The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
\わ た し で す^o^/
返す言葉は(言い訳は沢山思いつきますが)ございません。その代わり、ではありませんが2話投稿です。
これからも拙作をどうぞよろしくお願いします。
暗渠に怪獣が潜むのはありふれた怪談の類だ
そして明るい街灯が並ぶ都市の底に
洗い流せぬ”怨情の
在るのもまた珍しくもない話だ
1097年4月・エッグマンボーグ地下水道
日の光が一切当たらない、暗く湿り匂いの籠る下水道。
雨や雪解け水、【天災】の余波による豪雨などの雨水は住民の足元にチェルノボーグの頃から張り巡らされている無数の下水管に流れ、所々にある貯水槽を経由して最も巨大な配管にたどり着く。
【移動都市】の静脈ともいうべき配管はDr.エッグマンによる侵略以降急速な整備が進められ、都市の建立以来後回しになっていた構造的不備や長年の利用による摩耗などが改善されていったが、レユニオンや旧チェルノボーグ区域については旧来の下水システムが稼働している。
特にレユニオン圏を跨ぐ配管は一部が源石塊によって寸断されている上、源石エネルギー由来の強い通信障害が発生しているため並のエッグマンロボットでは除去作業を行えない状態となっていた。
それはつまり、Dr.エッグマンの手の及ばぬエリアが地下に存在するということであり、敵対者にとっては格好の侵入経路ということである。
◆エッグマンボーグ・レユニオン間下水道エリア◆
Dr.エッグマンのロボットが活動していない下水道エリアの一角に、対源石エネルギーコーティングを施したメタルソニックが地上のマンホール入口から音もなく着地した。
[博士、指示された下水道のターミナルAに到着した]
メタルソニックは腰部に装備されたバックパックから通信機を取り出しそれを掌に置いて主であるDr.エッグマンに通信を取ると、通信機からはDr.エッグマンの全身像がホログラムで表示された。
《うむ、聞こえておる。よいか、メタルソニックよ。一時間前から不規則的な電波の発信がその下水道ターミナルA付近で観測されている。ワシのロボット共はターミナルAにはおらんし、エッグマンボーグ行政や民間の清掃業者もその辺りにはおらん。浮浪者や密入国者の線はゼロではないが、恐らくチェルノボーグ残党かレユニオンの連中である可能性の方が高い。万が一下水道の破壊工作をされれば厄介じゃ。ワシの足元でこそこそ動き回るネズミ共を追っ払ってこい》
[ミッションを受諾した]
メタルソニックの反応に合わせ、Dr.エッグマンのホログラムは下水道に関わる資料に切り替わった。
数秒ごとに更新される資料の中からあるデータがピックアップされる。
それはトンネル掘削に用いる大型ドリルのような機械で、今メタルソニックが立っている下水道パイプラインを丸々塞ぐ程のサイズをしていた。
《このエリアのラインには【LAVINIA】という廃棄物処理装置が備わっており、道内を巡回するように移動しておる。そいつは下水道内に蓄積した源石や源石含有生物の放つエネルギー波を観測すると優先的に処理しようとするんじゃが、都市に生えた源石塊壁のエネルギー波のせいでセーフティが狂っておるからたとえ対源石用コーティングをしているオヌシでも近くにいると巻き込まれるぞ。装置にはドリル部分に緊急停止用スイッチがあるから射抜いてしまえば一時停止するが、手っ取り早いのは装置よりも先に源石や源石含有生物を潰してしまうことじゃ。オヌシに渡した新兵器【エッグバキューム】のチューブを源石の塊に射出してやれば源石の処理と源石エネルギーをバッテリーに抽出できて一石二鳥じゃ。源石含有生物、例えばオリジムシやバクダンムシについてはバッテリーのエネルギーを使って光弾を撃てばよい》
メタルソニックのアイカメラに、通信端末からインストールされた下水道ラインの地下配線図が表示され始める。
《下水道の地図と不審電波を観測した地点のデータを送信した。地下はまだネットワークの構築が不十分じゃからこれ以降の通信は特定のポイントでなければ通じん。ポイントには送受信用の装置を配備するので指定ポイントに到着したら一度ワシに報告するように。よいな?》
[ラジャー。博士からの目標地点のデータを受信した。ミッションを開始する]
《頼んだぞ、メタルソニック》
