The great Great GREAT Doctor is Me ! 作:東京<アズマ キョウ>
◆来週、再来週は会社行事のため申し訳ございませんが投稿をお休みさせていただきます。
とかく腹に落として納得しなければならない時がある
それはきっと苦い脂の味がするはずだ
「……」
ジャンクな匂いを消臭するエアークリーナーの稼働音が響く中、プロヴァンスの言葉だけが続く。
「まぁ、そんな感じであちこちにある廃棄された【移動都市】を回収しては
「……実質、領土は無制限ということか。前代未聞だな」
「噂じゃ技術者の見たことがない新型移動基部が飛行船で運搬されてたって話もあるけど、各地で雇い入れた傭兵だったり流れ着いた難民達だったりの住宅問題はこの増設【移動都市】に放り込むことである程度何とかなるだろうね。宅地面積の問題については、うん、なんか雨後の〝キノコ〟レベルでアパートが建設されてるから解決は落成スピード次第かなぁ。まぁそれでも先住者と移民者とのズレはどうしても存在するし、『拾って来た』都市の住民の一部が帰順を拒否して追放されるケースはゼロじゃないって聞くし、その辺りは要警戒だね」
「……普通は住民問題と住宅問題の二つが同時に課題になるんだと思うが、一概に言い切れない場合というのが存在するのだな」
Dr.エッグマンのむちゃくちゃなやり方についてドクターは重い溜息と共に一言出してミネラルウォーターを飲み干した。
想像の埒外な展開に、アーミヤ達も首をかしげてドクターの一言に同意する。
「移設させてきた都市基部の源石エンジンをどう調達するのかは疑問ですが、少なくとも咄嗟の移動は造作もないかもしれませんね」
ジュースを飲んで考察するアーミヤ。
「そもそもいざとなったら飛行船で人間抱えて飛んでいきゃいいから、下手すりゃエンジンが無くても問題ないんじゃないか?何だったら家ごと空に飛ばして避難とかさ」
荒業の可能性を思いつくガヴィル。
「外付けで【移動都市】が増やせるなら住宅事情はそう遠くない未来に解決しそうだな。先住民との折り合いこそあれど、廃棄された都市なら基本的に住民の数は少ないだろう。最悪、強権を以て先住民を全員追放して移民を住まわせる、なんて手も取るかもしれない。都市に住みたい人間の数に限りはないからな、不平不満を飲み込んで移住希望を出すなんて大したことじゃない」
独裁者の手法を指摘するフロストリーフ。
「元々の都市管理者、貴族や国から何かしらの抗議か干渉が入りそうですが……」
「ロドスの資料に過去の【移動都市】の所有権に関する争議の記録があったが、流石に廃棄後に持ち去られた都市についての判例はなかったな。一応、都市間戦争における都市の割譲例や都市の不法占拠、【天災】救助の費用請求に関する事例が参考になるか?」
「その辺りは弁護士に聞いてみないと判りませんね」
権利方面で話し合うドクターとアーミヤ、そして。
「……並の弁護士が判断できると思うか?」
「「「無理だな/ですね/じゃね?」」」
ドクターの疑問に共通見解が出た以上この話は議論してもきりがないとして、増える【移動都市】については話を打ち切ることになった。
「判るのは、エッグマンランドはエッグマンボーグを核にこれから増々国力と国土が増えるというわけだ。周囲が認める認めざるに関わらず、な。ならば是が非でも国の上層部とは縁を探りたい。クロージャの分析通りなら、向こうも国外へのチャンネルを模索している筈だ。今なら我々のコンタクトが直接Dr.エッグマンに繋がりやすい時期だろう」
「そうですね、ドクター」
「さて、一部の資料は移動中に目を通してはいるが、改めてエッグマンランドについて判っている情報を共有しようか」
バーガーで腹を満たしたドクター達ロドス一行は部屋備え付けのポットで淹れた茶を飲む傍ら、これまでロドスが集めた資料を広く並べる。
