The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
実はロドス編よりも先にほぼ書き上がっていたりします。
描写のバランスが難しい……
仮に奇なるものが眼前に現れたとして
人間はどのような思いを抱くのか
破壊され手付かずのまま放置された道路。
爆風の熱によって焦げた街灯。
瓦礫に押し潰されたタクシー。
寒風を留める能を無くした窓ガラス。
割れた路上の植木鉢。
雪の中からわずかに見える燃料目当てで伐られた公園の樹木。
荒廃した生活空間の只中で金属質な青が光を反射する度、
白面の男達と歴戦の傭兵達があちこちに吹き飛ばされていく。
そのような光景を目にしたWは、
何となく昔拾った雑誌のヒーローコミックを読んだような気持ちになった。
◆◆◆
1097年1月。
◆チェルノボーグ地域南東部・レユニオン⇔エッグマンボーグ間紛争ブロック地区◆
事の起こりは『旧チェルノボーグに潜入した作戦部隊の通信が途絶した』というものだった。
旧チェルノボーグに残る武装警察の一部が『エッグマンボーグに攻撃を仕掛け物資を
旧チェルノボーグとエッグマンボーグの間で発生する戦闘によって双方に損害が発生するだろうと判断したレユニオン指令部は、退却や追い討ち等で生じるであろう混乱や疲弊を利用して旧チェルノボーグ内に潜入し罠を仕掛けることを考えたのだ。
指令部の見通しは途中まで順調だった。
継続していた無線傍受によれば、略奪に出向いた軍事警察の一派はエッグマンボーグの境界を越えた時に駆けつけたロボット軍団を前に敗北、それどころか逆撃を受け領外に叩き出されるように追撃を受けていたらしくかなり混乱していた。
指令部からの連絡を受けた現場の作戦隊長はこれを好機とみて計画を修正、敗走する敵を攻撃してから潜入する方針にしたのだという。
その目論見はほぼ果たされた。
旧チェルノボーグに戻ろうとする軍事警察は徴集された新人が多かったらしく、レユニオン作戦隊の不意討ちを受け残った戦力は容易く壊滅した。
その上軍事警察は情報隠蔽に失敗し本行動で利用した移動経路を作戦隊に露呈させたため、作戦隊は得た情報を活用して一気に旧チェルノボーグへの潜入を果たした。
作戦進捗と潜入成功の報告が送られて以降、作戦隊との連絡がそこで途切れた。
指令部は作戦隊が軍事警察の増援から反撃を受けたと判断し、作戦隊の救出をWに命令した。
内容が受け身で
しぶしぶ任務を受けたWは救出成功の可否に関わらず作戦終了後は休暇を取る旨を指令部に承諾させ、同じ傭兵の一隊を先行させてから途絶地点に向かった。
そして彼女は思いもよらないものを見た。
◆◆◆
◆紛争ブロック・作戦隊消失地点◆
「下らない仕事ねぇ……その隊長とやらは御遣いすらできないのかしら」
雪の降らぬ曇り空、肌を刺す寒さが衰えない空気の中。
指示された地点へ建物の屋上を飛び移りながら移動するWはそう独り言ちた。
不承不承の任務のため全くやる気のなかったWは
「あらあら、これはどういうことなのかしら?」
予想外の光景に好奇心を刺激されながら、建物の屋根から道路に転がる瓦礫の上に着地したWは傭兵刀術者に声をかけた。
「はぁい。先発御苦労さま」
「Wか!クソッ援護してくれ!」
「随分余裕がないわね。さっきからどうしたの?そんなに服を汚して」
「敵襲だ!数は一体!」
「ふーん?」
Wの
その構えはWの聞く所によれば傭兵刀術者の最速の抜刀を繰り出す姿勢で、彼を『刀術者』として知らしめるに足る得意技でもあった。
