The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
「思った以上にサルカズ濃い……全員がテレシス麾下になったわけじゃなかろうけど(非ロドスだとマドロックとかいるし)これからの収束というか進展が読めない」
◆ホルハイヤの解説をYoutubeで見たぼく
「
(まぁあの人は「取り戻したい」のだから性質が違うんだろうけど)
◆【孤星】を進めるぼく
「判らない……テラの科学ツリーが判らない……航空機も航空技術も思った以上にある……?」
◆完全オリ展開しているためシナリオ進行チェックでメインストーリー1章等の会話シーンを見直すぼく
「Scout……Ace……ツライ」(さっきまで命だったものが辺り一面に転がっていく様を見返しながら)
◆2024/07/04追記
何のためにここにいる
彼の体を巡るものが血潮以外にあるとすれば、それは間違いなく憎悪を脂にして燃える憤怒の炎だろう。
そしてその炎はこのチェルノボーグで生まれたと言っても過言ではない。
彼にとってこの都市は揺り籠であり、墓穴であり、そして遺品であった。
最初、彼は科学者の父と優しい母と姉を持つ普通の少年アレックスとして生を受けた。
北方の寒気に身を震わせながらも、小春日和の木漏れ陽のような日々はこれからもずっと続くと少年は思っていた。
しかし少年は【鉱石病】に罹った。
軍事警察に叩きつけられた床から伝わる身を凍らせるような冷気と、それとは全く逆の身体が燃えるかのような痛みが少年に刺さり、一瞬でその幼心を息絶えさせた。
こうして、彼はアレックスとしての生を終え感染者として生きざるをえず、同時に両親を喪い姉と離別した。
少年が憎悪の脂で亡くした心に火を入れたのは、この時からだった。
家族、家、暮らし全てを失い灰も同然になった少年は過酷な労働を押し付けられ、これまでと一変した生を甘受しなければならなかった。
鉱山では感染者という理由だけであらゆる状況で敬遠と見下しを受け、正当な報酬は得られず、食糧も管理者である軍管区長が貴族から瑕疵の咎を受けない程度の分しか支給されない。
僅かに居た、子供だからと庇ってくれた同じく収容された労働者は不幸なことに彼ほど頑強ではなく、一度風邪に罹った後は塵芥のように死んでしまった。
許せないな、ああ、赦せない、恕せないとも。
彼はそんな死んでいるも同然の世界でただただ心に脂を注いで生き残り、死体投げの穴と同義の採鉱場から脱出して以降、同じく感染者だった『クラウンスレイヤー』ことリュミドラと共に【レユニオン】の『
彼は新たな同胞達の為に働き、尽くし、そして戦った。
幼いながらもウルサスの肉体と彼の精神力は仲間にとって少なくない貢献を果たし、認められ、慕われていった。
そしてタルラ率いる感染者の協同体と合流し、彼女の指導の許に進撃を続けた。
そして現在、彼は自身よりも年上の部下を持ち、彼専用の武装を許される幹部の役割を得ている。
就任当初はそうした立場に微妙な居辛さを感じたことがあった。
しかしレユニオンの中でも
今となってはレユニオンこそが彼の家族であり、家であり、暮らしである。
だからと言ってチェルノボーグの全てが彼にとって無価値となった訳ではなかった。
チェルノボーグはアレックスだった頃の彼にとっての墓地であるが、同時に未だ諦め切れないものがまだ残っている土地でもあった。
というのもアレックスの両親は彼の前から死に去ったが、遺された姉はまだチェルノボーグのどこかに居るらしいと蜂起のために先に潜入した工作員から教えられたのだ。
スカルシュレッダーは大いに悩んだ。
生き別れの姉についてはレユニオンとは全く関係のない私情の話であり、ここ大一番を迎えるチェルノボーグ蜂起を蔑ろにして私情から部下を使うわけにはいかなかった。
彼の気掛かりな事は他にもある。
それはレユニオンは今これまでになく人員が膨らんでいる点だ。
タルラが避難民の噂や独自のルートから入手した情報のお蔭で、レユニオンは汚職軍隊や貴族が不正に貯めた財産をしまい込んでいる秘密倉庫の数々を発見できた。
其処等から得た物資を元手に組織の戦力増強に費やした結果、レユニオンはチェルノボーグに攻撃を掛ける程の準備が整ったものの、その過程でレユニオンに加わった者達の大半が【鉱石病】に罹って日が浅い者、周囲から感染者として迫害を受け追い詰められて入ってきた者ばかりなのだ。
