The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆鋼鉄重工様、鬼討物部様、誤字報告ありがとうございました。

◆気の利いた前書きが浮かばないので近況。
ログインしているゲームのタスクが被りすぎて大変。
・アークナイツ:EX攻略中
・DMMお船:ラスダン中→07/13現在:下振れしまくって敗北。甲逃した…
・YOSTARお船:ポイント稼ぎ中
・Fジオウ:素材集め
・サイゲウマ:釈迦釈迦
◆でもスマホ触ると作品書いてたりする不思議。
なお進捗はウルサス編ラストシーンと1周年企画品の執筆及び本話以降の下書きの更正を同時進行で処理中。
こう、最近は蒸し暑いから辛いけど作業者一人の静かな仕事所に居ると思索が進むんですよね(口笛


SB-09.M&A(売ってやるから言い値で買い取れ!)

貴族という生物は多くの財を持つ

及ばぬ貴族は財を抱えたまま(死蔵して)死に絶えるが

優れた貴族は財を活かして生き延びる

 


 

「(そもそも博士は『艦隊を派遣する』と言った。艦隊……軍用移動基地や軍用艦*1をチェルノボーグに送るとして、かなり遠方にあるらしい国からどうやって送るのか。口振りとしては()()()()()()送れるといわんばかりだったわ)」

 

 ナターリアは瞑目してこれまでの会話から情報を少しずつ掬い上げる。

 

「(軍事行動なんてその場の思いつきで出来るものじゃない。入念な計画、準備、訓練の様々な課題をクリアしてからでないと始まらない。なのに何故博士はいとも容易く艦隊で救助を行うと断言できるの?壮大なことはすごく言う人だけれど、だからと言って虚言誇張にはとても思えない)」

 

 掬い上げたものの中に纏わりつく違和感を見つける。

 

「(第一、博士は『暴動に関与するつもりはなかった』と言った。そして、アンナさんに救助を求められたから翻意してあれだけの物資を手配した。矛盾しているわ。救援物資のあの量は事前に準備していないと集められる筈がない。そうなると、『艦隊』も『物資』も()()()()()()()()()()()準備されていたということになるんじゃないかしら)」

 

 違和感を拭い取り、現れた核心に触れる。

 

「(遠方の国が、チェルノボーグに対して艦隊と物資、つまり軍事行動を準備していた……それもアンナさん達の救助というイレギュラーにも対応できるということは……)」

 

 至る、一つの可能性。

 

「(であれば、()()()()()()()()()は、ロストフには()()。そして、博士はアンナさん達が率先したように『自ら進んで働くこと』を好むならば……)」

 

 ナターリアは澱んでいた思考を再回転させて得た答えに全てを託して、一つの賭けに出ることにした。

 

「博士、一つお伺いしても?」

《どうした?》

「博士の自国に対する揺るぎない自信に加えて、先の『艦隊』という言葉。ただアンナさん達を救助するだけなら少数の救助部隊で潜入し速やかに回収すれば事足りるはず。ですが此処の様子とアンナさんの提案から見るに何十人といる生徒達も、それこそ貴族生徒を含めても救助を行えると言っているかのようでした。そうなれば相当人数の救助要員を派遣せねばならないでしょう。平時であっても大規模な救助を行うには()()()()()()()()()()()()です。非常時となれば尚更()()()()が必要のはず」

 

 ナターリアは一呼吸入れてから、彼女の紡ぎ出した考えを述べる。

 

「……エッグマン博士、貴方は元々チェルノボーグに攻め入ることを視野に入れていたのではありませんか?だから救助要請を受けても即時行動が取れた……違いますか?」

《ほほう》

 

 彼女の推理にDr.エッグマンは薄く老獪な笑みを浮かべた。

ナターリアは根拠を続けて述べる。

 

「判断材料は他にもあります。アンナさんは博士の国を【天と地ほどに遠い場所】にあると仰っていましたが、それ程遠いのであればあれだけの救援物資を校内のグラウンドに運ぶのは極めて困難です。ましてや生徒達がペテルヘイム高校に収容された後、アンナさん達から救助要請があってから物資を準備、というのは時間的に不可能としか思えません」

 

