The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆超絶難産回。
正直ここで半年以上詰まってました。
作中描写とか会話とかを見直せば見直すたびにもっと良くできるんじゃないかと頭を悩ます状況になりました。

それでも「もう、これ以上の手直しが思いつかない」と思い一区切りつけて他の話を執筆したら、うん、進む進む……。
恥ずかしながらボトルネックみたいになってたんだと痛感しました。


SB-15.非常識

1096年12月早朝。

◆エッグホスピタルシップ・プラットホーム◆

 

 朝食を済ませた生徒達がプラットホームに集まると、船内のスピーカーからDr.エッグマンの声が響いた。

 

[全員揃ったか?寝坊はおらんな?忘れ物はないか?よろしい、ではオヌシらを我がエッグマン艦隊の旗艦に移乗させる。そこのサークルの上に行くんじゃ。エレベーターになっておるから全員が乗ったら船の甲板に出すぞ]

 

 生徒全員がDr.エッグマンの指示通りに床にある巨大なエッグマンシンボルのサークル上に移動し終えると、そのサークル全体がゆっくりと持ち上がり、それに合わせて船の天井も開いていく……そして鉄の囲いから開放された雲一つない青空が生徒たちの視界に飛び込んできた。

 

「うわぁ……」

 

 エレベーターの上昇が止まった先で、生徒の誰かが思わず感嘆の声を漏らす……それはこの場の生徒全員に共通する思いの発現だった。

 

 青空だ。

 

 そこは移動都市の高位貴族が住むような高い塔や、財力を持った新興商人達が作るような高層ビルよりも遥かに上空で、常日頃は見上げるばかりの鈍色の雲が彼女達の近い位置に浮かんでいる。

更に生徒達と同じ高さには今彼女達が乗っているような赤い塗装の飛行船が所狭しと並んでいた。

この様な光景を目にしたウルサス人は、この大地の民を全て含めても恐らく彼女達しかいないだろう。

 

 圧巻。

 

 彼女達は人生で一度も経験したことのない衝撃によって言葉が出ず、誰もが空の世界を呆然と見ていた。

 

「す、すごーい!私たち、空の中にいる!山の上にいる!雲が近くにある!」

 

 アンナやソニア達の高等学年組が立ち尽くす中、再起動が早かったのはラーダを始めとする年少組の生徒達だった。

彼女達は初めて見る景色に沢山の玩具を与えられた子供のようにはしゃぎ、あまりの興奮ぶりに思わず落下を心配した年長者の生徒が誰かが甲板から落ちたりしないかと彼女達を抑えようと慌てて動き出す程だった。

ただし雲に並ぶ程の上空であるにも関わらず凍りつくような寒さが甲板にはないため、船が何らかの防護措置をしているようである。

 

「空飛ぶ船がある時点でとても驚いていましたが、更に沢山の船を見ることになろうとは全く思っていませんでした」

 

 年少組に次いで覚醒したアンナは大きく息を吐いて眼前の船舶群を見る。

 

「これほどの景色なら帝都の貴族ですら見たことがないと思います。アンナさんが驚くのも無理はありません」

 

 アンナの隣にナターリアが寄ってきた。

一見落ち着いているように見える彼女だが、その目は空から見えるもの全てを納めようと輝いている。

 

「まぁ博士が規格外なのは出会ってからすぐに思い知らされましたけどね。これで他にも地上基地と本部まで持っているそうですからとんでもないものです。よく向こうの星はこれだけの軍隊を持つ博士の侵略を阻止できたものね

 

 アンナは宇宙(そら)にあるというDr.エッグマンの本拠地と遥か遠い惑星のことを想像していると、隣にいるナターリアが彼女の一言に疑問を抱いて問い掛けてきた。

 

「今さっき『これで他にも』と言ってましたが、アンナさんはエッグマン博士の本拠地の場所を知ってるのですか?」

「本拠地のことはあまり。遠いところにあるとだけ。でも地上基地は数年前に放棄された鉱山街(タストント)跡地にあるそうです。この前会った時に色々聞きましたが、サイズこそチェルノボーグ程ではないようですが大分開発しているらしいですよ」

