The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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お待たせしました。
レユニオン視点第二話、「実際にDr.エッグマン勢力下から脱出した構成員」のお話になります。
感想や改善点などございましたら是非お願いします。

レユニオン視点の話はあと1話続きます。
次はエッグマン視点から行くべきか他勢力の視点からいくべきか…


RM-02.帰還した潜入構成員の報告

1096年12月25日。

 

◆旧【チェルノボーグ】貴族所有の平地ブロック・【エッグマンランド】艦隊用臨時プラットフォーム◆

 

《我が【エッグマンランド】の国民は、【エッグマンボーグ】内施設の整備が済むまでひとまず『エッグマン艦隊』の船内に仮住まいして貰う。衣類と食料品の支給を行うので速やかに移動するように。私物は検査所にあるボックスの中にしまえ、その場でボックス対応の番号札を支給する》

 

《怪我のない者は赤の『エッグ=バトルシップ』に、怪我や病気のある者は黄色の『エッグ=クルーザー』に、【鉱石病】罹患者は橙の『エッグ=デストロイヤー』に分乗せよ。後でロボット達に物資を運ばせるぞい。ワシの命令に従えん者はガードロボットが駆けつけるから肝に銘じておくがいい!》

 

 貴族が所有していた私有地に集められた市民たちは平地に並ぶ見たこともない設備の前で整列され、ドローンから流れる指示に従ってロボット達のチェックを受けていた。

そこでは市民も難民も、果てはレユニオンの構成員であった者もまとめて同じ扱いを施し、順番に検査を行っていった。

時折市民間、市民-難民間、感染者-市民間での悶着が起こったが即座に頭にくるくる赤い回転ランプを装備したロボットが警棒と誘眠ガス入りボンベを携えて駆け付け、騒動を起こした人々を化学的に鎮圧して別の検査ブースに担架で運んでいった。

 私物に関する命令については一部の市民からは財産を奪う罠ではないかと疑いの声が上がっていたが、大半の市民はこの騒乱で疲れ切っており、先の鎮圧行為も踏まえて抵抗は無駄だと半ばヤケクソ状態で『Dr.エッグマン』の言うことに従った。

 

 結果は彼等の予想を良い方向で裏切った。

 

『エッグ=デストロイヤー』という船に振り分けられて搭乗した感染者達にはロボットによって簡易ながらある程度の治療や食料が施され、今までの『感染者であることで足元も見られて悪待遇を受ける』ようなことはなかった。

中でも治安維持部隊との戦闘で重傷を負っていた潜入構成員はロボットに『白い外殻で中が青白く輝く謎のカプセル』をぶつけられたものの、薄い酩酊感がある内に怪我の大部分が治ったため驚きで顎が外れそうになった。構成員が残る怪我の痛む部分をさすっていると、備え付けのスピーカーから老人の声が船の金属質な通路内に響き渡った。

 

《船内に大部屋があるからそこで休むように。服は部屋の入り口に置いてあるので自分に合うサイズを選ぶがよい》

 

 果たして老人の指示する通りにとある部屋に向かうと、そこには彼らに配るに十分な数の清潔な毛布と衣服が準備されており、壁に据え付けてあるドリンクサーバーには大量の飲料水やミルク、スープが満たされていた。

潜入構成員を除く他の感染者は縋る思いでエッグマンランドに駆け込んだ事もあって、彼らは何も持たず、腹も空かし、身を凍えさせていたこともあってこれまでの予想をはるかに上回る好待遇に感激して涙ぐむ者が多かった。

高級食材を頂くように一口一口しっかりとミルクやスープを飲む者や、感極まって部屋や毛布、支給された衣服に誂えてあった老人をモチーフにしたようなデザインのマークに向かって祈りや感謝を捧げる者すら居た。

一方、分け隔てなくこのような施しをもたらしたエッグマンランドに感謝の念を抱きこそすれ、尽くす場所を行き倒れて死ぬ所だった自分を拾ってくれたレユニオンと定めていた潜入構成員は、とにかくサーバーのミルクとスープで空腹を満たすとロボットの目を盗んで船内から脱出した。

 

◆旧【チェルノボーグ】住宅街◆

 

