The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
レユニオン視点第三話、「レユニオンの戦略決定」のお話になります。
感想や改善点などございましたら是非お願いします。
流石に主役が名前しか出てこないのは気がかりなので次はDr.エッグマン視点に入る予定です。
1096年12月26日。
◆【レユニオンムーブメント】前線司令部:旧【チェルノボーグ】ラジオ塔会議室◆
「~~~~~^^_!」
話は冒頭に戻る。
最早笑い過ぎて声すら出せず、お腹を抱えて机に突っ伏すWの横で、正面の潜入構成員の顔すら見えていない程にメフィストは激怒していた。
「(あのジジィにとって僕らは石像よりも取るに足らない、眼中にないって言いたいのか…!)」
それはメフィストにとって決して許せるものではなかった。
【レユニオンムーブメント(自分達)】こそ上位者であるべきだと考える彼は『感染者だから』と不当に貶めるような行為など認められない。
故に彼は『歪んだ世界』に対して
だというのに、あの老人はメフィストでさえ圧倒された空中移動都市に謎の高度な科学技術を以て、万全を期して準備したチェルノボーグ占領作戦を台無しにするのみならず敵対勢力である自分達を脅威と認識すらしていないかのような振る舞いをしたのだ。
メフィストは強く拳を握り締め、爪が掌に食い込み肉が破けても怒りを抑えることが出来なかった。
彼の医療アーツ技術が肉体の損傷を察して即座に彼の手を治療しても、それに構わず爪を食い込ませ肉を抉り再び治療する。
そのような悪循環を以てしても、掌の痛みは彼の得た屈辱を紛らわせるには到底足りないものであった。
「メフィスト…」
そんな彼を窘める、或いは慰めるように、彼の相棒である青い狙撃の暗殺者『ファウスト』はメフィストの肩にそっと手を置いた。
メフィストはその時初めて自分が手を抉り続けていたことに気付くとファウストの手を優しく退かしつつ手の傷を完治させた。
「まぁいいさ。御大層な石ころ遊びなんてしてるジジィはジジィらしく耄碌してるらしい。だったら御自慢の石を積んで遊び回っている間にボクらは次の手を打とう」
メフィストはレユニオンへの自負を歌い上げるような声色で他の幹部に話しかけた。
それを見たファウストは静かに自分の席に座った。
「じゃあどうする?とりあえずサクッと殺って剥きタマゴにでもする?」
「時間を与えている場合じゃない。直ぐに部隊を整えて再攻勢をかけるべきだ!」
レユニオンの幹部であり、夕焼けのように濃い赤髪をフードで覆った隠密と突破のプロである『クラウンスレイヤー』は所持する暗器を弄りながら軽食を作るかのような気軽さで老人の暗殺を提案する。
対して同じくレユニオンの幹部であり、鉈のような刃を備える源石ランチャーを両腰に括った黒ガスマスクの『スカルシュレッダー』は面貌の奥から苛立ちを見せながら速攻を進言した。
[有効打に、成るかは、不明だ。『Dr.エッグマン』、という男が、移動都市の、上層部である、のは間違いないが、彼を討伐する、だけでは、移動都市の方針は、変わら無い、かもしれない。後継者が、大義名分を得て、活動を活性化、する恐れが、有る。あの男の、権力や、移動都市の、有力者が、他に誰が、居るのか、把握してから、判断するべきだ]
一方、レユニオンの精鋭部隊を率いる全身を鎧と装置で包んだ歴戦の元軍人『パトリオット』は短兵急に進めるべきでないと主張した。
「随分消極的じゃないか。年寄りは年寄りの気持ちに感化されたか?」
パトリオットの発言にメフィストは心底嫌そうな顔をした。
「あのお爺ちゃんが宣伝看板だけって可能性?」
ファウストの感情など知ったことではないWはパトリオットの発言の意図を読み取って尋ねた。
[そうだ。都市の名を、冠する、だけの地位に、居るのは、間違い無い。創始者か、其の血縁、だろう。彼のような、演説を行う、決定が出来る、だけの権力は、有るのは、明白だ。しかし、非常識な、程に、目立つ行為だ。内部で、反対が、あっても、不思議、では無い。我を、通したと、成れば、独裁色が、強いか、反対派から、厄介払いを、受けた、のかも、しれ無い。演説の、途中で、第三者と、思わしき、者と会話、していた、辺り、参謀か、目付役も、居る可能性、がある]
「ふーん、そうかしらね?」
「ふん、あのジジィの間抜け面を見てると、真面目に考えてるアンタすら間抜けに見えてくるよ」
パトリオットの予測とメフィストの悪態をWは話そこそこに聞き流していた。
常識的に考えれば、あれだけの軍勢を動かせるとなれば大規模な組織が必要であり、組織内の派閥や対立等の分析に行き着くのは当然である。
しかしWにとってみればそんなのは『在り来たりで面白くない』。