「……なんてこと。チェルノボーグの目と鼻の先じゃないの!」

 

 ナターリアは思わず息を呑む。

状況的に元々Dr.エッグマンに侵攻計画があったと分析していた彼女ではあったが、侵攻のための前線基地を設けるにしてもまさかチェルノボーグの近くに堂々と拠点を設けていたとは思いもよらなかったのだ。

 

「確かにチェルノボーグ付近にあった鉱山街は山の陰に隠れがちで外部から発見され辛いかもしれないけど……そんな街が建つまでの間、都市の外周警邏隊は何をしていたのかしら!」

 

 レユニオン蜂起を事前に防げなかった都市内の守衛隊にはずっと前から憤慨していたが、更に都市外の警邏隊すらエッグマンランドの蠢動を見落としていたことに失望を隠せないナターリアだった。

だが、その後アンナの齎した新事実にナターリアの悪感情は全て吹き飛ばされる。

 

「無理もないと思いますよ?博士が言うには建設したのは()()()に来てからで、二ヶ月前位らしいですし。確か警邏隊の巡回か同じく二ヶ月前だった筈ですから、多分警邏隊の過ぎた後で建て始めたんだと思います」

「……はい?」

 

 ナターリアは真顔でアンナを見つめるも、アンナの様子に違和感や作為的なものはなかった。

アンナの言葉が事実ならば、Dr.エッグマンは簡易砦を建てるかのように僅かな期間でチェルノボーグ付近に軍事侵攻を支えるだけの拠点を築き上げたことになる。

最早世界的な非常識にも程がある話だった。

 

「……ここまで差があったとあれば、もう笑うしかありませんわね」

 

 ナターリアは諦めて空の景色を楽しむことにした。

 

「見て、あれ!」

 

 すると同じく空を見渡していた生徒の一人がある船を指差した。

その船は此方に近づいてきているのか、段々と大きく見えてきたのだがそれは誤りである。

その船は、既に近づいていた。

遠近感覚が狂いそうな程、ソレは非常に巨大なものだったのだ。

 

「何だあの船!?」

「デカい……!この船の倍以上あるぞ!」

 

 アンナ達の船にゆっくりと接近するソレは、この船を覆い尽くして余りある程に巨大な船。

ただそれが動くだけでまるで津波のような風圧が押し寄せ、甲板にいる生徒達に襲い掛かってくる。

 

「……移動都市?」

 

 誰かが呟いたそれは、あの船を形容するのに相応しい言葉であった。

 

《ヌワーハッハッハッハッハ!見よ!これこそが、我がエッグマンランドが誇る最強旗艦!その名も!【改エッグキャリアー型】万能無敵空中要塞戦艦【エッグパイオニア】じゃ!》

 

 Dr.エッグマンの自慢に満ちたアナウンスが甲板に響き渡った。

Dr.エッグマンの誇るエッグパイオニアはアンナ達の船を全て覆い尽くすかのように頭上へ来た所で停止した。

 

《連絡艇がそちらに行くので速やかに移動せよ。完了したらエッグパイオニアに収容するからの》

 


 

◆エッグパイオニア艦内◆

 

 連絡艇を通じてエッグパイオニアに乗艦したアンナ達はその内装を目撃して再び圧倒される。

生徒の誰かが移動都市と形容されたエッグパイオニアは湖に浮かぶ並の船と大きく異なっていた。

船内に都市が丸々存在しているといってもいいレベルだったからだ。

 

 ウルサス帝国では見られない独特な意匠の建築物が立ち並び、船内外周部にはトラムのようなものすら運行している。

床や建物にはレンガや石畳のような繋ぎ目がなく、まるで一枚の巨大な板で建設したかのように滑らかであった。

恐らく行き先などを示しているであろう、ウルサス語ではない文字が映る掲示板のようなものもあるが、掲示板との大きな違いはそれが全てホログラムで構成されている点にあるだろう。