彼等はスカルシュレッダー達とは違いそこまでレユニオンに思い入れがあるわけではなく、何となれば最近まで野盗崩れだったような者達も混じっており組織の纏まりや統率の点で非常に難事だった。
そうした不穏分子はチェルノボーグ蜂起直前までにタルラやパトリオット、フロストノヴァが締め上げたことで鳴りを潜めているが、もしもここでスカルシュレッダーが私情を優先して姉探しに奔ってしまえば彼等も我先にと暴走して統率が崩れるだろう。
いくら自身が年少であっても、立場は一つの隊を与る隊長であり統率を乱す行為はレユニオン幹部として許容できるものではない、というスカルシュレッダーとしての
とあの日死に絶えた少年がずっと抱いていた姉に会いたい、というアレックスとしての
その二つがスカルシュレッダーの心に万力で締め付けるような苦痛を与えていた。
しかし、驚くべきことにスカルシュレッダーの副官である初老のウルサス人は苦悩するスカルシュレッダーの様子を察して彼に話しかけてきた。
明らかに苛立ちや不安を抱いている、並の構成員を圧倒する実力を持つスカルシュレッダーに対して、だ。
副官の命知らずとも言える度胸と年季を経た問い掛けに根負けしたスカルシュレッダーが姉の事について語ると、彼はすぐに他の主力メンバーを集めて作戦会議を開き、その場で戦術的に問題ない程度に姉探しの行動を盛り込んだ作戦立案を行ったのだ。
唐突な姉探しのチャンスに困惑するスカルシュレッダーを余所に副官含む部下達は彼を担ぎ上げて参謀部に突貫、チェルノボーグ蜂起の細部がまだ最終決定に至っていないのを狙って参謀部員達を言いくるめ、結果スカルシュレッダーが制圧した街の捜索を行うだけの時間的余裕を勝ち取ったのだった。
何故こんなことを、とスカルシュレッダーは尋ねる。
我等が隊長が悩んでいるのを見ていられなかった、と部下達は答える。
スカルシュレッダーはマスクが濡れるのを止められなかった。
スカルシュレッダーは決心した。
仲間が作ってくれた最高のチャンスを一片足りとも無駄にしないと。
必ず姉をチェルノボーグから救い出し、姉に己の新しい
故に、パトリオット並びにフロストノヴァ隊の連名による参謀部からの伝達は彼にとって到底許容できるものではなかった。
◆チェルノボーグ・北東部◆
◆スカルクラッシャー戦線◆
「ふざけるな、臆病者!敵を前にして尻尾巻いて逃げろってか?!」
スカルシュレッダーは倒したロボットの腕にグレネードランチャーの銃剣を突き刺して激怒した。
大型ナイフ程の刃渡りを持つ銃剣はウルサスの膂力と相まって威力を高め、ロボットの鉄の腕を完全に両断した。
「オージン!」
「
スカルシュレッダーの副官の名を呼ぶ声に合わせ、スカルシュレッダー隊の副官は切り離された腕から素早くロボットの突撃光弾銃を奪い取ると、今も前線を圧迫してくるロボット軍団に対して銃口を向けて撃ち返し始めた。
「(やるやないか。下手に年食って偉ぶってる連中より真っ当に隊長しとるやんけ)」
戦線の各所で部隊の崩壊が進む中、スカルシュレッダー隊の統率がパトリオット隊やフロストノヴァ隊に劣らない様子を見てパトリオット副官は内心舌を巻いた。
構成員の大半が鉄棒や粗悪なボウガン等で武装しているせいでロボット群団の装甲に歯が立たない一方、スカルシュレッダー隊はリーダーが斬り込み敵から武装を奪い取ることでロボットに対抗できる手段を得ている。
並行して隊員達は撃破したロボットを転がし遮蔽物に仕立て上げて向こうからの攻撃を凌いでおり、そうした適切な戦闘判断がスカルシュレッダー隊が今もなお最前線で戦い続けられていることを明らかにしていた。
「(そりゃ自分らはあの手この手で遣り繰りして踏ん張っとるのに、他所のせいで台無しにされたら嫌になるわな)」
「失礼、スカルシュレッダー隊長。一先ず向こうを押し返します……総員、伏せて耳を塞いで!」
そう言いながらフロストノヴァ隊員は腰のポーチから巻殻魚の法螺笛を取り出す。
スカルシュレッダー隊が大急ぎで彼女の前から身を隠したのを確かめ、ロボット軍団の方を向き、笛を構え、息を吸い。
B o o o o o o o o o o o o !
