The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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かの老人の言葉は、【チェルノボーグ】を大きく分断することとなる。


EG-02.【チェルノボーグ】の終焉と再誕

「【エッグマンランド】……?それが、あの空の飛行物体の名前か?」

 

 ドクターがぼそりと呟く傍らでアーミヤには目の前の状況が何が何だか理解出来なかった。

街の上空に急遽出現した移動都市は、事もあろうにウルサス帝国の所属であるチェルノボーグに対して『世界の帝国』を自称したのだ。

現在チェルノボーグを攻撃している最中のレユニオンムーブメントに対して言い知れない恐怖を感じていたアーミヤだったが、全く違う方向性で奇想天外なことをこうも堂々と宣言をされてしまうとこれまでの考えが全て吹き飛んでしまうものかと、彼女は明後日の方向の思いを抱いていた。

 

 尊大な老人はそんなアーミヤの思いを余所に演説を続けた。

 

《早速だが、ここは確かチェルノボーグとかいう都市であったな。尤も、今のところ最早真っ当な都市とは言い難い程に荒れておるようだがな。そこでワシから提案しよう。この都市に居る者は、今すぐ我が【エッグマンランド】の軍門に降るが良い!さすれば、我が【エッグマンランド】の栄えある国民としての待遇を約束しよう!この都市丸ごと修理してやってもよいし、ある程度の食事と住居は暫く賄ってやっても良い》

 

「……アーミヤ、とにかく移動するぞ。あの移動都市に周囲が気をとられている間に【ロドスアイランド】に帰還する」

「あっはい、ドーベルマン教官。ドクター、私の手を」

「ありがとう、アーミヤ」

 

 アーミヤ達は再び動き出した。

 

「随分と大言壮語な語りだな、あの御老体。訛りは特にない、多少の癖はあるが流暢なものだ」

「Dr.エッグマン……一体何者なんでしょうか?エッグマンランドなんて移動都市も、空飛ぶ移動都市もどちらも聞いたことがありません。ドクターと同じ【鉱石病】の研究者なんでしょうか?」

「判らない。ドクター、とは名乗っているが言っている事は英雄譚に出てくる悪の大王そのものだ。判りやすさの点で言えばスタンダードな悪役すぎてレユニオンムーブメントのほうが現実的にすら感じる。とは言っても……もしもあのような個人の名前がつく空飛ぶ移動都市を容易く運用できる程の実権を握る男であるならば、それに見合うような大言壮語もしたくなるのかもしれん」

「それのおかげで此方としては避難の時間稼ぎになって助かりはするがな」

「ウーン、何ともいえない……」

 

 アーミヤ達は走りながら上空の移動都市について考察を交わす。

老人の放ったドローンはチェルノボーグの至る所に及んでいるらしく、移動中でも老人のスピーチは遮られることなく聞こえてくる。

それだけでも老人の、エッグマンランドの技術力や実力はかなりのものだと見て取れた。

 

 老人の派手なパフォーマンスを隠れ蓑に移動するアーミヤ達は、もう暫くだけそれが続くよう願っていたが、彼の次なる宣言はチェルノボーグ全体に一気に響き渡った。

 

《無論、我が【エッグマンランド】に従いワシに忠誠を誓う者であれば等しく【エッグマンランド】の国民として平等に召し上げてやろう。それは【鉱石病】とかいう体内に有害物質が蓄積する病に罹患している者だろうがそうでなかろうが構わん。望むのであればその有害物質を除去してやってもよい》

 

「えっ?」

 

 アーミヤ達は思わず立ち止まってしまった。

足が地を蹴る音が止み、周囲は静かになった。

 

 いや、アーミヤ達どころかチェルノボーグの人間全員が立ち止まっていることだろう。

老人はあろうことか、世界が苦しみレユニオンムーブメントが蜂起する引き金となりロドスが根治を命題としている【鉱石病】に対して、事も無げに『治療する』と宣言したのだ。

 

 このチェルノボーグを巡る争いの根幹を豪快にひっくり返す行いに、どこからか叫び声が響いてきた。

 

「ふざけんじゃねぇジジィ!【鉱石病】がそう簡単にどうにか出来るもんかよ!俺のダチは治療に一か八か託してみたが、結局は医者に好き勝手切り刻まれたあげく手術代で破産、有り金無くしておっ死んじまったよ!周りにゃあ誰も居なくなっちまったし、看取った俺が今度は感染者だ!【鉱石病】は呪いなんだよ!それをテメェならどうにか出来ると本気で思ってんのか?!テメェこそ頭に源石が回ってボケたんじゃねぇのか?!」

 

 感染者であろう男の声がアーミヤに突き刺さった。

 日々被害が拡大する【鉱石病】の悲劇はここチェルノボーグに限った話ではない。

アーミヤもまた感染者であった。

【鉱石病】にまつわる出来事の当事者になることはしばしばあった。

慟哭する感染者は『アーミヤだった』かもしれないのだ。

 

「(私も、ドクターやケルシーさん、ロドスの皆さんが居なければ……)」

 

 アーミヤは『あり得た今』について背筋を震えさせた。

それと同時に余りに【鉱石病】に対して軽率な発言した老人に静かな怒りを覚えたが、老人は先の叫びを拾って更に衝撃的な言葉を言い放った。

 