通信が切れ、メタルソニックは隠密用に換装したサイレントブーツで歩き出す。
普段であれば高速のブーストブーツで移動するのだが、今ミッションのステージは下水道という閉所であるため反響音が轟いてしまうことから通常移動は徒歩で行うことになっていた。
まだエッグマン式電動力に換装できていない古い源石ランプの灯る人造の洞窟の中を、異星の究極ロボットが無音を纏って進んでいった。
◆◆◆
道中、故障により襲い掛かってきた暴走【LAVINIA】の操作盤を撃ち抜いてを破壊したり、崩落した壁面の隙間を埋めるように巣をつくっていたオリジムシの群れを駆除したり、引っかかったゴミだまりによって塊状になっていた源石粉塵を【エッグバキューム】でエネルギー化したりして無力化したメタルソニックは、不審電波が観測された場所で下水道にあるはずのない素焼きの植木鉢とガスボンベの束を発見した。
ガスボンベは重さと叩いた時の反響音から何らかのガスと固形物が内封されているようであり、鉢の中に入っているのは花や土ではなく、古いラジオを素材にした手作りの遠隔操作爆弾であった。
爆弾をスキャニングして構造を把握したメタルソニックはDr.エッグマンに報告を始めた。
[博士、指定されたポイントに到着、爆発物を確認した。撮影した画像をサーバーに送信する]
《しばし待て、中継ポイントからのファイルを……うむ、今受信したぞ、メタルソニックよ。どうやら不届者が罠を仕掛けておるようじゃな》
ホログラムのDr.エッグマンがグラス越しの目を細めて顔をしかめる。
[設置されている爆弾の主要な構造を分析するにウルサス軍で用いられている物と同じだが、源石による威力倍増の改造と逆探装置に引っかからないような隠蔽が施されている。ガスボンベの中には液化源石ガスと源石結晶の両方が封入されていると推測される。改造の方法がデータベース内にある過去にウルサス軍で用いられたものに合致せず、むしろレユニオンが常用する手法に近い。ミスリードでなければ仕掛け人はレユニオンの工作員であると推測される]
《なるほど。その場で解除はできそうか?》
[ガスボンベについては特に細工はない。爆弾のほうは一定の信号を受信しない限り動作しない仕様のようだが、アラートが設定されている可能性があるため接触していない。専門の解除チームの出動を要請する]
《判った。そこにチームを派遣する。一緒に通信の中継機をチームに持たせておくから、ワシへの報告はその中継機宛てにするんじゃ。オヌシは引き続き発信源の探索を続けよ》
[ラジャー]
その場に通信接続用のピンを設置したメタルソニックは、次に不審電波の痕跡が確認されたポイントへと歩みを進めた。
◆◆◆
不審電波の発信源に到達するまでにメタルソニックは複数の源石結晶体を破壊、エネルギー化しているが、これはDr.エッグマンの手入れが途上の地下下水道とはいえ異常な状態だった。
エッグマンボーグでは地上の居住区では徹底した除染作業を、【鉱石病】罹患者や健常者問わず全住民に定期的な除染処置を実施しており少しでも源石粉塵が集積しないように努めている。
突発的な【天災】に対しても常に警戒を怠らず、万が一都市上空で【天災】が発生した場合はエッグマン艦隊による対応プロトコルが計画されている。
なお、Dr.エッグマンがチェルノボーグ北東部を制圧した時に起きた『都市分断』以降、【天災】は都市近辺には発生していない。
にも拘わらず、地下下水道、特にレユニオン側に近づくにつれて小型源石結晶体の発見数は増えており、また自然発生するにしても特異な速さで生成されているようだった。
[(エッグマンボーグの地下でも想定値以上の源石結晶体が生成されている…【天災】の余波であることを計算に含めてもその数は多く、かつ結晶体の純度が高い。となれば、あの【天災】が起きた時の源石塊壁に最も近づいていたレユニオン首魁が何らかの影響を及ぼしている可能性があるか)……前方曲がり角の奥に生体反応を二つ探知、原生生物ではない、人型と判断。スニークモード起動]
メタルソニックは隠密デバイスを起動して音と姿を消すとともに聴覚ユニットを活性化させ、死角となっている向こう側を聴音し微細なエコーロケーションを以て視界に居ないはずの存在を的確に観測した。
不審人物達の死角に入りつつも、メタルソニックのCPUはカメラアイ上にその人物たちの虚像を描き出す。
