The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
はい。
漸くロドス回ですが説明話になります。
派手な描写がないので何卒御容赦を。
◆登場人物らの呼ばれ方や話し方が間違っている可能性があります。
もしよければ誤字報告や感想欄で指摘して頂けると助かります……
RI-01.現状把握:世界と旧チェルノボーグ
方舟の騎士達へ
1097年1月。
◆チェルノボーグ地域以東・ロドスアイランド錨泊地点◆
「ドクター。長時間の検査、お疲れ様でした」
チェルノボーグから辛くも脱出しロドスに帰還してから一週間が経過した頃、ドクターはケルシーのメディカルルームでバイタルチェックを受けていた。
一週間目最後の検査項目が終わりドクターがケルシーから『体調に問題なし』との診断を言い渡された時、アーミヤがプラスチックのトレーを持って入室してきた。
その上には三人分のコーヒーとお茶請けのクッキーが備えられていた。
「ありがとう、アーミヤ」
ドクターはアーミヤに礼を言って無地のカップを手に取った。
淹れたてのコーヒーの温かく香ばしい匂いが彼のフェイスガード越しでも感じられたことから、バイタルチェックが終わるのを待って準備していたようだった。
同じ部屋にいるケルシーも心なしか穏やかな雰囲気を漂わせていた。
「アーミヤのほうこそ大丈夫か?私はバイタルチェックもあって業務は他の人に代行してもらっていたからともかく、アーミヤは戻って来てからずっと仕事をしているんじゃないか?」
「いいえ、皆さんが手伝って下さってますから私は大丈夫です。確かに仕事は有りますけど、まだ休まなくてもいけますよ」
「うーん……医者の不養生とはやや違うが、無理をしてはいけないよ?」
「ありがとうございます。ちゃんと体調管理してますからドクターは安心してください」
ドクターの問いかけにアーミヤは微笑んで答えるが、ケルシーはコーヒーを持つ手でアーミヤを指差しドクターに告げ口した。
「いいやドクター、もっと言ってやれ。アーミヤは責任感が強すぎて数日どころか数ヶ月先の仕事をこなさないと不安に駆られる傾向にある。この前の定例会議後を例に挙げれば、様子を見に行けば書類を枕に夢を見ていたものだから案件管理の丸印が頬に綺麗にプリントされて」
「けけけケルシー先生!どうしてそれを?!」
「Questionだ、アーミヤ。君はこの前どうやって仕事部屋から自室に戻った?」
「どう?って私……あれ?私っていつの間に自室に戻っていたのでしょうか?」
「Answerだ、アーミヤ。私は笑うクロージャから君を運ぶように頼まれた」
「……ああっ?!」
アーミヤは事の真相を知ると、既に綺麗になっている頬を思わず手で隠してその場に蹲った。
「尚、クロージャからは私がアーミヤを運んだ後に現場写真が送られてきた」
「クロージャさんんんんっ!」
アーミヤは必死にドクターに顔が見えないよう体を丸めながら叫んだ。
アーミヤとケルシーのそうした遣り取りを見たドクターは、記憶が無いながらもこうした時間は前にもあったんだろうな、と優しく微笑んだ。
同時に
「ううっ……私、だらしない女じゃないんです」
「だらしない女じゃないなら、自分の体調も正しく把握しておく事だな」
ケルシーの正論に打ちのめされたアーミヤはずるずると立ち上がり、椅子に座り直してうなだれた。
「さて、アーミヤが座った所で話を始めよう」
ケルシーが手元のタブレットを操作して室内のモニターを起動する。
そこにはこの一週間におけるチェルノボーグに関するニュースや宣言などが数多く表示されていた。
≫▶龍門マスメディアによる『レユニオンムーブメントについての分析』
≫▶『チェルノボーグ暴動に対するウルサス帝国の公式見解』
≫▶『トランスポーター組合のチェルノボーグ行き便及び周辺地域便の輸送費見積』
≫▶『チェルノボーグに関わる企業の株式市場』
≫▶経済アナリストによる『今回の暴動における被害額の想定とウルサス帝国及び周辺都市の経済への影響の論文』
≫▶『謎の新勢力エッグマンランドとDr.エッグマンについての乱雑な情報』が掲載された資料。
etc、etc……。
実際に
彼女はモニターを一瞥すると二人に向かって話し始めた。
「あの時を境に、世界は一変した。
