The great Great GREAT Doctor is Me !   作:東京<アズマ キョウ>

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◆投稿が遅くなり申し訳ございませんでした。
そしてアークナイツ九章開幕おめでとうございます。
レユニオン編から一年後の世界らしいですが、改めて第一部のシナリオが濃密なことにため息が出ます。

…拙作だとまた二週間どころか一週間しかたってないのでもうズレが半端ないですがこれからもオリジナル路線で進めます。


RI-04.現状分析:エッグマンランドと方舟の舵

箱舟の医師よ、騎士を連れて舵をとれ

その手で帆を張り櫂を持ち、源石(イシ)に侵された大地に漕ぎ出せ

残酷な世界を進むに必要なのは、己が意志ある一歩の他に無し

 


 

◆ロドス・ケルシー専用メディカルルーム◆

 

「何というか…ウルサス帝国と比べたから、というわけではないと思うが、支配体制が緩いな。いや、支配をしていることは事実だが……こう、あの時の高圧的な態度の割には苛政を布いているようには見えない。第一、感染者と非感染者の区別があまりに()()()()()。この一週間で目を通してきた資料と比較しても他の都市で実施しているような隔離等の政策は無きに等しい。まるで『【鉱石病】が他の疾病と同じ』であるかのように錯覚する程だ」

「まだ都市の地盤固めをしているからかもしれませんが、レユニオンを押し返し都市を迅速に再建する程の力があるなら……酷い言い方をすれば市民に(おもね)る必要はないはずです。ですがこの様子だと市民の慰撫や衛生対策にかなりリソースを割いているみたいですね。この項目の、『市民全員に入浴命令』とか、どの移動都市でも下されたことはありません」

「強制労働の施行はあるが、これはある意味難民向けの雇用対策ないし公共福祉の類と言ってもいいだろう。しかも必要最低限の食糧は配給で賄っているのだから余剰生産、或いは経済活動としての労働と言っていいかもしれない。この分析がエッグマンランドが自ら吹聴したものならプロパガンダを疑う所だが、都市に出入りしたトランスポーター達の意見で、更にクロージャが洗い出した情報となれば信憑性はひとまず問題ないだろう」

「都市はDr.エッグマンの完全な独裁のようですが、そもそも他の住民が元チェルノボーグ市民や避難民以外見当たらないというのはどういうことでしょうか?」

「気になる情報もある。この一次産業の強制労働項で『ヒト→野菜→ヒトの【鉱石病】発病は他国でも確認されていない』というものだ。まだこの一週間程度しか【鉱石病】のデータを見ていないがそういう研究のデータはあまりなかった筈だ。ヴィクトリアの大学で植物経由の感染に関する研究をしている研究室があった気はするが、一体どうやってその情報を入手したんだ?」

 

 ドクター達は抱いた数々の疑問を口にすると、聞き取るクロージャはそれらをまとめてホワイトボードに書き込んだ。

 

「ありがとうねー。とりあえず今挙がった疑問点は改めて精査して研究するとして、最初に聞かれてた私のあの組織について見解を述べるよ。まずエッグマンランドがどの国の組織かなんだけど……エッグマンランド、あの空中都市は多分Dr.エッグマン個人の所有物かもしれないって私は思ってる。それも文字通りのね」

「「えっ?」」

 

 クロージャから思いもよらない言葉が出た。

確かに大地を走る移動都市はその多くが王族や貴族・大商人・地主といった上流階級が主権を担っており、事実上は彼らの所有物であるといっても障りはないがそれはあくまで権利や概念としての話である。

ウルサス帝国や【炎国】では『全ての移動都市は等しく皇帝/天子の所有するところである』と定められているが、それと移動都市を自在に采配できることとは別の話である。

また上流階級が移動都市を牛耳っているのは事実だが実効支配や運営については大凡が移動都市のブロック毎のものであり、上流階級の家長らの一存だけで都市のすべてが決まるわけではない。

リターニアの移動都市のような貴族の権利が極めて強い場合もないわけではないが、通常の移動都市ではなくあの空に浮かぶ移動都市と大規模な機械集団を個人で所有するなど通常では不可能な話である。

にも拘らずそれを『所有物』と判断したクロージャの意図を、ドクターとアーミヤは理解出来ず揃って首を傾げた。

 