傭兵の中でも抜きん出た実力の傭兵刀術者をして一人の敵に苦戦していることにWが僅かに驚いた時、甲高い音が辺りに響き渡った。
「っ、南無三!」
音を聞いた傭兵刀術者が正面に最速の薙払いをした直後、弾丸の如く飛来した青い鋼が彼の抜刀を弾き返した。
「畜生!」
得意技をいなされた事に焦りつつも鍛え上げられた神経が彼の全身に警告を発したお蔭で、傭兵刀術者は即座に浮き上がった刀を手放す。
刀の勢いに腕を取られることなく体勢を持ち直した刀術者は、すぐさま腕に備えた小刀を握って迫る鋼の爪の間に強引に差し込んだ。
刹那の差で爪が胴を切り裂く前に小刀が割り込まれ、爪と胴の間に僅かな隙間が生まれた時、爪の持ち主の全容が明らかになった。
青を基調とした、流線型のボディを持った二足歩行型ロボットだった。
頭部は後ろに流れるような形をした角に赤い瞳を光らせている。
腕は一見華奢で折れてしまいそうに見えるほど細いにも関わらず、備える爪は凶悪なほどに鋭く今も傭兵刀術者が全力で押し返そうとしても微動だにしないほどパワーを持っていた。
青く塗られた胴体は頭部よりやや小振りで、ボディの中央で宝石のようなものが輝いている。
胴体から伸びる脚部は腕と同じく細い造りだが、傭兵刀術者とぶつかった時などは道路に脚部がつくと逆に路面がひび割れるという強靱さを見せていた上、今地につく赤いスニーカーめいた脚部パーツも全く傷がない。
その鋼の体全てが良好の状態と言っても過言ではなかった。
常識外れの存在を見てWの唇が三日月のように歪む。
Wは口角を吊り上げながら、ベルトポーチから小型爆弾と起爆スイッチを取り出した。
「ふざけや、がぁっ!」
傭兵刀術者が悪態をついたその時、爪を防いでいた小刀が限界を迎えへし折れ傭兵刀術者が悪寒を感じて咄嗟に後方に飛び退いた瞬間、彼の刀の鞘を括るベルトが爪で綺麗に切り裂かれた。
並の傭兵なら正面から受けていたであろう一撃を避けた傭兵刀術者は、正に強者と称されるに足る男だった。
しかしいくら強者といえど一度崩れた姿勢を戻すのにはラグがある。
それを見逃すロボットではなく、傾く傭兵刀術者に一気に詰め寄った。
立て直す前で無防備を晒す刀術者の胴に鋭利な爪を刻み付けようとした時。
「どっかーん」
傭兵刀術者とロボットの間に小型の爆弾が投げ込まれ、向きを調整された爆風がロボット側にのみ襲いかかった。
傭兵刀術者は爆風とは違う風圧で後ろに吹き飛ばされ、結果的にロボットから大きく距離をとることに成功した。
「ぐっ…!」
傭兵刀術者は一度路面に叩きつけられるも瞬時に受け身をとり立ち上がると、その横にWが近寄った。
「やるじゃない、あんた。あんなに動けたなら大したものよ。その腕は見世物じゃなかったってことね」
「……助かった。やったのか?」
打ち身の痛みを堪えながら傭兵刀術者は爆風で立ち込む粉塵のほうを見るが、Wはにやりと笑って否定した。
「ダメね。爆風に一方向の指向性を持たせて火力を上げたタイプのヤツを使ったけど、指向範囲が狭すぎたみたい。真横に
「莫迦なっ…!?」
Wの爆破に関する技量は傭兵の誰もが認め畏れるほどである。
その当人が爆破で失敗したと言うなど傭兵刀術者にとって衝撃の出来事だった。
爆破で砕けたコンクリート片を踏み砕く音。
傭兵刀術者が収まりつつある粉塵の先を睨むと、中からダメージを受けた様子のないロボットがしっかりとした足取りでこちらに近づいてきた。
Wもそれを一瞥すると周囲を見渡した。
他の傭兵集団や作戦隊は周囲に散らばって吹き飛ばされているものの、いずれも息はあり誰もまだ死んではいなかった。
