The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆木曜日投稿予定でしたがこれ以上は文字は増えても文章を推敲出来なさそうなので投稿です。
これが素人の限界か(白目)

◆(イェラグイベントを遊ぶ)
作者「あれ?これ去年書いたカランド貿易ネタの下書きと矛盾しない?」
ウルサスと同時進行で手直しする必要ががが。
にしてもこのイベントの様子だと『ヴィクトリアに~』と言及しているので。
・チェルノボーグ事変終了後
→エンシアが治療のため入院
→ヤーカがエンシアの付き添い、ヴァイスが連絡役
→エンシオディスがドクターと付き合いを始める
→エンシオディスがドクターをイェラグに誘う
→イェラグ事件発生
→ロドスに興味を持ったエンヤがヤエルの手引きでロドスに加入
なのかな。
つくづくチェルノボーグ編が濃密な2週間だったことを痛感します。


SB-08.乗り換え口

その背中を押すのは誰だ

 


 

《とはいえ、オヌシ達のいるチェルノボーグの窮状を全く知らぬという訳ではない。同時にナターリア嬢、オヌシの立場が逼迫しておることもな》

 

 胸を張り終えたDr.エッグマンは両肘を立てて腕を組むとナターリアに向かって何かを投げる仕草をした。

すると一体のロボット小甲虫がテントの中に飛んできてナターリアの前で滞空し始める。

思わずナターリアが手の平をかざしてロボット小甲虫の受け皿を作ると、ロボット小甲虫はナターリアの手の上に止まって顔にあるライト部分を持ち上げて青白い光を放出した。

光が次第に四角い形を成していくと、そこには帝都に住むウルサス人貴族の顔写真や文字の列……つまり資料のような物が映し出された。

 

 テントの中の一同は新たに……むしろアーツ技術による幻覚と言われたほうが納得出来てしまう程の高度な科学を目の当たりにして目を丸くした。

 

「これは?」

 

 ナターリアが空中に浮かぶそれに手を伸ばしながら尋ねると、Dr.エッグマンは我が意を得たりといわんばかりのしたり顔を彼女に見せつける。

 

《ここ数日におけるウルサスの首都で為されたチェルノボーグに関する話し合いの資料じゃ。あやつらは人や装置等での防諜は一端に行っておるが、ワシにかかれば大通りで井戸端会議しておる声並みに丸分かりじゃわい》

「て、帝都の警察や護衛などの目を盗んで帝国議会室に侵入したと言うのですか?!」

《ワシはロボット全能の天才科学者!奴らの探査に引っ掛からない盗聴機の製造など赤子の手を捻るようなものじゃ!》

 

 ナターリアはDr.エッグマンの(オーッホッホッホッホッホッ!)尊大で得意満面な(ホーッホッホッホッホッホッ!)高笑い(ッムグッ!?ゲフッゲフッ!!)を横にその規格外な才能に鳥肌が立った。

流石に全能ということはなかったとしても、いざ目の前に帝国議会の作法に則った言い回しや議員として名を連ねる貴族の名前が並んでいる資料があり、しかも顔写真がウルサス帝国の公式文書で公開している数ヶ月以上前に撮影されたものではないということも見て判った。

改めてナターリアは生半可な技術や思考ではDr.エッグマンに太刀打ちできないことを痛感した。

 

 だが、彼女はDr.エッグマンが示した資料を読み始めた途端にその怖れすら吹き飛んだ。

 

「お、おい……」

 

 今まで表面上は貴族らしい余裕を保っていたように見えるナターリアの突然な変わりようにソニアは思わずナターリアに声を掛けるも、彼女は全く聞こえた様子もなく資料を隈無く読み続ける。

 生来の白い肌は色を喪って青褪め、宝石のように輝く眼は焦点を失いせわしなく動き、瑞々しい筈の唇は血の気を無くして震えだし、それを隠すかのように口元へ寄せられた指も小刻みに揺れる。

 

 その顔は明らかに絶望の表情だった。

 

 ナターリアの異様な姿にアンナ達は全員言い知れぬ恐怖を覚えたが、Dr.エッグマンだけは手を組んだまま黒眼鏡の奥からナターリアを見つめるだけだった。

 

 ほんの数分ではあったが、資料に目を通したナターリアは息すら忘れていたかのように荒く呼吸をすると、崩れるように力なく椅子にもたれかかった。

 

「博士、ナターリアさんに何を読ませたんですか?」

 

 アンナがDr.エッグマンに尋ねる。

Dr.エッグマンはナターリアのほうを一瞥すると、両手を解いて椅子の手すりに肘を載せて答えた。

 