 ナターリアはテントの向こうにある物資の山を指差す。 

 

「そもそも博士は救助を考慮していなかったようですから、元から救援物資を準備していたとは考えにくいものです。更にあれだけ運ぶのに一日とかかっていないことを考えると……博士の艦隊は此処からかなり近い位置に布陣しているのではないですか?」

 

 ナターリアの儀杖がグラウンドの土(チェルノボーグ)をつく。

 

「そんな所に艦隊が居た理由……それは元々博士はチェルノボーグ攻略の機会を窺っていたから。だからアンナさん達の救助要請にも迅速に対応できたのではと私は思います」

[フッフッフッフッフ、なるほどなるほど]

 

 Dr.エッグマンはナターリアの話に感心した。

事実、Dr.エッグマンは感染者による暴動よりも前からチェルノボーグに拠点を設けており、この騒動が暴徒か武装警察かのどちらかで決着がついた時に残った戦力を叩き潰すつもりだった。

そのためにDr.エッグマンはエッグマンタウンを出撃してからチェルノボーグに最も近い山の陰に隠れるように艦隊を待機させている。

 

 Dr.エッグマンはナターリアがこれまでの会話や状況証拠でその推論に至ったことに感心した。

同時にDr.エッグマンの興味を引いたのは、ナターリアが自身の領土的野心に言及しているにも関わらず敵対心を露わにしないことだった。

 

[で、ワシの艦隊が近くにいるとしたらどうするというのじゃ?]

 

 Dr.エッグマンが話の続きを促すと、ナターリアは一瞬だけ奥歯を噛み締める。

 

「(御父様、御母様、御爺様……私は、生き延びます)」

 

 力んだ口を開き、言葉を続ける。

 

「いかに精強な軍隊とて、都市に進出するには確たる拠点が必要です。ましてや移動都市相手となれば【天災】等での移動もあって都市外に拠点を作るのは効率的ではありません。当然、都市内で軍を展開するに適した場所を探す他にありませんが……それにかかる労力は少ないに越したことはありません」

《その通りじゃ。つまり?》

 

 Dr.エッグマンが続きを促す。

その様子を見たナターリアは交渉が継続していることを改めて認識し、本題に入った。

 

「私、ナターリア・アンドレーヴィナ・ロストワはエッグマンランドに対して『亡命』を希望します。受け入れの対価としてロストフ家の所有する土地・財産及び都市に関する情報を提供することができます」

 

 ナターリアはある意味貴族らしい手段で生き延びる賭けに出た。

己の財産(価値)を目一杯馬車(言葉)に詰め込んで、高跳び先(エッグマンランド)に高く引き取って(評価して)貰う手である。

 

《服従ではなく、亡命じゃと?それはワシには従わぬとでも言いたいのか?》

 

 Dr.エッグマンは不満げな声を出してナターリアに尋ねると、彼女は洗練された貴族式の礼節でDr.エッグマンに頭を下げた。

 

「誤解を招いてしまい申し訳ございません。私には博士と対等になれるほどの力はございませんし、博士にとって私自身の力は対して大きな物ではないことは承知しています。ですがロストフ家が持つ不動産やチェルノボーグに関する情報などは違うのではないでしょうか?先に申し上げたように、これからチェルノボーグに進出するならロストフ家の財産は博士に掛かる負担の解消に役立つかと思います」

《ならばその手間を惜しまず都市を蹂躙してしまえば問題なかろう。ワシの力を見くびっておるのではなかろうな?》

 

 ナターリアの発言にDr.エッグマンは顎をさすりながら反論する。

 

「博士の力を過小評価など致しておりません。ですが無闇な力の行使は単純に資源の浪費となりますし、都市を一々更地にして場所を作るよりも予め適切な場所を知って利用するほうが今後の統治も踏まえると効率的な筈です。それに蹂躙して支配するより整然と降臨して采配を振るうほうが都市を弄ぶ暴徒との違いを見せつけることができ、市民からの支持は格段に変わります」

 

 合理性と市民に与える印象を以てDr.エッグマンにその利を説く。

 

《要はワシをダシにしてオヌシの土地を守らせたいだけではないか。提供とはいうものの、オヌシの狙いはそこじゃろう?》

 