「というのもねー……このDr.エッグマンがやってることは見ての通り非常識過ぎて、普通なら出来っこない行動ばかりなんだよね。それはいわゆる『常識的に』って意味じゃなくて『効率的に』『組織の利益的』って意味で」

 

 二人の疑問に答えるべく、クロージャは資料が貼り尽くされたホワイトボードを脇に避け別のボードを取り出した。

 

「真っ先に挙がるポイントは『空中移動都市』。もしもこれがどこかの組織が昔から既に持っていたなら……『最新の移動都市』として大々的に宣伝されてるか、もっと的確なタイミングで発表してると思う。それに対して今回チェルノボーグ暴動に合わせて出現したのは確かにインパクト大だったけど、空中移動都市をプレゼンテーションするには場違いじゃない?軍事的アピール、という点では間違ってないかもだけど、だからといってぶっつけ本番みたいな状況でやるものかな?」

 

 クロージャはボードに『何故チェルノボーグで登場した?』と書き込む。

 

「次のポイントは『チェルノボーグ乱入』。まぁ、あの放送の後で上空からロボットを大量に投入してくれたお蔭でドクター達は無事にチェルノボーグから脱出できたから言うのはアレなんだけど、エッグマンランドにとってあのレユニオン戦は極論を言えば不要な戦いなのよ。徒に戦略物資の消耗を促すだけだった」

「不要、とはどういうことですか?」

「そもそもチェルノボーグを支配するのにいちいち支配するぞーなんて言わずにドローンやロボットを都市中に大量にバラまいてレユニオンを殲滅するだけでいいの。そういうことが出来るだけの数はありそうだし。でも降下させる前にわざわざ宣言なんてしたら普通警戒されるでしょ?確かにエッグマンランドは上空にあるんだからできる対策なんて限られるだろうけど、だとしても何も言わないほうがずっと効率的よ。付け加えると、チェルノボーグの武装警察と連携するでもないのに彼らが抵抗の余力を残している時に乱入するのも微妙だと思うわ」

 

『何故不要な戦闘をした?』と書き込んだクロージャにアーミヤが尋ねると、彼女はマーカーを弄びながら己の見解を述べた。

 

「チェルノボーグがレユニオンに完全制圧されることを危惧したか……いや、この場合はむしろ『完全制圧されてから』のほうが効果的かもしれない。目標達成で構成員の緊張が緩んだ瞬間に攻撃をするほうが奇襲の威力が上がる。都市外に脱出した軍事警察がいればレユニオンは追撃の為に人員を割いていたかも知れない。そうなれば戦力の分断も狙えただろう。現状より多くの都市を制圧、いやレユニオンの戦力次第では逆に彼らを叩き出せたかもしれない」

「かもねー」

 

 ドクターの補足考察にクロージャが頷く。

 

「流石にアーツの強い幹部は抵抗できるだろうけど不意討ちで大多数の構成員を喪えばレユニオンも再建は困難だったと思う。でもエッグマンランドはそうしなかった。この一週間の間に小競り合いは起きたけどあの時ほどの衝突は起きてないわ。それも妙な話よね」

 

『何故不意討ちをしなかった?』『正面衝突がないのは何故?』と書かれる。

そしてクロージャは書き込んだ言葉達を丸で囲み、それぞれに矢印を足して下の空白まで引っ張った。

 

「もしもエッグマンランドに軍事関係のブレーンがいれば私以上に効率的な作戦を立案するだろうね。なのに実際は素人のあたしでももっとやりようがあったと思いつく筈の行動が何の障害もなく実現しているってことは、余程その行動に誰も口出しできない程か、そもそも反対する人が物理的に存在しないかってことにならない?」

 

 書かれた『軍事ブレーンどこ?』の言葉。

こうして彼女が示した可能性はシンプルに2つ。

 

 軍事のエキスパートではない人間の立てた作戦が通るとすれば、立案者が暴走しても止められないほどの状態か、立案者以外に軍事ブレーンも作戦検討チームも物理的に存在しないかである。

 

「で、トランスポーターの情報にある『Dr.エッグマンが人前に出ている』『チェルノボーグ以外の先住民が見当たらない』を加味すれば……あそこにはD()r().()()()()()()()()()()()()()()()()、つまりあの移動都市の名義が何であれ誰であれ、それってほぼあのお爺ちゃんの所有物同然よね?だったら私はエッグマンランドはお爺ちゃんの考え一つで動くんだってみるよ。どう?」