《あれはオヌシらの国の首都で開かれた、『この都市(チェルノボーグ)をこれからどうするか』という会議の内容じゃ》

 

 Dr.エッグマンはウルサス帝国の帝都で開かれた帝国議会の要約資料をアンナ達向けに表示した。

 

・帝国は公的にはチェルノボーグでの騒動は戦争状態とは認めず、国家ではないレユニオンムーブメントなる賊徒とは一切交渉するべきでない
・栄光ある帝国の移動都市を賊徒の横暴に曝したのはチェルノボーグの貴族が原因に他ならない
・他の移動都市で同様の不出来が起きていないにも関わらずチェルノボーグでは発生したという事実は、チェルノボーグ貴族ないし平民の帝室に対する侮辱と同義であるが、これを以て叛意ありと断じないのは帝室の慈悲深さを表している
・チェルノボーグについては賊徒が蠢動しており、周辺地域からも感染者が多数流入するであろうことが予測される
・国外の反帝国主義者や他国の工作員などの帝国に仇なす獣共がチェルノボーグに侵入することは想像に難くない
・此度の暴動を奇貨とし周囲の不穏分子をチェルノボーグに集結させ、一網打尽にすれば帝国はより磐石になり、且つ他国に帝国の武威を示すことが出来るだろう
・チェルノボーグ平定まではチェルノボーグ貴族に賊徒を抑えさせる
・正式な出兵については帝室に労を負わせないために貴族から勇士を募り『義勇軍』にて対応する
・賊徒の鎮圧後はチェルノボーグ貴族に対し『内憂罪』を適用させて改易し、武勲目覚ましい者に対しチェルノボーグ貴族から没収した財産を充てることで信賞必罰と綱紀粛正を保つ
・チェルノボーグ籍の平民については功多き貴族に一任するのが良いと思われる

 

 他にもチェルノボーグに対する取り扱いや周辺地域への政治工作などの提起や発案などがあるが、明白なのはただ一つ。

チェルノボーグは捨て石となり、他の貴族の狩場となるだろうという事実であった。

 

 それは貴族という存在から考えてみれば大凡に有り得る行動であり、そしてこの追い詰められた移動都市内で救援の望みをかけて待つナターリア(一人の少女)を絶望させるのに充分な現実だった。

 

「(あぁ、なんと私は、愚かで甘い夢を見ようとしていたのかしら……)」

 

 ナターリアは凍えてしまった手で顔を覆い、事ここに至って何もかもが手遅れだったことを悟った。

レユニオンなる暴徒との駆け引きや軍や貴族との折衝、Dr.エッグマンとの物資交渉をする猶予など端から存在せず、出来ることがあるとすれば座して破滅を待つか一縷の望みをかけてチェルノボーグから脱出するしかなかったのだ。

 

 今までの行動の全てが無駄な足掻き以下のものでしかなかったことを自覚したナターリアが全身から熱が抜け凍っていくような感覚に襲われる傍らで、Dr.エッグマンはアンナ達に資料の示す結論を話す。

 

《この都市はいずれ首都におる貴族共の草刈場になるということじゃ。オヌシらに軍の助けは来ない。それどころかウルサスにとって都合の悪い連中が集まってから一斉に処分する腹積もりのようじゃ。反対意見がゼロというわけではないらしいが、そういった意見を言った者は『感染者の肩を持つ不届き者である』と難癖がついている有り様よ》

はぁ?!ざっけんじゃねぇよ、ナターリア!テメェ貴族……が……」

 

 ウルサス帝国貴族の余りに残酷で無慈悲な考えにソニアは同じ貴族のナターリアに食って掛かろうとする。

だが、略奪を受けた平民生徒以上に憔悴し、貴族としての姿が見る影もない状態になった彼女の痛ましさにソニアは思わず怒気を霧散させてしまった。

 

「じゃ、じゃあチェルノボーグは……そんな……嘘、ウソって言って……」

 

 ソニアの他にもチェルノボーグを取り巻く事態が今以上に悪いことが受け入れられずにヴィカは震えあがって首を横に振り、ラーダは不充分ながらも自分達に救助が来ないことを感じ取って呆然とする。

アンナもまたDr.エッグマンの説明を受けて改めて自分達が地獄の釜の縁に立たされていることを痛感し、たまらずにDr.エッグマンに救助を催促した。

 

「あの、博士?どうか急ぎで救助を送ってくれませんか?いやその、段取りとか準備とか諸々あるかもとは重々承知していますがこう迅速というかちょっぱやというか」

 