むしろWの『Dr.エッグマン』の人物予想は規律正しく岩のような意志を体現したかのようなパトリオットとは正反対の存在、『尊大で傲慢で独善的な愉快犯』だ。あのモニター放送を一目見た瞬間にWは
『あ、バカだこいつ。それも最ッ高に下らないことに全身全霊使うタイプの』
と確信していた。
だから『Dr.エッグマン』に興味がわき持ち場を離れて彼我の衝突する前線に見物に向かっていたのだ。
極めつけはWが倒壊させたビル跡地の利用法である。
真っ当な思考や戦術眼を持つ者なら、潜入構成員の危惧した前哨基地の建設や他の幹部が言った作戦用の設備を建てたことだろう。
しかしあの老人は定石を覆し最優先で『自身を讃える石像の建設』に力を注いだのだ。
まさしくレユニオンは眼中にない。
或いはレユニオンやウルサス帝国に対抗するために石像を建てる必要があると信じてすらいそうだと感じていた。
「(ああいう奴がいきなり飛び出して来るんだから、人生って判らないものね)」
Wはあわよくばあの老人が好き放題ドタバタする様をまだ見てみたかった。
同時にあの老人と会話をしていたであろう第三者の事が少し気になった。
「(あの時傍にいたのが参謀だか何だか判らないけれど、きっと見てて面白そうなのは確かよね)」
Wは新しい刺激を見いだしてほくそ笑んだ。
[エッグマンランド、については、先ず、情報収集を、すべきだ。あわよくば、彼方の技術を、接収出来れば、尚良い。ロボット、もそうだが、艦内に有ったと、云う、傷を、瞬間的に、回復させた、カプセルを、入手出来れば、医療部隊の、疲弊を抑える、事が出来る、筈だ。前線を、侵す様なら、迎撃し、牽制して、いる間に、ウルサス帝国の、旧チェルノボーグ、を叩いて、吸収するべき、だと、提案する]
「おい、何でアンタが音頭を…」
「許可します、パトリオット。速やかに計画を立てて実行しなさい」
一つ、声が届いた。
それを聞いた潜入構成員はその場で平伏して頭を垂れた。
「あら?」
「タルラ…!」
「…」
「外遊はもういいのかしら?」
[承知、した]
レユニオンの幹部が一斉に彼女のほうを向いた。
タルラ。
生ける怪物。
【レユニオンムーブメント】の女帝。
感染者の復讐の代理人。
【ウルサス帝国】最大の敵。
潜入構成員にとっては天と地程の立場の差がある人物が目の前にいた。
彼女は凪のように静かに構成員の前に赴くと、その白い手で彼の肩を触った。
「境は定まりました。動くまでには時が要りましょう。ですが我々は土地と引き換えに不屈の勇士達を得たのです。眼前の紛いの救いに囚われない、彼のような勇士を。よくぞ戻ってきました」
タルラの言葉を聞いた潜入構成員は感動で打ち震えていた。
一度は死を厭わずに自爆しようとしていたが、敵に救助された点を言えば離叛したと言われれば否定しきれない。しかしタルラはそうした彼の行いを『勇士』として評価したのだ。
レユニオンに恩義のある彼にとって、それは望外の喜びだった。
「……確かにタルラの言うとおり、目先の餌に釣られてボクらを裏切った連中はいるけど裏を返せばクズが減ってボクらはより正しい姿になったともいえるね。おい、お前……よく戻ってきたな。誉めてあげるよ」
「ハハッ」
ほんの少し前には眼前の人物から殺意を浴びていたにも関わらず、今度は一転して賞賛を浴びる事になった彼は目を回しそうな思いにかられた。
この『世界』の主は歌い上げた。
「歩みましょう。日の光を当たり前に浴びる自由を奪われた我らは、歪められた世界の慟哭たる【天災】を聞きながら前に進むのです。そのためにはまず世界をほしいままにせんとする強欲な獣共から打ち払いましょう。彼らが誇る意志無き毛皮を引き剥がし、彼らの盲信する自身の優位さなど有りはしない事を躾てやりましょう。独善的な薬売りも独り踊るハンプティダンプティもわざわざ舞台に引き上げる必要はありません」
タルラは会議室の壁に貼られた地図を指差して命じた。
「目標、ウルサス帝国残党。処刑せよ。目標、チェルノボーグ内の身中の虫、駆除せよ。目標、エッグマンランド。彼の巣から金の卵を見つけ奪え。鵞鳥である内は生かせ。但し牙を向けようとするなら絞め殺せ」
レユニオンの方針は定まり、以後ウルサス帝国に残留する旧チェルノボーグは危機の連続に曝されることになる。
そしてエッグマンランドが支配するエッグマンボーグでは、レユニオンの偵察ドローン『怪鳥』が暫定の国境線より少しでも情報を得ようと飛び交い、対するエッグマンボーグからはロボットが虫取り網や鳥もちで追いかけたり飛行ドローンが迎撃に出る光景が目撃されるようになった。
レユニオンの方針が定まりました。
本来ならチェルノボーグ全土を制したレユニオンは勢いそのままに【龍門】へ謀略と攻勢をかけますが、現在はチェルノボーグ内にも真っ当な対抗勢力が2つあるため先ずは地固めとチェルノボーグ統一を目指すことになります。