ケルシーは資料の一つをピックアップすると、そこには
≫▶『感染者組織:レユニオンムーブメントによるチェルノボーグ被害総額の予想データ』
≫▶『帝都で腕を振り上げ声高にウルサス帝国の不敗を主張する帝国の有力者の写真と演説の一文』
が表示され、それを解説する龍門の民間メディアが
≫▶『チェルノボーグの失態!ウルサス政府上層部に責任追及の嵐!』
という大きな見出しで、ウルサス国内における政争の激化や派閥争いについての今後の予測を書き記している。
毀誉褒貶の激しさが売りのゴシップ紙では風刺画にて
≫▶『うたた寝する
を描き、ウルサス帝国もレユニオンムーブメントも共に皮肉っていた。
「暴動前の帝国ならばそもそも暴動があった事を認めなかった。ただ単にチェルノボーグ市長が
ドクターは顔を顰めながら頷いた。
ドクターはウルサス帝国に関する知識も喪っていたため、帝国にまつわる情報はバイタルチェックに費やされたこの一週間の間に再度学習した。
期間的な制約もあって表面的なことしか判ってはいないが、それでもケルシーの仮説は大いに納得できるものであった。
あの地獄のような市街であってもチェルノボーグの公共放送は最後まで
『市内の混乱は一時的、局所的』であり、『治安維持部隊は優勢である』
と謳い続けていた。
本当に治安維持部隊が優勢であればどれだけ良かったことか。
実際は
『治安維持部隊の優勢は一時的且つ局所的』で最後まで『市内は混乱』
していたことをドクターは体験していた。
「だが帝国は事実を隠すことは出来なかった。それ以上の衝撃が世界と帝国に走ったからだ」
ケルシーは次の資料を抽出した。
それはチェルノボーグ内の市民と共に避難していた新聞記者が録音した音声記録と、所持していたカメラで撮影した動画だった。
≫▶〈『何だ?!何か急に空から船みたいな建物が浮いてこっちに来てる!中からモニターが出てきた!すごい数だ、市内全域に飛び交っているぞ!?』Ι 〉
≫▶『《はじめまして、諸君!我が名はDr.エッグマン!史上最高の天才科学者にして、世界を支配する大帝国、【エッグマンランド】の支配者である!》』
あの時聞いた言葉が再び室内に広がった。
Dr.エッグマン。
エッグマンランドという空中移動都市を持ち、世界やウルサス帝国相手に堂々と自身が世界帝国であると宣言した男。
彼の登場はウルサス帝国の次の行動とレユニオンのチェルノボーグ侵略計画を全てひっくり返した。
「帝国は暴動後、彼を『愉快犯の狂言』或いは『狂人の妄言』と批判して彼の主張を事実無根とした。だが生き残ったチェルノボーグ市民や外部の人間からの情報で彼が圧倒的な軍事力を持っていることは明確に証明されている。そのことは現在彼がチェルノボーグの一角を支配する勢力になっていることから疑うまでもない。加えてマスメディアにもこのような動画が流れた」
次の動画は上空の空中移動都市近辺に控える飛行船が降下し、中から大量のロボット兵が出現してレユニオン構成員を圧倒していく様子を現地で逃亡中のカメラマンが捉えた物だった。
狂乱する暴徒をテーザーガンのような玩具めいた形の射撃武器で攻撃する様は、暴動の最前線という現場の深刻さ以上に奇妙な滑稽さと常識離れぶりを際立たせるものだった。
「この動画について帝国の国営メディアは『稚拙極まりない合成動画であり浅はかなプロパガンダだ』と主張していたが、画像演出に長けた世界的プロダクションのSNSで『あれが合成なら自社以上の技術だ、技術者は厚遇するから是非うちに面接に来てくれ』と配信したことから合成説は立ち消えになった。合成か否かは兎も角、エッグマンランドの進撃によってレユニオンの侵攻は食い止められた。カジミエーシュの軍事評論家は『レユニオンムーブメントの侵攻速度と治安維持部隊である軍事警察の損耗具合を考慮すると、あと数時間もすれば彼らはチェルノボーグ全域を制圧していただろう。』との見解を示している」
ケルシーは兵棋演習用プログラムにレユニオンの動きと軍事警察の動きを代入したシミュレーションを映して、その戦況推移をトレースした。
エッグマンランド登場直前がレユニオンの攻勢に曝されている軍事警察の最後の抵抗時期であり、エッグマンランド登場後も都市ブロックを防衛、奪還した範囲が変わらないことから軍事警察が完全に崩壊間際だった事が判る。