それは一種の幻想的な様相を示しているが、欠点としてはどこもかしこもDr.エッグマンのシンボルマークが強い自己主張をしていることだろう。

他にも昆虫や小動物を模した小型ドローンが街路樹のようなモニュメントから時折ポンポンと現れては船内の何処かへと消えて行き、何か慌ただしく活動しているようだ。

チェルノボーグでは見たことがない派手な照明やネオンサインなどは龍門やドッソレスの市街を飲み込んだような賑やかさをこれでもかとアピールしながらも、木材などの自然物が一切使用されていない建築物群は雑然としているように見えて逆に一種の統一感のようなものを醸し出していた。

 

「高位の貴族や王族、資産家の中には屋敷一つが船内にあるクルーザーや離宮専用の移動基部を所持されている方々もいますが……私、今後そういう話で動じなくなりそうですわ」

「これと比べるとそうなるでしょうね」

 

 エッグパイオニアの空中通路を観光案内のような三角旗を持つロボット達に誘導されながら、ナターリアとアンナは都市上部をつたう歩道橋下に広がる景色をそう評価した。

 

 通路を渡り、トラムに乗り、エレベーターで降り、そうして生徒達が案内された場所は、都市の中央にあたる何らかの広場と思わしき場所だった。

そこには道案内をしたロボットと同型のワークロボットが幾つも列を成して並んでおり、宛ら軍隊の兵士又はチェスの駒のようだった。

他にも。

 

巨石像のような紺色のロボットのGUNロボット。

鎧を着た偉丈夫のようなロボットのCASTアンドロイド。

看護婦のような女性型ロボットのCASEALアンドロイド。

 

 異星(未知)の技術の結晶体が広場正面に整列している。

ロボットの列で成されたステージの中心に通されて何事かと生徒達が辺りを見回していると。

 

「ホーホッホッホッホッホ!如何かな、我がエッグパイオニアの威容は?」

 

 いかにも尊大な声と共に、生徒達の頭上から老人の男が浮遊する足場と共にアンナ達の前に降りてきた。

老人は自信に満ち溢れ、胸を張って生徒達の前に立つと高らかに自身の正体を告げた。

 

「よく来たな、チェルノボーグの生徒達よ!我が名は『Dr.エッグマン』!世界を統べるに相応しい支配者であり、世に並ぶ者なしの世紀の天才科学者とは、ワシのことよ! ヌワーハッハッハッハッハ!

 

 Dr.エッグマンの高笑いが部屋に響き渡り、生徒達は初対面の老人(Dr.エッグマン)のいきなりな振る舞いに面食らって硬直した。

 

「博士、急な自己紹介で皆さんが混乱してます」

 

 呆然とする生徒達の中で唯一動じていないアンナがDr.エッグマンにツッコミを入れたがDr.エッグマンは気にする様子もなかった。

 

「フッフッフ、何とでも言うがいい。ワシは今最高に機嫌が良い。さて、改めて言うがワシがこのエッグパイオニア及びエッグマンランドの主、Dr.エッグマンである。此度の暴動において君らを救助したのはワシじゃ。加えて言えばベッドも朝食も用意した。一宿一飯の恩がおかわり一杯の盛り沢山じゃ」

 

 Dr.エッグマンはつらつらと『事実』を並べる。

生徒達もDr.エッグマンが命の恩人ということは理解している……同時に何らかの対価を求められるであろうことも。

アンナ達が救助前に『奴隷になることはない』と説明こそしていたものの、不安の種は尽きなかった。

 

「で、オヌシらにワシが実際いくら程かけたのかといえば……一人頭この位じゃの」

 

 Dr.エッグマンが指をさすといつの間にかDr.エッグマンのそばに浮遊していたモニターに救助にかかった費用の帝国幣換算が表示され、その金額に生徒達は騒然とした。

 

「うわぁ、たっか!こんなにかかってんの?!」

 