彼女のアーツ技術と合わさった強力な振動が前方のロボット軍団に襲いかかり、正面に居た楕円型のロボット達はさながら弾き出されたラグビーボールの如く転がり後方のロボット達にぶつかってボウリングのピンのように倒れていく。
P i i i i i i i i i i i i !
追い討ちで法螺笛をロボット近辺にあった集合住宅に向け振動波を撃って崩落させ、ロボットの一群を瓦礫の山に閉じ込めた。
「これで仕切り直しね」
「あんがとさん」
パトリオット副官はフロストノヴァ隊員に謝意を述べ、彼女が一仕事終えて法螺笛の吹き口を
「確かにスカルシュレッダー隊は他の所に比べ類を見ない程に善戦しております。ですが残念ながら他の戦線が崩れている以上、スカルシュレッダー隊だけがここで抗戦していても状況は改善されません。このままではスカルシュレッダー隊だけが敵中に取り残されて孤立してしまいます」
「違う!逆にここで下がったら敵はもっと戦線を押し上げてくる、そうなれば反撃するのがどれだけ大変か判らないのか!?今は下がるんじゃなくてとにかくロボットを押し込むんだ!」
スカルシュレッダーがパトリオット副官の胸ぐらを押し込むように掴む。
一方ウルサスの強靭な力を持つ彼の怒りをパトリオット副官は不動にして受け止めて言葉を続けた。
「戦線後退が今後に響くのは此方も判ります。ですが戦線維持するにはもう手遅れなのです。主力部隊以外の所が崩れている為にレユニオンは戦線は既に穴だらけになっており、このままではスカルシュレッダー隊であっても包囲されて殲滅されかねません」
「だからって!」
「いいえ、チェルノボーグの寸土を求めてスカルシュレッダー隊を失うほうがレユニオンにとって損失なのです。タルラ様も参謀部も隊長や隊員達のことを強く気に掛けておられます。故に後退の際はスカルシュレッダー隊を援護しろと我々はパトリオット隊、フロストノヴァ隊双方から命令を受けました……レユニオンは決して部隊を見捨てません。スカルシュレッダー隊員の全員を帰還させることに死力を尽くします」
「……!!」
スカルシュレッダーの喉から声にならない音が漏れだす。
彼とて今の状況が決して楽観できるものではないのは理解している、そして後退がスカルシュレッダー隊の活路であることも。
フロストノヴァ隊員のアーツやここまでたった二人で前線まで移動できたパトリオット副官の実力を鑑みるに、彼等の援護があれば部隊は恐らく最低限の負傷だけで戦線を離脱できるだろう。
おまけにスカルシュレッダー隊はロボットに通用する武器を持っている。
それらが弾切れしない内に下がるのが戦術としては正しいのだろう……しかし。
「(姉さん……)」
チェルノボーグに残る
あの時喪ったものが目の前にあるというのに、指をくわえて見ているだけしかできないという現実が、彼の脳を怒り、焦り、苛立ち、不甲斐なさの感情で揺さぶった。
「(もういっそ、部隊は下がらせて、俺だけで突っ込んで、姉さんを)」
狂いそうになる程の激昂と絶望感に満たされたスカルシュレッダーはマスクの下で唇を噛み口角をへしゃげる程に曲げ、そして。
「パトリオット隊の副官さんよぉ、悪いがハイそうしますと頷ける話じゃないんだわ」
突撃光弾銃を担いだスカルシュレッダー隊副官の言葉を聞いて思わず彼の方を見た。
「オージン副官、その理由は?」
パトリオット副官がオージン副官の方を睨み付けると、彼は普段は外さない白貌の仮面を外してパトリオット副官を睨み返す。
【鉱石病】によって右目の眼窩に源石が生えたために視力を失い、同時に皮膚が裂けて歪んでしまった顔を晒したオージン副官は落ち着いた声でパトリオット副官に話しかけた。