Wは傭兵刀術者に撤退指示を下した。
「幹部命令、負傷者を連れて退却。歩けない奴優先、気絶してても軽傷なら叩き起こして歩かせて」
「……判った。援護を頼む」
「いいわよ。可愛いお人形さんと遊ぶのは女の子の特権だもの」
傭兵刀術者が落とした太刀を拾い後方に下がったことで、戦場の主役はWに引き継がれる。
Wは常識外れの老人が造り、レユニオンの作戦隊や傭兵隊を蹴散らしたロボットの実力に大きく期待した。
「こんにちは、お人形さん。今度はあたしと遊びましょ?道中もお仕事も退屈で飽き飽きしてたところなの」
その言葉とは裏腹に、Wの浮かべた笑みはこの場にいる誰よりも恐ろしいものだった。
傭兵刀術者が行動を開始するとロボットも脚部のブースターを稼働させようとしたが、先にWが悪戯めいた声色でロボットに話しかけた。
「はぁい、お人形さん!そんなに急いでどこに行くのかしら?慌てて走ると転んじゃうわよ?」
Wがそう言った次の瞬間、ロボットの周囲を幾つもの爆発が巻き起こった。
先ほど傭兵刀術者を助けたと同時にロボットの辺りに地雷式爆弾を仕込んでいたのだ。
Wは爆風収まらぬ中、追い討ちでランチャーの榴弾を射出したが、一瞬嫌な予感がしてその場から移動する。
その直後、Wの元いた場所に群青色をした鏃状の光弾が幾つも突き刺さった。
「……あははっ!」
粉塵が収まりWがロボットの立ち位置を見てみると一部の爆弾は群青色の光弾が突き刺さって不発弾になっていたが、それはWがロボットの脚を吹き飛ばすよう狙って置いた代物であった。
「(動きを読まれた。けど、全ての爆弾を光弾で撃ち消しつつ私に接近はしなかった。となると、一度に危険物を把握できる数に限りがある……光弾を撃ってる時はあまり動けないのかも)」
Wは縦横無尽に走り回り、榴弾で牽制しつつ爆弾をロボットに無数に投げつける。
「(さっきの刀術者でもそうだけどアノ子は相当速いわ。作戦隊や傭兵団が倒されたのもその速さに翻弄されたってことね。幸いなのが加速には少し時間が要ることかしら。ならばこのまま距離を詰めさせないで吹っ飛ばしたい所だけど、そう簡単に付き合ってくれるかしら?)」
対するロボットはその場を移動せず時に光弾で、時に爪で榴弾や爆弾を迎撃する。
ロボットは時折脚のブースターを起動しようとするが、その動作の起こりをWが目敏く見つけて牽制し、加速行動を阻害した。
光弾に撃ち抜かれた爆弾の爆発で周囲の瓦礫は吹き飛び、次第にかつての生活痕を粉々にして更地になっていく中、ロボットはWの姿から視線を外すことなく睨みつけている。
一方Wもまたロボットが爆弾の間隙を縫って射撃してくる光弾を避けながらロボットの実力を推し量っていた。
「(やっぱり楽に片付いてはくれないわよね。広範囲高殺傷型や射出弾は遠距離で撃ち抜いて爆破、けど威力が抑え目の陽動型は衝撃で起爆する手前で爪弾きしてる。既に爆弾の性能は逆算できてるってことね。でも予想通り、光弾を一斉射撃して撃ち落としつつ私を撃てばいいのにやらないということは、弾数制限があるか連続射撃に難ありなのかも。)なら…」
Wはロボットの射撃傾向を分析すると二、三個の爆弾を放り投げ後ろを向いて走り出した。
「お人形さんこちら~手の鳴るほうへ~!」
ぱん、ぱんとWが手を叩いた瞬間、投げつけた爆弾に加えてはたき落とされた爆弾も再点火して辺りを火の渦に仕立て上げた。
しかしロボットは吹き荒れる炎の中でも動じることなくWまでの最短ルートを選び、一気にWに飛びかかった。
「(来た!お爺ちゃんの子ならその位簡単よね。じゃあ
