どうしたのかな……?

 

 一方周囲にはグラウンドの異変に気付いた生徒達が次第に集まってきており、彼らは異変の元凶たるロボット甲虫の前にいるアンナに注目していた。

箱を開ける手を止めたソニアはその時、生徒からの視線を一身に受けるアンナの手が堅く握られていることに気付いた。

 

「(アンナ。お前、何を決意したんだ?)」

 

 アンナは一つ拍を置くと、グラウンドに集まってきた生徒達に聞こえるように声を響かせた。

 

「この食糧は移動都市【エッグマンランド】の『国民』に対して支給されたものです。つまり、この支援を受けられるのはエッグマンランド国民だけです」

 

食糧、食糧だって?!

それ全部?!なんて量だ!?

エッグマンランド?そんな国あったか?

国民だけ……って、一体誰のこと?

 

 生徒達の口から出る疑問に対し、アンナは右手を挙げて宣言した。

 

「『私』です。この度アンナ=モロゾフは本日付で帝国からエッグマンランドに移住しエッグマンランド国民になりました。正確には帝国籍を抜いてはいないので二重国籍になると思いますが……ともあれ理屈上ではこの食糧は私だけのもの、ということになりますね」

 

「「「はぁっ?!」」」

 

 グラウンドに驚愕の声が轟いた。

 

「き、聞いたこともない移動都市に移籍なんて……お前何考えてるんだよ?!」

「帝国は二重国籍なんて認めてないわよ!まして勝手に他の移動都市の存在を呼び込んだなんて……そんなことしたらアンナ、アナタ叛逆罪に問われてもおかしくないわ?!」

 

 ソニアとヴィカはアンナの発言に驚き真意を問い質すが、他の生徒達はアンナの最後の一言に反応して激昂した。

 

「食糧を独り占めだって?!ふざけるな!」

「なに訳判んないこと言ってるのよ!?これだけあるなら少しくらい分けなさいよ!」

「もういい!そいつを寄越せ!」

 

 目の前の大量の食糧に目が眩んだ生徒達が食糧の山に向かって一斉に走り出し、近くにいるソニア達諸共ひき潰しかねない勢いでアンナに迫った。

 

「あ、あぁ……」

「おい、アンナ!」

 ヴィカは暴走する生徒達の圧に思わずへたり込んでしまう。

ソニアは腰に吊した斧を持ち直して迫る生徒達の波を迎撃しようとしたが。

 

[]

 

 今まで何の反応も見せなかったロボット甲虫が突如動き出し、頭部にあるライトを生徒達に向けて照らし出す。

そして警告音のようなものを鳴らした次の瞬間、複数の子機のような小型ロボットが本体から一斉に飛び出し、生徒達の中で最も先頭にいたリーベリ人の女子生徒の足元に白い光線を発射した。

 

「うわぁっ?!」

 

 いきなりの攻撃に女子生徒は思わずスピードを殺してアンナ達の手前で立ち止まる。

自分達が謎のロボットに狙われたことを知って、生徒達はその場で足を止めた。

 

ひっ!

くっ……

 

 目の前に求めてやまないものがあるにも関わらず手が出せない状況にこの場にいる生徒達は歯噛みし、堂々と物資の独占を宣言したアンナを殺意のこもる目で睨みつけた。

 

「(博士に頭が上がらないかもしれません)」

 

 子供で衰弱しているとはいえ、肉体的に頑強な人種であるウルサス人が一斉にかかればアンナはひとたまりもない。

目に見える抑止力を派遣してくれたDr.エッグマンに対しアンナは内心で感謝の意を示した。

 

「……いいですか?どうか聞いて下さい」

 

 数多の殺気立った視線に曝されながらも、アンナは人差し指を立てて話し始めた。

 

「私は連絡が取れたエッグマンランドの主に救助を願いました。しかし彼はこう言いました。

『何故他国の人間を手放しで助けねばならないのか?暴徒と自分は一切関係がなく、巻き込まれる謂われもない』

と」

 

 Dr.エッグマンから言い放たれた言葉を述べる。

 