 

 クロージャはドクターに確認を求めた。

 

「……確かに、Dr.エッグマンが無二の裁量権を持っているのは間違いない。それは最早私有物と言っても過言ではないだろうな」

 

 ドクターはクロージャの考えに首肯すると共にかの存在に対して軽くない不安を覚えた。

Dr.エッグマンが暴走すれば誰も彼を止めることができないからだ。

ましてや彼はその姿を現した時から既に己の野心を(あらわ)にしていたため、いずれ野望を果すための大胆な行動に出るのは想像に難くない。

しかしドクターは移動都市、更には遥か上空にある移動都市の暴挙を阻止する方法など想像だに出来なかった。

 

 ふと。

 

「……動画のある一瞬にDr.エッグマンは誰かに話し掛けていなかったか?」

 

 ドクターの呟きにアーミヤがハッとなった。

 

「そういえば!あの実験の前後に誰かと話をしていたように思います」

「身内か賛同者か……だが彼に物申すことはできるみたいだったな」

「お、キーパーソンは他にも居そうだねー。じゃあそこも控えて次にいくよー」

 

 クロージャはホワイトボードに『Dr.エッグマン以外にも決定権者あり?』と書いて話を再開した。

 

「さて、エッグマンランドがどういう移動都市かって話だけど、まぁ見ての通り際立った科学力を持った所よねー。一部とはいえチェルノボーグの破壊された街並みをもう復旧させたどころかユニークな意匠で街を完全に自分色に染め上げちゃってるもの」

 

 クロージャがPCモニターに映したのは暴動前後のチェルノボーグの写真二枚だった。

どちらも炎国―龍門方向に面する東入国管理局の前を撮影したもので、暴動前は白を基調としウルサス芸術の伝統的な彫刻などを施した造りで武骨さと威圧感をひしひしと感じさせているのだが……暴動後、ここがチェルノボーグからエッグマンボーグに変わった後の同じ場所は赤やオレンジ色がメインで全体的に丸っこいデザインの建物になり、何だかデフォルメされた顔のような形になっていた。

口にあたる所には歩哨任務に就いているのか四体のロボットが人の背丈ほどあるランスを携えており、入国する人間を口の中に案内している。

尤も仕事をしているのは内二体であり、一体は壁にもたれて座っており残り一体はどうやら青い服を着たループス族女性トランスポーターと写真を撮っているようだった。

 同じ場所にも関わらず、その余りに温度差のある写真を見てアーミヤは思わず吹き出した。

アーミヤは口をさっと隠し、噴き出した時の顔を見られていないかとドクターの方を一瞥してからクロージャに尋ねた。

 

「く、クロージャさん……これは?」

 

 クロージャはアーミヤとは違って口を隠さず笑いながら答えた。

 

「いやー何度見ても面白いわー!見ての通り、左側が私達がチェルノボーグに入る前に偵察した時の写真で、右側が二日前にエッグマンボーグ入りしたウチの契約トランスポーター『プロヴァンス』が送ってくれた写真だよー。何だかシエスタにあるテーマパークみたいだよねーテンションあがりそう!」

「……ここは脱出した時でも他ほどじゃないが破壊されていた場所じゃなかったか?」

「は、はい、ドクター。つまりこの一週間、いえ一週間未満で入国管理局の施設を建築したみたいです」

「加えて検問までするロボットか。それに撮影サービスと休憩、いやサボりか?ともかく高度な自主性を伴った行動を出来るロボットがCastle-3やLancet-2以外にもいるとは。凄まじい技術力だな……」

 

 ドクターは一見滑稽で気楽な一枚の写真の中に高度な科学技術が惜しげもなく使われているのを見て溜め息をついた。

 

「そう!このドローンやロボットがあの国の肝、一番のユニークポイントよね!この一週間の間に沢山のトランスポーターがエッグマンランドに入国してるんだけど、至るところにロボットが歩いてるんだって!流石にまだ都市の完全復旧には到っていないみたいだけど、崩れた建物の撤去や再建築、負傷した市民の応急処置、食糧の配給と炊き出し、壊れたインフラの修理に仮設住宅の設置、避難民間のトラブル仲裁、強盗・窃盗とかの犯罪取り締まり……とロボットがやたらめったらに動き回ってるんだってさ!これ、その写真」