ロボットの爪がWの背に届こうとする瞬間、ロボットの目と鼻の先に爆弾が降り注いだ。
Wは先ほど爆弾を投げつけた時、実は時限式の爆弾を同時に自分の上に投げていたのだ。
時間差の、しかもロボットの性能を踏まえて計算し、最短最速でWに近寄った時にのみロボットの眼前に落下するという龍門名うての曲芸師でも出来ないような技巧を凝らしたWの罠はここに発動した。
「じゃあね~」
Wが手をひらひら振った時、ロボットの目前で
Wは
「(ここまで爆弾を使ったのは久しぶり。手持ちの最高威力のやつはもうすっからかんよ!後で報酬と経費を倍で払うよう
着地後直ぐに走り出そうとしたWの背後を、緑色の閃光が周囲を一瞬眩く照らしつけた。
「え……?(こんな光り方のする爆弾は使ってない……ロボット?ロボットの爆発?)」
Wが予想外の出来事で思わず後ろを振り向いた瞬間、Wのすぐ近くで何か金属質な光が見えた気がした。
「!?」
Wは直感的に光った方向にナイフを投げた。
キィン
弾かれた。
「!!」
Wはその場で急停止し、体が軋むのを無視して思い切り体を捻った。
銀爪が銀髪をはらりと切り裂く。
Wは勢いのままその場で回転して迫る爪の刃を避けたものの、無理な制動でバランスを崩してしまいその場に倒れた。
「あたた…っ?!」
捻りの痛みと倒れた痛みを堪えながら体を起こすと、Wの正面には傷が入り煤だらけの青い鋼が立ちはだかっていた。
「……わぁお。結構余裕みたいね」
ロボットはWの軽口を気にした様子もなく近寄り、膝を折って座るWの首元を掴み上げた。
「もう、ちょっとは丁寧に扱ってよね。脅かして押し倒してなんて、女の子は乱暴にしちゃいけないのよ?」
Wは茶化すように言いつつも、手持ちの予備ナイフを取り出して首を極めるロボットの鉄腕を容赦なく斬りつけた。
ガシガシと斬りつけられる己の腕を横目にしながら、ロボットは赤い目をWに向けた。
[お前は、『エミー・ローズ』と同じようなコトを言うのだな]
「あら、喋れるの?どうも初めまして、お人形さん。お名前は?」
[メタルソニック]
「『メタルソニック』ね、よろしく。私は周りからは『W』って呼ばれてるわ」
[そうか]
「ところで、情熱的な手の取り方をしてるけどこれから私をどうするつもり?」
Wはナイフを持つ腕を下してメタルソニックに尋ねた。
[お前は強い。俺の戦闘データにはない戦い方だった。俺の戦闘データをアップグレードするために、お前をエッグマンボーグに移送する。Dr.エッグマンもお前のような感染者の情報を求めている]
「あらやだナンパ?しかも今をときめくテーマパークの最深部にご招待だなんて!ねぇちょっと、少し服が汚れちゃってるから
[却下だ。お前は大量の爆弾を用いる戦法の使い手。一度戻れば相当な爆薬を持参するのは目に見えている]
「あら?判ってるならむしろそっちの為を思って言ってるのよ?私のことがもっと知りたいなら私の『本気』も知りたいでしょ?」
[……]
先程まで爆風と熱波が溢れていた更地に打って変わって一拍の奇妙な静寂が漂った。
Wはメタルソニックから視線を外さないまま、下した腕をそっと腰のベルトにすり寄せた。
ベルトには単発の閃光弾が括りつけられており、非常時にはランチャー無でも先端を特定の角度で叩けば数秒後にフラッシュバンになるというものだ。
非殺傷性の代物とはいえ至近距離で発動させればWとて無傷とはいかないが、最後の手段として備えようとしていた。
その時。
「……極東鬼刀術、『牛頭の型』【炎嗟】」
傭兵刀術者の一閃がWを掴むメタルソニックの腕に叩き込まれた。