「確かに、エッグマンランドの国民ならともかく、私達ウルサス人を無条件で助けなければならない理由は彼にとってありませんでした。このことは逆に私達にとっても同じ事です。もし仮に龍門が同じ状況になったとしたら皆さんは『自分達には関係ない』と思うことはありませんか?ましてや『自分達の全く知らない』移動都市にまでなれば『余計なことをするな』とすら思うことはあり得ませんか?」

 

 アンナが己の見解を述べ、グラウンドに呻きに似たざわつきが広がる。

確かに自分達がそうした状況に置かれていなければ他国を、それも関係のない所に助けに行くのに都市の財を(なげう)つというのは批判が噴出する話であるのは否めない。

その一方で自分達が苦しい状況であるにも関わらず無慈悲に見捨てようとする他国(エッグマンランド)への憤懣も同時にあった。

 

 感情と理性が生徒達に渦巻く中、アンナは更に続けた。

 

「なので私は言質を取りました。

『エッグマンランド国民なら助けてくれるのか?』

と。彼は答えました。

『当然だ』

と。だから私は彼に言いました。

『私が今からエッグマンランド国民になっても助けてくれるのか?』

と。彼は断言しました。

『お前が我が国民であるならば全力を以て救助する』

と答えました。だから、私はエッグマンランドへの移住を決意したのです……此処から脱出して生き残るために」

 

 その一言が日も暮れたグラウンドの空気に浸み広がると共に、生徒達から漏れていた声が押し潰されたかのように消え失せた。

 

 アンナの果たした行動。

それは国外逃亡であり、救援とはいえ他国の勢力を無断で引き入れたことであり、ウルサス帝国にとって(まご)うことなき反逆行為であった。

ともすれば、校外に蔓延(はびこ)る暴徒達以上に厳しい罰が下される可能性すらある。

ウルサス帝国は(暴徒)に慈悲など持たないが、反逆者には万の憎悪と侮蔑を以て報いることを是とする国だった。

生徒達はアンナのなしたことに声をあげることができず、歯に衣着せぬ口振りのソニアですら言葉が出なかった。

 

「……祖国を裏切り物資を独り占めし、貴様だけチェルノボーグから逃げ出してのうのうと生き延びるつもりか?」

 

 漸く、薄汚れてはいるが身なりや立ち振舞いの整った、チェルノボーグでは比較的平民よりだったのであろう貴族風の男子生徒が震える声でアンナを詰った。

 

「……このままだと、そうなることでしょう。それに今でも、校外でもけがや飢えで苦しみに喘いでいる人が大勢いるはずです」

 

 アンナは顔を俯かせるも、改めて男子生徒のほうを見て言い返した。

 

「だけど私は、私『だけ』助かりたいとは思いません。私はここに閉じ込められた皆と一緒に助かりたいです。だからお願いします、エッグマンランド国民になって下さい。今なら入国審査なしで移住できます。そうすれば、この地獄みたいな状況から脱出することができるんです。今しか、ないんです

 

 アンナは生徒達に向けて頭を深く下げる。

その姿は決して唾棄すべき裏切り者の命乞いではなく、ただ救えるだけでも救いたいと願う少女の足掻く姿である。

それを見た男子生徒はおろか、ソニアを含めたこの場にいる生徒全員がアンナの意志に圧倒された。

 

「その……本当にそのエッグマンランドという所は私達を助けてくれるのかな?いいえ、その、アンナちゃんを疑うつもりはないの。でもあっちがアンナちゃんすら騙して私達を攫おうとしたり……?」

 

 おずおずと、黄色いリボンをつけた女子生徒が躊躇(ためら)いがちにアンナに尋ねると、アンナは首を横に振って彼女の懸念を否定した。

 

「多分ないと思います。向こうの主についてですが、正直に言えば見た目に反してかなりこどもっぽ誇り高い人物です。私の後ろのロボット甲虫ですが、これも博士の所持している機械なんです。本拠地には多種多様なロボットが彼を支えていると聞きました。なので労働力とかそういうのは充分にあって、現状として彼には所謂『奴隷』といった労働用の下層階級の人を入れるのは不要なことでしょう。むしろ彼のために自発的に『万歳』とか言ってくれるほうが嬉しいタイプの人間だと思います」

