The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
◆冒頭の部分は当初音符だけだったけど思いついて作ってみました。
AA職人さんってすごいね(敗北)。
本当は走らせたりしたかった。
怯える必要のない微睡
奪われることのない食事
1096年12月、朝。
◆シップ内・寝台室◆
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三● 〒〒〒 ▲▲▲
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どこか緑の丘を音速で走るような艦内音楽が流れ消えていた部屋の照明が一斉に点いたことで、チェルノボーグを脱出した生徒達は無事に朝を迎えたことを理解した。
そんな中、夜遅くまで起きていたアンナは寝ぼけ眼をこすりながら大きく背伸びする。
アンナが周囲を見回せば、隣の下段ベッドは二人分の膨らみがあり、シャワー室からは勢いよく流れるお湯の音が扉越しに聞こえてきた。
「何でしょうね?この、
アンナは隣のベッドに眠る二人に声をかけた。
「おはよー、アンナお姉ちゃん」
アンナの呼びかけにラーダのほうが答えた。
「おはようございます、ラーダ。ヴィカはまだ寝ているのですか?」
アンナはラーダに話しかけながらベッドから出て下段のほうを見ると、何とも言えないような顔になった。
そこには目を覚ましてベッドから出ようとするラーダをがっちり胸元に抱えて熟睡し、彼女が揺らしたり声を掛けたりしても一向に起きる気配どころか更にラーダを抱き枕にしようとする残念な友人の姿があった。
「あったかい……でたくない……はぁい『
残念な姿を晒す友人は寝言もまた残念だった。
「ヴィカお姉ちゃんが起きてくれないの。私が起きてからもずっとこんな感じっ」
彼女を抱き締めるヴィカの胸でラーダはくすぐったそうに笑う。
ラーダの無邪気な笑顔をよそにアンナは少しの間リターニア北部の砂漠地帯を遊牧するヴァルポ族のような顔をすると、大きく溜め息を吐いてラーダに謝った。
「すみませんね、私の友人がこんなことをして。ラーダは早起きで偉いですね」
「ありがとー。でもね、ラーダ、ヴィカお姉ちゃんが夜にぎゅっとしてくれてたから、今日はぐっすり眠れたの。だからヴィカお姉ちゃんはいい人なんだよ?」
彼女の屈託のない笑顔を見て、強引に毛布を引っ剥がそうと思っていたアンナは考えを改め一泡ふかせる方法で目を覚まさせることにした。
「判りました。じゃあヴィカはきっと寝起きのシャワーを浴びると思いますので、彼女が着替えやすいようにローブのボタンを外してあげて下さい。あぁそう、その上着のボタンです。私は下をやりますので」
「えーと、うん」
アンナの指示を受けたラーダは、くりくりとヴィカの腕の中で体を回転させて彼女のバスローブのボタンを外し始める。
ラーダの作業の傍らでアンナは二人に掛かっている毛布をゆっくり外すと、上半身と同じくラーダに抱き付いているヴィカの両足を優しく外し腰で括られていたベルトのボタンも全て外した。
そして数分もしない内に、ヴィカの服は少しでも動けばはらりとはだけるような状態となるが、ヴィカはまだ起きていない。
「ここまで目覚めが悪いとは……致し方ありません」
アンナは最後の仕上げにヴィカの鼻を摘んで起こしにかかった。
「んみゅひゅう?」
ヴィカは漸く目を覚まし、声になっていない擬音を漏らしながらラーダを抱き締めから解放した。
「ぁあぅ?あー、アンナ、おはよー」
「おはようございます。この部屋であなたが最後です。ラーダのほうがちゃんと起きたというのに」
「あーそう?ラーダちゃん、おはよう」
「おはよう!」
「ぅんんー、ん?!」
ヴィカがラーダに挨拶をして背伸びをした時、被さるだけになっていた上着の胸元が大きく広げられ、彼女の下着も大きく露わになった。
「きゃっ?!」
ヴィカが慌てて胸元を隠そうとするも、今度はアンダーも外れそうになっているのに気づいて更に混乱した。
「えっ?!ええっ?!ど、どういうこと?!アンナ、一体何をしたの?!」
慌てふためくヴィカに対してアンナはやれやれといった表情で彼女に言った。
「ヴィカが悪いんですよ?ラーダよりも年上のあなたがちゃんと起きていれば、こんな事にはならなかったのに」
「ちょっとアンナ、いくら何でもひどくない?!」
「最初は毛布をひっぺがしたら私が持っていた『レンガ(並に分厚い)本』を目覚めの挨拶にするつもりでしたが?ラーダを上に下に抱き付いて、終いには寝言で『てでぃ』呼びとか何をやってるんですか」
「えっあっあのっそのっこれはそうっラーダちゃんがラーダちゃんでちょうど抱きやすくって抱き心地がよくってなんかあったかくってそのえっ私『てでぃ』なんて言ってたの?」
「……何やってんだオマエら」
湯を浴びて濡れた髪をタオルで拭きながら、シャワー室から出てきたソニアは目前に広がる姦しい状況に呆れて溜め息を
◆◆◆
アンナ達が身支度を終えた頃、今まで流れていた艦内放送がミッションを完了したように音楽が数秒程の曲に切り替わった後、スピーカーからDr.エッグマンの声が響いてきた。