トランスポーターの集めた情報、チェルノボーグ難民からの証言、『ドクター奪還』に参加したオペレーター達の報告、危機契約機構や各国企業の調査報告(公開版)のほか、先行して現地入りしたプロヴァンスが入手したエッグマンボーグ公営新聞や入札情報などがテーブルに乗りきらず、ツインベッドの片方を占拠しながら整理された。
「結構集まってるもんだな」
マットに座って尻尾を伸ばすガヴィルがベッドの資料に目を通しながら呟く。
「まー今絶賛注目のホットスポットだからねー、ロドス以外でも色んなところが情報収集に奔走してるから、逆に言えば色んなところが情報を吐き出して中身の重要度を判断しようとしてる。トランスポーター組合から『非公式』でここの情報を管理する連絡が来てるしね」
プロヴァンスが床に置いていた私物の鞄から取り出すのは一冊のノート。
【臨時連絡帳】と書かれたソレをアーミヤ達に見えるように広げると、そこはエッグマンランドに関する記述が印刷されたページと白紙のページが綴られており、ページ下部にはナンバーとバーコードが印字されている。
「これは?」
「トランスポーター組合の支所で貰える情報冊子だよ。左側に組合の公式情報、組合的に正しいと判断した情報が載ってて、トランスポーターはそれの追加情報や正しい情報などを見つけたり知ったりした場合は右側のページに追記するんだ。で、追記したものをまた組合支所に提出して、もしもその情報がより正確とかより正しいとか判断されれば左ページの情報が更新されて、更新のきっかけになった人にはボーナスが支給される仕組みになってるよ」
「そういうものがあるのか」
プロヴァンスはそれぞれの項目を指で差して説明する。
今彼女が開いているページの左では、主要都市の対エッグマンランド施策予想が書かれており、最新情報の行には情報提供者の名前が付記されている。
ドクターは初めて聞くトランスポーター組合のシステムに感心した。
「ロドス内の回覧板とかネットの掲示板がノートになったみたいな?」
「ガヴィルの言う掲示板のほうが近いかも。で、今は臨時の手帳が追加されてて、その内容はエッグマンランドに関することだけに絞られてる。いつも臨時連絡帳は【大天災】とか政情不安地域とかの『特にこのことについてトランスポーターが知りたい』っていう内容に対して発行されるんだけど、今回はエッグマンランドについての内容で一冊新しく発行されたんだよね」
彼女がノートを閉じると、表紙には『EL臨時連絡帳』の一行が印字されていた。
「トランスポーター組合も此処について知りたがってるのですね」
「そういうこと、アーミヤちゃん。だからトランスポーターで手すきだったり長期契約がなかったりする人はこの都市に来て情報収集してる。で、連絡帳に掲載されるためにはできる限り正確な情報を集めないといけない。自然と組合支所ではトランスポーター達が休憩がてら情報交換をして、自分の持ってる経験やネタと照らし合わせて何が正しいか、何が重要かを識別してそれぞれ組合に提出するんだ。だからそういうルートを利用すれば情報は集めやすくなるんだよね」
「なるほど……」
「あ、それとそれと」
トランスポーター達のそうした動きにアーミヤが納得していると、プロヴァンスは連絡帳の表紙裏に付いているファイルシートから一枚のチラシを取り出した。
外見を見るに、何らかの仕事の紹介が印刷されているようだった。
「エッグマンランド自体も情報の出し渋りをしていない感じがするよ。見てよ、この求人。都市に新設された職業紹介所が正式に配布してるやつなんだけどね、普通のバイトも公務員もとにかく募集してるのよ。飲食店、運送業、会社員、作業員、農夫、とか。公務員募集、教師、介護救急員、警察、防衛団、役所とかね。すごい節操なし。何だったらこのチラシ、どういう仕事をするのかを動画付きで紹介してくれるんだよね。ほらこれ、これを……あれ、あのテレビ、あれの下にスリットがあるでしょ?あそこに差し込むと紹介動画が流れ始めるの」
「何だそれ、見てみようぜ」
「じゃあそれ貸して」