 アンナがあたふたと焦る様子にDr.エッグマンは思わず吹き出した。

 

《フッフッフッフッフ、まぁそう慌てるでない。我が【エッグマン艦隊】は出撃待機中じゃ。調(ととの)い次第向かわせるわい。それよりも今はあっちの熊っコロをどうにかしてやらんとな》

「熊っコロ、って……あまり表でそういう言い方はしないで下さいね?博士を『モウリー(もぐらちゃん)』って言うようなものですよ」

誰がモグラじゃ誰が!で、ナターリア嬢よ……気分はどうかの?》

 

 アンナのズレた心配を一喝したDr.エッグマンは打ち(ひし)がれるナターリアに声をかける。

ナターリアは俯いた体をゆるゆると起こすと、震える手を抑えながらDr.エッグマンに向き合った。

 

「はい、お心遣い、ありがとうございます……」

《聞こえてはおるな?良かろう。事態は判ったな?オヌシはほぼ詰みの状態じゃ。オヌシの祖国はオヌシを見捨てた。後は生きたままそこを脱出できるか否かしかオヌシには残されておらん。じゃが……》

 

 青白い光で出来たDr.エッグマンは椅子から立ち上がるとナターリアの方に歩み寄りながら彼女に問いを投げかける。

 

《今なら、ワシの派遣するエッグマン艦隊の船に載せてやってもよいぞ。オヌシが我がエッグマンランドに与して忠誠を誓うというなら、悪いようにはせん》

 

 Dr.エッグマンの声がナターリアの耳に侵入(はい)り込み、特に大きな声でもないはずソレが彼女の頭蓋に妙に響く。

 

《それにオヌシの働き方次第では向こうで漁夫の利を狙う貴族共に一泡吹かせてやろうではないか。いずれはワシの野望を阻む連中だからの。ついでに入念に蹴散らしてやるわい。今のオヌシには破格の条件じゃと思うが?》

 

 そして声の意図がナターリアの脳に届き、神経毒のような麻痺感を彼女の思考にもたらした。

 

「あ……」

 

 ナターリアの見上げる先に、虚像の絶対者が悪辣極まりない(自信に満ち溢れた)笑顔で彼女を見下ろしていた。

 

 Dr.エッグマンからの提案は正にウルサス帝国貴族の彼女に対するタルタルの唆し(悪魔の囁き)であった。

貴族が『貴族』たる条件とは『家名への誇り』と『家名の存続』を成り立たせることである。

先のDr.エッグマンが提示した条件はナターリアにとって生き延びて家名を保ち、チェルノボーグに土足で踏み込んでくる貴族達への反撃を以て家名の誇りを守るチャンスが持てる鬼札(ジョーカー)である。

チェルノボーグに蔓延る暴徒を撃退することが前提の話なのは当然であるが、もしもDr.エッグマンの卓越した科学力を後ろ盾に力をつけることができれば暴徒のみならず帝都の貴族達を返り討ちにすることも不可能ではない。

少なくとも帝都の厳重な警備を潜り抜けて情報収集できるほどの技術があれば撹乱や不意打ちは簡単に成し得るだろうし、ウルサス帝国は力を以て野望を果たすを是とする国風であるためいつか敵対貴族達に打ち勝てば敗者から勝者(立場)の逆転とて不可能ではない。

 

「(そう……ここで、彼に隷属すれば……)」

 

 代わりに、ナターリアが彼女の全てを悪魔(Dr.エッグマン)に委ねれば。

 

《どうするのかの?》

 

 Dr.エッグマンはナターリアに言葉(降伏)を促した。

 

「(御父様、御母様、御爺様……)」

 

 人生の全てを賭ける決断を前に、ナターリアは大切な三人のことを思い返した。

貴族として備えるべき物を授けてくれた偉大な父、淑女たるを教えてくれた慈愛深い母、そして父母が社交界で不在のときに可愛がってくれた祖父……。

 

「(そう言えば、御爺様は以前こんなことを仰っていたわね)」

 

 ナターリアはふと移動都市を離れて遠乗りする祖父に同行した時に祖父が『人生の心得』について話をしてくれたことを思い出した。

 

「(確か……)」

 


 

◆◆◆

 

過去。

 

◆チェルノボーグ遠方・荒原地帯◆

 

 ナターリアの祖父は彼女と同じ銀色の髪を持つ偉丈夫で、息子に家督を譲って以来宮廷(貴族の社交場)よりも野盗の討伐や害獣駆除、国外からの犯罪者対策で外に出ていることが多かったため、その肌はナターリアの絹のような色とは反対に日に焼けて色黒だった。