「こっから向こうにな、俺達の隊長が無くしてた忘れ物があるんだってよ。隊長はよ、ずぅっとその事を気に病んで、悩んで、それでも俺達の隊長であろうと勇敢に戦ってきたんだ。俺よりもずぅっと若いボスが、だ。俺達はさ、そんなボスを見てきたからボスの為に何かしてやりたいと思っているわけだ。ならば、隊長の忘れ物を探しに行くくらいは全力で手伝ってやりたいわけなんだわ」
「ああ、そうだな」「隊長が前に出るなら俺達は追いかけないとな」「無くしたものがまだ残ってるなら拾いにいかないと誰かに盗られちまう」
オージン副官の言葉にスカルシュレッダー隊の隊員達が同意の反応を返すのをフロストノヴァ隊員は感心したように見つめ、スカルシュレッダーは唖然とした様子で佇んでいた。
そして一拍置いた後、オージン副官はスカルシュレッダー隊員達の決意を改めて言い放った。
「だから、俺達の隊長が下がらないって言うなら俺達も下がる訳にはいかねぇんだ。隊長が諦めていないのに逃げ出しちまったら、俺達は腰抜け以下の糞袋になっちまう。だから頼むぜ、俺達を糞袋にしないでくれ」
突撃光弾銃を構え直すオージン副官のそのような
黙って得物や奪った武器の手入れを始める部下達の
そこには
「(ああ……ああ!)」
思い出せ、お前は誰だ、アレックス。
アレックス、お前は、『スカルシュレッダー』だ。
スカルシュレッダーは、お前の、
アレックスは、そんな餓鬼の我が儘を見たお父さんやお母さん、姉さんが喜ぶと思うのか?
スカルシュレッダー、それは、違うだろうよ。
「……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああaaaaaaaaaaアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAァァァァァァァァァァ!」
「!?」「ちょっ?!」「た、隊長?」
その場にいる者全てを震えさせた
両手を握り締め空を仰ぐスカルシュレッダーの発するそれは、先の対ロボットの銃撃戦の時よりも轟き、フロストノヴァ隊員によるアーツよりも大きく響き、まるで周囲の雑音を全て吹き飛ばしたかのような声だった。
しかし、それは群れの味方を鼓舞する猛々しい雄熊のような咆哮では決して無く。
ただ独り遺され凍えるような空の下にいる子熊のような寂しい鳴き声だった。
「……撤退だ」
「……隊長、いいんですか?」
「いいんだ、
副官の躊躇うような問いに対するスカルシュレッダーの答えは火の落ちた竈のように静かなものだった。
スカルシュレッダーは炭の煤けるかのような声で続ける。
「作戦用に温存していた源石爆弾を使い、敵の反撃タイミングに合わせて起爆するよう設置しろ」
「ヤー。おし、お前ら!さっさと片付けるぞ!」
オージン副官はスカルシュレッダーの決断に敬意を表して自身の胸に拳を打ち付けてから撤収準備にかかった。
「……俺は、絶対に諦めないからな」
スカルシュレッダーは空に浮かぶ大型船を睨んで呟いた。
◆チェルノボーグ・中央部◆
◆
一歩一歩、それはまるで夕闇に染まる住宅街の歩道を独り歩くかのような歩み。
しかし彼女の周囲はそれに反して爆炎と瀑水轟く地獄の釜のような有り様だった。
街路樹は炭化し、ガラス窓は沸騰し、コンクリートや石の壁は熱膨張と水冷で粉微塵に破砕された。
暴徒への妨害用に置かれた車や積み上げられた土塁なども温度差による空気の激流によって今となっては彼女の視界の端に追いやられている。