「レユニオン自体も主力を動員して南部都市ブロックで防衛線を敷く軍事警察の排除を最優先で行っていたようだから、彼らが甚大なダメージを負ったのは自明の理だ。そして軍事警察にとって不幸であり東部都市ブロックに追いやられていた避難市民にとって幸運だったのは、有る意味では『軍事警察がレユニオンの主力を南部ブロックに引きつけていたこと』だ。そのおかげで東部ブロックを攻撃するレユニオンの部隊が言わば二線級の構成員が主となったことで、東部に駐屯していた軍事警察でも辛うじて抵抗を維持できていた。但し評論家の言う通り、仮にエッグマンランドの乱入が遅ければ南部の軍事警察は壊滅し、残る東部の抵抗も直に排除されていただろう」
シミュレーションにエッグマンランドの名前を入力する。
「そしてエッグマンランドがレユニオン主力の少ない東部戦線に登場したことで東部の攻撃部隊に戦略的な混乱が起こった。軍事警察でない未知の勢力からの攻撃となれば無理もない。そして自陣の混乱を纏めきれる主力がいない東部戦線のレユニオンにエッグマンランドが攻勢をかけたことで東部レユニオン部隊は防衛線の構築もままならずに退却することになる。この撤退は南部戦線にも大きく影響を与えており、東部戦線後退の報を聞いて浮き足立ったレユニオンに軍事警察が余力を振り絞って反撃したため南部戦線も一時膠着状態になった。このまま東部戦線を放置すれば制圧した西部都市ブロックの確保も危ういと判断したレユニオン指令部が南部の主力部隊を転戦させてエッグマンランドに応戦し、最終的に戦線付近のビルを倒壊させたことでエッグマンランドも攻勢が止まり、チェルノボーグの『国境』は今の形に収まった」
モニターにチェルノボーグの地図が映し出された。
市街のブロックは
赤、
白、
橙、
にそれぞれ色分けがなされ、
白…
が最も規模が小さく、次に
橙…エッグマンランド
最大勢力が
赤…レユニオン
という状態になっていた。
「現時点での評価としてチェルノボーグの『元』主であるウルサスの正統チェルノボーグは危険度:低。一番疲弊しており防衛態勢を
「ウルサス帝国はまだ動けていないのか?」
「帝都自体も今回の件で混乱している兆候がある。皇帝は帝国議会を立会しチェルノボーグ奪還……占領されたことを認めない帝国風に言えば反逆者の処罰についての計画提出を求めさせたが、暴動の首魁が帝国がこれまで見下していた感染者の組織であったことから非主流派と主流派の間にある主導権争い、チェルノボーグ近辺の貴族と遠方の貴族での危機感の温度差、チェルノボーグ派貴族に対する都市陥落の責任追及、都市奪還作戦時の指示系統や兵員負担、奪還後の権益についての分配の主張と復興で発生する費用の押し付け合いなど……拙速どころか拙遅に劣るレベルで宮廷政治が泥沼化している。帝都のほうで先に粛清が起こるという予測も出る有り様だ。正統チェルノボーグの残存部隊にもその様子は潜入したトランスポーター経由で広がっているらしく、部隊上官クラスはともかく構成員らの士気は振るわない。レユニオンが次の攻撃目標にしているという分析もあるため『他の移動都市か、それこそエッグマンランドに降伏して救援してもらえ』等という皮肉話もある程だ」
「生き残っている武装警察達の打つ手は何か考えられますか、ケルシー先生?」
「帝国の残存部隊の手っ取り早い生存策は、移動都市基部の接合解除による物理的な避難だ。だが……やれば帝国のチェルノボーグに対する支配権に泥を塗ることに繋がる。それは世界にチェルノボーグが帝国にとって手に負えなくなった事を証明してしまうため、帝都は決してそれを認めない。やれば最後、帝都の『反逆者討伐』相手に追加でカウントされるだろう。八方塞がりだな」
ケルシーはこれまでの資料を基に旧チェルノボーグの分析を部屋にあるホワイトボードに書き記した。
追い詰められている残存部隊の窮状が明確になった。
◆感想や改善点、質問などございましたら是非コメントお願いします。
◆レユニオンサイドの話を同時進行で作成中(※次の投稿がレユニオンサイドになるとは限りません)ですが、うまいこと登場人物たちの会話がエミュできなくて困る。
そもそも彼らって率先して他の幹部と会話するんだろうか……?