口さがない者はそれを『野蛮』だの『泥化粧』だのと嘲笑ったが、ナターリアにとってその色は努力の色であり、彼女はそんな祖父の顔が好きだった。

そんな祖父が彼女を連れて遠乗りに赴いた時、黒くなった顔をしわくちゃにして笑いながらナターリアに諭したことがあった。

 

「ナターリア、人には『必ずしなくてはならないこと』がある。それは平民でも貴族でも変わらない鉄則だ」

「どういうものですか、おじいさま?」

 

 信頼する護衛達に守られながら野生動物を狩る中で、ナターリアの祖父は彼女にこう話した。

 

「我々は二本の足で立って歩いて今までを生きてきた。遥か昔の頃からな。もしもイヤだからといって立ち止まっていれば【天災】に巻き込まれて死んでいただろう。食べ物も土地も、人も、全て我々が歩くのを止めなかったからこそ得られたのだ。だからな、ナターリア」

 

 彼は金の瞳をナターリアに向けて言った。

 

「止まってはならん。ナターリアが歩みを止めない限り、ナターリアの道の先には必ずナターリアの望む物が待っているはずだ。譬え歩むにも辛過ぎる道であっても、前に進むことを完全に止めて諦めてしまえばもう足は動かなくなる。そういう時は這ってでも進むのだ。ナターリアが進む限り、ナターリアの道は途切れることはないのだからな」

 

 彼の目に宿るそれは、

 

「はい、おじいさま。わたくし、がんばってあるきます!」

 

 幼きナターリアの快活な返事に彼は、満足した笑みを浮かべて彼女の頭を撫でた。

 

「まぁ、偶に困難にぶつかって這っていると思わぬ抜け道みたいなものを見つけることがある。そこを通れば案外簡単に抜けてしまうこともあるがな」

「おじいさまもそういうことがあったのですか?」

「おう、何度もあったぞ。例えば敵対していた貴族に住宅街で襲撃されて地べたを這っていたら逃げ道を見つけたことがあってな……」

 


 

「(そうね……もう博士を頼るしか打つ手がないというなら、いっそ駄々をこねてみようかしら)」

 

 ナターリアの奥底にあるロストフの誇り、そして彼女を愛してくれた家族の存在が、彼女の心に熱を与えた。




◆書いていて思ったこと。
「宇宙からの侵略者が現地の子供を脅して降伏させようとするシチュって、これウル○○マンにあったな」

◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

※帝国議会の件で、原作における帝国の動きと比較して違和感を覚える方がいらっしゃるかもしれませんのでここで補足を入れます。
原作7、8章の内容について触れているのとメタ発言であるので透明文字加工しています。
【以下補足】


原作においてチェルノボーグ暴動は黒幕によるマッチポンプですが、その事実を帝都の貴族全員が知っているという訳ではないと思います。
少なくともチェルノボーグの貴族達は暴動の気配には感付いても裏の意図まで知っていたとは思えません。
そもそも都市が生贄にされることをチェルノボーグ側が知ってしまえば激しい抵抗を試みる恐れがあります。
そうなると対外戦争よりも前に内戦ですね、帝国の面子が潰れそうです。
巻き込まれないように前もって逃げ出したり、或いは何も知らない他人にチェルノボーグの権利を売り渡して不良債権を押し付けたりもあるでしょうから、そんな異様な行動を勝手にとられれば一連の流れの意図がバレるかもしれません。
また蜂起の意図を知る者が多ければ多いほど漏洩が懸念されますし、皮算用で蜂起後の戦乱で得られるであろう取り分についての話をどこかで持ち出されては他国に漏れる可能性もあります。
万が一、他国と利益関係にある貴族がその情報を外部に売ってしまえば蜂起の目的は瓦解するかもしれません。
そうなればチェルノボーグの離反や感染者の連鎖的蜂起といった帝国でコントロールできない事態になりかねません。
なので『真意』を知る者はごく僅かで、軍隊には一部を除いて指示あるまで絶対に動かないこと(義憤や功名心に駈られて動いたりしないこと)が厳命され、残りの貴族はただの『地方都市の失態』だと見なしているんじゃないかと思います。
後でタルラを確保して手駒にしようとした貴族もいますが、周知の幅が広ければこの貴族以外にも軽挙妄動する輩が居そうです。
なので暴動について情報が出揃っていない時の帝国議会では事情を知らない貴族が怒りや打算などを抱えて攻撃的な主張をしていただろうということでこうなりました。



(原作との致命的な乖離がある場合は教えて頂けますと幸いです)
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