まるでこの辺り一面がぽっかりと未整備地区であるかのように何も無くなっていた。
道路が唯一無事なのは偶然でも彼女の慈悲でもなく、ただ単に歩けなくなっては困るからだろう。
彼女の行く先に最早あらゆる生命の逃げ場はない。
現に彼女と先に対峙した軍事警察の痕跡は見る影もなく、精々後の戦史記録で『展開していた部隊は消息不明』と記されるだろう。
しかしなお彼女の火砕流進撃が本来の予定よりも遅くなっているのは生命あらざる物達が原因だった。
ガッシャンガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン……
生身の部分など無いにも関わらず消防士のような防火服をわざわざ着込み、加えて
爆風で何度吹き飛ばしても上空や周囲から援軍のロボットが押し寄せてくるせいでロボットの壁は一向に薄くならない。
その後方からは緑、青、赤、紫、黄の光……重厚な鎧の如き体を持ったロボット達が前衛のロボット越しに遠距離から光弾を撃ち込んでくるため彼女は思うように先へ行けなかった。
「……」
おのれ……どこからともなくわらわらと
灰色の瞳が前方に広がる透明なレンズ群を睥睨する。
汗一つかかない無感情の顔のはずなのに、その瞳の奥底には憤怒の泥が蠢いていた。
「きりがないわ」
まるで湿原に湧く羽虫のようだ
彼女はそう独り言ち、彼女に群がるロボットを爆風で一気に吹き飛ばした。
「タルラ様!」
アーツによる絨毯攻撃を区画全体に拡大して発動することで強引にロボットのウェーブを押し流した彼女の足許、辛うじて無傷だったマンホールの蓋が開くとそこから前線偵察に赴いていたクラウンスレイヤー隊の構成員が顔を出した。
「ロボットは居ないわよね……参謀部から連絡がありました、これをご覧下さい」
地表に出た偵察構成員はポケットから折り畳まれたチェルノボーグ地図を取り出して彼女の前で広げる。
それには主要建築物を中心に赤字で線や丸が書き込まれており、何らかの作戦意図があることを明確に示していた。
「戦線の各部隊は後退して態勢を整え始めました。スカルシュレッダー隊がやや遅れていますが、直に本隊と合流すると思われます。で、ココとココですが……北部と南部の高層監視塔。北はWと傭兵隊が、南はパトリオット隊が発破の準備を完了しました。他にある高層建築物も別の部隊が工作を既に終えております。あとは貴女様の力が必要です」
「アレックス……そう、良かった」
足止めを喰らい過ぎたな
彼女はホウと一つ溜息を吐いた。
「了承しました……貴女も直ぐに西部の再構築戦線に向かいなさい。但し、貴女は地上を行って戻るのですよ」
忌々しいものだ、全く
構成員の背が指示通りに走って西方に向かって離れていくのを見届けた後、彼女は得物の細剣でおもむろに自身の掌に傷をつけた。
血の雫がぶわりと溢れる掌をマンホールのとれた下水道にかざし。
「地に満ちよ、我が血よ地に満ちよ、われらのいしよ、地に出でよ」
言の葉が紡がれた。
アーツ攻撃から復帰し再び増援を得たロボット群団が棒立ちする彼女目掛けて殺到する、その時。
ロボットのセンサーが足許からの高出力エネルギー及び巨大質量の存在を探知、そしてそのままセンサー間を繋ぐ配線や基盤、動力回路全てが突如現れた突起物によって引き裂かれ、滅茶苦茶になって機能を停止した。
◆◆◆
退却していた偵察構成員は背後からの風圧と爆音によって思い切り吹き飛ばされ、蹴られた空き缶のように二転三転道路を転げ回った。
「…ぉ゛、あっ」
うつ伏せになって倒れた構成員は未だに視界の揺れる頭を抑えながらも起き上がった。
