The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆省略予定の話を編集中に
「あれ?そういえばこういう話を先に挿れとかないといけなくない?」
と思ったので予定変更して投稿。
※冒頭の灰文はなるべく入れたいと思いつつ良い出来にならないのが悩みどころ。
あとDr.エッグマンの1行AAってどこかにないかな……?


SB-13-3/2.最襲日前夜

被害者(感染者)加害者(市民)から都市(生存権)を獲ようとする

加害者(感染者)被害者(市民)から都市(生存権)を奪おうとする

彼らは二面性を持っている

 


 

1096年12月、深夜。

 

◆チェルノボーグ・レユニオンムーブメント前線陣地◆

 

「ペテルヘイム高校の監視班が襲撃を受けた?」

 

 押収した軍事警察派出所の内、前線に最も近い場所、飾り気もなく申し訳程度の防寒木材の貼られた部屋にて。

ペテルヘイム高校の偵察に赴かせた構成員から報告を受けて、暖炉の前でボウガンの部品を一つ一つ丁寧に磨くファウストは空色の目を瞠目させ、その隣に座って作業を眺めていたメフィストは声を挙げた。

 

 メフィストは己の部下に命じて捕虜にしたチェルノボーグの学生を()()()()()()いくつかの学校に収容し、そして()()()()()()()()

(こと)ウルサス帝国において絶対に近い階級差、意識の対立が存在する。

ましてや片や我慢の『が』の字も知らない連中で、片や我慢の限界になりつつある連中だ。

貴族だろうと平民だろうと、果ては貧民だろうと同じ場所に放り込めばメフィストの思い描く末路が容易に実現するだろう。

暴発は彼にとって既定路線であり、事実この目論見は順調に進んでいた。

監視のみに留めている収容所(学校)では学生間の対立が日増しに強くなっており、彼が煽らずともいずれ己の体を蝋にして盛大に燃え上がることだろうと踏んでいた。

 

 その中の一つであるペテルヘイム高校に異変が起きた。

高校の監視班からの通信が来なくなったのだ。

メフィストは念のため偵察員を送り、ペテルヘイム高校を調査させに行かせたのだが。

 

「はい。様子を見に行った偵察員が倒れていた監視班を発見、救助した内の一人が目を覚ましたため事態を聴取した所、何か小型な物が高速で接近し、爪のような刃物を振るって襲い掛かってきたと。監視班からの定期報告が途絶えたのはソレが原因かと」

「新手の突撃ドローンとかか、くそっ……僕らの制圧したテリトリーなのになんてことだ!何で襲撃に気づけなかった!?」

 

 残雪よりも白い肌を紅潮させながらメフィストは構成員に詰め寄った。

 

「監視班が一人を除いて未だ目を覚ましていないので詳細は不明ですが、ペテルヘイム高校ではどうやら収容した貴族生徒の間で対立が発生して内争が起きたようです。一部施設に火がついていました。恐らくそれに気を取られたのかもしれません」

「ふぅん……まぁ、あそこで潰し合いが起きること自体は想定通りだけど、貴族だけだって?」

「はい、内争が沈静化してから敷地内に入りましたが躯は多くが貴族の着るソレでした。平民の割合は全体的に少なく……」

「何、まだ何かあるの?」

「……どうやら平民の方は内争に乗じて脱走したようです。彼等の行方は現在不明です」

「はぁ?!」

 

 言い渋る構成員に苛立ち、メフィストは報告の続きを催促するも、それを聞いた彼は思わず鳥のような甲高い声を出してしまった。

 

「監視班は、いや周囲の奴らはどいつもこいつも節穴か!?あの高校には平民学生がかなり居ただろう!なのに誰も逃げた跡を見つけらなかったっていうのか?!それともお前たちはアイツラがウルサス()じゃなくて鳥だったとでも思っているのか!バカ(鳥頭)なのはお前らじゃないか!」

「申し訳ございません……」

 