 Dr.エッグマンは己の力によってナターリアのほうが得をすることを指摘すると、彼女は否定しないまま言葉を返す。

 

「偽りなく申し上げればその通りです。ですが私はそれ以上に暴徒や帝都の貴族達にこのチェルノボーグを明け渡したくないのです」

 

 彼女の傷も汚れもない指が強く握られ、白い手に朱が差す。

 

「確かに、貴族はチェルノボーグを守りきることができず、都市の栄光は地に堕ちました。その貴族の一員たる私にとやかく言う資格はないのかもしれません。ですが、それならばせめて『都市を誰に託すか』を選びたいのは譲れません。そしてそれは、エッグマン博士、貴方を於いて他に居ません」

 

 握られた拳を胸元に寄せ、Dr.エッグマンの力あってこそ都市の未来があると主張する。

 

《ワシこそが都市の主に相応しいということか?》

 

 ナターリアは頷く。

 

「付け加えるなら帝国において貴族の持つ公的な権利の剥奪は帝都の特務官による命令書の手渡しでなければ成立しませんが、権利の譲渡は二者間での契約と宣言があれば成立する慣習となっています。更に確約を得たいなら二者共同で帝国に申請したりもしますが、貴族個人の持つ土地や企業の経営権程度なら届け出を出すことはあまりありません」

《何じゃと?本人同士で勝手に権利を遣り取りできるということか》

「そうです。また帝国の慣例として『権利者が私的な理由でそれを直接維持できない場合、他者にその管理を任せても良い』と見なされています。大抵は主家が従士家や家宰一族に管理させる時に使う慣例ですが、『混乱の中』にある今のロストフ家ですとエッグマン博士がロストフ家から権利を預かって管理し、そこから利益を得ること自体は違法ではないのです」

 

 加えて都市権利の委譲について彼女はウルサス帝国での慣例法を持ち出してその正当性を補完した。

 

《……随分と有力者に都合のいい仕組みになっておるの、それでよく国が纏まるものじゃ》

 

 Dr.エッグマンはナターリアの語る制度について呆れ声を漏らした。

権利の剥奪こそは帝国政府が関与しているものの、移譲については当事者の貴族間で身勝手に行えるとナターリアは言うのだ。

つまり、圧倒的優位に立つ貴族が弱者貴族の権利に対し『移譲で合意した』と宣言、奪取すればそのまま優位貴族側のものになってしまう可能性が高い。

委譲に関して何らかのフェイルセーフがあったとしても、純粋な力関係で権利をやり取り出来てしまう仕組みというのは実に強者有利の法であった。

ウルサス帝国法については興味がなかったため詳細を調べていないDr.エッグマンだったが、貴族(ナターリア)本人からそのような話を聞いてしまえば流石に驚いてしまった。

 

「帝国はそうやって育ちました……他者を、弱者を礎にして。我がロストフ家も元は落ち目の主家から権利を獲得した成り立ちがあります」

 

 ナターリアは服の肩に着くリボンを留めるカフス、それに刻まれたロストフ家の紋章を撫でる。

 

「なればロストフ家もいつか更なる強者に(ひざまづ)くことになるのは自然の道理です。そして今がその時というのなら、このチェルノボーグにおける強者とは……エッグマン博士、貴方のことです」

 

 カフスを外し、Dr.エッグマンに向けてそれを差し出す。

 

「私はロストフ家の行く末を、チェルノボーグの未来を築く権利を博士に託したいのです。我が物顔で都市に闊歩する暴徒にではなく、安全な所からのうのうと掠め盗ろうとする不埒者(帝都の貴族)にでもなく、アンナさん達に乞われ、傍観をせずに手を差し伸べた博士に」

 

 ナターリアは決断した。

 

 彼女は懇願した。

 

 間。

 

 テントの中はナターリアの生き延びようと足掻く意志とDr.エッグマンの惑星を覆わんとする野望が満ちてぶつかり合った。

 

「(まるで口が挟めないわ……)」

 