[おはよう諸君、Dr.エッグマンである。現在オヌシらの乗る艦は既に目標地点に到着し停泊しておる。これからの予定としてオヌシらには我が艦隊の旗艦に移乗してもらうが、旗艦到着までまだ少し時間がある。食堂に朝食としてトーストとスープを手配しておいたので食べておくように。尚、配給は事前申告の食券制じゃ。部屋毎で希望の種類を集計してから分配する故、今から部屋の入り口にあるモニターに表示されたものの中から選ぶんじゃぞ]
Dr.エッグマンの艦内放送が切れると、部屋の入り口の天井辺りからモニターが降りてきた。
通電したモニターにはトーストとスープの絵がそれぞれ3つずつ映されており、矢印の上下で希望数を入力する仕組みのようだった。
「うーんと……アンナ、これ何か判る?」
ヴィカはモニターの絵を指差してアンナに尋ねてみる。
「トーストの上にあるちっちゃいアイコンが左からそれぞれ牛乳缶と黄色いブロック、苺と赤いものが入った瓶、蜂と蜜を注いでいる壺になっていますから、多分バターに苺ジャムに蜂蜜シロップでしょうね。スープのほうは……野菜のスープにトウモロコシのシチューと……何でしょうか?豆?豆の茶色いペースト?東方諸国にある牛乳の代用品とかいう豆乳ってやつでしょうか?」
「いちいち悩むのもめんどくせぇからバターと野菜スープで」
「ラーダちゃんはどうする?」
「えーと、どうしよう?苺ジャムも蜂蜜シロップもおいしそう!」
「じゃあ私が苺ジャムでラーダちゃんが蜂蜜シロップを選んだら二人ではんぶんこしない?」
「ほんと!?ヴィカお姉ちゃん、ありがとー!」
「私はソニアと同じに……いや、ここは敢えてスープは豆のやつにしますか。ヴィカ、スープはどうします?」
「あ、じゃあシチューで」
「ラーダも!」
「判りました。ぽちぽち、と」
アンナが代表してモニターに入力すると下のほうから注文内容がかかれた伝票がちりちりと伸びてでてきたので、アンナはそれを千切ってポケットにしまう。
最後に忘れ物がないかを確認して、四人は食堂に向かうことにした。
◆食堂スペース◆
目を覚まして部屋から出て来た生徒達は、事前に選んだ伝票を基に配給された朝食をプレートに載せてそれぞれの席につく。
その姿に貴族や平民の立場による違いは存在しない。
誰もが出来立ての朝食に舌鼓を打っていた。
「いやーハニートーストがメニューにあるなんて、この船の食堂は最高だなぁ!できれば二枚だけと言わずにもっと選べたら良かったけど」
ハニートーストとシチューを選んだロザリンはウキウキとテーブルにプレートを置く。
一方のナターリアはジャムトーストと野菜スープを持ってロザリンの隣に座った。
「シェフがいるわけでもなさそうだし、そもそも配給の一種なのだから余分に貰うのは無理だと思うわ。第一朝食を用意されていること自体が有り難い限りよ。それにしても、食堂のスタッフすらロボットだとは思いもよらなかったけど」
「だなぁ。警備のおっちゃん役といい食堂のおばちゃん役といい、どれもこれもがロボットで結構なんでもありだよな、ここ。トコトン人の代わりに仕事してるって感じでさ」
今も向こうの配膳台で生徒達の為にその金属製の腕を振るってスープを渡しているロボットを見ながら、ロザリンはトーストにかぶりつく。
「その通り、ね……」
ナターリアはロザリンの言葉に同意しながらこの船のロボットについて思いを馳せた。
「(そう、この船には生徒達以外の人間は一人もいないみたい)」
ナターリアは船のプラットホームの広さ、昨晩ソニアやロザリンと共に通路を歩いた時のおおよその歩数や幅を思い出してこの船のことを分析する。
「(あのプラットホームに、通路を歩いた時の感覚と数十人の生徒達を収容できる規模……恐らく船のサイズは大型水上船と引けをとらないはず。ならば船を動かすのに少なくとも十人以上はクルーがいないと運用できない計算になる)」
ナターリアは極北地域の凍河地域を除けば領土のほぼ全てが内陸部に位置するウルサス帝国の貴族ではあるが、冬の避寒地旅行や他都市貴族との交流会等で大河や湖を進む水上船のことは見聞きしている。
規模は大小様々あり、大きなものになればホテルが丸々収まるような代物すらあることはボリバルから来た矢鱈饒舌な女性が避寒旅行先として勧誘していた時に聞き及んでいた。
当時彼女が万全のサービスを期す為に多数のコンシェルジュを控えさせているとも言っていた、同時に操作する船員も。
ナターリアは水上船は移動都市の機関部同様に多くの人手を要するものだとこの時に知った。
「(なのに、此処で見かけるのはロボットばかりで人間は誰もいない……つまりこの船はロボットだけで運用しているということ。全くの人いらず……どころか、ロボットすら給仕用なだけで船が自動で操縦されている、なんて……あり得るのがまた恐ろしい話ね)」
ナターリアは野菜スープをスプーンで掬いながら改めてDr.エッグマンの力に感嘆した。
無人の戦闘ユニット、というのは軍事力としてのアドバンテージが非常に重い。
例えばウルサス帝国を世界の強国たらしめているのはウルサス人の肉体そのものを含めた他国を凌駕する優れた武力があってのことである。
幼いウルサス人の投石程度でも肉体的に弱い種族に当たれば急所でなくとも重傷を負わせることは容易い。
ましてや攻め手が訓練を積んだ軍人となれば並大抵の相手では敵わない正に十人力といっても過言ではない。
昨今ではドローン技術の進歩もあってウルサス帝国内でも軍事ドローンの導入が進んでおり、ウルサス帝国軍や貴族の私兵団はますます強化されている。
だがもし、そんな軍隊や兵団の対峙する相手が血潮の通わない鋼鉄の体を持つロボットであれば?