 次第に暗くなっていく中、ブロック制圧後に復旧したであろうチェルノボーグの街灯の光を避けながら、彼が収容される前までにレユニオンが支配した領域に向かって退却を開始した。

幸いにも移動ルート上は直線の通りが多く、またレユニオンの司令塔が設置されたラジオ塔はエッグマンボーグ領域からでも見ることができたため、彼はうち捨てられた白地であっただろう襤褸切れで身を包みつつ建物の陰を利用して市内を抜けようとした。

(船内で搭乗者全員に支給された衣服はそのまま置いてきた。カラーリングが橙の上着と黒のズボンな上に胸元のエンブレムが非常に目立ったため。)

 

 しかし、移動途中の市内でも潜入構成員は驚くべき光景を目にした。

 

 街を巡る攻防で被害を受けたはずの設備や家屋がドローンやロボット達の手によって急速に修復されていたのだ。

 

割れた窓ガラスや穴の開いた壁などは青い防護シートで覆われ、損壊が著しい建物についてはロボットが四方八方から手早く解体を行い、散乱した火炎瓶の欠片や道路の舗装の破片などは一先ず通りの隅に集められ、穴の開いた道はコンクリートと鉄板で応急的に整備されていた。

感染者の怒りのままに破壊されたインフラの整備はたとえウルサス帝国有数の移動都市であったチェルノボーグであっても易々と処理できるものではないにも関わらず、構成員の眼前では一朝一夕の如く復旧が進んでいた。

更に蜂起前は空き地だったはずの所にいつの間にかドローンを吐き出す製造ポッド、上空の移動都市から絶えず資材や補給物資を輸送する着陸パッドなどが建設されており、休む間もなく市内を駆け回っている。

そして各所の壁にあの顔のシンボルマークがドローンによってペイントされ施されていくことで刻一刻とエッグマンボーグが力を着けていく様を見せつけられているような思いに襲われた。

 

◆◆◆

 

1096年12月26日。

 

◆【レユニオンムーブメント】前線司令部:旧【チェルノボーグ】ラジオ塔会議室◆

 

 帰還した構成員の報告を受けるレユニオンの幹部も彼と同様の思いに駆られた。

 

 手をこまねいていれば向こうの都市は迅速に整備され、当初想定していた都市機能の修復に係る時間的猶予は早期に消失するだろう。

そうなれば支配するブロック数の優位など忽ち覆される。

あの空中移動都市と目の痛くなるような色彩のロボット軍団の侵攻を受けるかもしれない未来に焦燥感を募らせることになった。

 

 そして今まさにメフィストが激怒しWが周りを気にせず爆笑しているのは、レユニオンがエッグマンランドのロボット軍団を足止めすべく倒壊させたビルの辺りを潜入構成員が通った際の状況だった。

 

「ビル跡地に、瓦礫が、何も無くなって、代わりに、あのお爺ちゃんの、せ、せ、せきぞっ、石像が、たったっ立ってて、ちっちゃい、お爺ちゃんの、ロボットが、お爺ちゃん像の、おなっおなっお腹を、みっ、みっ、磨いてたって、あはっはっ、はっ、はっ、ははははハハハハ!」

「ウルサいぞW!馬鹿みたいに笑いやがって!笑い死ぬ前に僕がお前の喉を毟って殺してやろうか?!」

 

 怒り心頭のメフィストの殺意を間近に受け、報告をした潜入構成員は自身がWに請われて現場の詳細を語ったことを後悔した。

 

 ……他の幹部とて暫定的な国境線に当たる倒壊ビル周辺の話に興味がなかった訳ではない。

万が一ビルが撤去され侵攻用の橋頭堡が建設されていた場合は是が非でも周辺地区を制圧して橋頭堡を奪取する必要があった。

みだりに敵の侵出を許せばウルサス帝国本土の介入を誘発する恐れがあるし、レユニオンに潜んでいるかもしれない【旧チェルノボーグ】の残党がこの機に乗じて蠢動しかねなかった。

 

 そのような危惧を胸に抱きながら、レユニオンの次の一手を左右する構成員の報告に固唾を呑んで挑んだ幹部達が耳にしたのは、

 

「それが、跡地には石像が立っていました。その、『Dr.エッグマン』の石像が」

「「「…は?」」」

「ブッフゥ!」

 