「うおおおおおぉ!」
裂帛の一撃と共に金属同士が激しくぶつかる音が周囲に響き渡る。
腕を打たれたメタルソニックは切り落とされこそしなかったものの、その衝撃には耐えられずにWの首を手放した。
「今だ、放て!」
Wが解放されたのを見て傭兵刀術者が号令を発すると、メタルソニック目掛けて強化クロスボウの一斉射が放たれた。
[……]
矢はWに当たらないように放たれたが、同様にメタルソニックにも当たらなかった。
メタルソニックは瞬く間に矢の雨を避けると近くの無事だった家屋の屋上に立った。
「ここまでやってようやく一太刀か……」
「わざわざ戻って来たの?そっちは片付いたのかしら?」
傭兵刀術者は再び最速の構えを取ってメタルソニックを睨み付けた。
Wは微塵も期待していなかった援軍に目を見開かせて傭兵刀術者に言った。
「作戦隊の退却は済んだ。指令部の命令は終了、今は別ブロックで構成員が即席の陽動を仕掛けて攪乱している。他の武装警察やロボット軍団がここにくる前に引き揚げる。ここにいるのは身軽な狙撃傭兵だけだ。そっちも撤収しろ」
「時間切れってわけね。ねぇ、メタルソニック。そっちに遊びに行くならどうすればいいの?」
「……は?」
Wの発言に傭兵刀術者は耳を疑った。
傭兵達自体は雇われの身ではあるが、エッグマンランドと敵対している立場の存在だ。
ましてやWはレユニオンの幹部に遇されている立場である。
完全に敵対している陣営の所に向かう、それも直前まで殺し合いをしていたロボット相手にさも隣町の友人に会いに行くかのような気軽さで問いかけるのは真っ当な感性の……少なくとも傭兵刀術者にはできない所業であった。
《……》
一方、問い掛けられたメタルソニックは赤い瞳を数度瞬かせると踵を返しながら答えた。
[エッグマンボーグ外周に立つ歩哨に俺の名前を出して話し掛けろ。Wの身体特徴を登録しておく。それとロボットを無闇に爆破するな。昨日爆破で酷く損壊したロボットが複数体回収されている。サルベージした観察撮影ログにお前の映像データを確認している]
「あら~ゴメンね!だってお爺ちゃんとこのロボットって可愛くって丸っこくて狙いやすかったからつい!」
「……正気か?」
傭兵刀術者は心から の言葉を口にした。
敵対勢力の量産型ロボット相手とは言え向こうの兵器をあっさり破壊しておいてその理由がよりにもよって目に付いた雑貨の衝動買い程度の内容であり、最早傭兵刀術者には理解の範疇を超えていた。
[この勝負はお預けだ。いずれ決着をつける]
メタルソニックはそう言ってエッグマンボーグの方角へ飛び去った。
「じゃあね~」
メタルソニックが飛ぶ姿に手を振る様子を見て傭兵刀術者はわざわざ戻ったことに余分な体力を使ったような思いに曝された。
「俺達もレユニオンに戻るぞ。パトリオット管区まで下がれば安全だ」
「はいはい。あー疲れたわ、今回は特に!追加報酬がないとやってられないわね」
「その点だけは共感するが……随分と楽しそうだな、W」
言葉の上では疲労を口にする一方で、まるでスポーツ部活帰りの少女のように晴れやかな顔をしているWに傭兵刀術者は奇異なものを見る目で尋ねた。
「まぁね。めったにない経験ができたから、その点だけは儲けもんよ。そう言えばあんた、あたしを助けに来てくれたけどドコから見てたの?」
「俺が割り込んだのはそっちがあのロボットに締め上げられているのを見てからだ。実際の所は、どうやら酷く友好的になったみたいだが……どうした?」
「別にいいの。判ったわ」
Wは会話を切るとあの時の現象を思い返した。