 ロザリンの驚きは生徒達の思いを代弁していた。

その費用はウルサス帝国下級役人の給与一年分に相当し、平民の……それこそ職を持たない生徒となれば払うのはかなり難しかった。

一方貴族生徒についても、普段なら支払い困難という程ではないが縁戚を頼るにしては大きい金額であるため容易ならざる話に頭が痛くなった。

些か落ち着いているのは既に覚悟を決めていたアンナ達四人と他の生徒より先に去就を定めていたナターリアだけだった。

Dr.エッグマンは話を続ける。

 

「ワシとて無慈悲ではないが浪費家でもない。よってオヌシらにはこれからワシが言うことに従って貰う」

 

 Dr.エッグマンが合図をすると列の中から複数のCASEALが歩み寄って生徒達を取り囲む。

思わず身構える生徒達だったが、CASEALは彼等に近づいて次々に何束かの冊子を手渡し始めた。

受け取った生徒達が恐る恐る表紙を捲ると、そこにはウルサス公用語で複数の質問項目と『農家』『裁縫師』『接客業』といった幾つかの職業名にそれぞれの平均月収が記載されていた。

 

「あの、これは?」

 

 男子生徒が手を挙げてDr.エッグマンに尋ねた。

 

「働かざる者食うべからず、身代金は金か労力で払うがよい。オヌシらはこれより我がエッグマンランドの国民として手に職を持って働いて貰う。エッグマンランドで働く限りはその労を以て相殺してやろう。じゃがエッグマンランドから去るというのならその分を稼ぐか支払うかして貰う。当然の話じゃ」

「えっ?お金、貰えるんですか?」

「当たり前じゃ。ワシはワシの為に働く者への見返りは惜しまん」

「……その、奴隷や強制労働者みたいにはしないんですか?」

 

 Dr.エッグマンの説明に対して不安が拭いきれずに女子生徒がかねてからの危惧を述べると、Dr.エッグマンは呆れたような仕草で言葉を続けた。

 

「ワシにかかれば奴隷だの何だのにさせるような仕事はワシの誇るロボット軍団に任せるほうが一番効率的じゃ。オヌシらを奴隷にしたとしてもそのほうが無駄というもの。それにワシにわざと奴隷を痛めつけて楽しむ趣味はないし、給料を渡してワシの為に自主的に働いてくれるほうが遥かにいいわい。それにそこに書いてある職業はロボットにやらせるには小回りが利かんものでな。ワシとしても人手はあるに越したことはない」

「ほ、本当にお金を稼げるんですか!?」

「どこかの鉱山送りじゃなくて?!」

「望めば出国もできるんですか?!」

 

 一斉に質問する生徒達。

 

「ええぃ!人の話を聞かん奴らじゃ、このワシがそうじゃと言っているのだから素直に話を聞け!ワシはオヌシらに恩を返せと言っているだけで、その方法としてワシの挙げた職業で働けというシンプルな理屈じゃ!嫌なら金を払え。判ったな?」

 

 Dr.エッグマンが鬱陶しそうに答えるが、生徒達のざわつきがなおもは止まらないのは無理もない。

他の国でもそうだが、身寄りのない子供というのはえてして明日を生きるにも事欠くどころかどのような悪意に曝されようとも抵抗することは難しい。

ウルサス帝国でもそうした子供は浮浪児として裏社会に組み込まれてすりつぶされるか、その日暮らしをする内に【鉱石病】に罹って死を待つようになるのが大半だ。

どこかの家の庇護を得る、孤児院等の支援組織に保護されるという幸運も無いわけではないが、そうした機会が子供達全てに与えられるには……【天災】に脅かされる世界にまだ余裕はなかった。

その点においてDr.エッグマンの命令はいわば就労支援のようなもので、あえて言えばロドスの感染者支援のそれに近いものがある。

但し、施策の根底に根付く思想については悉くDr.エッグマン本位であり、ロドス等のそれとは対照的であるが。

 

「希望の職とアンケートに答えたらロボットに渡すがいい。チェックした後にそれぞれの適正検査をする。あぁそうじゃ、除染処理を終えた者から始めるように」

「すみません、『除染』とは何を?」

 

 顔に怪我をした男子生徒が尋ねると、何を今更とDr.エッグマンが答えた。

 