 激昂し眼前まで詰めてくるメフィストの言葉をそのまま受け、レユニオン構成員は俯きながらも言い返さずに謝罪する。

彼自身が失態を犯したというわけではないものの、まるで()()()()()()()()と言いたくなるほどに脱走した平民生徒たちの痕跡を見つけることができなかったのは事実だからだ。

加えてメフィストが横やりを入れたとはいえ、チェルノボーグ市民の捕虜を点在する学校施設に収容する案はレユニオン主力の中でも群を抜いた実力集団パトリオット隊の献策である。

よって平民生徒脱走という出来事は彼らの顔に泥を塗る行為と言えなくもなかった。

 

「……っ!……ーっふーっ、ふーっ……もういい。居なくなった奴らをこれ以上追いかけまわすだけパンと燃料の無駄だ、捜索はやめる。どうせ学生なんだ、逃げ出したところで僕たちレユニオンに楯突くことなんて出来っこない」

 

 あと少し怒りを吐き出したメフィストは、構成員に平民生徒の追跡中止を命じた。

行方が判らないにせよ、或いは敵対する軍事警察らに保護されたにせよ、逃走者達がレユニオンに出来ることなどないのだから。

 

「もう他にはないよね?」

「あと一つありますが……どうも貴族が内争を起こしたのはペテルヘイム高校に備蓄されていた食糧や医薬品等の物資を巡ってが理由のようです」

「備蓄?そういえばあの高校は食糧庫の一つが火災で焼失していたっけ……取り合っていたのは残った一つのほうについての、ということ?」

「いいえ、どこにあったのかは不明ですが相当の物資が見つかったようです。グラウンド中央に集積されており、その量は先に押収した軍事警察倉庫のそれにも並ぶかと」

「……随分と夢のある話だね。逃げ跡を見つける目はなかったけど、僕にご機嫌取りをする頭はまだあったのかい?」

「とんでもない!いえ、私自身も偵察した同胞から聞いた時は耳を疑いましたが、山積みにされた箱の中にはウルサスでない文字のついたビスケットケースや水の入ったペットボトル、液体の入った缶詰、包帯に恐らく消毒液などがあるようです。これがその中身だとか」

 

 あまりに都合の良い情報にメフィストは先の噴火のような怒りから一転して冷ややかな目を構成員に投げ掛けるが、流石にこれ以上の叱責はごめんだとばかりに構成員は状況を説明し、証拠として持ち帰った物資の一部をメフィストに提出した。

 

「……確かに、見たことがないな。それになんだこの絵は?」

 

メフィストはビスケットケースに描かれた≡(◎皿◎)≡(謎のロゴ)に疑問を抱きつつケースををまじまじと見た。

 

「毒味役を買ってでたドゥリンの同胞によると『チーズ味のようなもの』らしいです」

「どうでもいいよそんなの」

 

 ビスケットの味と毒味というか考え無しに食いついたのであろうドゥリンの(能天気な)構成員に対してもムカつきを覚えたメフィストは一つ溜め息を吐いた。

 

「判った判った。もうこの件はチェルノボーグから物資を奪ったことにしよう。ファウスト、ごめんだけどコイツらと一緒に物資を回収してきてくれないかな?僕はその間にタルラにペテルヘイム高校の事を伝えてくるから」

 

 ボウガンを磨き終えたファウストはこくりと小さく頷き、部下の構成員と共にペテルヘイム高校へと向かって行った。

それを見届けたメフィストは派出所から除雪されて雪のない敷石通りを出る。

 

 雪は降らずとも厚い雲に覆われ、地上の火災によって所々が赤黒く変色した空の下。

明けて(きた)る時の為に拠点間を奔走するレユニオン構成員らとすれ違いながら、彼はタルラの居る駐屯所に向かった。

 

◆レユニオン陣地・旧軍事警察庁◆

 

 制圧されレユニオン駐屯所となった軍事警察の庁舎は、感染者の抱いていた鬱憤や復讐心がいかに濃いものだったかの証拠を至る所に残している。

 