プロヴァンスがテレビの近くに座るフロストリーフに一枚の求人チラシを渡し、受け取ったフロストリーフが備品テレビの画面下にあるスリットに差し入れると。
『オーホッホッホッホッホッホ!諸君、ワシが世界を統べ星を股にかける天才科学者、Dr.エッグマンである!』
クルビアで流行っているというメタル調のBGM*1と共に目的の人物の高笑いが唐突に流れ出した。
テレビの前に居たフロストリーフは思わず眉と耳を顰め、お茶を飲んでいたアーミヤはあわや噴き出しそうになったため鋼の自制心で漏れ出す息を吞み込んだ。
Dr.エッグマンの自己紹介の後は、入国管理施設に居たようなスーツ姿のCASEALが引き継いで求人紙に掲載されている内容を説明し始めた。
プロヴァンスが手に入れたこの求人紙は、『農夫』『防衛団』の人材募集をしているものらしく、数分程度のプレゼンテーションがそれぞれ放送されている。
農夫の紹介では工事現場などでよく見かける丸っこいワークロボットが麦わら帽子を被り、鍬を振ったり耕運機で畑を耕したり畜獣に小突かれたりしながら牧場を歩いている様子が流れる。
出演者がロボットであること以外は丁寧な紹介の農夫動画だった。
しかし、次に流れる防衛団の紹介は先の動画と比べロドスにとって初見の情報が多くあった。
動画では訓練室と思わしき場所で、これまでの資料で見たことがないCASTとCASEALが武器を取りまわして求める人材の条件を発表している。
ドクター達の知るCASTが大型鎧や重機を、CASEALが女中服を思わせるデザインをしていた。
それに対して、訓練室の二種は胸部や四肢のプロテクターがスリムでボディラインがはっきりと出るデザインになっており、新CASTは軽装の武闘家のような体躯で新CASEALは露出ある踊り子を連想させそうな程にパーツが少ないが、脚部のヒールや手に持つ短刀のような武器を見ればそれは暗殺者を彷彿とさせる姿形であった。
「これは、新型か?」
「もしくは本国から取り寄せたり、あるいはチェルノボーグ侵攻時では温存していたか、ですかね?」
ドクターとアーミヤは未知のロボット達を見て呟く。
「
「いや……撃ちだしているのは何か……的の砕け具合から素材は金属、鉄球を放つ高性能のスリングショット、それとも【BSW】みたいに守護銃を再現したものかな?」
一方ガヴィルとフロストリーフは、ロボットの持つ物の中でも特徴的なシルエットの
守護銃はラテラーノもといサンクタの象徴ともいえるアイテムで、弓やクロスボウとは違い高速で弾丸を撃ちこむ精密なアーツ武器である。
威力等については保有者の技能に左右されるところはあるが、熟練者になれば強弓使いの射手に並んで強力な遠距離射撃を繰り出すことができるため、味方にいれば非常に頼りになる存在である。
欠点は先に述べた通り、保有者の技能に左右される点と構造に精密性が求められる点、そして量産ができない点が挙げられる。
守護銃の放つ弾丸はそれ自体が小さなアーツユニットであるため、使用者にアーツ適正がない場合は単に小さな源石のエネルギーを運動エネルギーに換えたスリングショット擬きにしかならない。
しかし優れたアーツ術者が守護銃を扱えばその威力は跳ね上がり、全長が懐に収まる程度のサイズでも巨大な破城弓やタレットクロスボウの破壊力に遜色しないようになる(但し、それほどの熟練術者自体が希少なことは守護銃も弓も共に変わりはない)。
またサンクタ自身が守護銃に対して高い適性を持つので、守護銃の利用において彼らの右に出るものは少ない。
構造については遺跡から発掘されたオリジナルを基に製造しているが、銃という省空間内でアーツ弾を安定して起動する必要があることから精密な機構が不可欠で、粗い造りでは不発どころか暴発すらしかねない。
最後に量産性についてはラテラーノがほぼ独占していることと、先の精密機構の条件が合わさり技術面と費用面共に非常にハードルが高い。