 

 対するクロージャは眼を輝かせながらジャケットのポケットに手を突っ込むと、そこから大量の写真を取り出して机の上にばらまいた。

それらの内容は、彼女がトランスポーターのプロヴァンスに個人的に依頼して撮影させた多種多様なロボットだった。

 

「結構種類があるようだな……」

「こ、こんなにも見た目が違うロボットがいるんですか?!」

「いやーほんともう!これだけの種類をあのお爺ちゃんが全部作ったのか買ったのかは判らないけどバリエーションだけはもう脱帽よ!」

 

 ドクターやアーミヤが写真を手に取って眺める傍らでクロージャが楽しげに注釈を入れる。

 

 先の入国管理局でも写っていた、楕円状の胴体を持ち、細い手足を器用に操りながら市内の様々な作業に従事しているワークロボット。

倒壊した建物の撤去と仮設住宅の建築を行う様子や、どうやっているかは不明だが同じロボット(同胞)を積んだ運搬トラックに乗って移動する様子、建設中の食堂(ダイナー)の前に広がる青空食堂(配給所)で器用にコック帽を被って市民にパンとスープを配膳する様子など、写っている仕事は多岐に渡っている*1

 

 東部ブロックに設置されていた武装警察の派出所を改修し『エッグマンガード』という看板が据え付けられた施設の前に並ぶ、硬質的で厚い装甲のボディが軍用トラックをイメージさせる【G】の字をプリントしたロボット。

ワークロボットを連れて巡回しているようで、写真の中には犯罪か騒動を起こしたと思われる市民や難民を捕まえて連行しているシーンがある。

また生き残りであろうチェルノボーグ武装警察の警官の後ろについて移動する様子もあり、治安維持に勤める警官を補佐、或いは監視しているのかもしれない*2

 

 上空を移動する飛行船の警備や卸された物資の積み換え、倒壊した建物の瓦礫をワークロボットや市民の労働者と共に撤去しているロボット。

【CAST】の字を付けた筋肉質な四肢と胸部や頭部などの体の一部を機械的な装置を備え、ガードロボットとは異なる印象を見る者に与えてくる*3

 

 医療施設でワークロボットが患者を担架で運んだり淡く光るカプセルを怪我人にぶつけたりしているというシュールな光景を写した物の中に、明らかに感染者であろう難民の手当てや消毒、摂食介助などを行っている【CASEAL】の字を付けた女性的なロボット。

難民や避難市民の子供の面倒を見ているものや、女性たちと共に離乳食や療養食を作っている姿も写されている*4

 

 都市ブロックで外界との境界線を示す外縁道路には今までのヒューマノイド型とはうって変わって動物のような、虫のような、或いは玩具のような見た目をしたロボットが写っている。

子供程のサイズの動物ロボットは街灯や街路樹の上に座って辺りを見回したり、甲虫を何倍にも大きくした虫型ロボットは頭のライトで前方を照らしながらふよふよと道路に沿って巡回している。

黒いバランスボールのようなロボットはその丸っこさとは裏腹に棘の付いた鉄球を複数浮かべて都市地上―基部間を繋ぐエレベーター付近を監視している。

他、都市内には胴体に付いたプロペラで浮遊するロボットや、ムカデのように幾つもの節でつながって宙を舞うロボットなど、用途や目的が不明のロボットも多数撮影されていた*5

 

「でまぁ、こんだけすごい技術がエッグマンランドにはある……まぁ都市が空を飛ぶ時点で大概なんだけど、この七日の間ではチェルノボーグとは違って他の移動都市へは干渉や侵略みたいなことはしてないのよね。民間交流は封鎖してないけど、移動都市政府にコンタクトは取ってないみたい。ぶっちゃけ今の移動都市にエッグマンランドを食い止められる所なんて殆どないと思うんだけどねー」

 

 クロージャは散らかしたロボットの写真を丁寧に整えてポケットの中に放り込む。

 

「まぁ色々と話したけど、ロドスにとって一番の注目点は『アレ』以上にはないよね」

 