「源石粉塵に決まっておるじゃろうが。排煙浄化や産業廃棄物処理が未熟なせいで都市の空気や水はあまり澄んでいるとは言えん。そんな環境に身を晒しておったオヌシらはいわば【鉱石病】保菌者のようなもの。(じか)だったり体内に高質度の源石が触れでもしない限りは問題ないとはいえ、我がエッグマンランドでは源石性物質の除去処理は義務とする。判ったな?」

 

 Dr.エッグマンのまるで朝の掃除担当を決めるかのような気楽さで発せられた言葉は生徒達のざわめきを一気に途絶えさせ、強烈な絶望感を叩きつけた。

『自分達は【感染者】予備群だ』と宣告されたに等しいからだ。

殆どの生徒が、ソニアやロザリン、ナターリアですら顔面蒼白となった。

唯一、先にDr.エッグマンとの邂逅を果たしていたアンナだけは表情を変えずむしろ納得した面持ちであった。

 

「……博士、私達は、あまり長くないのですか?」

 

 ナターリアが縋るように、そして受け入れたくないように、掠れた声でDr.エッグマンに尋ねる。

だがDr.エッグマンのほうも寧ろ困惑していた。

生徒達の豹変をいまいち理解できなかったからだ。

 

「何を大袈裟な……」

 

 そう漏らしたDr.エッグマンの発言に生徒達は一気に激昂した。

 

「バカにしてるのか?!【鉱石病】だぞ!」

「【鉱石病】に罹っているかどうかを『大袈裟』だなんて……私達の命はどうだっていいって言うの?!」

「【鉱石病】だったら、僕達どうすりゃいいんだよ……」

 

 パニックの度合いが加速度的に増していく。

生徒達の中では一番落ち着いている部類のソニアですら顔を青ざめさせていた。

テラの住民にとって【鉱石病】は言うまでもなく絶望的なまでの死病であり、発病すれば文字通り人生が終わる最悪の病である。

【鉱石病】患者の立場はいずれの国においても決して良いものではなく、良くて『○×の所は扱いがまし』の評価以上の場所は僅かしかない。

そしてウルサス帝国は感染者にとって『最悪』の一言に尽きる。

ここにいる生徒達も感染者の境遇は目の当たりにしている上に、巻き込まれたチェルノボーグ暴動の根本的な原因は感染者の境遇にあるのだから自分達が【鉱石病】に罹ったとなれば洒落にならない。

『自分達も虐げられた感染者と同じ末路になる』

と知って取り乱さないウルサス人は誰一人いないだろう。

これは【鉱石病】が存在しない惑星から偶然テラに来訪することになり、しかも【鉱石病】を

『今のところ完治の見込みがない癌。但し延命は充分に可能』

という程度にみなしているDr.エッグマンとの間に存在するどうしようもない認識の差であった。

 

 生徒とDr.エッグマンとの間に認識のズレがあると気づいたアンナは、恐慌状態になりつつある生徒達の群がりから抜けてDr.エッグマンに近付きDr.エッグマンに耳打ちするべくしゃがむように促した。

 

「博士、博士」

「なんじゃい、急に」

 

 縦横共に大きいDr.エッグマンはアンナの顔の位置に合わせてしゃがみこんだ。

 

「博士は非常識なレベルの科学者なんですから、皆に博士の根拠をちゃんと話さないと全く伝わらないし何一つ判るものじゃありません。第一博士のやることなすこと【こっち】じゃ大抵奇想天外なんですから、博士基準で話をされても誰もさっぱり判りませんよ」

「なるほど……オヌシ今の言い方に何か棘がなかったか?」

本心(気のせい)です。なのでまずナターリアさんの質問に答えてあげて下さい。別に皆さんが『【鉱石病】に罹って余命何年』みたいなことはないんですよね?」

「そりゃそうじゃ。少なくとも乗船時の簡易なバイタルチェックを診る限りでは誰も発病はしとらん。暴動の戦線に長時間居ったならその限りではなかったが、あの高校に押し込まれておったせいか源石被曝した様子は見られなかったからの」