そして製造ができたとして、結局は利用者のアーツ適正に左右されることを鑑みれば構造がシンプルな弓、大型化や素材で用途を変えられる破城弓のほうが融通が利くものだ。
こうした点から特定の団体や企業以外は基本的に守護銃カテゴリの武器を持たず、つまり銃を持つ=サンクタ・ラテラーノという構図が成り立つのだが、動画で複数の銃を試射している存在は明らかにサンクタでもラテラーノ出身でもなくましてやアーツ術者でもないCASTだ。
つまり。
「Dr.エッグマンは独自で守護銃を解析して量産化したってことか」
「ラテラーノの技術庁が泡を吹いていそうだな」
「威力と弾速が張り子じゃなけりゃ、狙われたら一苦労だな」
「数まで揃うなら、考えたくないな」
「エリートオペレーター設定ならどう思う?」
「『ブレイズ』なら捌けると思う。確かこの前のトレーニングで、チェーンソーを風車みたいに回転させて矢の雨を凌いだことがあったろう?」
「あー、多体一訓練で新人連中が弓撃ちした時な。羽獣狩りで腕を鳴らした奴もいたけど絶句してたぜ。全部チェーンソーで弾かれたって」
「あの時のブレイズ、片手でアレ振り回してたってさ」
「まじかよ、よくやったなあいつ」
「急所に当たりそうな矢には鎖刃で、それ以外は柄で受けるようにしてたから両手持ちだと取り回しが間に合わないとかで。でもガヴィルなら似たようなこと出来るんじゃないの?」
「尻尾込みなら、確かにいけそうだな……他のエリートオペレーターならどうだ?」
「『Sharp』は多分できる。『アスカロン』ならそもそも当たらないだろうし、『Outcast』なら……撃ち返すかな」
「同じ理屈で動画のコイツを考えると、並のオペレーターは遮蔽物に隠れるか盾で防ぐのが一番か」
戦う者としての視点から、ガヴィルとフロストリーフはその脅威度を察した。
「しかし守護銃、いや正確には守護銃ではないだろう、恐らく技術的に近いレベルで再現したような代物を個別に支給できるというのはとんでもないな。管理こそされるのだろうが、持ち逃げや漏洩、反逆の心配をするなら銃火器を大々的に宣伝して貸与しようとは思えない」
ドクターがそう呟く。
警察やPMC職員に都市や企業から武器が支給されることはあるが、それでもあくまで最低限に留まる。
合成弓やアーツロッドは当然のこと、ましてや守護銃レベルの銃火器など決して支給されはしない。
現にロドスと契約しているBSWの『ジェシカ』は、自身の非才と火力を補うために銃火器を愛用しており、それらはいずれも彼女の個人購入による調達だ。
一丁一丁が高価な銃火器を揃えるべくジェシカがしばしば目を回しながら金勘定していることを、ドクターは他のオペレーター紹介を通じて聞いたことがある。
また許可や手続きの関係上、ラテラーノ出身であっても守護銃を簡単に所有できるわけではないことをラテラーノ出身でクロスボウ使いの『アドナキエル』から教わっていた。
守護銃、銃火器は本場であってもそう易々と扱えるものではない、ましてや非ラテラーノでは尚更だ。
そのようなものがエッグマンランドでは『支給可能な・最低限の武装』とみなされていることに、ドクターはこめかみを押さえたくなるような眩暈を覚えた。
おまけに『あの日』のことを振り返れば、ロボット達は玩具みたいな武器から光弾を放つ銃火器を主装備にしていたことから、ともすれば守護銃亜種の銃火器ですらこの国では主力兵装ではない可能性がある。
「(見聞きした限りの情報では、エッグマンランドと共通点があるような国家が出てこない……空から降ってわいただの御伽の国からやってきただの言われたほうがしっくりきてしまう)」
年末から始まった一連の
「とにかく、私が思うにやはりエッグマンランドは……」
面談の時に備え、ロドスの議論は長きに渡った。
◆感想や改善点などございましたら是非コメントお願いします。
ちなみに作中で博士がテーマ曲をBGMに流していますがSA2の「世界に向けて脅しをかけるシーン」で実際に流れているっぽいので本人公認か本人作成なんじゃないかって思います。