《ふん、藪医者に当たった事は同情するがそれはワシの知った事ではないわい。それにワシはただ事実を述べておるだけよ。ワシにかかれは【鉱石病】も……何じゃい横から?何、ふむ……なるほど。いいだろう!ならば至上の天才科学者たるDr.エッグマン様の実験の成果を見るがいい!確かにまだ試行数が足りんが、ワシが天才と称されるのに相応しい実力の持ち主である事をここで見せてやろう!》

 

 老人はモニター外で何者かと打ち合わせした後、画面を自身の撮影から研究室と思わしき場所に変更した。

そこにはアーミヤ達が見たこともない未知の設備がズラリと並んでおり、中央のモニターが映す所には卵形とダイヤモンド形をした大きな宝石がはめ込まれた装置が鎮座していた。

宝石にはチューブや配線のような物が複数付けられてはおり、特にレーザーポインタと吸引器のようなものが見る者の目をひいた。

それが示す先にはガラスケースがあり、中には源石との密接な関わりを持つ生物であるオリジムシが収容されていた。

 

《ヌワーハッハッハッハッハ!見よ!コレこそワシが()()()()()最初に開発した偉大なる発明品、『エッグ=リムーバー』じゃ!マシン、起動!》

 

 老人は高らかに謎の装置の起動レバーと思わしきスティックを倒した。

オリジムシの露出する源石部分にレーザーポインタが照射されると、吸引器のほうが轟音を鳴らしてオリジムシを吸い込み始めた。

オリジムシは吸われまいとガラスケース内で必死にくっ付いているが、その様子に次第に変化が訪れた。

 

「ド、ドクター!みてください!」

 

 アーミヤが驚愕の声をあげてドクターにモニターのある箇所を指差した。

 

 アーミヤ達が注目する所は先程レーザーポインタで照射されたオリジムシの源石部分だが、それが徐々に縮小していたのだった。

予想だにしない現象を目前にして、アーミヤ達は脇目もふらず浮遊するモニターに食いつくように近寄った。

吸引は1~2分程すると収まったが、そこには表面上はどこにも源石の見当たらないオリジムシがガラスケース内を動いていた。

装置が完全に停止したであろう音が聞こえた後、モニターは先程の老人がいた場所に自動で切り替わった。

 

《ふーむ、原始的な生物ならやはりこの程度のエネルギー含有か。体表に出ている分ならまだしも体内分のエネルギー変換はもっと効率化できそうじゃな……何じゃ?今ワシは分析結果を……かめら?回っておるなら早く言わんかい!グッフン、ヌワーハッハッハッハッハ!どうじゃ見たかワシの発明品を!蓄積していた原始的生物の有害物質は大きく除去されたわい!無論、これ自体はまだ試作品じゃからまだ人体に作動させてもここまで効率的ではないが、現時点でもある程度の除去は可能じゃろう。いずれは有害物質の完全除去も夢ではない。もしワシに従うならば優先的に除去実験の被験者にしてやっても良いぞ。このDr.エッグマン様には、不可能という文字がワシに許しを乞うのだ!ヌワーハッハッハッハッハ、ヌワーハッハッハッハッハ!》

 

 老人の高笑いがチェルノボーグにこだました。

 

 その後、アーミヤ達は更なる混沌の場となったチェルノボーグを辛くも脱出した。そしてチェルノボーグは都市区画が、

・【レユニオンムーブメント】が支配するブロックの【レユニオン】

・Dr.エッグマン率いるエッグマンランドに降伏して保護を求めたブロックの【エッグマンボーグ】

・ウルサス帝国の治安維持部隊が生き延びて確保したブロックの【正統チェルノボーグ】

にそれぞれ分裂した。ウルサス帝国は直ちに二者に対し

『テロリストは速やかに降伏し皇帝の慈悲を乞え』

との声明を発し、チェルノボーグを中心とする争いは割れた都市の統一を巡る次のステージに移行することとなる。

尤も、現実的には三者の中ではウルサス帝国がチェルノボーグ内で一番勢力が弱いという状況だった。

というのも、レユニオンムーブメントは組織の幹部それぞれが強力なアーツ術者であるために大規模な軍勢でなければ対抗が困難であったことと、エッグマンランドが自身の空中移動都市に加えて更に飛行船群を派遣、内部に搭載されていたドローン達によって瞬く間にチェルノボーグ内の一部を制圧したためであった。

 

 こうして、本来であれば感染者によって制圧されるはずだったチェルノボーグは世界の全く予想のしなかった都市へと変化した。

 

『感染者に厳しい一都市』から『感染者の建てた都市』『感染者にもよく判らない都市』となって世界からの注目を集めた。

 

 そのような事態を引き起こした1人の老人『Dr.エッグマン』。

 

 彼が何者なのか、世界の誰にも判らなかった。

 




◆いかがだったでしょうか?
本作はネット上で度々発生する
「ドクター名って変更できないの?」
「みんなはドクター名って何にした?」
という話題の中で
『なんだって良いんだよ。Dr.ドリトルでもDr.エッグマンでも』
といった趣旨の一文を見て強くインスピレーションが沸き上がったために生まれました。ソニアドやシャドゲのほうを遊んでいたのでエッグマンらしさがちゃんと出ていれば幸いです。
世紀の大科学者が【テラ】でいかに動くのかにご期待頂けたらと思います。
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