「だったら『この場にいる生徒に感染者はいない』と言ってあげて下さい。帝国じゃ感染者というのは判った瞬間に人生が終わる程に恐ろしいものなのです」

「やれやれ、罹患の有無よりも対策や処置のほうに注力するほうが合理的じゃろうに」

「それが出来たら誰も苦労はしないですよ。次に博士、『除染』というと私が最初に博士と出会った家にあった『クリーンルーム』とかいうアーツ抑制部屋を使うんですか?あれってワンルーム位のサイズがあったと思いますが、この船にそれを持って来たんです?」

「その通り。いや正しくは『持って来た』ではなく『量産』した、じゃな」

「えっ」

 

 アンナは目を丸くしてとんでもない事を言う丸い男(Dr.エッグマン)を見る。

 

元タストント(あの街)に限らず、この惑星は【天災】の影響で廃棄された都市や移動都市の一部が各地の至る所にある。故に洗浄と除染を施せば建造に向いた資材や貴金属等の素材に困ることはない。ある意味『都市鉱山』といった所じゃな。劣化や低品質なものも多いから再利用するには一手間加える必要はあるが、一々【アーク】で生産した資材を地上に持ち込むよりかは効率的じゃ」

何言ってんのこの人(そうですか)、流石は非常識の見本市、エッグマンランド万歳」

「フッフッフ、よいぞよいぞ。それで?」

「とにかく『クリーンルーム』であれば【鉱石病】予防が出来るかもしれませんよね?」

「うむ。あれはアーツ技術の源になる空気中の源石粉塵や触媒の源石製品、体内の源石性物質に干渉と除去を施すことで無害化させるものじゃ。源石性物質の体内許容量が一定値を超えた時に【鉱石病】が発病するというワシの予測が正しければ、無害化と同時に【鉱石病】予防も出来るじゃろうな」

「流石です博士。ではそれを踏まえて説明お願いします。そんなことができるトンデモ科学者……じゃない、とんでもない科学者は博士しかいませんよ」

「フン、良かろう。ワシに任せるがいい」

 

 アンナと話し終えたDr.エッグマンは未だ混乱する生徒達に向き合うと高らかに笑い出した。

 

「オーホッホッホ、怯える必要はない!我が名はDr.エッグマン!世紀の天才科学者がオヌシらの無事を保証しよう!オヌシらは【鉱石病】に罹患しとらんし、これからオヌシらが【鉱石病】に感染せぬようにしてやる!」

 

「「「えーっ?!」」」

 

 再び生徒達は喧騒に呑まれる。

『【鉱石病】に罹らなくなる』という常識外れの言葉に強い衝撃を受けた彼らは今までの常識破りも相まって只管驚き通しであった。

 

「少なくともオヌシらの中に【鉱石病】患者はおらん。じゃが念には念をいれて今からオヌシらにはワシの開発した源石性物質無害化装置、『ECR』に入って貰う!とりあえず五分程入れば問題ない。服も着たままで結構じゃ。ロボット共に案内させるから、グループに別れてついていくように。『ECR』の後で職業アンケートに答えるのを忘れるなよ。では、移動開始」

 

 生徒達はこぞってロボット達の後に従う。

【鉱石病】を防ぐと言われれば従わない道理などなかった。

 

 生徒達が動き出す中、Dr.エッグマンはアンナ達を呼び止めて宣言した。

 

「『ECR』除染後は作戦会議じゃ、忙しくなるぞ。後でロボットをオヌシらの所に向かわせるのでその者共について来い。数日したらにチェルノボーグに出発するからな!」

 

 いよいよDr.エッグマンによるチェルノボーグ侵略が始まろうとしていた。

 


 

進撃の反乱者

乱入の侵略者

滅亡の旧時代




◆Q:どうして空に出て屋内でもないのに寒さ対策できてんのさ?何で寒さ対策は出来て風圧はそのまま通るのさ?
A:てめーそれ移動都市以上の移動国家たるラピュタさんの外縁部でも同じこと言えんの?

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