 全く戦略的に関係のない内容だった。

 

 議事堂指令部の幹部達は吹き出し笑ったWを除いて思わず聞き返した。

 

「石像…?最前線に、自身の?」

「貴族共なら、まだ、やりかねない…か?」

「まさか、石像に模した偵察機器とか?」

「…ドローン共の指示用アンテナの類かもしれんぞ」

「フフフふふっ」

 

 会議室は混沌と化した。

他の幹部が意図の全く不可解なソレについて考察を始め、その生真面目さが一周して場違い感を出している様を見て更にWが笑い、

 

「ねぇ君。随分と君は目のつけどころが違うみたいだねぇ…可哀想だから、一度僕がその目を『直接』看てあげようか?」

 

 今にも燃え盛りそうな怒りを噴出する寸前の笑顔を見せて潜入構成員に尋ねるメフィストが居た。

 

「お、恐れながら、石像があったことは虚偽ではありません。ビルの瓦礫はどこにも見当たらず、隠れる場所もない程に整備されていました。そしてその中央にはあの老人の石像が…」

 

 潜入構成員は人生最大の危機を眼前にして心臓が止まりそうになるも、彼とて嘘もからかいも言っていない為、一切の言い訳なく目撃した事を伝えようとした。

 

 メフィストからの威圧でしどろもどろになりそうになる潜入構成員を見たWが話の続きを聞きたくて助け舟を出した。

 

「メフィスト?この人を脅したって何も変わらないわよ?それより、ホラ、続きを話してよ。移動する間はどんなことがあったの?」

 

 レユニオンの幹部たる彼女に詳細を求められれば潜入構成員にとって否とはならない。彼は状況を説明した。

 

◆◆◆

 

1096年12月25日。

 

◆旧【チェルノボーグ】住宅街◆

 

 幸いにも脱出ルート上に見張り等は立っておらず、見かけたロボットと言えば工場に走り回る作業用のタイプしか居なかった。

見つからずに去ろうとする潜入構成員にとっては都合が良かったが、それでもロボットがトラックを器用に運転していたりスコップや台車を曳いて走り回っていたりするのを見ると、その都度隠れ潜んでロボットが通り過ぎるのを待つのが次第に馬鹿らしくなってきていた。

 

 しかしウルサス帝国で生きていた頃なら自身を守る行為をないがしろにした途端に全てがフイになっても文句は言えない。

加えて見た目がまるで威圧的でないロボットであってもその図体にはナイフが通らないことは経験済みだったので、万が一敵対して襲い掛かってくるようなことがあれば撃退は難しいであろうことも理解していた。

自爆用で温存していたなけなしの源石爆弾を使えば一矢報いることは出来るかもしれないが、何の意義のない自爆など今まで救ってくれたレユニオンムーブメントに対して申し訳が立たないと感じる彼は決して自棄にならず、ただひたすら生き延びることだけを考え、端から見れば滑稽に見えるほど慎重に住宅街の死角を利用して移動した。

 

 有り難いことにロボットは恐ろしいスピードで建設することのみ命令されているのか此方に警戒を投げかけて来る様子はない。

またエッグマンランドは彼の負った傷を回復させ、気力を取り戻すのに十分な分のミルクとスープを与えてくれていた。

ついでに捨てられていた空のピクルス用ビンを拾ってスープをこっそり詰め込んでおいたので、帰りの『弁当』すらあった彼は気持ちの余裕をしっかりと保てていた。

 

 部隊に帰って、少しでもレユニオンに情報を伝えようと潜入構成員は蜂起した時並の覚悟で全力の逃走をした。

 

 脱走前に医療施設噂で味方の幹部がエッグマンランドの侵攻を止めるために破壊したビルの辺りが最前線だとの情報を得ていた彼はそこを目指して移動していたが、行きに比べて帰りのほうが瓦礫や煙が少ないせいでドローンの移動やロボットの工事作業に嫌というほど振り回された。

 

 道が整備されているということはエッグマンランドがレユニオン蜂起時の損壊を既に修復していることの証左でもあった。

 

 歩き易さとは裏腹にエッグマンランドの手強さを痛感した。

 