三人、片やガスボンベと思わしき円柱を近くの鉄骨に縛り付け、片やしゃがんで鉢植えの中に自家製爆弾を設置している。
残る一人は見張りとして周囲に警戒を張っているようだが、彼らは自身の存在が既に探知されているとは露にも思わず会話をしていた。
「ガスボンベの固定は終わったぞ。そっちはどうだ?」
「もう少し待って下さい……よし、爆弾の設置完了です。リーダーに完了の報告を入れます。次は合流地点に向かうんでしたね?」
「そうだ。それでこの穴倉での『種蒔き』はおしまいだ。後は『花』を咲かせる『光が差す』を待つだけってわけだ」
「了解です。それにしても、こっち側の下水道は随分とキレイですね……【
「俺達のシマじゃあアレはすぐにバラして鉄屑からの釘鉄骨に生まれ変わったがな。アレは感染者でも特に【鉱石病】の重い奴らも狙って磨り潰しに来やがる。事実、地上で警察共に襲われ、下水道に逃げてアレに磨り潰された連中もいる……」
「目の敵にしてる人も多いですね。今となってはこの『鉢植え』の中身の一部にも再利用されましたけど、爆弾材料の調達班はざまぁみろって喜んでいましたよ」
工作員の二人が軽口をたたく傍ら、偵察員は弦を張ったクロスボウを即座に撃てるように構えながら声を出す。
「こっちの下水道ではアレがまだ動いとるけど……やとしてもウルサス時代の地下よりもずっと清潔やな。多少のゴミを除けばただの水路と大差ないとは思わへんかったわ」
偵察員が水路の溝を見る。
彼はウルサス官憲の迫害を逃れるべく都市の下水道を通ったことが度々あるが、そのどれもが汚泥やごみの浮かぶ不衛生な環境であり一度浸かればそれだけで【鉱石病】に感染してしまいそうな代物だった。
しかしDr.エッグマン占領下の此処はまるで違う。
多少の砂や泥は溜まっているが、流れる水の澄み具合は地上の町で流れる川のそれと大差はない。
むしろ住民がごみを投げ捨てていない分こちらの水の方が綺麗ではないかという錯覚を抱かせる程だった。
「聞き込みによると『エッグマン』がチェルノボーグの三割を横取りした後に上下水道や排水管にめっちゃくちゃ手を加えたらしいです。此方側で物資を遣り取りしている同胞から聞きましたが、壁面やパイプの張り替えに、地上のゴミやチリはロボットや作業者を雇って掃除させて、この下水道はロボットとドローンを使って廃棄物処理したそうです。あれを見てください、ほら、水路に沈んでる貝っぽいやつ。どうやらあれが浄化用のロボットなんだとか」
鉢植え工作員が金槌の先で指したのは、Dr.エッグマンがロボットに命じて下水道に投下させた【
貝の形をしたそれはまるで呼吸するかのように殻を上下させて汚水を吸い込み、殻の隙間から排水して水をろ過しているようだった。*1
偵察員は見たことも聞いたこともない超技術の代物を見て思わず目を見開いた。
「あ、あんなサイズの浄水設備があるんか……しかもよー見たら水路に何個も沈んどるやないか。たまげたな……雲泥の差やんけ、かつてのチェルノボーグと比べて。せっかくやし帰りしなに一個持って帰るか?」
「そうだな、使えるものは貰っていこう……それにしても、気にくわねぇ」
偵察員の嘆息と提案に同意を示すも、ガスボンベ工作員は忌々し気に息を吐く。
「地上じゃ俺達と同じだったはずの連中や俺達を足蹴にしたクソ野郎達が揃って安全な暮らしをしてるときた。……何故、何故今になって現れやがったんだよ、ココは。聞いたことあるか?エッグマンボーグは『【鉱石病】から救われる都市』だとよ……酷い笑い話があったもんだ。だったら俺の故郷の皆は救われちゃいけなかったのかよ」
「あんさんとこの町は、確か……」
「ああ、【タストント】だ。鉱山で穴を掘って岩を砕き、平地で畑を耕し、ゴブリン杉の実から油を搾る……それだけで一日が終わる、そんな町だった。娯楽なんてほとんどないし、住人は暇になれば町唯一の食堂に行って店長が趣味で買いあさったフォノグラフを聞きながら飯や酒を喰うか、男は各自持ち寄ったトランプやチェスをするか、女は暖炉傍で集まって喰っちゃべりながら編み物をするか、子供は小遣い貯めて買ったマシュマロをその隙間から串を突っ込んで焼いたりするしかなかった。まぁ、悪くない町だった」
ガスボンベ工作員は一瞬緩んだ空気を漂わせ。
「だが【天災】で山崩れが起きて全部オシャカだ」
すぐさま泥炭のような重さを滲みださせた。