「……アンナちゃん、妙にその人について詳しいね?」

 

 女子生徒はアンナから語られるエッグマンランドの支配者像に困惑した。

 

「……アンナお姉ちゃん。ラーダ、もし『アンナお姉ちゃんと一緒に』行ったら、お腹いっぱいになる?」

 

 それでも自身の去就を決めかねている生徒達の中から、さくさくと小さな足音がアンナに近づいてくる。

このグラウンドにいる生徒達の中で一番小柄なラーダが、凍える体から小弱々しい声を振り絞ってアンナに尋ねた。

 

 アンナはラーダの顔を見て深く息を吸い込む。

チェルノボーグの冷たい空気が肺を満たしアンナの頭をすっきりさせると、アンナは力強く頷いた。

 

「勿論です。何があっても、必ずお腹いっぱいにします……皆で、お腹いっぱいになりましょう」

 

 アンナはラーダに手を差し伸べる。

 

 ラーダはゆっくりと近づいてアンナの手を取った。

 

 その一歩を切欠に、他の生徒達も次々とアンナのほうに歩み寄る。

アンナの後ろにいるロボット甲虫は何の動きを見せず、ただその様子を見守っていた。

 


 

「ご覧のようにかなり量があるので一々校舎に運んでいたなら夜が明けてしまいます。ですのでここをキャンプ地として物資の分配を行います。ですが私達も野晒しで活動するのは自殺行為なので簡単にテントを作ってそこで作業をしようと思います。手伝って頂けますか?」

 

判った!

 

音楽室に厚手の布がなかったか?

 

「見た目のいいやつは貴族連中が軒並みかっ払ってるぞ。確か体育館の倉庫に修繕用のとにかくデカいシートがあったはず。重たいから誰か手伝ってくれ!」

 

壊れた机持って来い!屋外だからいくら火を焚いたって構いやしないさ!

 

「封切りするわよ!箱も再利用できそうだから、乱暴に扱わないようにね」

 

 生き延びるための決断をした生徒達はそれぞれの役割を実行し始めた。

ほんの数時間前までは互いに『奪い合う敵』としか見れていなかった生徒達はこの時を以て共同体として『助け合う味方』になったのだ。

その変化を見たソニアは周囲を取り巻く環境の流れが変わったことを確信していた。

 

「お……重い」

 

「気をつけろ、どうやら液体の入った缶の箱みたいだ。スープでも入ってんのかな?」

 

やったわ!包帯と消毒液、これなら怪我の治療ができる!

 

「まさか……これ、ひゃっほう!きっと蜂蜜味だ!」

 

「勝手に抜き取っちゃだめだって。分配は全員揃ってから抽選だからね」

 

うそでしょ…個別パックにクッキーにスープ缶、水にミルク、ゼリー飲料?!これで一食分?!それが三つで纏めて括られてるってことはこれだけでも一人分ってこと?!

 

何だと……これは下手な行軍携帯食並の量があるのではないか?

 

 ソニアは貴族生徒や感染者の暴徒を警戒するための巡回をしながら、彼女の目の前に広がる生徒達の光景に思いを馳せる。

 

「最初はアンナがとうとうイかれたと思って付き合ったが、まさかこうなるとはねぇ……」

 

 ソニアはあの時アンナの手を握った手を見つめた。

 

「(もしもあの時アンナに会ってなかったら、アタシは今頃どうなってた?)」

 

 ソニアは自身が計画した食糧庫襲撃作戦について考えを巡らせる。

今思えば、博打どころか場当たり的すぎる行動であった。

ソニアの実力であれば恐らく食糧庫までは辿り着き、貴族生徒の守備陣と戦っていただろうが……冷静になって想像してみれば、寸前の襲撃でソニアは体力を失っていることから骸を晒していたのは彼女のほうかもしれなかった。

そして仮にも対貴族生徒の抑止力でもあったソニアが貴族と争い討ち死にしていれば、貴族生徒は気炎を挙げて更に横暴になっていたかもしれなかった。

 

 激化する横暴、暴威の矛先が彼女の友人達に向けられることは間違いなかった。

 

 




◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

◆再び中途半端な所で切れていますが、続けてもう一話投稿します。
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