鉄を斬り裂ける程の実力者はウルサス帝国とはいえ何処にでもいる訳ではない。
いかに強靭な兵士であっても斬られたり射貫かれたりすれば血を流し、体の融通が利かなくなったり更なる負傷を恐れたり等でその戦闘力は否応なしに低下する。
だがロボットであれば負傷による戦闘力の低下の幅は生身の人間よりも狭いだろうし、恐怖で身が竦むだの焦りで体が強張るだのの不具合も発生しないだろう。
加えてDr.エッグマンが有するロボット自体の技術差も大きく響いてくる。
そもそもウルサス帝国に限らず、ロボット・ドローンの技術は飛行型はともかく地上型については二足歩行型や巨大甲虫型のような代物を所有しているとはナターリアはどこも聞いたことがない。
だというのにナターリアの視界の端ではロボットが遅れてきた生徒にトーストを渡したり空になった寸胴鍋を片付けたりしている。
昨晩も避難誘導するロボットが彼女達を見守っていたことから、程度のほどは未知数だが軍事行動を取るには充分なスペックがあるだろう。
痛みを感じず、武器を持ち、果ては雑事をこなせる程度に独立した活動ができる。
そのような物は現代の戦争においては破格にも程がある。
ロボットの軍事アーツへの耐性とかは不明だが、軍の大半を占める一般兵相手ならば問題にならない。
そうした切り札を持つ存在がチェルノボーグに来襲する……仮に軍隊が迎撃側、いや、平時であれば憲兵やロストフ家を始めとする貴族の私兵団が迎撃側であれば、正直に言って成す術なく敗走するだろうとしかナターリアは思えなかった。
極端に言えば、飛行船を貴族当主の住む屋敷上空に飛ばしてロボットを突入させるだけでDr.エッグマンは都市に強烈な一撃を与えることができるのだ。
チェスを始めたらいきなりキングの前に駒を置けるなど話にならない。
「(レユニオンムーブメントといい、Dr.エッグマンといい、チェルノボーグは苦難の道しかないのね)」
ナターリアは愛する都市の不幸ぶりにたまらず嘆息した。
不幸中の幸いは、ナターリア自身の立ち位置は圧倒的な力を持つ側の協力者としてここにいることだった。
「どしたんお姫さん?トースト冷めるぞ?」
ナターリアが思索に耽る間、配給担当のロボット相手に身振り手振りで交渉して追加のハニートーストを勝ち取ったらしいロザリンが耽りすぎて鬱に入っていたナターリアに声をかけた。
皿に盛られた甘く香ばしい香りを漂わせるトーストを前に嬉しそうなロザリンに、ナターリアは意識を切り替え苦笑してごまかした。
「大丈夫よ、ロザリン。ちょっとまだ眠かっただけ」
「あー確かに。移動だか何だかがないならまだ寝てたかったとこだねぇ。やっぱり真っ当な寝床があると良く眠れるよー」
「眠るといえば、ロザリン。貴女ちょっと寝相を直したら?朝起きたら貴女があんなことになっていたから驚いちゃったわよ」
「いやぁいきなりお姫さんが叫ぶから飛び起きちゃったわ。何か蜂みたいな生物と一緒に空を飛ぶ夢を見てたんだけど途中で尻尾2本で飛んでるヴァルポ風の生物と追いかけっこになったと思ったら上下逆転したまま飛び続ける夢になっちゃったんだよね」
「それでどうしてあんな格好になるのかしら……?」
ナターリアとロザリンは朝食を楽しんだ。
他のテーブルでも生徒達がめいめいのプレートを囲んで朝の平穏な一時を過ごしている。
遠い昔に無くしたかのような時間が今ここに帰ってきていた。
◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。
◆因みに『豆のペースト』スープは豆乳スープではなく味噌汁のことです。