 掲げられていたウルサス帝国とチェルノボーグの旗は既にレユニオンを象徴する旗に差し替えられ、陥落した初日に薪の助燃材としての役割を果たした。

ある芸術家の胸像やウルサス帝国を讃える詩の額といった実用的でない調度品は全て撤去され、空けられた場所には武器や保存食などの実用一辺倒な代物が据えられている。

さぞ立派に着飾ることが目当てだったであろう軍事警察長官の式典用礼装は、持ち主に恨みのある感染者達の投げたナイフによって出来の悪いハリネズミの如く装飾されて見る陰もない。

救いがあるとすれば、持ち主が既にソレを必要としない有り様になっていることだろうか。

 

 そんな中、アーツの余波で窓が消失したため急場凌ぎで打ち付けられたトタン板の隙間から冬の外気が混じって冷える廊下をメフィストは一人かつかつと歩く。

 

「……タルラ、起きてる?」

 

 その中の一つの部屋の入り口からメフィストは部屋で眠る家族を気遣うような声で語りかける。

 

「入っていいよ」

 

 扉越しに仄かに暖かい空気が漏れる扉から部屋の主がそう返すと、メフィストはやや遠慮しながらドアノブをひねって中に入る。

タルラが居るのは警察隊長の使うような立派な部屋でなく、そこそこの防寒材のみを施した質素な部屋だ。

質の良い部屋は他の幹部や参謀といった負傷しながらも前線を離れるわけにはいかない構成員のために開放されており、これまでの戦いで全て無傷であったタルラは自身には不要のものとしてこのような部屋を用いていた。

また、彼女自身のアーツもあって暖気には事欠かなかったためどの部屋でも問題なかったともいえる。

 

「タルラ、その、捕虜をしまいこんだ高校で事件があって……」

「大丈夫よ、メフィスト。聞こえていたわ」

 

 持ち込まれたテーブルにチェルノボーグの地図を広げて座っていたタルラがメフィストの方を見て答えた。

 

「聞こえてた、って……まさか、僕の声ってそんなに響いてたのかい?」

「あー、えっと違うわ、帰ってきた同胞達が言っていたのを聞いただけ」

「そっか……ごめん、ちゃんと見張れなかった」

「気に病まないで、同胞達が襲われたのはショックだったけれど命に別状はないとも聞いているわ。無事で良かった」

「あ、ありがとう……」

 

 そう言って柔らかく微笑むタルラの顔を何となく見ることができずにメフィストは頭を下げて目線を逸らせた。

 


 

「(雰囲気、本当に変わったなぁ……)」

 

 改めてペテルヘイム高校についてタルラに報告する傍ら、メフィストは己の前に座るレユニオンムーブメントのリーダーであるタルラを見ながらそう思った。

 

 メフィストはかつてイーノという名前だった頃、サーシャ……今のファウストと共にタルラに合流した。

二人のファーストコンタクトは彼女に弓引いての対峙であったため、合流後は暫くの間彼女に古くから着いてきた古参の感染者にからかわれたこともあった。

そういう時は最後にアーシャが軽く窘めタルラが苦笑するのがあの時の日常だった。

 

 その日常はウルサスの悪魔と共に終わりを告げた。

彼等をからかう古参達はウルサス帝国兵の襲撃に抵抗して命を落とし、アーシャもまたその血をウルサスの氷土に流して命を落とした。

メフィスト(イーノ)自身、タルラが背負って来たアーシャの最期を未だに信じたくない思いが喉の奥に燻っている。

 

 振り返ってみて、その日からタルラはうっすらと変わっていったとイーノ(メフィスト)は思っている。

 

 彼の印象としては、タルラという女性は家族に例えるなら頼りになる姉……いや、どちらかといえば父のような存在であった。

しかし、アーシャがタルラの隣から永遠(とわ)に去って以来、タルラはどこか柔和な母親のような振る舞いをするようになった。

それはまるでアーシャが感染者の子供達に施してきたそれのように。

以前を知る者はタルラがアーシャの代わりも務めようとしていると思い、彼等から欠けた存在の重さを改めて痛感した。

 

 そして今の形になったのは、開拓村に交渉しに赴いた感染者が罠に嵌まり悲惨な末路を辿った時の事だ。

 