「(あの緑色の閃光、間違いなくメタルソニックが出したものだわ。今思い返すと爆風の一部が
そこまで考えたWだったが、何となくこの場で考察するのは興醒めな気がしたので思考を打ち切った。
「まぁ何だったら本人に聞けばいいかー」
「何がだ?」
思わしげに黙り込んだかと思えば急にすっきりした面持ちで呟いたWを見て傭兵刀術者は胡乱な目で尋ねた。
傭兵刀術者はころころと表情を変えるWの顔のことが最早理解できなくなっていた。
「何でもないわ。所でこっちの被害人数は?」
「切り傷と打撲による骨折が多いが死者は無し。医療術者の治療を受ければ戦列復帰に支障は出ないだろう。作戦隊も同様だ」
「ふーん、死人ゼロね。存外優しいじゃない、アノ子」
「襲撃時に最後にやられた作戦隊の構成員も、ロボットにぶっ飛ばされこそしたが追撃やトドメを差すようなことはされなかったと言っていたな。吹き飛ばし後の打ち所が悪い奴もいたが、基本的には急所を外すように攻撃されたそうだ。切られた奴は重武装だった構成員に限られている」
「で、アノ子に襲撃された原因って何なの?」
「……反撃、だろうな。作戦隊員の話によると、あのロボットは先の軍事警察とは違う連中を追撃していたようだ。どう見てもレユニオンではない向こう側の存在だったために作戦隊長が口封じ狙いで始末するよう命じたらしい。そこで反撃を受け通信装置が破壊されるに至ったと」
「なにそれ完っ全に藪蛇じゃないの。傍迷惑もいいところだわ。あたしちょっと作戦隊長とやらを〆に行ってくる」
「今はやめておいたほうがいい。作戦隊長は一番傷が深かったのもあって
「生き残ってたら〆ることにするわ」
作戦隊長のどうあがいても避けられぬ末路に少し同情しかけるも、そもそも任務自体が失敗したことと作戦隊長のやらかしで骨折り損を食わされたことを思えば作戦隊長の自業自得であるため、傭兵刀術者は些細な事として同情を消し去ることにした。
◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。
◆時系列はこうでした。
①レユニオン作戦隊が武装警察を撃破後、旧チェルノボーグに潜入
②同時刻にメタルソニックが別の武装警察を追撃して境界線を一時的に越境
③作戦隊が越境中のロボット(メタルソニック)を見つける
④作戦の障害になりそう+敵対勢力のロボットなので作戦隊長がロボットを排除しようとする
⑤ロボットが反撃して作戦隊壊滅、通信途絶
『敵ロボットは一体』『周囲に他ロボットなし』『見た目はゴツくない』『ロボットが作戦隊の情報をエッグマンランドに報告するかもしれない』という状況だったため作戦隊長は先制攻撃を決定しましたが如何せん相手が……
◆次話ですが執筆中なのが
A:レユニオン蜂起後の【カランド貿易】
B:レユニオン蜂起後の【ライン生命】
C:レユニオン蜂起前の【エッグマンランド建国紀】
なのですが、どれのほうが先に読みたいと思われますでしょうか?
これまで全然エッグマン本人を出せていないなぁと思いつつそれを言うならアークナイツキャラもまだ出てないよなぁと思い悩ましく思っていたりします。
因みに上記の話はいずれ全て投稿するつもりです。
またCの次には『ウルサスの子供達』編を投稿する予定ですのでCの後はAとBの投稿が先送りになります。
◆他、『このキャラはどうなってるの?』という質問がございましたら感想欄にコメント頂けますとネタバレや先の展開に触れない程度にお答えできるかと思いますのでお気軽に書き込んで頂けましたら幸いです。