「住人の殆どが採掘関係者だからな。山が潰れれば食い扶持も潰れる。おまけに【鉱石病】に感染してるかもしれないってんで、町が無くなった後の住人は碌な仕事ありつけなかった。いや、町で通用する仕事を持ってた奴はまだマシだった。穴掘りしかできない奴らはもっと過酷な鉱山に放り込まれたし、慎ましく暮らしてた女達も小間使いとか身売りとか……いや、いい、とにかく散々だった……俺達の何が悪かったってんだよ」
ガスボンベ工作員は山由来の泥が染み込んでいるであろう手袋を強く握りしめる。
軋む手袋の革の音は、果たして彼のかつての絶望と、今も消えない憤怒を代弁していた。
「俺達が苦しんでもがいてた間に、上にいる奴らは俺達よりもいい空気を吸ってやがる。中には感染者を踏みにじったクソ野郎共がエッグマンの面を拝みながらのんきに枕を高くして眠ってやがるときた。反吐が出る。かつて俺達を家畜以下だとほざいた口が、真っ当な飯を食ってのうのうと暮らしてやがるなんて」
吐き捨てるように言い、ガスボンベ工作員は足元に転がっていた床の破片を、苛立ちのままに蹴り飛ばした。
破片は不規則な音を立てて乾いた床を転がり、冷たい水路に落ちて水音を立てる。
「確かに感染者の同胞も同じ地上で暮らしてるのは判ってる。
ガスボンベ工作員の口から怨嗟の煙が漏れる。
しかしそれを遮って、偵察員は下水道の奥で稼働する機械の振動音をフードの下に籠る耳から感じ取った。
「ちょい待ち……遠方に振動音、【LAVINIA】がこっちに向かって来とる」
「アレがか?”ウルサススラング”!巡回ルートが狂ったか。オリジムシや屑源石でこっちに来ないように誘導したはずだったんだが」
「此方の想定以上のスピードで清掃されたか、あるいは別のトラブルがあったようですね。この位置なら鉢植えもボンベも壊されることはありません。急ぎ合流ポイントに移動しましょう」
「あの貝を拾うのはまた今度か、仕方ねぇ」
レユニオンの三人が撤収を開始する。
しかしそれよりも速く、隠密を解除して現れた
メタルソニックの演算は、起爆コードを保持している可能性が高い鉢植え設置員を第一目標に、次いでガスボンベ工作員を第二目標に定めた。
「ぐぁっ?!」
「ぎゃっ?!」
不意を衝かれ、反応すらままならぬ両名はメタルソニックの無慈悲な蹴撃によって仮面ごと蹴り飛ばされ、壁へと叩きつけられて意識を失う。
「ああくそっ!?」
唯一生き残った偵察員は咄嗟にクロスボウの矢を放つも、対人用の鏃ではメタルソニックの装甲を貫ける道理はない。
細くも頑丈な鋼の爪は高速で飛来する矢を羽虫のごとく叩き落とし、返す手で偵察員を逆袈裟懸けに斬り上げる。
「や、野郎っ!」
下から迫る爪ををボウガンのストックで防ごうとするも、木製のそれは爪の鋭利な輝きに抗う術もなく一瞬で木っ端みじんに砕け散る。
メタルソニックの攻撃は止まらない。
ボウガンを破壊した爪はそのまま偵察員の顔を掴み、下水道の床タイルに叩きつける。
偵察員はなおも抵抗すべく鋼の腕に縋りつこうとしたが、メタルソニックはもう一度その頭を床に押し込み、偵察員は完全に沈黙した。
[敵の無力化、完了。博士、テロリストの確保に成功した。所属は【レユニオンムーブメント】。潜入用の装備に軍用ナイフ複数、威力強化したクロスボウ、未使用の爆薬に通信端末を所持している]
《でかした。通信端末があるなら分析すれば他の端末位置を逆探できるぞい。今ロボット部隊を向かわせておる》
メタルソニックが工作員達を内蔵バックパックから取り出したワイヤーで拘束した時、Dr.エッグマンが通信を入れて来た。
《なるほど、奴らの集合拠点は境界沿いにある第三【LAVINA】集合ハブにあるようじゃ。この惑星の連中の中でも耳の良い人種なら先の戦闘音を聞き取っているかもしれん。メタルソニック、急ぎ第三集合ハブに向かい奴らを鎮圧するんじゃ!》
[ラジャー、最優先任務を実行する]
Dr.エッグマンの命令を受け、メタルソニックは胸部の
流線形のボディ内部を強力なエネルギーが走り、脚部のスピードブースターへと収束する。
そしてブースターが青白く閃いた瞬間、125キロの質量が地下水道の空気を跳ね除け、床面と水路に光の筋が奔った。
トンネル全体に反響する切り裂くような金属音と共に、メタリックブルーの機体は青い残光を引き、古い照明の下を弾丸のように駆け抜けた。
目的地まで、数分。
◆感想や改善点などございましたら是非お願いします。