 そして厚みがつくほど資料が貼り付けたホワイトボードを隅に追いやると、クロージャは裏に設置してあったテレビのスイッチを押して『アレ』を再生し始めた。

 

「あの時の録画がちょうどあったのか?」

 

 ドクターは少し驚きながらアーミヤに話しかけた。

 

「ロドスでは全員が同じ時間にテレビを見られるわけじゃありませんから、希望者には特定の時間で録画された動画を閲覧するというのが許可されているんです。あの時の時間帯だと普段は【天災】情報を周囲の移動都市が放送するので、トランスポーターさん達が後で見られるように定期的に録画していたんです。そしたら、チェルノボーグの電波がジャックされてあの放送が流れましたからね。偶然の一致でした」

 

 アーミヤがドクターにそう説明すると、テレビでは正に『アレ』の光景が流れ始めた。

 

《見よ!コレこそワシがこの惑星で最初に開発した偉大なる発明品、『エッグ=リムーバー』じゃ!》

 

 ドクター達の脳裏にあの時の衝撃が再び蘇る。

オリジムシを生かしたまま露出した源石部を消滅させたその動画は、この世界を大きく揺るがせたといっても過言ではなかった。

 

「……改めて見ても、とても信じられません」

 

 アーミヤは息が漏れ出すような程度の声で呟いた。

 

「だよねー、私だってそう思うもん。でも同時に私の中の結論がコレは本物だって断言してるし、【BSW】から出向している『ヴァニラ』ちゃんが替え玉オリジムシによる偽物動画ではないって言ってるの。あの子曰くオリジムシの棘は個体によって千差万別だから違う個体を用意しても棘の違いで判るんだって」

 

 クロージャはテレビのモニターをコンコンと叩きながら言った。

 

「詳細な仕組みは解らないけど、多分あの宝石みたいな所から源石のエネルギーを中和する力を出力してるんだと思う。源石部の消え方としては装置の吸い込みに目がいきがちになるけど現象としては源石の崩壊状態に近いように見えるね」

「確かに、オリジムシの源石部の消滅は純正源石がエネルギー資源として消費される際に発生する反応に似ている……源石はその高いエネルギー効率から燃え滓が殆ど残らないことが特徴だが、この動画では僅かに塵のようなものが飛散している。まだ出力が足りていないのか、或いはオリジムシの取り込んだ源石の不純物由来のものかもしれないな」

 

 クロージャの推測にドクターがその身に残る源石についての知識を用いて見解を述べると、クロージャは挨拶を貰えた子供のような笑みを浮かべて頷いた。

 

「私もそう思うよ。まぁ動画でもDr.エッグマンがあの後結果についてぶつくさ言ってたから本人的には途上なんだろうね」

「でも、私達にとってはそうであっても大変貴重な存在です」

 

 アーミヤは耳を俯かせて言った。

 

 当然、アーミヤは日頃の弛まぬ研鑽から【鉱石病】の治療に関する知識は群を抜いており、故に過去様々な治療法……迷信や不適当、詐欺に到るまで学習しており並大抵の手法ならその効果の真偽についてはある程度判断することができた。

その自身の知識を以てして、『エッグ=リムーバー』は信じがたいにせよ確かな効果があると判断できた上に彼女の信頼するケルシーやクロージャ、ドクターが同様にその効果を認めている今、例え不完全であっても『エッグ=リムーバー』はロドスの、それ以上にこの星の全ての【鉱石病】患者にとっての切り札になるかもしれなかった。

 

「そう。だからロドスは彼に接触する必要がある……ということだな」

 

 ドクターは膝に肘をつき両手を組んで応えた。

 

「レユニオンムーブメントはもとよりウルサス帝国も敵に回す可能性があることは考慮しているな?今は日和見している他の移動都市がDr.エッグマンと敵対すると決めた時、我々は彼等の反抗勢力として摺り潰されるかもしれないことは承知しているな?あの男が世界帝国を自称する程に野心高いのであればいずれ他国やロドスに対しても服従を強いてくる可能性があるのを自覚しているな?」

 

 ケルシーがドクターやアーミヤの意志を確かめるかのように問いかけた。

 

 それに対しドクターとアーミヤは迷うことなく答えた。

 

「何一つ覚えていないこの身体だが、【鉱石病】から人々を救わねばならないことだけは決して揺るがない。そのための一歩になるのなら何処だろうとも踏み出してみせよう」

「ケルシー先生、ありがとうございます。私のやるべきことは変わりませんから」

「……ふーっ」

 

ケルシーは判りきっていたが、二人の揺るがぬ決意を見て……同時に自身を含めて大きな重荷をかけていることを認識して大きく溜め息をついた。

 

「よく言うた!それでこそロドスや!あっははははは!