 ヴィカは眼前で繰り広げられるナターリア(支配者)Dr.エッグマン(侵略者)の遣り取りを息を呑んで見守るしかなかった。

会話だけで二人のやり取りを聞けば、貴族嫌いの平民生徒は『貴族の身勝手な取り分の打ち合わせ』と騒ぎ、頑迷な貴族生徒は『売国奴の浅ましい策謀の会話』と喚くことだろうが、いざ現場にいる彼女にしてみればそのような単純な言い掛かりなど有って無いようなものだ。

 

 何があろうと首が繋がらなければ、権利も望みも何も言うことはできないのだ。

 

「(ナターリアさんは今、自分の持てる全てを出して話し合ってる……)」

 

 ウルサス帝国からの救助は来ず、感染者の暴徒になされるがままとなって見捨てられ、いつか帝都から来る軍隊は逆に奪う側として襲ってきかねない。

平民生徒のヴィカにとっても最悪な未来な上に、ナターリアに至っては暴動勃発という失態を犯した貴族として矢面に立たされ始末されることが定まりつつある。

ここまで追い詰められた状況となれば、並大抵の人間であればウルサス帝国の目の届かぬ町や村、或いは他国に逃げだしてもおかしくはなかった。

にもかかわらずナターリアは今、あのロボット甲虫で大量の救援物資をいとも簡単に準備し、こうして青白い光越しに彼女と会話ができる、アーツ技術と言われるほうが納得出来てしまうほどの科学力を持つ人物と生き延びるための交渉をしているのだ。

もしもヴィカが彼と話す立場にあれば、形振り構わず助けを求めていたことだろう。

それこそ他のメンバーと共に貴族の庇護を得ようとしたように。

 

「(生き残るなら貴族生徒に頼る他ないかも……って思っていたけど、この二人を見ちゃうと他の貴族生徒なんてただの子供と変わりないって判っちゃうわね)」

 

 ヴィカは隣に座るソニアを横目でそっと見る。

ソニアも内心不満があるのだろうが、ナターリアが話している内容そのものは事情を察することができているのか苦虫を噛み潰したような顔で両腕を組み指を小刻みに震わせながら会談の様子を見ていた。

 

「(ソニアさんもナターリアさんを拒否しないみたい……)」

 

 ヴィカは続けて他の二人を見る。

アンナはというと、手が(かじか)むようでせわしなく両手を擦っており、ラーダは竃の近くにいるせいかその温もりでウトウトとしており、椅子の背もたれと肘おきの間を頭がゆらゆらと行き来していた。

 

「(ラーダちゃんはともかく、アンナはマイペースねー……)」

 

 ヴィカはアンナの様子を見て若干の呆れと奇妙な安心感を覚えた。

 

《判った》

 

 沈黙の間が晴れ、Dr.エッグマンが結論を出した。

 

《認めてやろうではないか、ナターリア・アンドレーヴィナ・ロストワよ。我がエッグマンランドはその手土産を以てオヌシの亡命を受け入れよう》

 

 チェルノボーグの運命が、ナターリアの運命が、ここで今切り変わったように思えた。

 

 そして同時に自身の運命もまた新たなレールを進み始めたと、ヴィカは何故かそう感じた。

 

*1
ここでは海上艦ではなく大型戦闘車両という意味




◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

◆因みに途中で記載したウルサス帝国法については

~~~~~

・Dr.エッグマンがロストフ家の権利をゲットしても帝都がノーカン言い出したら面倒だなぁ
・ロストフ家の権利入手を帝都が認める必要があるとして、Dr.エッグマンがそんな手続きを踏むわけないよなぁ
→せや!剥奪には公文書が、譲渡とかは両者の合意でヨシ!すればええやん

~~~~~

ということでこうなりました。
実際はナターリアが言うほどスムーズに権利の委譲は難しいでしょうし、かなり横槍が入るでしょうが原則としては可能、ということです。
Dr.エッグマン自身が外野の雑音などどうでもいいことなので、実効支配してしまえばいいだけの話です。
法律自作しておいて何ですが、こんなの貴族に強いなら奪い取ってよし(今は悪魔が微笑む時代なんだ)って言っているようなものですね。
大乱だろうとポイント稼ぎの他国侵略だろうと簡単に起きるってもんです。
だから作者は悪くない、弱肉強食(ヒャッハー!)してても違和感ないウルサスが悪い

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