もしも転倒した場所に瓦礫があったら、或いは傍聴用の聴音機がセーフティプログラムを実行していなければ構成員は瓦礫か音圧のせいで脳を掻き回されていたことだろう。
「タ、タルラ、様は」
どうにかして元来た道のほうを見る。
構成員が聞いていたのはタルラのアーツによって下水道の排気ガス管を爆破して道路を寸断すると言うものだったが、あの風圧は予想以上でありタルラも危険なのではと思ったからだ。
「……なっ、これは……?!」
構成員の目に飛び込んできたのは壁、それも棘のような、いや。
「源石が、何故こんなところに?!」
建物の背丈以上ある巨大な源石群の塊達がまるで都市を分け隔てるかのように屹立していた。
「きょ、局地的な【天災】が発生したの?!いや、それよりも、タルラ様、タルラ様!?」
力の籠らない足をどうにか立たせようとしながら源石塊のほうを見る。
もし万が一タルラがあの【天災】に巻き込まれたならば極めて致命的なトラブルだからだ。
しかし焦る構成員の持つトランシーバーから水のように透き通った声が流れてきた。
《分断作戦は完了しました。各員は指定の位置まで後退が終わった者から随時治療や補給を始めなさい。上空からの飛来や瓦礫の落下に注意なさい》
構成員は膝をついてその場に伏せ、深い溜め息を吐きながら安堵した。
◆◆◆
「……」
一体、何なのだろうな、
彼女の前に聳える源石塊は半透明な黒色の中に濃い青色を湛えながら佇んでいる。
ロボットの稼動音やアーツ攻撃の爆音は一切聞こえなくなり、まるで音が全てここにある源石塊によって吸い取られたかのような静けさとなっていた。
「これであれらの足は一先ず止まるわ」
ああ、ウルサスが源石に侵されるなど……
先程までは彼女のアーツによって更地となっていた道路は最早源石塊の壁によって埋め尽くされていた。
これを突破するには生半可な装備では汚染のリスクがあり、無闇に近づく者は居ないだろう。
加えて源石塊の発する膨大なエネルギー波が機械の動作を阻害するためロボットもおいそれと展開することはできない。
その証拠に彼女が源石塊の棘の先を見ると、出現に巻き込まれつつも比較的損傷が少ないはずのロボットが彼女を狙うことなく糸の切れた操り人形みたくその丸々とした胴体をくるくると回して転がり落ちていった。
「ロドスアイランド、という者達も既に遠くに行ってしまった以上、今日の歩みはここまでね。でも私はあなたを許しはしないわ、空の異邦人。そしてロドス、私はあなた達のいしを忘れはしないわ、いつかまた会いましょう」
しかし、もどかしい。かの魔王が近くに居ながら何も出来ないというのは
彼女の独白の後、他のレユニオン隊が発破したであろうビル群や監視塔等が倒壊し始めた。
それを確かめた彼女は眼前の源石塊に近づくと、徐に自らの額をそれには当て、目を瞑り、口を開く。
源石塊エネルギー波に侵されたトランシーバーが、音を立てて起動した。
「分断作戦は完了しました。各員は指定の位置まで後退が終わった者から随時治療や補給を始めなさい。上空からの飛来や瓦礫の落下に注意なさい」
◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。
◆個人的にアレックス君は爆豪君アバターで考えてますけど、彼って顔の露出したことありましたっけ?
◆文字数めっちゃ増えました。
大枠ができた頃は3000字位だったのでこりゃ短いなとか思ってましたが海老を衣で誤魔化しまくった天ぷらみたいにどんどん増えていきました。
読みにくかったら申し訳ないです。
多分衣の継ぎ足しは今後も行います(露骨な自己保身)