 

 一方クロージャはロドスアイランド契約企業であるペンギン急便に籍を置くオペレーターのクロワッサンめいた訛りのある言葉で二人を讃えて笑った。

 

「では、早速動くとしよう。アーミヤやケルシー、クロージャに他のオペレーターの御蔭で英気を養えたからな。あの博士に面会のアポを取る必要があるな」

「エッグマンボーグ渡航に関する手続きは私の方で処理する。準備が整ったら連絡する」

「アポといえばドクター、先ほど【イェラグ】の【カランド貿易】社長の『シルバーアッシュ』さんから面談の要望が届きました」

「あの都市の近場にある龍門のほうにも話を通しておくべきじゃない?まぁとりあえず休憩に行かない?あたし小腹空いてきちゃった」

 

 そうして彼らは立ち上がり、ケルシーのメディカルルームを出て行った。

 

 資料と電子機器のみが残った部屋で、壁に描かれたロドスのロゴが非常灯の緑光に照らされて鈍く光っていた。

*1
「多分市内で一番多いタイプはこの子達ね。動画でもあったように攻撃の一番手やら門番やら復旧作業やらで様々な雑事をこなしてるから働きアリみたいなものかしら」「ある意味エッグマンランド、エッグマンボーグにおける奴隷階級になるのだろうか?」「かもね」

*2
「警察、いやガードロボットなのかな。いかにも軍事用って感じの見た目よね。塗装や構造に合理性を感じるし、直線的なフォルムは量産性を高めるわ。何となくあのお爺ちゃんらしくないコンセプトね」「これは、感染者と非感染者の衝突、でしょうか?」「どっちも簀巻きになってるけど、多分。まぁ一週間しか経ってないからね、ましてや元ウルサスだから人々の感情はそう簡単に変わらないよね。因みに問題が起きたら喧嘩両成敗でロボットが連行して、飛行船を収容所代わりに使ってるって写真撮ってくれたプロヴァンスが言ってたよ」

*3
「なんかこうハコっぽいものを着けたマッチョマンにも見えなくはないけどこの子もガードロボット系のロボットね。さっきの子と比べると体格が人体寄りだから人間の環境に合わせたタイプなのかも。ガードロボットの設計思想を博士がアレンジしたのかな?」「不思議な感覚だ。ロボットと人間の融合を見ているみたいだ」「肉体に相当する部分のところがまるで本物の筋肉のように見えますね、ドクター」「人間っぽさでいえば次の子のほうも中々よ?」

*4
「今までのロボットとはまた違う雰囲気の子よね。さっきのキャスト寄りではあるけどこっちの子の方が華奢で大分私達の体に近い感じ。だから人気もあるみたいよ。ほら見てここで治療受けてる患者の子供、頬が赤くなってて初々しいわねぇ~。こんな見た目だったら親しみも湧きやすいし敵対心も抑えてくれそうよね。まぁこの子もご多分に漏れずロボットらしいパワーを持ってるけど。他で撮った写真だとどう見てもガタイが勝ってるウルサス人の男の人を背負子(しょいこ)で軽々と運んでるし、こんなことができるなら住宅の救急患者を即座に屋外に出すのもできるわよね。人型ならではの強みというか、こう、あたしのロボットとはまた違う性能というか……あーもう、やっぱり現地調査行っちゃダメ?」「ダメに決まってるだろうが」「ぐえー」

*5
「この子達はあたしもどういう仕事してるのかはよくわかんないや。あえて言うなら、あのお爺ちゃんの趣味、かなぁ……?こう、『ワシの発明品を並べたい!』的な?まぁ数は結構あるようだからこの子達が大挙して迫ってきたら大変かもね」




◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。

◆ここで一度ロドス視点は区切ります。
次の投稿はレユニオンサイドのとあるキャラを中心にした話になります。
投稿間隔が空いてしまって申し訳ございませんが必ず投稿はしますので
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
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