 タルラは戻らぬ同胞を独り追いかけ、其処に駆けつけ、其れを目の当たりにした。

 

 後詰めをしようとする仲間達の許に戻ってきたタルラは、()()()()()()()()()()()()()()()を仲間に渡して。

『彼等の体は二度と戻らない。此処に【かれらのいし】があるだけになってしまった』

と、涙と共に語った。

開拓村に報復をするかと憤る感染者に対しては

『全て焼き尽くし、水に流した』

と言った。

 

後日、偵察員が開拓村の付近を通った時に全て燃やされ、洪水のように根刮ぎ流され沼のようになった場所を見たという。

 

「(タルラはあの時から、火と水のアーツを使うようになった)」

 

 元からタルラに備わっていた素質なのか、別の理由があるのかはイーノには判らない。

だが、タルラが火のような暖かさと外敵を圧倒する苛烈さを持つならきっとアーシャが水のような柔らかさと渇きを満たす優しさを持つだろうとイーノは思う。

今彼の前に座るタルラは己の二つのアーツを用いて室内を程よい熱と湿度で温めており、床からの冷気や入り口からの寒風をまるで感じさせないようにしている。

この庁舎に入る前のテント生活時も同様の事をしており、他の隊の同胞もその温もりに(あやか)ろうとテントを訪れる者もいた程だ。

また、タルラ手ずからブリキ缶やドラム缶に温水を注いで湯たんぽや簡易風呂を提供して傷病者や子供達を労っていた。

 

 戦場に出る時は前線で敵軍を焼き払い流し尽くす。

 

 後方に居る時は陣地で味方を癒しねぎらっていく。

 

 まるでタルラに()()()()()()()()かのようだった。

きっと自分達や同胞らを優しく包み込んでいたアーシャが其処に居るのだろう、と拾われた少年(イーノ)は思っている。

 

 だからこそ、レユニオンムーブメントを築き感染者の未来を獲ようと邁進するタルラの期待に応えたいと感染者の戦士(メフィスト)は思うのだ。

 

「……成程。今、ファウスト(あの子)が高校の物資を持ち帰ろうとしていると」

 

 チェルノボーグの地図を指ですっと撫でながらタルラは確認した。

 

「うん。それが本当に使えるかどうかは要注意だけど、安全だったら医薬品とかは治療も捗るし、食糧や水もレユニオンの足しになると思う」

「物資についてはなるべく平等に……いいえ、食糧、もしも粥のようなものがあれば最後方の子供達や負傷者に分配するように。代わりに都市西部から獲得した物資から日保ちしないものを同胞戦士達に振る舞ってもいいわ」

「判った、すぐに手配するよ」

「忙しくしてしまうけど、ごめんなさい。ただ無理はしないでね」

「それも判った。今こんな所で倒れるわけにはいかないからね、指示を出したら休むつもりだよ」

「そう、ありがとう」

 

 天井に括られジジジと揺れるランプの灯りを浴びながら、タルラはメフィストの白い髪を撫でる。

その細い指は数多くの戦いを経てもなお傷一つなく、彼女の持つ龍体の稀なる強靭さを示しつつもメフィストに触れる手のひらはそれを感じさせない程に柔らかかい。

 

 メフィスト(イーノ)の脳裏にあの氷土の時代の感触が沸き上がる。

 

「じゃあ、おやすみなさい、タルラ」

「おやすみ、メフィスト」

 

 夜が明ければ、感染者の軍団が圧政者(チェルノボーグ)の首を獲らんとその斧を振り上げるだろう。

彼等の宿願成就は間近だった。

 

 その時を迎えるまでに少しでも休んでおけるよう、メフィストは物資回収から戻ってきたファウストらの許へと急いだ。




◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

◆メフィストは本編中ではいつも躁状態というか怒りや優越感で感情が昂っているイメージが私にはありますが、過去の姿を鑑みるに感染者ないし強者としてのプライドに加えて彼の眼前にいるのがロドスだの龍門だのいわゆる敵対者だったからかなと。
だからもしも彼にとって安心できる場所にいるなら割と年相応の振る舞いをするんじゃないかと思います。
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