◆旧【チェルノボーグ】住宅街 推定最終衝突戦線上 倒壊ビル付近◆

 

1096年12月26日。

 

 日も暮れ夜の帳が下りウルサスの無情な冷気が周囲を満たす頃に、彼は漸く目標地点付近まで辿り着いた。

 

 もう少しで味方の陣地だと思うと少し気が楽になり深いため息をつきそうになったその時、彼の上を物資を吊り下げた小型飛行船がゆっくりと追い越していった。

慌てて彼は息を殺し、その場に残る瓦礫の下に身を潜めた。

飛行船が彼の上を離れて漸く彼は深呼吸をした。

彼の中に少し埃っぽいが新鮮な酸素が行き渡ると、彼は移動の足を早めた。先の飛行船の向かった方角は目的地のビル倒壊現場であった。

目的地は今までの往路とは違い、特別に照明などが設置されたのか辺りが一段と明るくなっていた。

 

 彼に一抹の不安がよぎった。

 

 先の飛行船は物資を運んでおり、脱出途上で見かけたものを鑑みれば中身は建築資材である可能性が高かった。

仮に建築資材である場合、飛行船を使ってでも運搬するほどの量となると簡単な建物程度なら建築できるかもしれなかった。

 

 最悪のパターンは、ビル跡地を起点に前哨基地が完成している場合だ。

 

 しかも設営は深刻なダメージを負ったはずの街並みをすぐさま復旧させたエッグマンランドのロボット軍団が行うのだ、大規模な部隊駐留すら可能な基地を作っている危険性も彼の脳裏に浮かんでいた。

万が一前哨基地がレユニオンの最前線に存在するなら、あの鋼鉄のロボット軍団を相手取るには幹部らの力が必要不可欠だ。

 

『もし基地があるなら、必ずそのことをレユニオンに伝えなければならない』

『もしかしたら味方は基地の存在には感づいているかもしれないが、常識を超えた速度の建築には気づいていないかもしれない』

『或いは基地には確かに気づいていても、攻め倦ねているかもしれない』

 

 そう考えた彼は源石爆弾を握りしめて己が命の使い所を確かめた。

 

 危機感で身を焦がしながら、行き交うロボットに見つからないようもどかしい程慎重に伏せたり隠れたりして移動した彼は果たして目的地付近の原形を留めた2階建ての家屋まで辿り着くことが出来た。

 

 扉そのものがない家に入り、音を立てないよう静かに2階に上がって目的地の様子を確かめようとした。

ビル跡地は周囲が明るくライトアップされていた。

その光を遮るものがないことから、彼はすぐさまエッグマンランドがビルの瓦礫を撤去しきった事に思い至った。

 

 ビルほどの瓦礫すら障害足り得ない彼我の実力差に恐怖しつつも、肝心のスペースに何か建設されていないかと、早鐘のように動揺する心臓の音すら聞こえてくる感覚を堪えて彼が窓から覗き込むようにして目撃したのは、

 

<空を指差し大きく胸と腹を張って立つ老人の石像>

 

の設置工事だった。

 

 飛行船が石像をゆっくりと降ろし、下でヘルメットを被ったロボットが赤く光るロッドで飛行船を誘導し、石像に括られている縄を引っ張り、石像の頭や腹や足を磨いていた。

 

 彼はずるずると部屋の壁に身を預け、とって置いたスープを一気飲みした。




【XX】潜入構成員
・攻撃方法:攻撃しない
レユニオンに救われ忠誠を誓う構成員。護身用のナイフと源石爆弾を携行している。彼がレユニオンに加わるまでに得た様々な隠蔽術と隠密技術を活用して行動し、移動ルート上に敵がいれば重傷を与えて無力化、目的地に看過できない存在があれば爆破する。

+耐久:D
+攻撃力:D
+防御力:B
+術耐性:B

*ブロック不可。一定距離を移動後その場で停止し隠密状態*1に入る。
隠密状態解除時に味方ユニットが存在する場合強力な物理ダメージを与える。
目標地点に入った場合耐久値を2減らし、周囲1マス内に存在する味方ユニットに強力な物理ダメージを与える。

*1
停止して2秒後に姿が見えなくなり、防御力が上昇する

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